第238話 互角
アルジは渋々立ち上がって言う。
アルジ「昨日の続きだと…?」
エオクシ「斬り合いだ。構えろよ」
アルジ「!!」
アルジは剣を構える。
アルジ「………」
エオクシ「そうだ。それでいい」
エオクシも構えた。
アルジ(エオクシ…。こいつも…
ガシマみたいなところがあるな…!)
エミカが2人を止めようと口を開きかけた瞬間。
アヅミナが彼らに釘を刺す。
アヅミナ「…あんたたち。
任務の前に何かあったら承知しないからね」
彼女の体からは強い魔波。
それは、闇の魔術師が持つ不気味な魔波。
アルジ&エミカ「!」
その圧力に胸が締めつけられて言葉が出ない。
体が動かなくなる。
アルジもエミカも。
そんな中、エオクシは平然としていた。
笑ってアヅミナに言う。
エオクシ「心配すんなって!ただの訓練だ!!」
アヅミナ「………」
アルジ「訓練…」
エオクシ「ああ、そうだ」
アルジ「………」
エオクシ「出してみろ。おめえの技を。
昨日見せたあの斬撃…もう1度やってみろ」
アルジ「いいのか?」
エオクシ「さっさと出しやがれ!」
アルジ(そこまで言うならやってやる!
斬ってやるぜ!!教えてやる!!
オレをその気にさせたら…
ただの訓練じゃ済まなくなるってことをな!!)
アルジはエミカに言った。
アルジ「エミカ、再生魔術を準備しといてくれ」
エミカ「アルジ…!」
エオクシ「けっ!!バカが…。
斬れると思ってんのか?」
アルジ「…ああ!」
そして、アルジは振り下ろす。
勇気の剣を。
エオクシに向かって朔月斬りを繰り出した。
縦に、素早く、力強く。
その斬撃はエオクシの左肩を斬ったかに見えた。
だが。
エオクシ「…なるほどな!」
アルジ「…!!」
いとも簡単にかわされた。
エオクシ「不格好な技だ。もう見切ったぜ!」
アルジ「見切っただと…!?」
エオクシ「疑うんなら何度でもやってみろ」
アルジは2回、3回と技を出す。
エオクシはするするとすべて避けた。
言葉どおりアルジの朔月斬りを見切っていた。
アヅミナ(昨日は互角かもって思ったけど…
実力はやっぱりエオクシが上か…)
アルジは歯を食いしばり、悔しがる。
アルジ「クソ!!!」
エミカ(アルジの技が…全然通用してない…)
壮刃剣の先をアルジの顔に向けるエオクシ。
エオクシ「これで分かったか?」
アルジ「………」
エオクシ「寝転がってる場合じゃねえってことが」
アルジ「…そうみたいだな。だがな…」
エオクシ「…?」
アルジ「1つ…知っといてもらおうか…」
次の瞬間。
激しい雷光が勇気の剣を包む。
エオクシ「…!!?」
アルジ「オレの技はあれだけじゃないんだぜ!」
エオクシ(こいつ…魔術も使えんのか…!!)
そこで、アヅミナが大声を上げる。
アヅミナ「もうやめて!!」
アルジ&エオクシ「!!」
エミカ「………」
アヅミナ「もう日が沈んだから。
ただの訓練…でしょ?」
エオクシは大きなため息をついて座り込んだ。
アルジも魔術を解いて座り込む。
アルジ&エオクシ「………」
アヅミナ(…なるほど。
アルジ君にはそんな奥の手が…。
あれで攻められたら…
エオクシでも厳しかったかもね。
それにしても…あの技…
ガシマとオンダクの技に…)
エオクシ「アルジ、あんな技も使えたのか」
アルジ「ああ」
エオクシ「見かけによらねえもんだな…」
アルジ「ガシマとオンダクが教えてくれた」
エオクシ「なんだ、そうなのか」
アヅミナ(…やっぱり)
アルジ「古代獣を討伐する前…。
オレに手取り足取り教えてくれた」
エオクシ「へえ、
あいつらがそんなことをするとはな!」
アルジ「ああ、本当にありがたかった」
エオクシ「そうか」
すっかり日が沈み、空は暗くなっていた。
周りの空を見回せば、無数の星の輝き。
エオクシ「…で、最初に見せた技…
あれはオレの真似だろ」
アルジ「…!!」
エミカ(あっさり見抜かれた…)
エオクシはニヤリと笑う。
エオクシ「当たりだな」
アルジ「ああ」
エオクシ「あの日…
オレがおめえに技を見せたとき…
ヤマエノモグラモンの牙を斬ったとき…
剣の軌道はほとんど見えなかっただろうが、
おめえは考えた。
オレがどうやって剣を振ったのか。
それで、真似してみた。
そしたらどうにか形になった。
それがあの技だ。そういうことだろ?」
アルジ「ああ、そうだ」
エオクシ「…見よう見まねにしちゃ上出来だ」
アルジ「……!」
エオクシ「何人もいる。過去にも…何人もいた。
武術大会やら、公開訓練やら、一隊試験やらで」
アルジ「何がだ?」
エオクシ「オレの技を見て真似するやつだ」
アルジ「………」
エオクシ「熱心なやつはそれなりに強くなる。
オレの技を真似して大前隊に入ったのもいる。
だが、オレからすればダメダメだ。
てんで話にならねえ。
形だけ技を真似しても、決して大成しねえ。
せいぜい二隊の中堅止まりだ」
アルジ「そうか」
エオクシ「まして一隊になんか上がれねえ。
人の真似なんてのは、所詮そんなもんだ。
だがな…おめえの技は…
オレが見た中で1番出来のいい真似だった」
アルジ「褒めてるのか?」
エオクシ「そういうつもりだ」
アルジ「………」
エオクシ「だからこそ、言っときてえことがある」
アルジ「…?」
エオクシは立ち上がって剣を構える。
星が瞬く夜空に向かって。
ヒュン、と音を立てて振り下ろす。
壮刃剣を大きく、軽々と、振り下ろす。
アルジ(速い…!)
エミカ(違う…。やっぱり違う。
アルジの朔月斬りと。
もっと速くて、軽くて、
それでいて、強い…気がする)
エオクシはアルジに笑いかける。
エオクシ「昨日避けられたときは驚いたぜ。
全力で頭を割るつもりだったんだからよ!」
アルジ「………」
エミカ(やっぱり…。
一歩間違えたら死ぬところだったんだ)
エオクシ「全力の一撃を避けられたんだ。
衝撃だったぜ。だがな、今考えると…
あんときのオレは余計な力が入ってた」
アルジ「余計な力…」
エオクシ「オレはカッとなっちまってた。
試してみろ、とおめえに言われてな」
アルジ「………」
エオクシ「力を抜け。もっと軽く振り抜け。
今のおめえのその技には余計な力が入ってる。
肩や腕、腰にも、背中にも。
余計な力が入ってる。
斬ってやろう、思い切り、速く、深く。
斬ってやろう。
そういう気持ちが先走ってんじゃねえのか?
そうじゃねえ。
もっと全身の力の流れで斬るんだ。
体の各部の力を合流させんだ。
そんで、でかい力の流れを作るんだ。
その力の流れで振り抜いてみろ。
剣を、より大きく。
それができるようになれば技はよくなる。
飛躍的にな。
オレが言っときてえのは、そういうことだ」
アルジ「全身の力の流れ…か」
エオクシ「ああ、そうだ」
エオクシは剣を置いて、横になる。
エオクシ「…ちょっと寝るぜ。
着いたら起こしてくれ」
アヅミナ「あたしが起こしてあげるね」
エオクシ「…いや、やっぱ自分で起きる」
アルジは立ち上がり、早速実践する。
エオクシに言われたことを。
何度も、何度も剣を振る。
アルジ(…こうか?
全身の力の流れ…こうか!?)
エミカはその様子をしばらく見ていた。
エミカ(私も…頑張ろう。
天火を…早く習得しよう!)
それから、論文を読んで光玉と火弾を合わせる。
アヅミナはじっと前を見てカルスを飛ばす。
アヅミナ(エオクシ…
あなたが自分の技について…
あんなに熱心に人に話したの…
初めてじゃない?
しかも…あんなに楽しそうな顔で…)
夜が深まっていく。
アルジたち4人は目的地上空に到達する。
大陸猟進会の潜伏先、ヒジの国。
カムテの町の上空に。
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 31
◇ HP 3753/3753
◇ 攻撃
48★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 防御
45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★
◇ 素早さ
44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★
◇ 魔力 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、闘主の鎧
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り、
雷刃剣
◇ 魔術 雷動
◇ エミカ ◇
◇ レベル 27
◇ HP 2415/2415
◇ 攻撃 10★★★★★★★★★★
◇ 防御
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
32★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、濃色魔術衣
◇ 魔術 火球、火砲、火樹、火海、王火
氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術
◇ エオクシ ◇
◇ レベル 38
◇ HP 3692/4027
◇ 攻撃
52★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★
◇ 素早さ
48★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 魔力
◇ 装備 壮刃剣、戦究防護衣
◇ 技 天裂剣、地破剣
◇ アヅミナ ◇
◇ レベル 36
◇ HP 404/460
◇ 攻撃 1★
◇ 防御 2★★
◇ 素早さ
42★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★
◇ 魔力
49★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 装備 大法力の魔杖、漆黒の術衣
◇ 魔術
火弾、火矢、火球、火砲、火羅、火嵐、王火
氷弾、氷矢、氷球、氷刃、氷柱、氷舞、王氷
暗球、精神操作、五感鈍化、魔病感染、
酷死魔術
◇ 持ち物 ◇
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 80、活汁 29




