第237話 彼方
◆ カスモ国 ナタセヤ町 ◆
そこは、都から遥か西の町。
町の大通りを歩くアルジたち4人。
空はよく晴れていた。
人通りはやけに少ない。
エオクシ「よし、飯だ。飯を食うぜ!」
アルジ「どんな店があるんだろうな」
エミカ「いろいろありそうだけど…」
アヅミナ「………」
アヅミナは不機嫌だった。
エオクシが強引に起こしたために。
エオクシ「ここなんかいいんじゃねえか?」
そこは、大きな料理屋。
黒く塗られた壁。
歴史と伝統を感じさせる古い看板。
店先に貼ってある品書きには高級料理が並ぶ。
エミカ「すごい高級店だ…」
アルジ「昼にならないと開かないみたいだぜ」
エオクシ「しょうがねえな。待つか!」
アヅミナ「そんなのダメ」
アルジ&エミカ&エオクシ「………」
アヅミナ「早く行かなきゃいけないんだから」
エオクシ「飯を食わなきゃやってけねえだろ。
それにもう昼までそんなに時間はねえぜ!
待ったって大して時間は無駄にならねえ」
アヅミナ「………」
エミカが辺りを見回して声を上げる。
エミカ「ほかにやってるお店があるかも!」
アルジ「あっちに屋台があったぜ。
うまそうな匂いがした」
エオクシ「屋台か…」
アヅミナ「いいね。
そこで買って、カルスの上で食べよう」
その屋台は3人の女たちが切り盛りしていた。
店員A「いらっしゃい!」
エオクシ「これとこれをくれ」
店員A「はいよ!」
店先に掲げられた品書きを指差して注文する。
エオクシに続いてアルジもエミカもアヅミナも。
出てきたのは、塩辛い具材を生地で包んだ料理。
肉、魚、野菜と、具材の種類は豊富。
エオクシが代金をまとめて払おうとしたとき。
店主が言った。
店主「あんたら、旅のもんだろ」
エオクシ「ああ、そうだ。都から来た」
店主「そうかい。どうりで。
なんか垢抜けてるもんね。
後ろの2人は…?」
アルジ「クユの国から来た」
店主「ああ、あの小さな国…。
行ったことないね。
そんな辺境からはるばるやってきたのかい」
アルジ「辺境…!!」
店員B「まぁこの町も…
よそのこと言えたもんじゃないけど」
店主「確かにそれはそうだ」
エミカ「…静かな町だ。いつもこうなのか?」
店主「そんなことはない。
普段はずらっと屋台が並ぶ。
屋台ひしめくセナガヤ通り!
…って、聞いたことないか」
アルジ&エミカ「………」
アヅミナ「どうしてこんなに人がいないの?」
店主「逃げちまったのさ」
店員A「西の方で巨大な化け物が出たからね」
アヅミナ「化け物」
店主「翼の生えた竜が出たそうだ。
町を出て逃げてく人がたくさんいた。
おかげでここもこんなにがらんとしちまった」
アルジ「あんたらは逃げないのか?」
店主「逃げるわけにはいかないね。
この春に念願だった店をやっと出せたんだから。
こんなことで逃げてたまるか!」
店員B「お客が来ないのは痛いけどね」
店主「まあ、それはそうだけどね」
店員A「こんな状態が続くなら、私たちも…」
エオクシは剣を掲げる。
エオクシ「逃げる必要はねえ」
店主たち「………」
エオクシ「その翼の生えた竜とやら、
オレたちが倒すからな。
今はその旅の途中だ。
じきに討伐してやっから待ってろ。
化け物さえいなくなりゃあ、
すぐに町は活気づくだろ」
店員A「あんた、勇ましいね」
店員B「兵隊さん…?」
エオクシ「オレは大前隊の戦士、エオクシだ」
店主と店員たちは顔を見合い、喜ぶ。
店主「こんなところでお会いできるなんて!」
店員A「頑張ってください!」
店員B「応援してます!!」
エオクシ「おう!!任せろ!!!」
アルジ(大前隊…人気あるな…)
アルジたち4人は町の外れの広い公園へ行く。
その真ん中でエミカがカルスを展開した。
エミカ「アヅミナさん、
カルスは夕方まで私が動かすから」
アヅミナ「大丈夫?」
エミカ「大丈夫」
アヅミナ「ありがとう」
カルスでさらに西へと向かう。
エミカの操縦に一層磨きがかかる。
アヅミナは安心して眠りに就く。
アルジとエオクシは屋台で買った料理を食べる。
アルジ「うまいな」
エオクシ「悪くねえ」
アルジ「エミカも食べないか?うまいぜ」
エミカ「お菓子を食べたから。
もう少しあとにする」
アルジ「そっか」
エオクシが小さな声で言う。
エオクシ「うめえな」
アルジ「なんだ…?何を食ったんだ?」
エオクシ「違う。エミカの操縦だ」
アルジ「ああ…」
エミカ「ありがとう」
エオクシ「アヅミナも安心しておめえに任せてる。
任務で遠くへ行くときは、
いつもカルスの操縦役だったからな。
アヅミナは。
今回は長旅なのに十分休めてご機嫌だろうよ」
アルジ「そうなのか」
エオクシ「ああ、ご機嫌さ」
エミカ「エオクシさんが乱暴に起こさなければ、
もっといいんだろうけどな」
エオクシ「…!!」
アルジ「町を歩いてたとき、ちょっと怖かったぜ」
エオクシ「今度はもっと優しく起こしてやるさ!」
エミカ「私が起こすから」
エオクシ「…そうか。なら、頼んだぜ。
またしばらくしたら降りて休憩にしようぜ。
あの向こうの山の辺りでもいいか?」
エミカ「分かった!」
エオクシの指差す先。
山の稜線がぼんやりと見えている。
歩いていけば20日はかかるような場所。
だが、カルスならものの数時間。
加速し続ける。
エミカが出せる最高速度に達する。
アルジもエオクシも食事を終えた。
アルジは見つめる。
町を、村を、山を、川を。
エオクシは眺める。
青い空と白い雲を。
エミカ(今なら…私もできる気がする。
操縦を続けながら…)
エミカはリネの論文を開き、読み始めた。
アヅミナの書き込みも見落とさない。
1つ1つをよく読んで理解する。
エミカ(これは…そうか…。そういうことか…。
…分かっていく。
アヅミナさんの書き込みのおかげで!
論文の欠けてた部分が埋まってくみたいだ…)
試しに指先に小さな光玉を出してみた。
それに火弾の熱を加えていく。
エミカ(小さなところから…少しずつ…)
光玉が熱を帯びる。
エミカ(…できた!!)
そのとき、カルスがわずかに揺れる。
エミカは慌てて光玉を消す。
操縦に意識を集中させる。
カルスの揺れが収まる。
エミカ「………」
エミカはエオクシの横顔をちらりと見る。
エオクシ「ん?…なんだ?」
エミカ「いや、なんでもない」
エオクシ「…?」
エミカ(試すのは操縦を交替してからにしよう)
日が傾いていく。
アルジたちは小高い山のふもとに降り立つ。
地上での2度目の休憩を取る。
そこには小さな村があった。
だが、人の姿はどこにもない。
エオクシ「逃げたのか…やられたのか…」
アヅミナ「どこにも死体はない。
きっと逃げたんでしょ」
エミカ「…目的地には近づいてきたのかな」
アヅミナ「近いよ。
あれがカオン山だと思うから…
越えたところが国境で、その向こうがヒジの国。
エミカちゃんのカルスの扱いは想像以上だった。
揺れもほとんどないし本当に素晴らしい」
エミカ「ありがとう」
アヅミナ「これなら夜のうちに目的地に着ける。
大陸猟進会のところに。あとはあたしに任せて」
エミカ「分かった」
それから、村の中を歩き回って様子を見る。
エオクシ「人の気配がまるでねえな。
古代獣について話を聞こうと思ったが…
どうやら…この村にはもう誰もいねえようだ」
アルジ&エミカ&アヅミナ「………」
エオクシは活汁を勢いよく飲んだ。
小さな家が並ぶ通りを歩きながら。
エオクシ「クソッ!!相変わらずまずいぜ!!」
再びカルスに乗る。
アヅミナが機体に魔力を注いでいく。
高く、高く浮き上がり、前へ、前へ進み出す。
そして、速く、速く飛んでいく。
日は沈みかけていた。
エオクシは剣を振る。
赤く染まった空に向かって。
エミカは天火の練習をする。
リネの論文をよく読んで。
アヅミナはカルスを操縦する。
目的地を目指して。
そして、アルジは…。
アルジ「うまいな…」
アヅミナが持ってきた菓子を食べていた。
もりもりと、むしゃむしゃと。
食べ終えると、茶を飲み、仰向けになる。
空を漂う雲の1つをにらみつけ、思う。
アルジ(ラッセイムスラ…待ってろよ!
オレたちが…必ず倒す…!まずは雷刃剣だ…!
それで、痺れたところを朔月斬りだ!!
そして…最後はやっぱり…!!)
アルジたち4人は思い思いに過ごした。
目的地に着くまでの時間を。
気がつけば、辺りは山岳地帯。
カオン山を越え、国境を越えていた。
エオクシ「立ちやがれ」
エオクシはアルジに向かって言う。
アルジ「…は?」
エオクシ「寝転んでねえで、立て。剣を構えろ」
アルジ「何…?」
エオクシ「日が暮れる前にやるぜ」
アルジ「何をやる…?」
エオクシ「昨日の続きだ」
アルジ「続き…?」
エミカ&アヅミナ「………」
やがて大陸最高峰が遥か彼方に見えてくる。
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 31
◇ HP 3753/3753
◇ 攻撃
48★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 防御
45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★
◇ 素早さ
44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★
◇ 魔力 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、闘主の鎧
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り、
雷刃剣
◇ 魔術 雷動
◇ エミカ ◇
◇ レベル 27
◇ HP 2415/2415
◇ 攻撃 10★★★★★★★★★★
◇ 防御
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
32★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、濃色魔術衣
◇ 魔術 火球、火砲、火樹、火海、王火
氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術
◇ エオクシ ◇
◇ レベル 38
◇ HP 3692/4027
◇ 攻撃
52★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★
◇ 素早さ
48★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 魔力
◇ 装備 壮刃剣、戦究防護衣
◇ 技 天裂剣、地破剣
◇ アヅミナ ◇
◇ レベル 36
◇ HP 404/460
◇ 攻撃 1★
◇ 防御 2★★
◇ 素早さ
42★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★
◇ 魔力
49★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 装備 大法力の魔杖、漆黒の術衣
◇ 魔術
火弾、火矢、火球、火砲、火羅、火嵐、王火
氷弾、氷矢、氷球、氷刃、氷柱、氷舞、王氷
暗球、精神操作、五感鈍化、魔病感染、
酷死魔術
◇ 持ち物 ◇
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 80、活汁 29




