表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルジ往戦記  作者: roak
237/300

第237話 彼方

◆ カスモ国 ナタセヤ町 ◆

そこは、都から遥か西の町。

町の大通りを歩くアルジたち4人。

空はよく晴れていた。

人通りはやけに少ない。


エオクシ「よし、飯だ。飯を食うぜ!」

アルジ「どんな店があるんだろうな」

エミカ「いろいろありそうだけど…」

アヅミナ「………」


アヅミナは不機嫌だった。

エオクシが強引に起こしたために。


エオクシ「ここなんかいいんじゃねえか?」


そこは、大きな料理屋。

黒く塗られた壁。

歴史と伝統を感じさせる古い看板。

店先に貼ってある品書きには高級料理が並ぶ。


エミカ「すごい高級店だ…」

アルジ「昼にならないと開かないみたいだぜ」

エオクシ「しょうがねえな。待つか!」

アヅミナ「そんなのダメ」

アルジ&エミカ&エオクシ「………」

アヅミナ「早く行かなきゃいけないんだから」

エオクシ「飯を食わなきゃやってけねえだろ。

 それにもう昼までそんなに時間はねえぜ!

 待ったって大して時間は無駄にならねえ」

アヅミナ「………」


エミカが辺りを見回して声を上げる。


エミカ「ほかにやってるお店があるかも!」

アルジ「あっちに屋台があったぜ。

 うまそうな匂いがした」

エオクシ「屋台か…」

アヅミナ「いいね。

 そこで買って、カルスの上で食べよう」


その屋台は3人の女たちが切り盛りしていた。


店員A「いらっしゃい!」

エオクシ「これとこれをくれ」

店員A「はいよ!」


店先に掲げられた品書きを指差して注文する。

エオクシに続いてアルジもエミカもアヅミナも。

出てきたのは、塩辛い具材を生地で包んだ料理。

肉、魚、野菜と、具材の種類は豊富。

エオクシが代金をまとめて払おうとしたとき。

店主が言った。


店主「あんたら、旅のもんだろ」

エオクシ「ああ、そうだ。都から来た」

店主「そうかい。どうりで。

 なんか垢抜けてるもんね。

 後ろの2人は…?」

アルジ「クユの国から来た」

店主「ああ、あの小さな国…。

 行ったことないね。

 そんな辺境からはるばるやってきたのかい」

アルジ「辺境…!!」

店員B「まぁこの町も…

 よそのこと言えたもんじゃないけど」

店主「確かにそれはそうだ」

エミカ「…静かな町だ。いつもこうなのか?」

店主「そんなことはない。

 普段はずらっと屋台が並ぶ。

 屋台ひしめくセナガヤ通り!

 …って、聞いたことないか」

アルジ&エミカ「………」

アヅミナ「どうしてこんなに人がいないの?」

店主「逃げちまったのさ」

店員A「西の方で巨大な化け物が出たからね」

アヅミナ「化け物」

店主「翼の生えた竜が出たそうだ。

 町を出て逃げてく人がたくさんいた。

 おかげでここもこんなにがらんとしちまった」

アルジ「あんたらは逃げないのか?」

店主「逃げるわけにはいかないね。

 この春に念願だった店をやっと出せたんだから。

 こんなことで逃げてたまるか!」

店員B「お客が来ないのは痛いけどね」

店主「まあ、それはそうだけどね」

店員A「こんな状態が続くなら、私たちも…」


エオクシは剣を掲げる。


エオクシ「逃げる必要はねえ」

店主たち「………」

エオクシ「その翼の生えた竜とやら、

 オレたちが倒すからな。

 今はその旅の途中だ。

 じきに討伐してやっから待ってろ。

 化け物さえいなくなりゃあ、

 すぐに町は活気づくだろ」

店員A「あんた、勇ましいね」

店員B「兵隊さん…?」

エオクシ「オレは大前隊の戦士、エオクシだ」


店主と店員たちは顔を見合い、喜ぶ。


店主「こんなところでお会いできるなんて!」

店員A「頑張ってください!」

店員B「応援してます!!」

エオクシ「おう!!任せろ!!!」

アルジ(大前隊…人気あるな…)


アルジたち4人は町の外れの広い公園へ行く。

その真ん中でエミカがカルスを展開した。


エミカ「アヅミナさん、

 カルスは夕方まで私が動かすから」

アヅミナ「大丈夫?」

エミカ「大丈夫」

アヅミナ「ありがとう」


カルスでさらに西へと向かう。

エミカの操縦に一層磨きがかかる。

アヅミナは安心して眠りに就く。

アルジとエオクシは屋台で買った料理を食べる。


アルジ「うまいな」

エオクシ「悪くねえ」

アルジ「エミカも食べないか?うまいぜ」

エミカ「お菓子を食べたから。

 もう少しあとにする」

アルジ「そっか」


エオクシが小さな声で言う。


エオクシ「うめえな」

アルジ「なんだ…?何を食ったんだ?」

エオクシ「違う。エミカの操縦だ」

アルジ「ああ…」

エミカ「ありがとう」

エオクシ「アヅミナも安心しておめえに任せてる。

 任務で遠くへ行くときは、

 いつもカルスの操縦役だったからな。

 アヅミナは。

 今回は長旅なのに十分休めてご機嫌だろうよ」

アルジ「そうなのか」

エオクシ「ああ、ご機嫌さ」

エミカ「エオクシさんが乱暴に起こさなければ、

 もっといいんだろうけどな」

エオクシ「…!!」

アルジ「町を歩いてたとき、ちょっと怖かったぜ」

エオクシ「今度はもっと優しく起こしてやるさ!」

エミカ「私が起こすから」

エオクシ「…そうか。なら、頼んだぜ。

 またしばらくしたら降りて休憩にしようぜ。

 あの向こうの山の辺りでもいいか?」

エミカ「分かった!」


エオクシの指差す先。

山の稜線がぼんやりと見えている。

歩いていけば20日はかかるような場所。

だが、カルスならものの数時間。

加速し続ける。

エミカが出せる最高速度に達する。

アルジもエオクシも食事を終えた。

アルジは見つめる。

町を、村を、山を、川を。

エオクシは眺める。

青い空と白い雲を。


エミカ(今なら…私もできる気がする。

 操縦を続けながら…)


エミカはリネの論文を開き、読み始めた。

アヅミナの書き込みも見落とさない。

1つ1つをよく読んで理解する。


エミカ(これは…そうか…。そういうことか…。

 …分かっていく。

 アヅミナさんの書き込みのおかげで!

 論文の欠けてた部分が埋まってくみたいだ…)


試しに指先に小さな光玉を出してみた。

それに火弾の熱を加えていく。


エミカ(小さなところから…少しずつ…)


光玉が熱を帯びる。


エミカ(…できた!!)


そのとき、カルスがわずかに揺れる。

エミカは慌てて光玉を消す。

操縦に意識を集中させる。

カルスの揺れが収まる。


エミカ「………」


エミカはエオクシの横顔をちらりと見る。


エオクシ「ん?…なんだ?」

エミカ「いや、なんでもない」

エオクシ「…?」

エミカ(試すのは操縦を交替してからにしよう)


日が傾いていく。

アルジたちは小高い山のふもとに降り立つ。

地上での2度目の休憩を取る。

そこには小さな村があった。

だが、人の姿はどこにもない。


エオクシ「逃げたのか…やられたのか…」

アヅミナ「どこにも死体はない。

 きっと逃げたんでしょ」

エミカ「…目的地には近づいてきたのかな」

アヅミナ「近いよ。

 あれがカオン山だと思うから…

 越えたところが国境で、その向こうがヒジの国。

 エミカちゃんのカルスの扱いは想像以上だった。

 揺れもほとんどないし本当に素晴らしい」

エミカ「ありがとう」

アヅミナ「これなら夜のうちに目的地に着ける。

 大陸猟進会のところに。あとはあたしに任せて」

エミカ「分かった」


それから、村の中を歩き回って様子を見る。


エオクシ「人の気配がまるでねえな。

 古代獣について話を聞こうと思ったが…

 どうやら…この村にはもう誰もいねえようだ」

アルジ&エミカ&アヅミナ「………」


エオクシは活汁を勢いよく飲んだ。

小さな家が並ぶ通りを歩きながら。


エオクシ「クソッ!!相変わらずまずいぜ!!」


再びカルスに乗る。

アヅミナが機体に魔力を注いでいく。

高く、高く浮き上がり、前へ、前へ進み出す。

そして、速く、速く飛んでいく。

日は沈みかけていた。

エオクシは剣を振る。

赤く染まった空に向かって。

エミカは天火の練習をする。

リネの論文をよく読んで。

アヅミナはカルスを操縦する。

目的地を目指して。

そして、アルジは…。


アルジ「うまいな…」


アヅミナが持ってきた菓子を食べていた。

もりもりと、むしゃむしゃと。

食べ終えると、茶を飲み、仰向けになる。

空を漂う雲の1つをにらみつけ、思う。


アルジ(ラッセイムスラ…待ってろよ!

 オレたちが…必ず倒す…!まずは雷刃剣だ…!

 それで、痺れたところを朔月斬りだ!!

 そして…最後はやっぱり…!!)


アルジたち4人は思い思いに過ごした。

目的地に着くまでの時間を。

気がつけば、辺りは山岳地帯。

カオン山を越え、国境を越えていた。


エオクシ「立ちやがれ」


エオクシはアルジに向かって言う。


アルジ「…は?」

エオクシ「寝転んでねえで、立て。剣を構えろ」

アルジ「何…?」

エオクシ「日が暮れる前にやるぜ」

アルジ「何をやる…?」

エオクシ「昨日の続きだ」

アルジ「続き…?」

エミカ&アヅミナ「………」


やがて大陸最高峰が遥か彼方に見えてくる。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 31

◇ HP   3753/3753

◇ 攻撃

 48★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★

◇ 防御

 45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★

◇ 素早さ

 44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★

◇ 魔力  14★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  勇気の剣、闘主の鎧

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り、

      雷刃剣

◇ 魔術  雷動


◇ エミカ ◇

◇ レベル 27

◇ HP   2415/2415

◇ 攻撃  10★★★★★★★★★★

◇ 防御

  30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

  32★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、濃色魔術衣

◇ 魔術  火球、火砲、火樹、火海、王火

      氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷

      雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術


◇ エオクシ ◇

◇ レベル 38

◇ HP   3692/4027

◇ 攻撃

 52★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

 45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★

◇ 素早さ

 48★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★

◇ 魔力

◇ 装備  壮刃剣、戦究防護衣

◇ 技   天裂剣、地破剣


◇ アヅミナ ◇

◇ レベル 36

◇ HP   404/460

◇ 攻撃   1★

◇ 防御   2★★

◇ 素早さ

 42★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★

◇ 魔力

 49★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★

◇ 装備  大法力の魔杖、漆黒の術衣

◇ 魔術

  火弾、火矢、火球、火砲、火羅、火嵐、王火

  氷弾、氷矢、氷球、氷刃、氷柱、氷舞、王氷

  暗球、精神操作、五感鈍化、魔病感染、

  酷死魔術


◇ 持ち物 ◇


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 80、活汁 29

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ