第232話 秘点
シノ姫は懐から1枚の紙を出す。
シノ姫「今日、日が沈む頃、これが届きました」
アルジ「…手紙か?」
シノ姫「はい。合離蝶で送られてきました」
細長く折られたその手紙を広げる。
ひらひらとはためかせて彼女は明かした。
送り主と内容について。
シノ姫「送り主は大陸猟進会。
内容は古代獣の出現について」
シノ姫は詳しく話していく。
シノ姫「現れた古代獣。
その名はラッセイムスラ。
前に1度見つけたけれど、見失っていた。
どこに隠れているのか分からなかった。
それが今、突然姿を現した。
町や村、多くの民を襲ってる。
壊して殺して回ってる。
そういうことだそうなのです」
アルジ「そいつを倒しにいけばいいんだな」
シノ姫「注意して…」
アルジ「………」
シノ姫「ラッセイムスラの討伐は
容易いことではありません」
アルジ&エミカ&エオクシ&アヅミナ「………」
シノ姫「このたび突然大陸に現れた古代獣。
いずれも破格の強さです。
それらの中で比べてみても、
ラッセイムスラは飛び抜けた強さ。
ほかとはまるで異なると
手紙に書いてありました。
政府が育てた大陸猟進会、
彼らが挑んでも、狩りは失敗したそうです」
アルジ「大陸猟進会でも倒せなかった…。
大陸首位猟師でも勝てなかったってことか?」
シノ姫「ええ、そのとおり。大陸首位猟師…。
手紙によれば、彼は再起不能になったそうです。
ラッセイムスラとの戦いに敗れて…」
アルジ「!!…再起不能だって…!?」
エオクシ「あのおっさんが…」
アルジ「知ってるのか?」
エオクシ「ヤマタンのおっさんだろ。
大前隊の先輩だ。知ってて当然だろ」
アルジ「そっか」
エオクシ「つってもな、尊敬してるわけじゃねえ」
アルジ「そうなのか?」
エオクシ「って、おめえも…」
アルジ「知ってるぜ。オレたちは一緒に戦った。
古代獣コノマノヤタラズマと。
戦いの最後の最後…
あのとき、ヤマタンさんが来てくれて…」
エオクシ「なぁんだ!それなら…」
シノ姫「あなたたち!」
アルジ&エオクシ「………」
シノ姫は険しい顔で言う。
シノ姫「勝手におしゃべりしないでよ…!
話してるのは私なんだから…」
アルジ「…ああ、ごめんなさい…」
エオクシ「…すみませんでした」
エミカ&アヅミナ「………」
シノ姫はさらに続けた。
シノ姫「…ラッセイムスラについて調べました。
古い資料をいろいろ探してね…」
シノ姫の側近の1人が書物を差し出す。
彼女はそれを受け取る。
開いてアルジたちに見せた。
そこにはラッセイムスラの姿が描かれていた。
それは、巨大な竜。
大きな翼で空を飛ぶ竜の姿が描かれていた。
シノ姫「…翼竜。今はもうどこにもいない。
だけど、いた。大昔には生きていた。
人がこの地に生まれる前、
確かにそれは生きていた。
天空を飛び回り、大地を見下ろし、
長く君臨し続けた。
生きとし生けるものの頂点に…」
アルジ「頂点…」
シノ姫「最も凶暴な気性、最も強靭な肉体、
それらを併せ持った、古代獣の究極形。
ラッセイムスラは、紛れもない最強の古代獣」
アルジ「最強なのか…!」
シノ姫「ラッセイムスラは…
『収まらない魔獣』といわれている。
危獣級、剛獣級、恐獣級、超獣級、覇獣級。
これらの等級からはみ出し、まさに超越した、
評価不能の規格外。そういう魔獣だそうです」
エミカが問いかける。
エミカ「その古代獣…ラッセイムスラも…
ロニが魔術で生んだものなのでしょうか?」
シノ姫「間違いなくロニの仕業でしょう。
手紙とともに体液の標本も送られてきました。
それを審理院に送り、組成を調べました。
すると、簡単に分かりました。
それがさまざまな獣の体液でできたものだと。
獣を生み出す獣魔術が…とうとう完成した。
星の秘宝、創造の杖の力で。
だから、ロニは生み出せた。
究極の古代獣、ラッセイムスラを…。
ホジタに聞いたらそんな話をしてました」
エミカ(ホジタ…。捕まったまま都にいるのか?)
アヅミナ「今…その古代獣はどこにいますか?」
シノ姫「ここから遥か西…」
アヅミナ「西…ですか」
シノ姫「西雲郷と呼ばれる古代遺跡…
そちらに向かって飛んでいった…。
手紙には、そのように書いてありました」
アヅミナ「西雲郷は確か…タフカフ山のある…」
シノ姫「そうです。タフカフ山。
大陸最高峰がそびえる山岳地帯です」
エミカ(大陸最高峰タフカフ山。…遠い。
ここから縁環島よりも…ずっと遠い…)
シノ姫「大陸猟進会は求めています。
応援を…なるべく早い応援を求めています。
明後日までに現地に行ける…?」
アヅミナ「…行けます」
エミカ「明後日までに…」
アヅミナ「2人でカルスを飛ばせば行けます。
交替で夜通し飛ばし続ければ。…ね?」
アヅミナはエミカの顔を見て問いかける。
エミカ「私は…」
アヅミナ「カルスの操縦は?できる?」
エミカ「一応…できます」
アヅミナ「それなら大丈夫」
エオクシ「頼むぜ」
アルジ「エミカ、本当に大丈夫か?」
エミカ「とにかく…やってみる」
シノ姫は顔を少しゆがめて言う。
シノ姫「もう1つ…お伝えしておきましょう。
ロニが…ラッセイムスラと一緒にいたそうです」
アルジ「ロニが…!!」
シノ姫「ラッセイムスラに乗り、それを操って、
多数の町や村で大暴れしているそうです。
すでに何万もの民を殺しているそうです」
エオクシ「!!なんだと…!?」
シノ姫「周辺地域の大前隊は壊滅したそうです。
防衛隊も警備隊も壊滅したそうです。
敵の力は思ったよりも強大だった」
エミカ「そんな…」
シノ姫「ヒジの国、カムテの町。
山間の小さな町。
そこに大陸猟進会が隠れているそうです。
あなたたちはまず彼らに会ってください。
何か役立つ情報があるかもしれない」
アルジ「…分かった。オレたちに任せてくれ」
エオクシ「よう、おめえ。足引っ張んじゃねえぞ」
アルジ「は…?お前もな」
エオクシ「…なんだと?」
シノ姫「おやめなさい!!」
アルジ&エオクシ「………」
アヅミナ(足を引っ張るな…か。エオクシ…。
そんなこと…今まで言ったことなかったよね)
エミカ(できるかな…。
目的地まで…カルスの操縦…。
でも…今回は1人じゃないし…。
アヅミナさんがいれば…大丈夫か)
シノ姫は懐から1個の合離蝶を出す。
シノ姫「これに力を込めておきます」
アルジ&エミカ&エオクシ&アヅミナ「………」
シノ姫「ここのところ、力を少し使い過ぎていてね…。
あまり強い力は込められません。
ですので…カムテの町に着いてから放って。
大陸猟進会の潜伏先へ飛んでいくでしょう」
秘術道具の幻印に力を込める。
赤い光がその先端に灯った、そのときだった。
アルジ「うお…!」
シノ姫「あら…?」
勇気の剣が強い光を放つ。
幻印の光と同じ、赤い光を。
シノ姫の秘術に呼応するかのように。
シノ姫(感じてはいた…。
あの剣に込められた秘力を。
彼が城の前に降り立ったときから。
でも…これほどの力が込められていたなんて…。
これほど強い秘力が込められた道具は…
初めて見る…!!)
目を見開き、シノ姫は剣が放つ光を見ていた。
エオクシ「なんなんだ?その剣は!?」
アルジ「オレの村の宝、勇気の剣だ」
エオクシ「勇気の剣…?」
アヅミナ「秘術…シノ姫の秘術に反応して…」
アルジ「ああ、どうやら…そうみたいだな!」
エミカ(シノミワさん…この人も秘術を…。
この人の不思議な感じの正体は…この力?)
シノ姫が合離蝶に力を込め終える。
幻印の光が消え、勇気の剣の光も消えた。
シノ姫「…素晴らしい剣です」
アルジ「シノミワさん、
この剣…なんだか知ってるか?」
シノ姫「それは、秘術道具ですね…。
かつて秘術使いがその剣に力を込めた。
とても…とても強い力を…。
秘点が…大量の秘点が…
その剣に打ち込まれています…。
私には…それが見えます」
アルジ「秘点…」
シノミワ「秘術は点によって力を伝えるのです。
術の力が強ければ強いほど
点は長く強く残り続けます」
アルジ「そうなのか」
エオクシ(こいつが急に強くなったのは…
この剣のおかげか…?
シノ姫の力と同じ力で…
強くなったっていうのか?
こんなやつはいなかった…!
大前隊にも…どこにも…!!
ナキ村のアルジ…。変わったやつだな…!)
エミカ「シノミワさん、あなたのさっきの力も…」
シノ姫「秘術です。ですが…」
エミカ「……?」
シノ姫「このことは人に話してはなりません。
私の秘術のことは…絶対に秘密に…。
いいですね?」
エミカ「…はい」
アルジ「………」
シノ姫はアルジたちに問いかける。
シノ姫「ところで、旅の資金は十分ですね?
アルジさんとエミカさん、いいですね?
さっき渡した懸賞金もありますものね…」
アルジ「さっきもらったので十分だ」
シノ姫「エオクシ、アヅミナ、あなたたちは…
昨日上げたお金があれば…」
エオクシ&アヅミナ「!」
シノ姫「…どうかしたの?」
エオクシ「いや…なんでもねえ…ありません」
アヅミナ(全部エオクシの負担…だね)
アルジ&エミカ「…?」
最後にシノ姫はほほえみ、声をかけた。
シノ姫「健闘を祈ります。行ってらっしゃい」
エオクシ&アヅミナ「はっ!!」
アルジ「…え?」
エミカ「行ってきます」
アルジはエオクシとアヅミナの真似をする。
アルジ「は…はぁっ!!」
エオクシ「なんだその返事は。
バシッと1回で決めろ!」
アルジ「くっ…!」
そして、アルジたち4人は城を出る。
向かったのは、エオクシ、アヅミナの住む官舎。
まずは旅の準備をすることになった。
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 31
◇ HP 3753/3753
◇ 攻撃
48★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 防御
45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★
◇ 素早さ
44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★
◇ 魔力 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、闘主の鎧
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り、
雷刃剣
◇ 魔術 雷動
◇ エミカ ◇
◇ レベル 27
◇ HP 2415/2415
◇ 攻撃 10★★★★★★★★★★
◇ 防御
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
32★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、濃色魔術衣
◇ 魔術 火球、火砲、火樹、火海、王火
氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術
◇ エオクシ ◇
◇ レベル 38
◇ HP 3692/4027
◇ 攻撃
52★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★
◇ 素早さ
48★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 魔力
◇ 装備 壮刃剣、戦究防護衣
◇ 技 天裂剣、地破剣
◇ アヅミナ ◇
◇ レベル 36
◇ HP 404/460
◇ 攻撃 1★
◇ 防御 2★★
◇ 素早さ
42★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★
◇ 魔力
49★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 装備 大法力の魔杖、漆黒の術衣
◇ 魔術
火弾、火矢、火球、火砲、火羅、火嵐、王火
氷弾、氷矢、氷球、氷刃、氷柱、氷舞、王氷
暗球、精神操作、五感鈍化、魔病感染、
酷死魔術
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 10




