表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルジ往戦記  作者: roak
230/300

第230話 注文

◆◆ 3日前 夜 ◆◆

◆ 大君の城 ◆

エオクシたちが巨方庭から都に帰った夜。

シノ姫に会い、サヤノを引き渡したあとのこと。

城から出てきたエオクシとアヅミナ。

歩みを止めて2人は言葉を交わす。


アヅミナ「あたしたちには力がいる。

 もっと、もっと強い力。

 もっと強い…仲間がいる」

エオクシ「強い仲間…?誰だ?

 ガシマか?オンダクか?」

アヅミナ「足りない。

 悪いけど、彼らの力じゃ足りない」

エオクシ「じゃあ誰だ?魔術院にいんのか?」

アヅミナ「………」

エオクシ「…いねえだろ」

アヅミナ「…だけど、必要。

 巨方庭を攻略するためには。

 少なくとも…あたしたちと同じくらい戦える…

 そういう仲間が…いてくれないと…」


エオクシは首を振り、歩き出す。

アヅミナは彼の後ろについていく。

歩きながらエオクシはボソリと言った。


エオクシ「…いねえだろ。そんなのは…」


城門をくぐり抜けたあと。

アヅミナはエオクシに言った。


アヅミナ「何かあるんだと思う」

エオクシ「………」

アヅミナ「シノ姫には何か考えがある」

エオクシ「どうだろな…」



◆◆ 2日前 朝 ◆◆

◆ シノ姫の間 ◆

一夜明けてエオクシとアヅミナは呼び出された。

垂れ下がった分厚い布。

その前に立つ2人。

奥の方から声が聞こえてくる。


シノ姫「…入って」


布をめくり上げ、中へ入る。

シノ姫が1人、奥で座っていた。


シノ姫「………」

エオクシ「…なんの御用でしょうか?」

シノ姫「………」

アヅミナ「…?」


2人の顔を見て深いため息をつくシノ姫。


シノ姫「呼んだだけ」

エオクシ「……は?」

シノ姫「…呼んだだけ」

エオクシ「それだけ…ですか?」

シノ姫「それだけ…」

アヅミナ「………」

シノ姫「…帰って」

エオクシ「…失礼します」

シノ姫「………」

アヅミナ「失礼します」


そのまま帰される。

大君の城を出てからエオクシはつぶやいた。


エオクシ「何やらされんのかと思ったが…

 まさか…呼んだだけとはな…」

アヅミナ「心配してくれてるんじゃない。

 あの人なりに」

エオクシ「…オレにはそうは見えねえな」


2人は城門をくぐり、帰っていく。

城の近くの新しい官舎へ。


エオクシ「じゃ」

アヅミナ「…それじゃ」


それぞれの部屋に入る。

エオクシもアヅミナも昨夜は眠れなかった。

2人とも帰るなり着替えて布団に入った。



◆◆ 2日前 夜 ◆◆

エオクシは官舎を出て都の大通りを歩く。

目指す場所は、大前隊の訓練場。


エオクシ(…夜まで寝ちまった。

 なんか気分が晴れねえな。

 モヤモヤするぜ!)


訓練場は真っ暗で中には誰もいない。

看守に無理を言って開けてもらう。

中に入り、早速、彼は剣を振る。

目の前に敵を思い浮かべて。

その敵の姿は、竜の守護兵。

剣を振って、斬っていく。

実体のない、その影を。

技を繰り出し、倒していく。

いくつも、いくつも。



◆◆ 1日前 朝 ◆◆

◆ 官舎 ◆

アヅミナが部屋から出る。

彼女が向かう先は学術院。


アヅミナ(…朝まで寝ちゃった。

 探さなきゃ。少しでも見つけなきゃ。

 巨方庭攻略の手がかりを)



◆ 学術院 ◆

資料室に入り、棚からいくつも資料を出す。

そのどれもが古代遺跡に関するもの。

閲覧室の机の上に積み上げた。

上から順に手に取って目を通していく。



◆ 大前隊の訓練場 ◆

エオクシは夜通し剣を振り続けていた。

足元がふらつき始める。

手と腕の感覚がなくなっていく。

それでも彼はやめない。

壮刃剣が音を立てて空を斬る。

そこへ二隊の隊員たちがやってきた。


隊員たち「………」


倒れそうになりながら剣を振るエオクシの姿。

隊員たちは無言で眺めていた。

エオクシが気づく。


エオクシ「…よう」

隊員たち「………」


隊員の1人が前に踏み出す。


隊員「エオクシさん。もしよかったら…」


訓練を見てもらいたい。

助言してもらいたい。

彼が頼もうとした、そのとき。


エオクシ「悪いが、今はそういう気分じゃねえ」

隊員たち「………」

エオクシ「…帰る」

隊員たち「………」


エオクシは訓練場をあとにした。



◆◆ 1日前 夕方 ◆◆

◆ 学術院 資料室 ◆

アヅミナは貸出窓口で資料を借りる。

巨方庭について多くの記述があった資料を。

全部で6冊。

それらはかなりの重さになった。


アヅミナ(ざっと読んだ限りでは、書いてない。

 攻略に役立つような情報はどこにもない。

 だけど、もう少し…詳しく調べてみよう)


官舎に戻ると、手紙が1通届いていた。

シノ姫からの手紙だった。


アヅミナ「………」


玄関戸の前で封を切り、中を見ようとした。

そのとき。

エオクシがやって来る。


エオクシ「今夜、来いだとよ」

アヅミナ「………」

エオクシ「オレのところにも届いてた」

アヅミナ「なんの用かな?」

エオクシ「さぁな」



◆◆ 1日前 夜 ◆◆

◆ シノ姫の間 ◆

奥から声が聞こえてくる。


シノ姫「…入って」


エオクシとアヅミナは部屋に入っていく。

シノ姫が奥に1人で座っている。


シノ姫「全部で3つ…伝えることがある」

エオクシ&アヅミナ「………」


シノ姫は長い間を置いて話し始める。


シノ姫「一隊の6人が消息不明になりました」

エオクシ「何…?」

シノ姫「戦って、負けたのでしょう」

エオクシ「…まさか…!」

アヅミナ「………」

シノ姫「ラグアとロニ。彼らは強かった。

 思ったよりも。遥かに。

 端的に言えば、そういうことです。

 これが…1つ目」

エオクシ(本当に…あいつらがやられたのか!!?

 いくらなんでも…早過ぎるだろ!!)


納得できない表情のエオクシ。


シノ姫「2つ目…

 魔術院院長のミナヨニが死にました」

アヅミナ「…何があったんですか?」

シノ姫「彼女は大罪を犯しました。

 大君の命を脅かしたのです」

アヅミナ「………」

シノ姫「なので…私がその場で彼女に施した」

アヅミナ(施した…秘術を使った…。

 秘術で…院長を…殺したということ…)

シノ姫「さっき業院の院長から話があってね…。

 後任の院長も副院長も決まっているそうです。

 ですから、魔術院の体制に心配いりません…」

アヅミナ「………」


最後にシノ姫はほほえんで告げる。


シノ姫「最後に…3つ目です。

 あなたたちへの報酬について…」

エオクシ&アヅミナ「………」

シノ姫「巨方庭での特別任務…本当にお疲れ様。

 さあ、これを…」


彼女は背後から2つの袋を出す。

両手に1つずつ、つかんで、前に差し出した。

袋はそれぞれ握り拳ほどの大きさ。

中には金がぎっしり入っていた。


エオクシ「シノ姫様!!オレたちは…!」

シノ姫「辞退は認めません。

 大君と相談して決めたのです。

 あなたたちに…いくら出したらいいのか…。

 だから…受け取って…。さあ…。

 どうぞ…受け取りなさい…」

エオクシ&アヅミナ「………」


2人とも前へ出てシノ姫から報酬を受け取る。


シノ姫「お話は以上です。帰って…」

エオクシ「シノ姫様!!」

シノ姫「…何?」

エオクシ「任務を…!オレたちにも任務を…!

 ラグアとロニ…あいつらを倒すために…!」

シノ姫「検討中です」

エオクシ「検討中だと…?」

シノ姫「…じきに結論が出ることでしょう。

 …だから、もうしばらく待っていて」

エオクシ&アヅミナ「………」


エオクシとアヅミナは部屋から出ていく。

どこか力ない足取りで。

シノ姫は彼らのそんな姿を目を細めて見ていた。


シノ姫「………」



◆◆ 今朝 ◆◆

◆ 魔術院 ◆

アヅミナは1人で訪れる。

中へ入るなり彼女はいくつも視線を感じる。

四方八方から魔術師たちの視線を。

疑い、怒り、憎しみ。

そんな感情が込められた視線を。

巨方庭で光術三姉妹が死んだ。

そのことは院内に知れ渡っていた。


アヅミナ(見ないで…。そんな目で…見ないで)


正面玄関を抜け、まっすぐ進む。

見られている感覚はなくならない。

向けられる感情も。


アヅミナ(…院長が死んだもんね。

 …三姉妹も死んだもんね。

 そうだよね。疑ってるよね。怒ってるよね。

 あたしが憎いよね。目障りだよね。

 消えてほしいよね)


彼女が目指すのは中央管理室。

魔術院に所属する数多くの魔術師たち。

その情報管理などを担っている。

魔術師の任命、除名の手続もそこで行われる。


アヅミナ(でも、だからって…

 そんな目であたしを見ないで。

 みんな…みんなあたしより劣ってるくせに…)


廊下の角を曲がったとき。


アヅミナ「………」


シノ姫と側近たちが立っていた。

アヅミナの方をじっと見ている。


シノ姫「何する気…?」

アヅミナ「………」

シノ姫「辞める気…?魔術院を…」

アヅミナ「………」

シノ姫「あなたが辞める必要はない」

アヅミナ「………」

シノ姫「前院長が死んだことも…

 光術三姉妹が死んだことも…

 あなたが気にすることじゃない…」

アヅミナ「………」

シノ姫「今夜…日付が変わる頃…来てくれる?」

アヅミナ「………」

シノ姫「聞いてる?

 今夜、必ず来てちょうだい。…いい?」

アヅミナ「…はい」

シノ姫「彼にも…伝えておいて…」

アヅミナ「…はい」



◆ 大前隊 訓練場 ◆

エオクシは剣を振っていた。

昨夜、シノ姫に会ったあと。

彼はその足で訓練場へ向かった。

そして、朝まで剣を振り続けていた。

疲れで集中力が途切れ始める。


エオクシ「…今日はこの辺にしとくか」


併設された入浴施設で湯に浸かる。

それから、訓練場に戻った。

武具の手入れをするために。


エオクシ「………」

隊員たち「えい!えい!はあ!!」


そこには熱心に訓練する隊員たちの姿。

エオクシは座り込み、彼らの姿を眺める。

隊員たちは声を上げ、隊列を組み、一斉に動く。


エオクシ「………」


休憩時間になり、隊員の1人がやって来る。


隊員「エオクシさん!」

エオクシ「…おう」

隊員「エオクシさん…?」


いつもの勢いがないエオクシ。

隊員は少し不安な顔になる。


エオクシ「飯…行くか…」

隊員「…え?」

エオクシ「昼飯、おごってやる」

隊員「いいんですか!?」

エオクシ「ああ」

隊員「ありがとうございます!」

エオクシ「なんでも食えよ」

隊員「はい!」

エオクシ「飯食って、力をつけねえとな」

隊員「はい!!!」

エオクシ「おめえら全員来い」


歓喜する隊員たち。

エオクシは強く握りしめる。

シノ姫から受け取った、金の入った袋を。



◆ 都 大通り ◆

隊員たちを引き連れてエオクシは歩く。

入ったのは、行きつけの高級料理店。


若女将「ああら、エオクシ様!!」

エオクシ「よう。部屋…あるか?」

若女将「ありますとも!!」


奥の広い部屋に通される。

美しい中庭がよく見える部屋に。

隊員たちは品書きを見て戸惑う。

何を注文して食べたらいいのか。

どの品も普段の食事代と桁違いだったために。


エオクシ「全部おごりだ。

 心配すんな。なんでも食え」

隊員たち「………」

エオクシ「おい、早く決めろ。

 金は全部オレが出す」

隊員たち「………」


顔を見合い、小声で相談する隊員たちもいた。

若女将が部屋にやってくる。


若女将「ご注文は?」

隊員たち「………」

エオクシ「おい、早くしろ」

隊員たち「………」

エオクシ「決めろ」

隊員「エオクシさんは…何を…」

エオクシ「なんでも食えっつってんだろ!!!」

隊員たち「!!!?」

若女将「…!!!」


ふと我に帰り、エオクシは笑う。


エオクシ「は…ははっ!!

 何を遠慮してんだ!てめえら!

 なんでも食えって言ってんだ!

 頼め!!注文しろ!!オレも食うからよ!!」


エオクシは定食の最も高額なものを注文した。

それから、隊員たちが続く。

高額な品を次々と注文していく。

全員空腹だった。

結局、品書きのほとんどすべての料理を注文。


若女将「かしこまりました!」

隊員たち「うおー!食うぜ!!」

エオクシ(金…足りるよな…)



◇◇ ステータス ◇◇

◇ エオクシ ◇

◇ レベル 37

◇ HP   3692/3692

◇ 攻撃

 49★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★

◇ 防御

 44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★

◇ 素早さ

  46★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★

◇ 魔力

◇ 装備  壮刃剣、戦究防護衣

◇ 技   天裂剣、地破剣


◇ アヅミナ ◇

◇ レベル 35

◇ HP   404/404

◇ 攻撃   1★

◇ 防御   2★★

◇ 素早さ

 40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★

◇ 装備  大法力の魔杖、漆黒の術衣

◇ 魔術

  火弾、火矢、火球、火砲、火羅、火嵐、王火

  氷弾、氷矢、氷球、氷刃、氷柱、氷舞、王氷

  暗球、精神操作、五感鈍化、魔病感染、

  酷死魔術

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ