第23話 準備
アルジとエミカは町を歩く。
途中、小さな公園の木陰で休む。
エミカ「…痛むのか?」
アルジ「ああ、少し。でも大丈夫。行こう」
また歩き出し、リネの館へ向かう。
空はすっかり暗くなっていた。
◆ 大魔術師リネの館 ◆
エミカは扉の鐘を鳴らす。
ミリが出てくる。
エミカ「ただいま」
ミリ「おかえり!どうだった?ノソノ屋は?」
エミカ「食事どころじゃなかった」
ミリ「え…って、どうしたの!?」
負傷したアルジの姿がミリの目にとまる。
アルジ「警備隊長と戦った」
ミリ「警備隊長…?どうして…」
エミカ「絡んできたのは向こうなんだ。
ひとまずリネ先生と話がしたいんだけど」
ミリ「…分かった」
広間に通される。
リネは椅子に座って静かに過ごしていた。
エミカ「リネ先生、ただいま戻りました」
リネ「エミカ…」
エミカは経緯をリネに伝えた。
ノソノ屋で隣の部屋に警備隊が来たこと。
ナンダスが戦いを挑んできたこと。
アルジが彼と戦って負傷したこと。
一気に話してリネに伝えた。
リネ「…そうでしたか。それは大変でしたね」
アルジ「オレは…斬ってしまった…。
ワノエの警備隊長を…」
リネ「…そんなに心を痛めることはありません。
自分の身を守るためだったのですから…。
それに…警備隊長のナンダス…
彼は町の有力者から好かれる一方で、
黒い噂が絶えませんでしたから…」
エミカ「あんなの斬られて当然の人間だ」
アルジ「………」
エミカ「アルジが斬らなかったら、
私が火球で焼いてただろう」
リネはアルジに向かって杖を振る。
まばゆい光がアルジを包む。
治療魔術で胸の傷を癒した。
◇ アルジはHPが全回復した。(HP90→347)
アルジ「ありがとう」
リネ「いいえ、いいのです」
エミカ「…食事がまだだったな。
ノソノ屋に戻ろうか」
リネ「その必要はありません。
お店の人が運んできてくれました」
エミカ「え…?」
リネ「ノソノ屋から持ってきてくれたのです」
エミカ「そうなんですか」
リネ「それに、私たちの分も」
エミカ「私たちの分って…」
リネ「食べずに帰ったお客がいたそうです。
代金だけ払って、食べなくていいと…。
それで、極み膳がたくさん余ったとか…」
アルジ「あいつらの分か!」
リネ「あいつら…?」
エミカ「警備隊の人たちです。
大勢でやってきて極み膳を注文したので…」
リネ「そうだったんですね」
アルジ「あいつら金だけ払って帰ったのか」
リネ「さあ、一緒に食べましょう。
ミリも来なさい」
ミリ「私も!?…いいんですか?」
リネ「もちろんです。4人分ありますから」
ミリ「ありがとうございます!」
エミカ「よかったな」
ミリ「やった!」
アルジたちは食事を始める。
エミカの特上膳も極み膳になっていた。
豪華な料理の数々を4人で囲む。
ミリ「この木の実、苦手だな。
エミカ食べてよ」
エミカ「しょうがないな」
リネ「おいしいのに」
ミリ「こういうのどうしてもだめなんです。
でも、ほかの料理はどれも最高です」
エミカ「よかったな」
リネ「アルジさんは…」
アルジ「?…ああ」
リネ「何か苦手な食べ物はありますか?」
アルジ「オレは…基本的にないんだけど、
ドブノフ煮込みがちょっと…な」
リネ「ドブノフ煮込み。
それはナキ村の伝統料理では?」
エミカ「自分の村の料理が苦手とは…」
アルジ「だめなものはだめなんだよ」
ミリ「だめなものはだめだよね。はは…」
アルジは最初、食事が進まなかった。
連戦による心の疲れから。
だが、食べるほど食欲は増していく。
いくつもの器に盛られた海の幸と山の幸。
その豪華な一品一品が彼に元気をくれた。
アルジ(いろんな料理があって目が回る…。
でも、これはこれで楽しいかもな)
食事を終えてリネは言う。
リネ「エミカ、私は決めました」
エミカ「?…何をですか?」
リネ「家業はしばらく休止して、旅に出ます」
エミカ「!」
リネ「一緒に倒しましょう。マスタスを…」
アルジ「!!」
リネ「私も、いえ、私たちも旅に同行します」
エミカ「私たちって…」
ミリ「私も行くよ」
エミカ「ミリも?」
ミリ「うん」
リネ「約1年半…ミリもよく学んでくれました。
きっと大きな戦力になってくれるでしょう。
ねえ、ミリ」
ミリ「はい!」
リネ「いいですか?アルジさん」
アルジ「もちろんいいぜ。リネ先生」
リネ「先生はやめてください」
アルジ「………」
エミカ「…?」
リネ「先生だなんてもう呼ばなくていいのです。
今日から私は1人の魔術師。
あなた方と対等です。名前で呼んでください」
アルジ「いいのか?」
リネ「ええ。私がそうしてほしいのです。
同じ旅の仲間。そうでありたいと思うのです」
アルジ「分かった。よろしくな。リネ!」
ミリ「いきなりその呼び方はないんじゃない?」
アルジ「そうか…?」
エミカ「リネさんでいいですか?」
リネ「それで結構です。リネでもリネさんでも。
とにかく先生はやめてほしい。いい?」
エミカ「はい」
ミリ「慣れないな…」
◇ ミリが仲間になった。
◇ リネが仲間になった。
リネは立ち上がる。
リネ「それで、みなさんへ贈り物があります。
ささやかですが、渡したいものが…」
エミカ「なんですか?」
リネ「さあ、こちらへ」
アルジ&エミカ&ミリ「………」
アルジ、エミカ、ミリも立ち上がる。
リネ「旅の準備です」
リネはアルジとエミカの姿を見て言う。
リネ「そのような装備ではこの先心配です。
地下の宝庫へ来てください。案内します」
アルジ「宝庫…!」
エミカ(初めて行く…!)
リネは歩き出し、3人を連れていく。
暗い階段を下りると、現れたのは黒い扉。
扉には大きな円形のくぼみ。
それにリネはそっと手を当てる。
すると、くぼみから青い光が放たれる。
ガチンと音を立てて扉は開かれた。
アルジ「おお…!」
リネ「私の魔力に反応します。
魔錠と呼ばれる仕掛けです」
宝庫の中は真っ暗。
リネは指先に小さな光の玉を生み出す。
白い光が放たれて、辺りを照らす。
リネが得意とする光の魔術、光玉だった。
アルジ&エミカ&ミリ「!」
宝庫の中がよく見える。
いくつもの箱が並んで置かれていた。
箱の大きさはさまざま。
大きなものもあれば小さなものもある。
リネ「ええと…これと…これと…これ!」
リネは3つの箱を両手で抱える。
光の玉は指先から離れ、頭上で浮遊している。
アルジ「オレが持つぜ」
リネ「ありがとう」
広間に戻る。
リネは3つの箱を開ける。
それらには武器と防具が納められていた。
リネ「さあ、どうぞ」
エミカ「!!…いいんですか?
こんなに…素晴らしいものを」
ミリ「私もこんな素敵なものを…」
リネ「いいのです。それらはもともと贈り物。
ひいきにしてくれている方々から私への。
使う機会もなく、ただ眠らせていました。
あなたたちに役立ててほしい」
◇ 魔樹の杖を手に入れた。
◇ 魔石の杖を手に入れた。
◇ 深紅の魔道衣を手に入れた。
◇ 紺碧の魔道衣を手に入れた。
アルジにも箱の中身が渡される。
それは、精巧に作られた高価な鎧。
厚い生地に硬い金属板がついている。
板はいくつも並んでいて、まるで鱗のよう。
アルジ「これは…!」
リネ「隣国の高官が私にくれたものです。
『銀獣の鎧』といいます」
アルジ「銀獣…そんな獣がいるのか」
リネ「銀獣は絵巻物に出てくる架空の獣。
その鱗に鎧の形状をなぞられたのでしょう」
アルジ「そうなのか」
リネ「腕利きの職人の手によるものです。
あまり重くないので、素早く動けるでしょう。
それでいて耐久性が高く、優れた防具です。
私は使うことがありませんから差し上げます」
アルジ「ありがたく使わせてもらうぜ」
◇ 銀獣の鎧を手に入れた。
リネが明日の予定について告げる。
リネ「さぁ、出発は明日の早朝です。
目的地は北土の魔術研究所…」
アルジ「研究所に…行くのか」
リネ「はい」
エミカ「…行きましょう」
リネ「ええ」
ミリ「研究所にマスタスはいるんですか?」
リネ「いないと思う」
ミリ「………」
リネ「彼がどこにいるか。それは分からない。
研究所には手がかりを得るために行くのです。
さぁ、今日はもう眠りましょう」
アルジたちはそれぞれの部屋へ。
早々と寝支度を済ませ、たっぷり眠った。
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 8
◇ HP 347/347
◇ 攻撃 12★★★★★★★★★★★★
◇ 防御 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 12★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 2★★
◇ 装備 勇気の剣、銀獣の鎧
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃
◇ エミカ ◇
◇ レベル 6
◇ HP 192/192
◇ 攻撃 7★★★★★★★
◇ 防御 12★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 7★★★★★★★
◇ 魔力 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 魔樹の杖、深紅の魔道衣
◇ 魔術 火球、火砲
◇ ミリ ◇
◇ レベル 5
◇ HP 144/144
◇ 攻撃 4★★★★
◇ 防御 7★★★★★★★
◇ 素早さ 6★★★★★★
◇ 魔力 16★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 魔石の杖、紺碧の魔道衣
◇ 魔術 氷弾、氷柱、氷乱
◇ リネ ◇
◇ レベル 23
◇ HP 678/678
◇ 攻撃 6★★★★★★
◇ 防御 16★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 11★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
26★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、創造の杖、聖星清衣
◇ 魔術 雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療薬 25、魔力回復薬 16




