第227話 華美
特別機は静かに飛び続ける。
都に向かって、暗い夜空を。
地上には点々と街の明かり。
操縦士は続けて話す。
操縦士C「大君は学びの最中にあられます。
政治を行われるときは総合統合官が支えます」
アルジ&エミカ「………」
操縦士たちは黙々と魔力を機体に注ぐ。
白い翼の特別機を飛ばし続ける。
エミカ(この人たちの操縦は…
しなやかで…穏やかで…どこか厳かだ…。
できるようになったつもりでいたけど…
私の操縦はまだまだ雑で荒かったんだ…)
やがて機体は山岳地帯の上空へ。
地上に明かりは1つもない。
アルジ(大君が…オレたちと話したい…?
一体…何を話したいっていうんだ…?
オレは…大君と何を話したらいいんだ?
これまでの旅について話せばいいのか?
魔獣を倒した話とか…そんなのでいいのか?
大君は聞きたいのか?聞いてくれるのか?
本当に…そんな話?…よく分からん。
…エミカは何を話すつもりなんだ?)
エミカの方を見る。
エミカ「………」
彼女は目を閉じてうつむいていた。
こくりと頭が揺れる。
アルジ(…疲れてたんだな。そうだよな。
今日だって…あんなにカルスを飛ばした。
オレもなんだか…まずいな…
本気で眠くなってきたぜ…)
パチパチとまばたきするアルジ。
操縦士A「アルジ様。いいんです」
アルジ「…?」
操縦士A「眠っていただいて構いません。
私どもは操縦を続けますので」
アルジ「ああ…。悪いな」
アルジもうつむき、目を閉じた。
アルジ(アルジ様…か)
強い眠気に身を委ねる。
◆◆ 深夜 ◆◆
特別機は都の上空を飛んでいた。
地上には華やかな町の明かり。
先に目を覚ましたのはエミカ。
エミカ「…!」
目を大きく開いて息を飲む。
空から見下ろす夜の都の景色に。
そばで眠っているアルジをつついて起こす。
アルジ「…ん?」
エミカ「アルジ…」
アルジも驚き、思わず声を上げた。
アルジ「…うお!」
操縦士が2人に伝える。
操縦士B「目的地までもう少しです」
アルジ「ここは…都か」
操縦士B「はい。都の上空におります」
操縦士C「お二人とも都は初めてですか?」
エミカ「はい」
アルジ「………」
エミカ「初めてだろ」
アルジ「…バレたか」
エミカ「バレバレだ」
操縦士たちは静かに笑う。
操縦士C「あなた方が下の景色に驚かれた。
だから、都は初めてなのかと尋ねてみた。
…そういうわけではございません。
空から見る夜の都。
最初は誰もが驚きますから。
ずっと都に住んでいる者でも…」
アルジ「…目的地って都のどこなんだ?
都っていっても、すごく広いだろ」
操縦士A「大君のお城でございます」
アルジ&エミカ「!」
操縦士B「あちらに小さく見えている光。
あれがお城の明かりでございます」
アルジ(本当に…これから会うんだな。
大君に…)
前方に大君の城が見えてくる。
その大きな城は都の中心地にそびえ建つ。
堂々と、優美に、気高く。
赤、青、白の魔灯火に彩られている。
けばけばしさは少しもない。
光の装いは美しくまとめられていた。
アルジ「すごいな…!」
エミカ「ここに…大君が…いらっしゃる」
特別機は高度を下げていく。
静かに、そして、滑らかに。
エミカ(うまい!)
磨き上げられた操縦技術。
エミカは目を丸くする。
操縦士たちは語る。
操縦士B「カルスは体の一部のようなもの」
エミカ「どんな練習をしたんですか?」
操縦士A「幼少の頃から訓練を受けてます」
操縦士C「5歳で適性が試されます。
10歳まで模擬訓練。11歳から実践訓練。
15歳で過酷な試験。
合格者は特別な免許を得ます。
それが特別機の操縦士となる道のり」
アルジ「5歳で選抜…」
エミカ「操縦の質が違うわけですね…」
操縦士A「大切なお方のお命をお預かりする。
それが私どもの仕事ですから」
操縦士たちは誇らしげな顔。
アルジ&エミカ「………」
特別機は城の前庭に着陸した。
アルジとエミカは機体から降りる。
アルジ「ありがとう」
エミカ「ありがとうございました」
操縦士A「いいえ。
ここからは城の者がご案内します。
これにて私どもは失礼します」
特別機は夜空に浮上。
遠くへ飛んで消えた。
アルジ「…あ」
城の正面玄関前。
人の姿。
5人が横一列に立って並んでいる。
その真ん中にいる女。
彼女が放つ異様な雰囲気。
アルジはそれを感じとる。
アルジ「………」
エミカ「アルジ?」
アルジ「…おう」
エミカ「行こうか」
アルジ「ああ」
アルジとエミカが近づく。
5人は小さく会釈。
真ん中の女が言う。
シノ姫「ようこそ。大君の城へ」
アルジ「あんたは…」
シノ姫「総合統合官のシノミワと申します」
アルジ「総合統合官…」
シノ姫「はい」
アルジ「よろしく。シノミワさん」
アルジの腕を引っ張るエミカ。
アルジ「…なんだ?」
エミカ「話し方が軽い!」
シノ姫「いいのですよ。
あなた方は、大切なお客様…」
アルジ&エミカ「………」
シノ姫はほほえむ。
シノ姫「さあ…大君がお待ちかねです」
シノ姫と4人の側近が先導する。
アルジとエミカは特別な部屋に通される。
入ることができるのは大君が迎える客。
大君が会うことを望み、城に招いた客だけ。
その部屋には1機の特別な魔籠。
大きく、華美な装飾が施されている。
アルジとエミカは見上げる。
魔籠の上を。
アルジ&エミカ「………」
天井は遥か上。
暗くてよく見えない。
その部屋の空間は城の最上階まで続く。
アルジ「すげえ…」
シノ姫「乗って…」
アルジとエミカが乗ったあと。
シノ姫たちも魔籠に乗る。
4人の側近が魔籠に魔力を込める。
魔籠についた4つの魔灯火が点灯。
そして、静かに上がる。
宙に浮き、高く、高く、上がっていく。
緩やかに加速しながら。
しばらくすると、今度は減速。
最上階でピタリと止まる。
シノ姫「降りて…」
アルジ&エミカ「………」
黒い両開きの扉がゆっくりと開かれる。
扉の向こうは大君の間。
大君は世話係に囲まれて立っていた。
現れたアルジとエミカをじっと見ている。
小さな、まんまるの目で。
アルジ「た…大君…!?」
エミカ「!」
シノ姫が連れていく。
アルジとエミカを。
大君のところへ。
大君トキノナガは2人に声をかけた。
高く柔らかい声で。
トキノナガ「よく来てくれたのじゃ」
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 31
◇ HP 3753/3753
◇ 攻撃
48★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 防御
38★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★
◇ 魔力 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、雅繊維戦衣
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り、
雷刃剣
◇ 魔術 雷動
◇ エミカ ◇
◇ レベル 27
◇ HP 2415/2415
◇ 攻撃 10★★★★★★★★★★
◇ 防御
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
32★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、濃色魔術衣
◇ 魔術 火球、火砲、火樹、火海、王火
氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 10




