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アルジ往戦記  作者: roak
225/300

第225話 決意

日が沈む。

コオムがオンダクに問う。


コオム「調査は日没までに終えるものでは?

 大前隊の調査は日の出から日没まで。

 特別な調査を行う場合は…」

オンダク「うるせえな。今に終わる。

 黙って待ってろ」

コオム「………」


カホが不穏な魔波を発する。

コオムは素早く彼女の腕をつかんで制止。


コオム「よせ…」

カホ「………」


エミカは論文集を引き裂こうとする。

リネの論文だけを抜き取るために。


エミカ「…ん!」


だが、うまく取れない。

論文は強い接着剤でまとめられていた。

ガシマがやってきて、背表紙を斧で縦に割く。

半分に割き、さらに半分に割く。


ガシマ「これだろ。後ろの方だろ。持っていけ!」

エミカ「…ありがとう。

 でも、論文はこの部分だけで…」


小さな声でガシマは忠告した。


ガシマ「…該当部分だけ抜き取るな。

 何が持っていかれたか特定される。

 怪しまれるだろ…」

エミカ「ああ…そっか」


エミカは書庫から出る。

割かれた論文集を抱えて。

ガシマも続いて出てくる。


オンダク「あったか?」

ガシマ「ああ、あった。無事発見した」

コオム「………」

オンダク「調査は終わりだ。協力に感謝する」

ガシマ「じゃあな」

エミカ「…さよなら」

コオム「………」


エミカ、ガシマ、オンダクは玄関へ向かう。

そして、アルジと合流した。


アルジ「エミカ!」

エミカ「アルジ!あった!見つけた!」

アルジ「そっか!よかったな!!」


エミカは割かれた論文集をアルジに見せた。


コオム「待ってください!!」


コオムが大きな声を上げて走ってくる。


ガシマ「………」

オンダク「…なんだ?」


コオムの魔波は大きく揺らいでいる。

強い疑念が魔波の揺らぎに表れていた。


コオム「今回のあなた方の調査は…

 どうも腑に落ちない…。

 本当に…これは正式な調査なんですか?」

ガシマ「は?何言ってやがる」

オンダク「疑うのか?このオレたちを」


今にも戦いそうな形相で応じる。

だが、コオムは決してひるまない。

彼のすぐそばには闇魔術師カホ。

受付係の雷術使いケイキもやってくる。

偶然近くに居合わせた4人の魔術師たち。

彼らも加わる。

4対7でアルジたちとコオムたちは向かい合う。


コオム「知っていましたか?第3書庫について」

ガシマ&オンダク「………」

コオム「あの書庫は、通称ゴミ置き場。

 いい加減な論文が収められた書庫です」

エミカ「………」

コオム「あの棚は…

 とりわけ出来の悪い論文が収められている。

 ろくな調査や実験もしないで、

 ただ妄想を書き連ねたような。

 だが、所長は物好きなお方だ。

 だから、とっておいてある。

 我々も仕方なく管理している。

 毎年それなりの経費を使って」

ガシマ「…だからなんだ?」

コオム「そんな場所に…

 一体何があったというのです?

 第17巻が割かれていた。

 バラバラになって落ちていた。

 中身を確認しましたが、所長の悪巧みとは…」

オンダク「うるせえ」

コオム「………」


オンダクがさえぎった。


オンダク「どんな目的でどんな調査をしたか。

 そんなこと、てめえに話す義務はねえ」

コオム「カホ…」

カホ「…はい」

コオム「そこまでおっしゃるのなら…

 1度…試してみましょうか?

 彼女の精神操作で…」


その挑発にガシマは即座に反応した。


ガシマ「…おい、てめえ。書いてほしいのか?

 理由書を。書いて、葬るぞ。

 てめえ。分かるだろ?理由書だ。

 必要があればオレはいつでもやる。

 それでもまだふざけた口を叩くつもりか?」

コオム「……!!」


斧を構えるガシマ。

その迫力にコオムは身震い。

エミカが動く。

割かれた論文集を手にして前に出る。

強い魔波を発しながら。

それは、その場にいた誰よりも強い魔波。


コオム&カホ&ケイキ「!!」

4人の研究員たち「!!!?」


エミカは前へ進む。

ガシマとオンダクの間を通り抜けて。

そして、コオムたちと向かい合う。


ガシマ(何をするつもりだ…?)

オンダク(余計なことはするな)


エミカはコオムたちに言う。


エミカ「手に入れたのは若手研究員の論文だ。

 ろくな調査や実験もしないで、

 妄想を書き連ねた論文。

 確かにそれは当たってるかもしれない」

コオム「………」

エミカ「だけど、大事な論文だ。

 ここへ来てよかった。

 調査をやって本当によかった。

 大切な情報を私たちは手に入れたから。

 この論文は、ホジタの企みにも…

 もちろん関わりがある」

ガシマ&オンダク「…?」

コオム「なんだって…?」

エミカ「よく調べさせてもらうよ。

 それで、いずれ明らかになるだろう。

 この論文を悪用して、

 どんな悪事が行われたのか」

コオム「第3書庫に…そんなわけが…!」


カホがパチリとまばたきする。


カホ「あれ…?あなたは…」

エミカ「…え?」

カホ「いた…。火術使いで…隣の班で…」

エミカ「あ…」


エミカもカホのことを思い出す。

半年以上も前のこと。

北土の魔術研究所で話したことがあった。

交わしたのは、二言三言。

どんな魔術が得意か、どこから来たのか。

そんな話を廊下で少しだけした。


カホ「あなたは…確か…エミカ…」

エミカ「…!!」


コオムの目つきが鋭くなる。


コオム「研究所にいたのか?彼女は…」

カホ「はい…。いました」

エミカ「………」

オンダク「ふふ…」

ガシマ「…くくく」


ガシマとオンダクは苦笑い。

エミカは振り返り、後ろにいたアルジを見る。

一瞬、笑いかける。


アルジ「…エミカ…?」


再びコオムたちの方を向く。

コオムは声を張り、エミカを激しく非難した。


コオム「研究所を裏切ったのか!!お前は!

 自分がどんな悪事を働いたのか!!!

 分かってるのか!!」

エミカ「うるさい!!」

コオム「……!!?」


エミカの強烈な魔波がコオムに向けられる。

その圧力に彼は言葉を失い、身じろいだ。


エミカ「…私はエミカ。

 クユの国、ワノエの町のエミカ。

 大魔術師リネ先生から魔術を受け継いだ。

 光術も、雷術も、岩術も。

 リネ先生から受け継いだ」

コオム「リネ…お前は…あの光術使いの…」

エミカ「そうだ。それだけじゃない。

 ミリから…大事な友達からも受け継いだ。

 大切な2人から…力と…心を…受け継いだ。

 私は…そんな魔術師で…

 それ以外の何者でもない」


最後は声が震えていた。

それから、アルジ、ガシマ、オンダクに言う。

目配せして小さな声で早口で。


エミカ「…目を閉じて…」」

アルジ&ガシマ&オンダク「…!!」


突然、強い光がコオムたちの視界を埋め尽くす。

その光は、エミカの光玉が発した光。


コオム「ぐわあ…!」

ケイキ「うわああ!!!」

カホ「うっ!!」

4人の研究員たち「ぎゃああああ!!」


特大の光玉が天界石の杖から放たれる。

玄関広間を漂って強烈な光で周囲を照らす。

対峙していた7人が頭を抱えて床に伏せたとき。

光玉は徐々に小さくなっていく。


エミカ(先生…私やってみます。

 天火を…必ず習得します。

 この決意が…どうか先生に…

 届きますように…!!)


光玉が完全に消える。

そのときだった。

エミカは確かに聞いた。


リネの声「…頑張って…」

エミカ「!!!!?せ…先生…!!?」


辺りを見回してもそこにリネの姿はない。


ガシマ「よし!!行くぜ!!」

オンダク「まずはここを去ろう!!」

アルジ「おう!!」

エミカ「…先生…」


アルジたちは駆けた。

研究所を出る。


コオム「…ま…待て…貴様ら…!!」


外はすっかり暗くなっていた。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 31

◇ HP   3753/3753

◇ 攻撃

 48★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★

◇ 防御

 38★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

  45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★

◇ 魔力  14★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  勇気の剣、雅繊維戦衣がせんいせんい

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り、

      雷刃剣

◇ 魔術  雷動


◇ エミカ ◇

◇ レベル 27

◇ HP   2415/2415

◇ 攻撃  10★★★★★★★★★★

◇ 防御

  30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

  32★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、濃色魔術衣

◇ 魔術  火球、火砲、火樹、火海、王火

      氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷

      雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術


◇ ガシマ ◇

◇ レベル  35

◇ HP   2367/2367

◇ 攻撃

 38★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

 29★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★

◇ 魔力  11★★★★★★★★★★★

◇ 装備  練磨の大斧、金剛武道着

◇ 技   激旋回斬、大火炎車

◇ 魔術  火弾、火砲


◇ オンダク ◇

◇ レベル 36

◇ HP   3083/3083

◇ 攻撃

  30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★

◇ 防御

  41★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★

◇ 素早さ

  19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  10★★★★★★★★★★

◇ 装備  竜牙の長槍、超重装甲

◇ 技   竜牙貫通撃、岩撃槍

◇ 魔術  岩弾、岩壁


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 10

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