第223話 書庫
◆ 北土の魔術研究所 ◆
アルジたちが入るなり辺りはざわつく。
たくさんの視線を浴びる。
ガシマとオンダクは正面玄関を突き進む。
彼らの後ろを歩くアルジとエミカ。
ガシマ「顔が知られちまってるみてえだな」
オンダク「やるべきことをやるだけだ」
アルジ(大丈夫なのか…?)
4人で受付台へ向かう。
係員が立ち上がり、身構える。
前回、アルジたちが会った受付係のレミ。
そこに彼女の姿はない。
彼女は入院していた。
オノレノの町の大きな病院で。
アヅミナの暗球を見て卒倒した日から。
代わりに立っていたのは若い男の魔術師。
ケイキという雷術使い。
卒なく仕事をこなす真面目な男。
ケイキ「あなたたち…何しに来たんですか?」
ガシマが要求した。
ガシマ「第3書庫を開けろ。今すぐにだ!」
ケイキ「なんですって…?」
紙屑が投げつけられる。
ガシマはそれを手で振り払う。
どこから飛んできたのか。
瞬時に視線を動かして確かめる。
そこには怒りに震える研究者たちの姿。
ガシマ「………」
研究者A「今度は何しにきた!」
研究者B「どんな圧力にも屈しないぞ!」
彼らの言葉が口火となった。
研究所内は一気に騒がしくなる。
いくつも声が上がった。
ガシマに向かって。
出ていけと。
立ち去れと。
ガシマ「…ちっ!」
そのときだった。
長い槍を振り回してオンダクが叫ぶ。
オンダク「オオアア!!!」
研究者たち「!?」
静まり返る研究所内。
オンダクはその場にいる者たちに話す。
オンダク「てめえら、
まるで分かっちゃいねえようだな。
ここの所長が何をやっていたか。
なぜ逮捕されたのか」
研究者たち「…?」
オンダク「あいつは平和を乱そうとしていた。
悪党の計画に加担して。魔術を悪用して」
ケイキ「なんですって…?」
研究者たち「!?」
オンダク「信じたくねえなら信じなくていい。
だがな、今に明らかになる。
ホジタが何を企んでいたのか。
全部白日のもとにさらされることになる。
そのとき、お前らこんな態度じゃいられまい」
研究者たち「………」
ガシマがオンダクに続く。
ガシマ「オレたちは突き止めた。
ホジタの悪巧みに関連した重要文書…
それがここの第3書庫に収められていると!
お前らはオレたちの調査に協力してもらう」
ケイキ「第3書庫に…重要文書が…?」
ガシマ「そうだ。だからさっさと開けろ!」
ケイキ「…ひっ…!」
エミカ(なんて強引なんだ…でも、これなら…!)
アルジ(なんか2人とも生き生きしてんな。
魔獣と戦ってるときよりも)
手にした斧を振ってガシマは告げた。
ガシマ「いくら拒もうがオレたちはやる。
無理矢理にでも責任者を引っ張り出す。
そして、命令に従うまで懲らしめる。
オレたちにはその権限がある」
ガシマの不穏な言葉。
辺りはさらにどよめく。
ケイキ「あなた方はなんなんだ…?」
オンダクが大きな声で伝えた。
その場に居合わせた全員に聞こえるように。
オンダク「オレたちは大前隊だ」
ガシマ「大前隊のオレたちが命令してる。
分かったら、さっさと書庫を開けろ。
お前が開けられないなら、
責任者を呼んでこい!」
ケイキ「くっ…!」
ケイキは歯を食いしばり、抗おうとする。
そのとき、彼の上役が現れた。
受付台の奥の部屋から。
背が高く、痩せた男。
火術使いのコオム。
八多羅守護衣を身にまとっている。
彼は研究所の警備をまとめる魔術師。
落ち着いた態度で彼は告げる。
コオム「…ただいま準備が整いました。
解錠できる者が第3書庫の前におります。
ご案内しましょう」
ガシマ「…よし」
オンダク「行くぞ!!」
エミカ「…はい!」
アルジ「………」
アルジたちは歩き出そうとする。
そのとき、コオムが問いかける。
アルジとエミカに向かって。
コオム「…あなたたちは?」
アルジ&エミカ「………」
コオムはガシマとオンダクを見る。
コオム「大前隊のガシマさん、オンダクさん」
ガシマ&オンダク「………」
コオム「よく存じています。お顔もお名前も。
つい先日もお見えになったそうですね。
あいにく私は留守にしていましたが…。
もちろん調査には協力させていただきます。
大君の命令であれば、喜んで従いましょう。
拒む理由はどこにもありません。ですが…」
ガシマ「…なんだ?」
コオム「後ろの2人は大前隊ではないですよね。
少なくとも第一隊の隊員ではない。
二隊の方ですか?」
オンダク「調査員だ」
コオム「調査員…。ほう…そうですか。
審理院の方ですか?全然知らないお顔だ。
私も何人か知り合いがいるんですけどね」
アルジ&エミカ「………」
ガシマとオンダクの表情が少し曇る。
ガシマ(厄介なのが来たな)
オンダク(ヘタな嘘は破られる)
コオムは首を傾げて問いかける。
コオム「身分証は?
調査するときは必ず携帯するはずだ。
審理院の調査員であれば…。
さあ、あなたたち。見せてもらえませんか?
ここで、今すぐに」
アルジ&エミカ「………」
ガシマが答える。
ガシマ「協力者だ」
コオム「協力者…」
オンダク「知らねえのか?」
コオム「はい?」
オンダク「大前隊は選任できる。
任務遂行に必要な者を協力者として。
現地に同行させることもできる。
知らねえのか?」
コオム「いえ、そういうこともできる。
それは知っていますが…」
ガシマ「この女は魔術に長けている。
だから連れてきた。
重要文書は魔術に関するものだからな」
コオム「…分かりました。
では、こっちの方は?」
アルジ「………」
コオムはアルジの顔をじっと見る。
そして、アルジの魔波を感じとる。
コオム「魔術に長けている…
ようには見えませんね。
魔術がほんの少し使えるようだが…
力強さも滑らかさも…
うちのケイキにも及ばない。
失礼ながら…
本当にあなた方の協力者なんですか?」
ガシマ&オンダク「………」
エミカ(アルジ…なんとか切り抜けてくれ)
ガシマとオンダクは考える。
ガシマ(二隊の隊員だと言ったところで…
また身分証を見せろと言ってくるだろう。
取り繕おうと思えば取り繕えなくもない…。
だが…!余計な時間がかかる!)
アルジは答えた。
アルジ「オレは…」
コオム「はい」
アルジ「オレはクユの国、ナキ村のアルジ」
コオム「………」
アルジ「奪われた村の宝、
安定の玉を求めて旅をしている。
それ以外の何者でもない」
コオム「…は?」
エミカ&ガシマ&オンダク「………」
アルジ「だから、オレは…
審理院の調査員でもないし、
大前隊の隊員でもない。
魔術に長けてるわけでもない。
だから…」
コオム「…だから?」
アルジ「オレはここに残る。それでいいだろ」
コオム「それなら別に構いませんが」
エミカ「アルジ…」
アルジ「エミカ、大丈夫だ。
オレはここで待ってる。
必ず見つけてこいよ」
エミカ「アルジ…」
アルジ「ガシマ、オンダク、あとは任せたぜ」
ガシマ「ああ」
オンダク「任せとけ」
エミカ、ガシマ、オンダクの3人は書庫へ行く。
コオムに案内されて。
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 31
◇ HP 3753/3753
◇ 攻撃
48★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 防御
38★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★
◇ 魔力 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、雅繊維戦衣
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り、
雷刃剣
◇ 魔術 雷動
◇ エミカ ◇
◇ レベル 27
◇ HP 2415/2415
◇ 攻撃 10★★★★★★★★★★
◇ 防御
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
32★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、濃色魔術衣
◇ 魔術 火球、火砲、火樹、火海、王火
氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術
◇ ガシマ ◇
◇ レベル 35
◇ HP 2367/2367
◇ 攻撃
38★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
29★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 素早さ
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 魔力 11★★★★★★★★★★★
◇ 装備 練磨の大斧、金剛武道着
◇ 技 激旋回斬、大火炎車
◇ 魔術 火弾、火砲
◇ オンダク ◇
◇ レベル 36
◇ HP 3083/3083
◇ 攻撃
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 防御
41★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★
◇ 素早さ
19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 10★★★★★★★★★★
◇ 装備 竜牙の長槍、超重装甲
◇ 技 竜牙貫通撃、岩撃槍
◇ 魔術 岩弾、岩壁
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 10




