第222話 設定
エミカは伝えた。
ガシマとオンダクに頼みたいことを。
ガシマ&オンダク「………」
短い沈黙のあと、彼らは笑う。
ガシマ「そうか」
オンダク「やってみるか」
アルジ「エミカ…。そうだったのか」
エミカ「アルジと私だけだけじゃ難しい。
簡単に手が届かない場所にそれはある。
でも、あなたたちの力があれば…。
大前隊の2人の力があれば…」
ガシマ「届くだろう」
オンダク「時間はどうだ?」
ガシマ「ここからなら大した距離じゃない。
夕刻までに着くだろう。エミカの魔力なら」
エミカ「カルスの操縦は精一杯やります」
アルジ「あのときのあの話は…
そういうことだったのか」
エミカ「…うん」
ガシマ「あの話?」
アルジ「ああ」
エミカ「アルジには少し話していたんです」
ガシマ「そうなのか」
◆◆ 5日前 ◆◆
◆ ナクサ ◆
マスタスと戦った日の翌朝。
エミカは1人で宿を出る。
隣で眠り続けるアルジを起こさずに。
宿の前で荷物入れを探る。
ラアムとナアムが入った荷物入れの中を。
そして、1通の手紙を取り出す。
前日、テノハを出るときに見つけたその手紙を。
「エミカへ」
見間違いではない。
はっきりとそう書かれている。
エミカ(リネさんは…私に何を…?)
彼女は探した。
落ち着いて手紙が読める場所を。
町の中を歩き、近くに公園があることを知る。
遊歩道を歩き、散歩する人々とすれ違う。
池の近くに置かれた長椅子を見つける。
それに1人で座る。
そっと手紙を開ける。
それにはこう書いてあった。
リネの手紙「エミカへ。
あなたの旅がうまく行くことを願い、
この手紙を送ります。
あなたが私の光術を無事に受け継いだなら、
やってほしいことがあります」
エミカ(やってほしいこと…?)
続きを読む。
リネの手紙「あなたには何度か話してるし、
もう知ってると思うけど、
私は複合魔術の研究をしていました。
岩弾を光玉で包んだり、岩壁を雷光で覆ったり、
2つの魔術を1つに合わせる。
その方法について研究していました。
最初はほとんど誰も評価してくれませんでした。
鼻で笑われることも少なくありませんでした。
そんな私の研究が評価され始めたのは、
私が研究所を去る少し前のことでした」
エミカ「………」
エミカはさらに手紙を読み進める。
リネの手紙「私が書いた論文で、
読んでほしいものがある。
書いたのは私がまだ未熟だった頃。
複合魔術について仮説を立てた論文です。
あまりに大胆で突飛な仮説です。
周りからの評価は散々なものでした。
根拠のない妄想。
正しい論文の体裁をなしていない。
そんなことも言われた。
当時の私は悔しくて泣いた。
それでも、その論文はあなたに役立つはず。
そう信じて、この手紙を書きました」
エミカ(私に読んでほしい論文…
複合魔術のことを私に?)
次の文から具体的な指示が書かれていた。
リネから、エミカに。
こうしてほしいと具体的に書かれていた。
リネの手紙「北土の魔術研究所。
2階、第3書庫。右から8番目の棚。
上から3段目。そこにその論文がある。
多くの論文が冊子になってまとめられている。
私の論文が収められているのは第17巻。
それを読んでほしい。役に立つと思うから。
あなたが無事に光術を受け継いだなら…」
エミカ(リネさん…そんなこと言われても…)
エミカは困惑する。
その困惑もリネにはお見通し。
リネの手紙「…分かります。
あなたを困らせていることは。
研究所には厳重な警備が敷かれています。
特に情報管理の厳しさは徹底しています。
部外者の目に触れないようにしています。
馬鹿げた主張と見なされた論文でさえも。
どうしてそこまでして情報を守るのか。
今は無価値でもいつか役立つかもしれない。
奪われて、何かに利用されては困る。
研究所の人たちはそう考えているからです」
エミカ「………」
リネの手紙「書庫の扉は魔錠がかけられています。
書庫の管理を任された3人の特別な魔術師たち。
その3人のうちのいずれかの魔波でなければ、
解錠できない仕組みになっています。
管理の方法が今も昔も変わっていなければ。
なので、力任せに突破することは不可能。
でも、大丈夫」
エミカ「大丈夫…?」
リネの手紙「あなたならきっと見つけられる。
論文にたどり着くための方法を。
だから、大丈夫。大切な教え子エミカへ。
リネより」
手紙はそれで終わっていた。
エミカ「そんな…!」
手紙を折りたたんで、しばらく池を眺める。
エミカ「どうしたらいいのか…。
そんなの分かりません」
◆◆ 3日前 ◆◆
◆ ナクサ ◆
コノマノヤタラズマを倒したあとのこと。
大陸猟進会と別れたアルジとエミカ。
レンカマク料理の店で食事をしたとき。
真剣な顔でエミカは話す。
エミカ「アルジに話しておきたいことがある」
アルジ「なんだ?」
エミカ「リネさんがくれたものについて」
アルジ「ああ、杖と服のことか?」
エミカ「それだけじゃない。
実はもう1つ…
リネさんがくれたものがある。
でも、それは手の届かない場所にあって」
アルジ「手の届かない場所?なんだ?
どういうことだ?」
エミカ「どうしたらいいか分からない」
アルジ「力になるぜ」
エミカ「嬉しい。
でも、今すぐ解決しなくていい」
アルジ「いいのか?」
エミカ「私の話を聞いてくれたらそれでいい。
ああしたらいいとか、こうしたらいいとか、
別に今すぐ答えがほしいわけじゃないから。
アルジには知っておいてほしいと思うから。
話しておきたい」
アルジ「ああ。一体なんだ?」
エミカ「手紙があったんだ」
アルジ「手紙…」
エミカ「リネさんの手紙が入ってたんだ」
アルジ「どこに?」
エミカ「袋の中。ラアムとナアムと一緒に」
アルジ「どんな手紙なんだ?」
エミカ「私に宛てられた手紙だ」
アルジ「どんなことが書いてあった?」
エミカ「それが…」
そのとき。
大きな音を立てて卓上に料理の皿が置かれる。
アルジ「うお…!!」
エミカ「…え!?」
皿の上にはゆでた巨大な甲殻類。
真っ赤な殻にぎっしりと白い身が詰まっている。
店員はニンマリと笑う。
店員「とっておきを持ってきました」
アルジ「なんだ?これは」
店員「レンカマクオオアカエビ」
アルジ「エビ…」
店員「凍らせて現地から運んできたものです。
間違いなく一級品。特別な料理です」
アルジ「いいのか?オレたちが食っても…」
店員「注文したのはあなた方。
さあ、どうぞ召し上がれ!」
アルジ「うおー!」
エミカ「………」
殻をむいていくアルジ。
エミカ「アルジ」
アルジ「…ああ、ごめん。手紙の話だったな…。
とりあえず食べないか?これ。熱いうちに」
エミカ「…そうだな」
◆◆ 現在 ◆◆
ガシマはアルジを小突く。
ガシマ「エミカの話を聞いてやれよ」
アルジ「…しょうがないだろ。
腹が減ってたんだから」
オンダクが大きな声で言う。
オンダク「本当にやるんなら、すぐに行くぞ」
アルジ&ガシマ「………」
オンダク「やるんだろ?エミカ」
エミカ「…やる!」
カルスに乗るアルジたち4人。
浮上するなり打ち合わせを始めた。
ガシマ「いいか。
本当の目的は決して明かさない。
大前隊が研究所に極秘調査を行う。
そういう設定で行くぞ」
オンダク「オレとガシマはそれでいいだろう。
アルジとエミカはどうする?」
ガシマ「大前隊員ってことにしておけ」
アルジ「…いいのか!?」
ガシマ「北土の魔術研究所のホジタ。
あいつははとんでもねえ悪事に加担した。
古代獣が暴れて平和が大いに乱れてる。
非常事態だ。やむを得ねえだろう」
オンダク「アルジはともかく…
エミカは見た目がまずい。
大前隊の戦士には見えねえな」
エミカ「………」
ガシマ「それなら…」
オンダク「…エミカは魔術院の術師。
同時に審理院の調査員でもある。
…という設定はどうだ?」
ガシマ「…だから、書庫に用がある。
重要な文書を押収する必要がある。
ホジタの重大犯罪に関わる重要文書を…。
…これでどうだ?」
オンダク「いいだろう」
アルジ(勝手に話が進んでるが…
いいのか?これで!)
エミカ(真剣に考えてくれてる…。
頼んでよかった。
この2人なら…なんとかしてくれる…
そんな気がする…!)
やがてオノレノの町が見えてくる。
北土の魔術研究所がある、その町が。
日は西に傾き始めている。
アルジ「あれだ!あの建物だ!!」
広い庭の芝生の上にカルスは着陸する。
ガシマ「行くぞ!!」
走り出す4人。
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 31
◇ HP 3753/3753
◇ 攻撃
48★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 防御
38★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★
◇ 魔力 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、雅繊維戦衣
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り、
雷刃剣
◇ 魔術 雷動
◇ エミカ ◇
◇ レベル 27
◇ HP 2415/2415
◇ 攻撃 10★★★★★★★★★★
◇ 防御
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
32★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、濃色魔術衣
◇ 魔術 火球、火砲、火樹、火海、王火
氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術
◇ ガシマ ◇
◇ レベル 35
◇ HP 2367/2367
◇ 攻撃
38★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
29★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 素早さ
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 魔力 11★★★★★★★★★★★
◇ 装備 練磨の大斧、金剛武道着
◇ 技 激旋回斬、大火炎車
◇ 魔術 火弾、火砲
◇ オンダク ◇
◇ レベル 36
◇ HP 3083/3083
◇ 攻撃
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 防御
41★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★
◇ 素早さ
19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 10★★★★★★★★★★
◇ 装備 竜牙の長槍、超重装甲
◇ 技 竜牙貫通撃、岩撃槍
◇ 魔術 岩弾、岩壁
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 10