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アルジ往戦記  作者: roak
221/300

第221話 本館

ガシマは告げる。


ガシマ「一隊の6人が消息不明になった」

アルジ「消息不明って…死んだのか?」

ガシマ「分からん」

エミカ「どうしてそのことを…?」

オンダク「今朝、都から手紙が届いてな」

アルジ&エミカ「………」


ガシマはカルスの行く先を確かめる。


ガシマ「この調子だ。このまま前に進め」

エミカ「…はい」


連なる山々の上を飛ぶ。

最高速度で西方へ。


ガシマ「6人にはある任務が与えられていた」

アルジ「どんな任務だ?」

オンダク「ラグアとロニ。

 この2人を探し出して倒せ」

アルジ「大前隊は…やられたのか?」

ガシマ「生存確認ができてねえだけだ」

アルジ「生存確認って…」

オンダク「6人は命じられていた。

 日付が変わるとき、合離蝶で手紙を送れと。

 無事か、どこにいるか、

 誰といるか、敵を見つけたか、

 書いて送るように命じられていた。

 だが、その手紙が届かなくなった」

アルジ&エミカ「………」

オンダク「最初に3人。手紙が来なくなった。

 そして、さらに3人。手紙が届いていない」

アルジ「それで消息不明ってことか」

オンダク「出すべき手紙を出さなくなった。

 6人の身に何かが起きた。それは確かだ」

アルジ&エミカ「………」

ガシマ「ほかにも分かったことがある」

アルジ「…なんだ?」

ガシマ「ラグアとロニ。この2人を倒す。

 その任務は予想以上に困難だったってことだ。

 一隊の戦士たちをもってしても…な」


エミカが思い出して言う。


エミカ「…王獣です」

ガシマ「なんだ?それは」

エミカ「ロニは恐ろしい魔術を使います。

 魔力で獣を生み出して飛ばすんです。

 オオトノラコアと戦った日の朝…

 何人もの猟師を殺してしまうのを見た…」

アルジ「あれはやばかったな」

エミカ「魔波でできた牙と爪で…人が一瞬で…」

ガシマ&オンダク「………」

エミカ「王獣は王火でも王氷でも打ち消せない。

 恐ろしく強い魔術…」

オンダク「…そんな魔術、聞いたことねえな」

エミカ「獣魔術は滅多にない魔術らしい。

 私も知らなかった。そんな魔術があることは。

 それに王獣だけじゃありません。

 大陸で暴れている古代獣も…ロニが…。

 オオトノラコアも…ガムヤラトラゾウも…

 古代獣を生み出したのはロニの魔術です。

 ロニが…創造の杖の力を使って…」

ガシマ&オンダク「………」

エミカ「だから…おかしくない」

アルジ「………」

エミカ「大前隊の人たちが…

 負けてしまったとしても…」


悔しがるエミカ。


アルジ「オレが倒す」

ガシマ&オンダク「………」

アルジ「大前隊が無理でもオレが倒す。

 ラグアも…ロニも…このオレが…この剣で!

 それで…安定の玉を取り返す!」

エミカ「私も戦う!」

アルジ「ああ、やろうぜ!!」

エミカ「やろう!!」

オンダク「くく…」

ガシマ「はは…」

アルジ&エミカ「……?」

ガシマ「不安に駆られるかと思ったが…」

オンダク「それどころか闘志を燃やしている」

アルジ&エミカ「………」

オンダク(間違いない…)

ガシマ(お前たちは合格だ)


アルジは腹に手を当てた。


オンダク「…どうした?」

アルジ「腹が減ったな」

ガシマ「そろそろ飯にするか」


アルジたちはカルスの上で弁当を食べた。

空はよく晴れている。

しばらく飛び続けると見えてきた。

大きな町の中心地。

ノイ府本館が建っている。

その東西には分館。

いずれも赤黒い外壁。

本館は分館の倍ほどの大きさ。


ガシマ「見ろ。あれだ」

エミカ「着陸は…」

ガシマ「あの庭にしてくれ。本館の前の…」

エミカ「はい」

アルジ「でかい建物だ」

オンダク「莫大な費用をかけて建てられた。

 強権的に、安定的にノイ地方を統治する。

 その気概があの建物の外観に表れている」

アルジ「意見書を渡すのはそこの長官だよな」

ガシマ「そうだ。ノイ府の最高権力者だ」

アルジ「権力者…お偉いさんなんだな」

ガシマ「…どうだろな」

アルジ「違うのか?」

ガシマ「偉いといえば偉いが…」

アルジ「………」

オンダク「もっと上の役職はいくつもある」

アルジ「そうなのか」

ガシマ「都にある中央政府の機関には…な」

アルジ「そっか」

エミカ「下ります」


カルスは高度を下げていく。

ガシマはノイ府長官について語る。


ガシマ「長官のマシジマさんには世話になった。

 あの人の護衛役を務めていくつも国を巡った。

 そこでさまざまな人と意見を交わした。

 一般の民から各国の国首まで。

 いい経験になった」

アルジ&エミカ「………」

ガシマ「もっと出世してもおかしくなかった。

 マシジマさんは。

 本院の院長、あるいは総合統合官…

 なったとしてもまったくおかしくねえ。

 あの人の実力と人格からすれば…」

エミカ「どうしてなれなかったんですか?」

ガシマ「負けたのさ。マシジマさんは。

 政府中枢で繰り広げられる権力闘争にな。

 だから、最後の最後、こうなった。

 ノイ府長官。大陸の外れの地。

 そこで最後の役職に就くことになった」

オンダク「あと2年ぐらいで退官か?」

ガシマ「そうだ。任期の延長もないだろう」

アルジ「もっと上の役職…

 総合統合官に…本院の院長か…」

オンダク「学校で習ったんじゃねえのか」

アルジ「習った気がする。

 けど、よく覚えてないぜ。

 でも、とにかく偉い人なんだろ。

 総合統合官も院長も」

オンダク「まぁ、そうだ」


静かに笑っているガシマ。

アルジはそんな彼に目を向ける。


アルジ「…?」

ガシマ「オレもそんな感じだった」

アルジ「…え?」

ガシマ「オレも知らなかった。

 政治だとか役職だとか権力だとか。

 ほとんどろくに知らなかった。

 何しろ戦ってばかりの人生だったからな。

 マシジマさんは…

 そんなオレに1つ1つ教えてくれた。

 高官たちの中でも話の分かる人だ」

アルジ「そっか」

ガシマ「仕事も遊びも満遍なくこなす人だ」

アルジ「遊びも」

ガシマ「厳しくもあり、愉快な方でもある」

エミカ「その人に意見書を…」

ガシマ「そうだ。あの人にはオレが話をする。

 オレたちの意見書は必ず受け取ってもらう。

 今後もノイ地方の防衛は重要だ。

 何を考えて防衛隊を撤退させたのか。

 それは聞いてみねえと分からねえ。

 だが、ちょっと強い魔獣が出てきたからって

 簡単に引き下がられちゃ困るってもんだ」

アルジ「そうだよな」

エミカ「着陸します」


カルスから降りるアルジたち。

通りかかった人々が驚いて見ていた。

本館の正面玄関に向かって歩き出す。

ガシマが守衛に声をかけて通してもらう。

守衛はすぐに分かった様子。

現れたのが大前隊のガシマだと。

受付係のところへまっすぐ進む。

大きな壁画、細かな彫刻、太い石の柱。

アルジとエミカは立派な内装に目を見張る。


ガシマ「大前隊だ。長官に用があって来た」


ガシマが告げると受付係は丁重に応対した。

ガシマとオンダクを長官室へ案内する。


エミカ(突然訪れても応じてくれる…。

 これが大前隊の力なのか)


ガシマは振り向き、アルジとエミカに告げる。


ガシマ「この辺で待っててくれ。

 時間はそんなにかからないだろう」

アルジ「分かった」


壁際に置かれた1脚の長椅子。

それにアルジとエミカは座る。

ガシマとオンダクの帰りを待つ。


アルジ「本院の院長に…総合統合官か…」

エミカ「どっちも政府の要職だな」

アルジ「魔術院は…本院じゃないんだよな?」

エミカ「うん」


本院は政府の中枢機関。

全部で5院ある。

財政の運営などを担う財院ざいいん

産業の発展などを担う業院ぎょういん

大陸の開発などを担う土院どいん

保健の増進などを担う生院せいいん

法令の整備などを担う理院りいん

これら本院の上に大院おおいんがある。

大院は政府の最高意思決定機関。

その頂点に立つのが大君。

4人の総合統合官が大君を支える。

総合統合官は大君に次ぐ権力を持つ。

その役職に就くには本院の院長経験が必須。

ごく一部の例外を除いて。


エミカ「魔術院は副院だ。業院ぎょういんの副院」

アルジ「業院か…」


ガシマとオンダクが戻ってくる。


ガシマ「よう、終わったぜ」

アルジ「早いな」

ガシマ「あっさり受け取ってくれた」

オンダク「昔の切れ味はなかったな。

 まるで牙を抜かれた獣だ」

ガシマ「最後くらいはゆっくりしたいんだろ。

 業院時代に体を壊して今も医者通いらしいしな」

アルジ&エミカ「………」


本館から出るアルジたち。

まだ昼前のことだった。


ガシマ「さてと、任務はこれで終わりだ。

 古代獣も倒したし今回の旅はここで終わりだ」

アルジ&エミカ「………」

オンダク「今回の任務成功はお前たちのおかげだ」

アルジ&エミカ「………」

ガシマ「お前たちがいなけりゃ倒せなかった。

 古代獣ガムヤラトラゾウは。

 お前たちの実力は本物だ。

 大前隊の三頭のオレたちが認める。誇れよ」

アルジ「ああ…」

エミカ「これからどうするんですか?」

オンダク「次の命令を待つ」

ガシマ「夕刻にでも合離蝶が来るだろう」

エミカ「そうですか」

アルジ「オレたちは…」

オンダク「お前たちも待つといい」

アルジ「待つ…?」

ガシマ「政府から案内が来るだろう。

 懸賞金のことで」

アルジ「そっか」

ガシマ「だから…オレたちにはまだ時間がある」

アルジ&エミカ「……?」

ガシマ「お前たちに何か礼がしたい」

オンダク「オレたちにできることがあればやる」

アルジ&エミカ「………」

ガシマ「遠慮すんな。飯でもおごってやろうか」


アルジはしばらく考えて答えた。


アルジ「特にないな」

ガシマ「はっ。…そうかよ」

オンダク「そうか」

アルジ「オレたちこそ…お礼を言わなきゃ」

ガシマ&オンダク「………」

アルジ「山天楼とかナミナカ荘とかありがとう。

 あと、魔術技のことも。

 あんたたちに教えられたから習得できた。

 それから、話もいろいろ聞かせてもらった。

 大前隊に入った理由とか。

 入隊してからのこととか。

 あんたたちもいろいろあったのかって思った」

ガシマ「おい、なんだ、てめえ。

 オレらが漫然と生きてるとでも思ってたか?」

アルジ「いや…えっと…そういうんじゃないぜ」

オンダク「なんとなくで務まる…

 大前隊はそんなぬるいもんじゃない」

アルジ「ああ。少し分かった気がする」

ガシマ「そうか」

アルジ「ああ」

ガシマ&オンダク「………」


ガシマとオンダクは気づいた。

エミカが何か言いたそうにしているのを。


ガシマ「どうした?」

オンダク「何かあるのか?」

エミカ「………」

ガシマ「遠慮なく言ってみろ」

アルジ「…エミカ?」

エミカ「…あります」

ガシマ&オンダク「………」

エミカ「1つ…してもらいたいことが…」

ガシマ「なんだ?」

エミカ「でも…それは…」

アルジ「……?」

オンダク「遠慮はいらねえ」

エミカ「………」

ガシマ「言ってみろよ」

エミカ「…はい」

アルジ(…なんだ?)


エミカは話した。

ガシマとオンダクに頼みたいことを。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 31

◇ HP   3753/3753

◇ 攻撃

 48★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★

◇ 防御

 38★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

  45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★

◇ 魔力  14★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  勇気の剣、雅繊維戦衣がせんいせんい

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り、

      雷刃剣

◇ 魔術  雷動


◇ エミカ ◇

◇ レベル 27

◇ HP   2415/2415

◇ 攻撃  10★★★★★★★★★★

◇ 防御

  30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

  32★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、濃色魔術衣

◇ 魔術  火球、火砲、火樹、火海、王火

      氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷

      雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術


◇ ガシマ ◇

◇ レベル  35

◇ HP   2367/2367

◇ 攻撃

 38★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

 29★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★

◇ 魔力  11★★★★★★★★★★★

◇ 装備  練磨の大斧、金剛武道着

◇ 技   激旋回斬、大火炎車

◇ 魔術  火弾、火砲


◇ オンダク ◇

◇ レベル 36

◇ HP   3083/3083

◇ 攻撃

  30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★

◇ 防御

  41★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★

◇ 素早さ

  19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  10★★★★★★★★★★

◇ 装備  竜牙の長槍、超重装甲

◇ 技   竜牙貫通撃、岩撃槍

◇ 魔術  岩弾、岩壁


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 10

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