第22話 資格
大きな音を立てて戸が開かれる。
警備隊員とアルジの目が合う。
ロウ「あ…!!」
アルジ「………」
ロウという警備隊員。
彼は財宝を運んだとき出てきた男だった。
ロウ「あ…はひっ…はひっ…」
アルジ「………」
ロウはすっかり言葉を失う。
その場で硬直した。
隊長のナンダスはゆっくりと立ち上がる。
アルジとエミカを交互に見た。
ナンダス「おい、お前ら、帰れよ」
アルジ「……」
ナンダス「その部屋、オレたちが使う」
エミカ「……」
ナンダス「大人しく帰れよ」
アルジ「………」
ナンダス「おい、返事しろ」
エミカ「………」
ナンダス「何か言え」
アルジ「………」
ほかの男たちも一斉に立ち上がる。
ナンダスに加勢して圧力をかけてくる。
男たちは全部で17人。
いずれもワノエ警備隊員。
ナンダス「痛い目見ないと分からないか?」
アルジ「………」
ナンダス「なんとか言えよ。殴られたいのか?」
エミカ「………」
アルジはまっすぐナンダスの顔を見続ける。
ナンダス「なんだその目は?てめえ潰すぞ?」
ロウ「た…隊長…」
ナンダス「なんだ?」
ロウ「そいつらです…」
ナンダス「あ?」
ロウ「そいつらが…今日…本部へ来たんです」
ナンダス「………」
ロウ「そいつらが…カクノオウを…
倒したと言って…本部に…財宝を…
置いていったんです…」
ニヤリと笑うナンダス。
ナンダス「なぁんだ…そうかい…」
アルジ「………」
ナンダス「今すぐ表に出ろ!」
ナンダスはアルジたちに背を向けて歩き出す。
彼の取り巻きもぞろぞろと歩き出す。
そして、全員部屋から出ていった。
エミカ「…どうする?」
アルジ「行こう」
アルジとエミカも部屋を出る。
ナンダスたちは店を出て歩き続ける。
ついていくアルジたち。
すれ違う町人たち。
何事かと驚いている。
町の外れの開けた野原。
そこでナンダスたちは立ち止まる。
大きな石がいくつも転がっている。
アルジの膝の高さほどの草が生い茂っている。
日は沈みかけ、辺りは暗くなり始めていた。
ナンダス「剣を抜け」
アルジ「決闘か」
ナンダス「カクノオウを倒したんだってな?」
アルジ「………」
ナンダス「あれには手を焼いてたところだ」
アルジ「………」
ナンダス「なんだ?その顔…。
言いたいことがあるなら何か言えよ」
アルジ「警備隊をやめろ」
ナンダス「…は?」
アルジ「お前に…警備隊にいる資格はない」
ナンダス「資格?オレの?警備隊長としてのか?
お前がどうこう言うことじゃないだろう。
町民の、町長の、隊員たちの信任を得て…
オレは今、この地位にいる。そうである限り…
お前にいくら気に入られなくても、
オレは警備隊長であり続ける。
お前、くだらないことを言うなよ」
アルジ「お前のような男は…
警備隊にふさわしくない。
自分でもよく分かってるんじゃないのか?」
ナンダス「偉そうに…なんだ?その言い草は?
大人しくしてるなら見逃してもよかったが、
もうだめだ。お前はもうだめだ。
ここで潰してやる。オレが直々に消してやる」
ナンダスは剣を構える。
今にも斬りかかるかのような姿勢。
それを見て瞬時にエミカは火球を出す。
だが、アルジが彼女を制止した。
アルジ「…いいんだ。ここはオレがやる。
始まりはオレが提案したことだから…」
エミカ「………」
アルジ「寄付しようなんてオレが言わなければ
こんなことにならなかったんだから…」
エミカ「………」
エミカは困惑しながらも最後はうなずく。
そして、火球を消した。
アルジはナンダスに視線を向ける。
強く、まっすぐ、企みを暴く。
そんな視線を向けた。
アルジ「消すってどういうことだ?
ここでオレを消して…どうするつもりだ?
自分がカクノオウを倒したことにするのか?」
ナンダス「…黙れ!」
ナンダスはアルジに向かって突進。
剣を大きく強く振り上げる。
隊長用に仕立てられた特別な剣を。
長さ、重さ、硬さ、鋭さ。
それぞれについて彼は何度も話し合った。
隣国にまでその名が知られる剣匠と。
そして、9年の歳月を経てついに完成した。
隊長の剣。
それが今、振り下ろされる。
ナンダス「…シャオ!!」
アルジは素早く後ろへ下がる。
攻撃をかわし、勇気の剣を構えた。
ナンダス(潰す…!)
ナンダスは2撃目、3撃目とさらに剣を振る。
だが、彼の剣は空を斬る。
アルジはひらりひらりと避けていく。
勇気の剣が微かに光を放つ。
ナンダス(!!?光った!なんだ?あの剣は…)
素早く斬りかかるアルジ。
しかし、その斬撃は弾き返される。
ナンダスの剣によって。
カンと大きな音を立てて。
ナンダス(へし折るつもりで打ったのだが…
無傷とは…!もしや…魔術か…!?
あの剣の硬さ…魔術の仕業か…!!?
なんらかの魔術が込められているのか…!
あの剣に!あの剣でカクノオウを…!
なぁるほど…!!そうか!そうか…!!
魔術には魔術で対抗というわけか…!
あいつの雷神剣…厄介だったからなぁ…!)
足元に転がった石につまずくアルジ。
大きく体勢を崩した。
それをナンダスは見逃さない。
腰を落とし、どっしりと構える。
繰り出される一撃。
ナンダス(誠に誠に不本意ながら!
見せてやろう!オレの全力を!)
隊員たち「おお…!来るぞ!!」
アルジ「!!」
ナンダス(食らえ!!破空斬!!)
エミカ「アルジ!!」
ナンダスの得意技、破空斬。
アルジの胸部を捉える。
アルジ「ぐっ!」
革の鎧を斬り裂いて刃は体に達した。
◇ アルジに257のダメージ。(HP347→90)
剣を振り上げ、なおも攻めるナンダス。
斬られたアルジは1歩も退かない。
反撃の構えを見せる。
歯を食いしばり、地を踏み、剣を振る。
譲れない気持ち。
それがアルジに痛みを乗り越えさせた。
アルジ「円月斬り!!」
アルジはナンダスの右腕を斬り落とした。
その一撃はナンダスの追撃を超えた。
強さも、速さも。
◇ ナンダスに206のダメージ。
ナンダス「?」
ナンダスは剣を振り下ろせない。
一体何が起きたのかすぐに理解できない。
少しの間を置いて激痛とともに状況を把握。
地面に落ちた自分の右腕と剣を見つける。
ナンダス「クソォオオオ!痛ええええ!」
右腕の断面を押さえ、しゃがみこむナンダス。
それを冷静に見下ろすアルジ。
アルジ「お前はもう…戦うのをやめろ。
そして…残りの人生を静かに生きろ」
ナンダス「ざけんな!!クソが!!」
空き地に響く叫び声。
動揺する取り巻きの隊員たち。
戦いに加勢する様子は見られない。
彼らはその場から動かずに見ているだけ。
エミカがアルジの元へ駆け寄る。
エミカ「アルジ…その傷…!」
アルジ「心配ない…。大丈夫だ」
膝をつき、うずくまり、うめくナンダス。
残された左手でどうにか剣を拾う。
そして、ふらつきながらも立ち上がる。
エミカ「早く…傷の手当てを」
アルジ「大丈夫だって…。そんなに深くない」
怒りに震えてアルジをにらむナンダス。
震える刃を前に突き出す。
アルジに向かって突進した。
アルジ(!!…まだやるのか!)
アルジはエミカを突き放す。
ナンダスの突進を軽やかに回避。
それから、剣を振り下ろして、断ち斬る。
今度はナンダスの左腕を。
さらにアルジは体を回転させる。
その勢いで両脚も斬り払った。
体を支える四肢を失い、倒れるナンダス。
◇ ナンダスに334のダメージ。
うつ伏せになって土に塗れる。
体を左右にくねらせる。
ナンダス「ぐぅぅうう…!!クソォ!!
クソォオオオ!!」
アルジは見る。
傍観していた警備隊員たちを。
動揺のあまり体を大きく揺らす者がいた。
アルジ「あとは…お前たちが面倒を見てやれ」
エミカに支えられてアルジはその場から去った。
警備隊員たちは沈黙し、誰も動こうとしない。
ナンダスに駆け寄る者も声をかける者もない。
ナンダス「おい!何見てやがる!!
ふぅー!ふぅー!ふぅー!」
誰も返事をしない。
ナンダス「おいっ!助けろ!ふぅー!ふぅー!
助けろや!医者を呼べ!!ふぅー!ふぅー!
オレは隊長だ!隊長だぞ!ふぅー!ふぅー!
おい!ふざけんな!ふぅ!ふぅー!ふぅー!
おい!!ふぅー!ふぅー!ふぅー!ふぅー!
ふぅー!ふぅー!ふぅー!ふぅー!ふぅー!
チクショオオオオオオオオウ!!!!!!」
ナンダスは叫び続け、やがて静かになった。
◆ ノソノ屋 ◆
極み膳と特上膳を運ぶ店員たち。
アルジたちのいた客室へ向かう。
店員「お待ちどうさまー」
静かにそっと戸を開ける。
しかし、そこには誰もいない。
店員「…あれ…?」
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 8
◇ HP 90/347
◇ 攻撃 12★★★★★★★★★★★★
◇ 防御 6★★★★★★
◇ 素早さ 8★★★★★★★★
◇ 魔力 2★★
◇ 装備 勇気の剣、革の鎧
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃
◇ エミカ ◇
◇ レベル 6
◇ HP 192/192
◇ 攻撃 3★★★
◇ 防御 3★★★
◇ 素早さ 7★★★★★★★
◇ 魔力 9★★★★★★★★★
◇ 装備 術師の杖、術師の服
◇ 魔術 火球、火砲
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療薬 8
◇◇ 敵ステータス ◇◇
◇ ナンダス ◇
◇ レベル 18
◇ HP 541
◇ 攻撃 11★★★★★★★★★★★
◇ 防御 11★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 7★★★★★★★
◇ 魔力
◇ 装備 隊長の剣、隊長の戦闘着
◇ 技 破空斬




