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アルジ往戦記  作者: roak
219/300

第219話 今度

アルジたちは浜辺へ向かう。

警備隊の灯火の明かりがいくつも見える。

ユウマンたちが振り返る。


ガシマ「よう、ご苦労だった」

ユウマン「みなさん、こいつを見てください!」


浜に打ち上げられていたのはガムヤラトラゾウ。

すっかり変わり果てた姿。

黒くて大きなボロ切れのよう。

青い筋も赤い筋もない。


アルジ&エミカ&ガシマ&オンダク「………」

ユウマン「こいつが爆発したんですね」

ガシマ「そうだ」

ユウマン「よくぞご無事で!」

ガシマ「1つ教えてくれ」

ユウマン「はっ!!なんでしょうか?」


ガシマは険しい顔で問いかける。


ガシマ「防衛隊はどこ行ったんだ?

 あいつらも魔獣討伐のため町に来たんだろ」

ユウマン「…撤退しました」

ガシマ「誰の命令だ?」

ユウマン「向こうの隊長が…」

ガシマ「独断か?」

ユウマン「いえ…」

ガシマ「隊長に命じたのは誰だ?」

ユウマン「…長官です。ノイ府の長官です。

 向こうの隊長が我々に言ってました。

 長官の命令で帰還することになったと」

ガシマ「やっぱりそうか」

ユウマン「………」


50年ほど前に政府の統治が及んだノイ地方。

安定的な統治のために置かれた政府の機関。

それがノイ府。

数多くの役人が中央政府から派遣されている。

その中でも長官はノイ府の頂点に立つ役職。


ガシマ「意見書を出そう」

オンダク「そうだな」

アルジ「意見書?」


ユウマンは緊張した面持ち。

ガシマはそんな彼に笑いかけて言う。


ガシマ「お前たちはよくやった」

ユウマン「は…はい!」

ガシマ「もう帰って休め。

 魔獣の心配もいらないだろう」

ユウマン「はっ…!」

ガシマ「お前たちの警備があったから

 オレたちは昨日十分に休めた。

 存分に任務に当たれた。

 その働き、政府によく伝えておく」

ユウマン「ありがとうございます!」

警備隊員たち「ありがとうございます!!」


警備隊員たちは浜辺から去っていった。

深い夜の闇の中、波の音が辺りに響く。

エミカが小さな光玉を宙に放つ。


ガシマ「アルジ、エミカ」

アルジ「ああ」

エミカ「はい」

ガシマ「オレたちは明日の朝、ノイ府へ向かう。

 いいな?」

アルジ「…意見書を出すためか?」

ガシマ「ああ、そうだ」

オンダク「お前、意見書が何か知ってるのか?」

アルジ「いや…。意見書ってなんだ?」

ガシマ「誤りを正すように書面で求める。

 オレたち大前隊にはその権限がある」

オンダク「意見書はただの紙じゃない。

 出された者は対応しなきゃならない。

 半月以内に。何をどう改善したのか。

 書面にまとめて政府に報告する」

ガシマ「報告がない場合は罰せられる。

 関係した役人の罷免、罰金、投獄もある」

オンダク「改善が不十分なときも罰せられる。

 オレたちにはそういう権力がある」

アルジ「そうなのか」

エミカ「防衛隊のことで意見を?」

ガシマ「ああ。

 安易に撤退させて町を危険にさらした。

 本来なら警備隊と協力しなければならない。

 ともに町を守らなければならない。

 今回のノイ府長官の過ちは大と考える。

 意見書が必要だ」

エミカ「ここから遠いんじゃないですか?

 ノイ府の場所は…」

ガシマ「カルスで行く」

エミカ「…なくしてしまいました。

 海に投げ出されたときに…」

ガシマ「大丈夫だ。予備がある」

エミカ「………」

ガシマ「オレたちは持ってきていた。

 ヘタな操縦で壊されてもいいようにな」

アルジ「しっかりしてんな」

ガシマ「なめるな。オレたちは大前隊だぞ」

オンダク「しくじって壊すと高くつくんだがな」

エミカ「え…!」

ガシマ「今回は不可抗力。オレが説明しとく」

アルジ「よかったな、エミカ」

エミカ「懸賞金から引かれるかと思った」


アルジたちはナミナカ荘に戻る。

従業員に案内されて客室に入る。

そこは宿で最も広い客室。


アルジ「いい部屋だ」

エミカ「豪華だな」

ガシマ「立派なもんだ。アルジ、エミカ、

 お前たちは風呂に行ったらどうだ」

アルジ「あんたたちは?」

ガシマ「意見書をしたためる」

オンダク「決まった形で書かなきゃならない。

 少しばかり時間がかかる。先に風呂に行け」

エミカ「行こうか」

アルジ「そうだな」


部屋から出る。

風呂に向かって歩いていく。

客室に残ったガシマとオンダク。


ガシマ「あの2人、予想以上だった」

オンダク「そうだな」

ガシマ「どちらも申し分ない実力だ」

オンダク「エミカの魔力には驚いた。

 カルスの操縦、強力な火術と氷術、

 さらに光術、雷術まで使いこなす」

ガシマ「ガムヤラトラゾウの魔術を無力化した。

 王火も王氷も…あいつは撃ち返して消した。

 今回の任務、あれが1番大きかった。

 エミカがいなかったら逃げ回るだけで

 かなりの体力を使っていただろう」

オンダク「魔波を感じ取る力も優れていた」

ガシマ「ああ。少し雑なところはある。

 だが、敵の弱点を見抜く力は確か」

オンダク「アルジはどうだ?」

ガシマ「………」


ガシマは深くうなずいて答えた。


ガシマ「強いな」

オンダク「そうだな」

ガシマ「あんな男は初めて見た。何者なんだ?

 ガムヤラトラゾウに対する最後の攻撃も…

 普通あんな状況で飛び降りるか?」

オンダク「ああ。だが、ああでもしなきゃ…」

ガシマ「倒せなかった」

オンダク「だろうな」

ガシマ「カルスであいつが言ったこと。

 あれは本当だ。

 浜辺で迎え撃とうとしたところで、

 ガムヤラトラゾウが来る保証はねえ。

 海で仕留めるしかなかった。

 魔術を撃ち込めたらよかったかもしれねえ。

 だが、エミカはほぼ魔力切れ。

 カルスを動かすので精一杯。

 そうなると、武器で倒すしかねえ」

オンダク「それを本当にやっちまえる。

 これが…実力だな」

ガシマ「ああ」

オンダク「初めて見た…か」

ガシマ「…なんだ?」

オンダク「さっき言っただろ。アルジのことを。

 あんなやつは初めて見たと」

ガシマ「それがなんだ?」

オンダク「本当にそうか?

 ああいうことを本気でやっちまう男を…」

ガシマ「………」

オンダク「オレたちは…

 ほかにも知っているんじゃないか」

ガシマ「…ああ。いたな。1人」

オンダク「あのとき、あの場にあいつがいたら、

 あいつも同じことをやっただろうな。

 そんな気がしてならない」

ガシマ「…そうだな」


オンダクは荷物入れから合離蝶を取り出す。

紙と墨と筆も出す。

それから、ガシマに問いかけた。


オンダク「マルか、バツか。どうする?」

ガシマ「聞くな。決まってんだろ」

オンダク「はは…。分かった」


オンダクは紙に大きくマルを書く。

その紙を小さく折って合離蝶に結びつける。

そして、窓を開けて外へ放り投げた。

合離蝶は羽ばたき、飛んでいく。

都の方へ。

シノ姫の元へ。

夜の深い闇に消えるのを彼らは見届けた。


オンダク「さあ、次は意見書だ」

ガシマ「お前が書いてくれ」

オンダク「言い出したのはお前だろ」

ガシマ「オレより字がうまいだろ。

 受け取る方も真剣になる。

 うまい字で書かれてた方がな」

オンダク「お前な…」

ガシマ「話はオレがする。ノイ府の長官は…」

オンダク「マシジマ…だろ」

ガシマ「ああ」

オンダク「知り合いだろ」

ガシマ「ああ。あの人にはお世話になった。

 国家のこと、民のこと、教えてくれた。

 護衛をしていたとき、教えてくれたんだ。

 戦うこと以外ほとんど何も学んでこなかった。

 そんなオレに面倒がらず教えてくれた。

 国家はどうあるべきか。

 どうやって民を幸福にするか。

 真剣に話して聞かせてくれた。

 そのとき身につけた知識、考え方、心構え。

 任務に当たるときの土台になってる気がする。

 だからこそ今回の件はオレが話をする。

 そして、意見書を出す。だから…」

オンダク「分かった。書いてやろう」

ガシマ「頼むぜ」


浴室に向かうアルジとエミカ。

廊下を歩きながら言葉を交わす。


アルジ「今回の討伐もうまくいってよかったな」

エミカ「ああ。よかった」

アルジ「王火も王氷もすごかったぜ。

 化け物の魔術を完璧に抑え込んだよな」

エミカ「アルジの魔術技もよかったぞ」

アルジ「へへ、そっか。技の名前は雷刃剣だ。

 雷をまとった刃で敵を斬る。いいだろ?」

エミカ「いいんじゃないか」


浴室の前に着く。


アルジ「今日は風呂、貸し切りらしいな…」

エミカ「…うん」

アルジ「えっと…」

エミカ「………」

アルジ「オレたち…一緒に入ろうか!」

エミカ「…!」


そのときエミカは気づいた。

女湯に人がいることに。

魔力を感じ取ったのだった。


エミカ「お風呂にイイナヨさんがいる」

アルジ「そうなのか…?」

エミカ「うん。この魔波の感じはそうだ」

アルジ「なら、男湯に行こうか…!」

エミカ「入ってくるかもしれない。

 ガシマさんとオンダクさんが」

アルジ「そ…そうだな…。

 確かにそうだ。ははは」

エミカ「だから、また今度にしよう」

アルジ「お…おう…!」


エミカは脱衣所に入っていく。

アルジはしばらくその場に立ち尽くしていた。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 31

◇ HP   3753/3753

◇ 攻撃

 48★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★

◇ 防御

 38★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

  45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★

◇ 魔力  14★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  勇気の剣、雅繊維戦衣がせんいせんい

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り、

      雷刃剣

◇ 魔術  雷動


◇ エミカ ◇

◇ レベル 27

◇ HP   2415/2415

◇ 攻撃  10★★★★★★★★★★

◇ 防御

  30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

  32★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、濃色魔術衣

◇ 魔術  火球、火砲、火樹、火海、王火

      氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷

      雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術


◇ ガシマ ◇

◇ レベル  35

◇ HP   2367/2367

◇ 攻撃

 38★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

 29★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★

◇ 魔力  11★★★★★★★★★★★

◇ 装備  練磨の大斧、金剛武道着

◇ 技   激旋回斬、大火炎車

◇ 魔術  火弾、火砲


◇ オンダク ◇

◇ レベル 36

◇ HP   3083/3083

◇ 攻撃

  30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★

◇ 防御

  41★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★

◇ 素早さ

  19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  10★★★★★★★★★★

◇ 装備  竜牙の長槍、超重装甲

◇ 技   竜牙貫通撃、岩撃槍

◇ 魔術  岩弾、岩壁


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 10

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