第218話 爆発
アルジはガムヤラトラゾウの背中に降り立つ。
ガムヤラトラゾウは大きく体をくねらせる。
海に振り落とされそうになるアルジ。
ガッシリと背ビレをつかんでしがみつく。
その様子を見下ろすガシマとオンダク。
ガシマ「やりやがった…!」
オンダク「あいつ…!正気か…!」
そして、アルジは突き立てる。
光輝く勇気の剣を。
ガムヤラトラゾウの背中に。
強く、深く。
◇ ガムヤラトラゾウに7723のダメージ。
さらに強く。
さらに深く。
◇ ガムヤラトラゾウに8452のダメージ。
もう1度、突き立てる。
アルジ「うおおおおおー!!!!」
精一杯の力を込めて。
◇ ガムヤラトラゾウに9330のダメージ。
そのときだった。
ガムヤラトラゾウ「ジィィアアアア!!!!」
ガムヤラトラゾウの体が急激に膨れ上がる。
黒かった体の色は一気に赤みを帯びていく。
アルジ「…なんだ!!?」
頭上からオンダクの声。
オンダク「アルジ!!!つかまれ!!!」
槍の柄をカルスの下へ垂らしていた。
アルジは腕を伸ばしてそれにつかまる。
アルジ「…助かる!!!」
じりじりとカルスが高度を上げた、そのとき。
真っ赤に膨れたガムヤラトラゾウは大爆発。
大きな水しぶきが上がる。
強烈な爆風を受けてカルスは吹き飛ばされた。
下から強く突き上げられるように。
アルジたちも飛ばされる。
宙を舞い、落ちていく。
青く広い海原に。
島にも町にも泳いでいくには遠過ぎる。
そんな場所に4人は落ちた。
カルスは空中でくるくると回転する。
注がれる魔力を失って縮んでいった。
やがてトプンと小さな音を立てる。
海の中へ沈んでいく。
◆ ドノカ町 砂浜 ◆
その爆発を警備隊は見ていた。
ユウマン「あ!?…なんだ!!?」
遠い海の上。
見たことのない水しぶき。
聞いたことのない爆発音。
一体何が起きたのか。
遠過ぎて警備隊員たちには分からない。
首を傾げて考え込んで話し合う。
討伐隊は全員やられてしまったのか。
任務は失敗に終わってしまったのか。
あるいは、古代獣が倒されたのか。
憶測が飛び交う。
◆ ナミナカ荘 ◆
そこは1階の広い客室。
ホウノたちは不安な様子。
イイナヨが問いかける。
イイナヨ「どうしました?」
ホウノ「よくないことが…起きてるみたいです」
イイナヨ「よくないこと?」
ホウノ「はい…」
イイナヨ「祈りましょう」
ホウノ「………」
イイナヨ「今できることはそれだけです」
目を閉じてアルジたちの無事を祈る。
◆ 海の上 ◆
爆発の衝撃でアルジたちは気を失っていた。
海原を漂う。
そのとき。
4人が身につけていたお守りが光り出す。
◆◆ 夕刻 ◆◆
◆ ドノカ町 ◆
ユウマンは焦り出す。
ユウマン「戻ってこない…。やられたのか!?」
隊員たちの顔には緊張と不安の色。
間もなく日が沈む。
ユウマン「仕方ないか…!」
彼はガシマから渡された合離蝶を手にした。
討伐任務の失敗を政府に知らせる合離蝶を。
そのとき。
少し離れた場所にいた警備隊員が声を上げる。
隊員「隊長!」
ユウマン「どうした!?」
隊員「さっき漁師が来て…向こうの浜に…!
人が打ち上げられていると…!!」
ユウマン「何…?」
アルジたちは目を覚ます。
ナミナカ荘から遠く離れた砂浜の上で。
アルジ「…うう…」
ぼんやりとした意識の中、体を起こす。
ガシマ「…ここは…どこだ?」
オンダク「助かった…のか?」
エミカ「…あれ?」
アルジたち4人の首に下げられていたお守り。
布も糸もぼろぼろにくずれていた。
ほとんど原型を留めていない。
4つのお守りの糸はほどけて絡まり合っている。
まるでアルジたちを繋ぎとめるように。
ガシマ「これは…」
アルジ「お守りのおかげで…助かったんだ」
エミカ&ガシマ&オンダク「………」
アルジは微かな記憶を呼び覚ます。
アルジ「海に落ちて、息ができなくなって、
苦しかったけど、胸があったかくなって…
それからだ…。急に…楽になった。
体が…軽くなった。
息も…普通にできるようになって…」
エミカ「私も…そんな感じがした…」
ガシマ「こんなことが…あるんだな」
オンダクが気づく。
走ってくるユウマンたちに。
オンダク「おい、見ろ」
アルジ&エミカ&ガシマ「…!」
ユウマン「おーい!!」
アルジたちは立ち上がり、手を振って応える。
◇ ガムヤラトラゾウを倒した。
◇ アルジたちは戦いに勝利した。
◇ アルジはレベルが上がった。(レベル30 → 31)
◇ エミカはレベルが上がった。(レベル26 → 27)
◇ ガシマはレベルが上がった。(レベル33 → 34)
◇ オンダクはレベルが上がった。(レベル35 → 36)
日が沈む。
アルジたちは歩き出す。
ナミナカ荘に向かって。
警備隊とともに。
◆ ナミナカ荘 宴会場 ◆
その晩、ささやかな宴が開かれた。
町の踊り手がやってきて、披露する。
ノイ地方の伝統舞踊を。
その舞いは素朴ながら優美だった。
ナミナカ荘の料理人たちもやってきた。
限られた食材でいくつかの料理を振る舞う。
派手さはなくても深い味わい。
ホウノたちがやってくる。
アルジたちの席の前に。
ホウノ「本当にありがとうございました。
魔獣を倒していただき…」
アルジ「オレたちの方こそありがとう」
エミカ「最後はお守りの力に助けられた」
ホウノ「私たちは…できることをやっただけで…」
オンダクはホウノたちに笑いかけた。
オンダク「海に落ちるとき、オレは確信した。
これはもう助からないと」
ホウノ「………」
ガシマも笑う。
ガシマ「こんな力があるとは…。不思議な力だ。
そして、なんとも見事な力だ」
ホウノ「光栄でございます」
お守りを作ったホウノたち5人。
照れ笑いを浮かべる。
顔を赤らめてうつむいた。
そこへショウキとイイナヨもやってくる。
ショウキ「本当に助かりました」
イイナヨ「ありがとうございました」
エミカ「イイナヨさん、傷の手当てありがとう。
あなたが光術使いで助かった」
イイナヨ「大したことはしていません。
驚きました。
皆さん、ほとんど無傷でしたから…」
ショウキ「大前隊の方々は鍛え方が違いますね」
アルジ「オレたちは実は…」
エミカ「大前隊ではありません」
ショウキ「なんと…」
ガシマ「オレたちが連れてきたんだ。
魔獣狩りで腕がいいのがいると聞いてな」
ショウキ「そうだったんですね。
優秀なお手伝いの方で…」
オンダク「手伝いじゃないさ」
ショウキ「………」
オンダク「大事な戦力だ。
というか、この2人がいたからだ。
今回の任務が成功したのは」
ガシマ「…そうだな」
アルジ&エミカ「………」
ショウキ「そうでしたか…。
大変お疲れ様でした」
そして、町の人々は宴会場から出ていく。
アルジたちは食事を終えて立ち上がる。
去っていく人々を見送った。
イイナヨが去り際に言う。
イイナヨ「本当によかったです。
お守りがあなた方の力になれたようで」
アルジ「何が起きたのか分からないけど、
あんなすごい力があるんだな」
イイナヨ「はい。
あなた方を守ってくれてよかったです。
……今回は」
アルジ「今回は…?」
イイナヨ「秘術は…危険な力でもあります。
人を守ることも救うこともできれば、
傷つけたり殺めたりすることもできます」
アルジ&エミカ&ガシマ&オンダク「………」
イイナヨ「遥か昔、特に強い力を持った者は、
思いを込めるだけで人を殺せたそうです」
アルジ「思いを込めるだけで…?」
イイナヨ「はい。暴走させるのです。
強い力を込めて。動かすのです。
本来の働きを超えて、激しく、大きく。
体の細胞や組織を。
そして、命を燃やして枯らすのです。
そんなことができたのは、ごく一握りの人。
そのように聞いています」
ガシマ&オンダク「………」
イイナヨ「どうやってそこまで力を高めるのか。
今ではもう分かりません。
知る手立てもありません。
そんな強い秘術を使える人はいませんし、
力を高める方法について詳しく書かれた
貴重な書物も失われてしまったので。
今ではホウノたちのような使い手が
かろうじて残っている程度でございます」
アルジ「オレのこの剣も…」
イイナヨ「ええ。昨夜の強い光。
間違いありません。
あれは、秘術の力。
強い力の使い手がその剣に…
なんらかの秘術を使い、力を込めた。
何かの目的で。
おそらく…そういうことではないでしょうか」
アルジ「そうか…」
ショウキ「イイナヨ、もういい時間だ。
我々もそろそろ失礼するとしよう」
イイナヨ「はい」
ショウキ「それでは、さようなら」
イイナヨ「さようなら」
別れの挨拶を交わす。
去っていくショウキとイイナヨ。
宴会場はアルジたち4人だけになった。
魔灯火の明かりが部屋の中を照らし続ける。
ナミナカ荘の従業員たちがやってきた。
従業員A「お部屋の準備ができております」
ガシマ「ああ。ありがとう」
従業員B「1階の奥の大きな客室です。
ご案内します」
ガシマ「分かった。あとで行く」
アルジ「あとで…?」
ガシマ「やることがある」
ガシマは窓から外を見る。
警備隊が浜辺にいた。
彼らは宴の間もずっと見張りを続けていた。
ガシマ「1つ…
あいつらに聞かなきゃならねえ」
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 31
◇ HP 3753/3753
◇ 攻撃
48★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 防御
38★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★
◇ 魔力 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、雅繊維戦衣
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り、
雷刃剣
◇ 魔術 雷動
◇ エミカ ◇
◇ レベル 27
◇ HP 2415/2415
◇ 攻撃 10★★★★★★★★★★
◇ 防御
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
32★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、濃色魔術衣
◇ 魔術 火球、火砲、火樹、火海、王火
氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術
◇ ガシマ ◇
◇ レベル 35
◇ HP 2367/2367
◇ 攻撃
38★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
29★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 素早さ
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 魔力 11★★★★★★★★★★★
◇ 装備 練磨の大斧、金剛武道着
◇ 技 激旋回斬、大火炎車
◇ 魔術 火弾、火砲
◇ オンダク ◇
◇ レベル 36
◇ HP 3083/3083
◇ 攻撃
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 防御
41★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★
◇ 素早さ
19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 10★★★★★★★★★★
◇ 装備 竜牙の長槍、超重装甲
◇ 技 竜牙貫通撃、岩撃槍
◇ 魔術 岩弾、岩壁
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 10