第217話 海原
エミカはガシマに言った。
エミカ「ガシマさんは…降りてほしい」
アルジ&オンダク「………」
エミカの要求。
動揺を隠せないガシマ。
ガシマ「…どういうことだ?」
エミカ「そのシミです」
ガシマ「………」
ガシマの武道着についた黒いシミ。
それを指差してエミカは言う。
エミカ「多分それに秘術の力が」
ガシマ「…何?」
エミカ「それのせいでばれてるんだと思う。
手に取るように…
私たちの動きがばれてるんだと思う。
ガムヤラトラゾウに」
アルジ「なんだって…?」
ガシマ&オンダク「………」
◆◆ 昨夜 ◆◆
◆ ナミナカ荘 風呂 ◆
湯に浸かりながらエミカとホウノが話をする。
お守りに込められた力について。
エミカ「お守りありがとう。大事にする」
ホウノ「はい。少しでもお役に立てたら…」
エミカ「赤と…黒の…糸の力か」
ホウノ「赤は動かす力。黒は繋げる力です」
エミカ「動かすっていうのは…」
ホウノ「人を元気にすることができます。
いろいろな動き、働きを活発にできるんです」
エミカ「…そうなんだ。繋げる力は?」
ホウノ「はい。心が、体が繋がるのです」
エミカ「心が…体が…繋がる…」
イイナヨが寄ってくる。
イイナヨ「黒の力で繋がると、
同じ心、同じ体を持てるのです」
エミカ「同じ心…同じ体…?」
イイナヨ「はい。たとえ遠く離れていても、
何を見ているのか、何を聞いているのか、
そして、今どこにいるのか、
手に取るように分かるようになる。
そのように言われています」
エミカ「…すごい。そんな力が…」
ホウノ「ですが、私たちはまだまだ未熟です。
もっとお稽古しないとそうはなりません。
秘術の道は長き道。
終わりのない道なんです」
エミカ「秘術の道…。そっか…」
イイナヨ「お守りにも黒の力が働いています。
ですが、とても弱い力です。
励ましの気持ちがどうにか届くほどの…。
ですので…あなた方のお話が聞こえてくる…
筒抜けになる…そんなことはありません。
ですので、安心して身につけてくださいね」
エミカ「安心したよ」
イイナヨ「ふふ…」
ホウノ「ああ…でも、一体いつになったら
黒術を使いこなせるようになるんだろう?」
イイナヨ「強い術が使えるようになっても、
絶対に悪用してはいけませんからね」
ホウノ「それは…分かってますよ!」
◆◆ 現在 ◆◆
◆ 縁環島 ◆
エミカはガシマに伝えた。
ホウノとイイナヨから聞いた話を。
ガシマ「黒の力…繋げる力…か」
エミカ「そうだ」
ガシマはラアムから降りた。
斧を高く持ち上げて言う。
ガシマ「ただ降りるだけじゃつまらねえ」
エミカ「………」
アルジ「…どうする?」
ガシマ「挟み撃ちだ」
エミカ「ガシマさんが…反対側から…」
ガシマ「そういうことだ」
オンダクもラアムから降りる。
エミカ「オンダクさん」
オンダク「オレもガシマとともに行く。
お前たちの方へ誘い出してみせよう」
ガシマ「好機を逃すなよ!」
エミカ「分かった」
アルジ「よし、やるぜ」
アルジたちは二手に分かれる。
ガシマとオンダクが右回りに進む。
アルジとエミカは左回りに進む。
ガシマとオンダクは魔力を高めて走る。
アルジ「どうだ?」
エミカ「来てる…。古代獣はこっちに来てる」
アルジ「予想は当たりか。作戦成功だな」
エミカ「あとは倒せたら完璧だ」
アルジ「オレたちも降りないか」
エミカ「そうしよう」
ラアムから降りて歩き出す。
林の中を静かに歩く。
エミカ「もうかなり近い」
アルジ「うまく追い立ててくれてるな」
アルジとエミカは草むらの中、腰を落とす。
息を潜め、ガムヤラトラゾウが来るのを待つ。
ガサッと遠くの茂みで音がする。
アルジが立ち上がる。
アルジ「なんだ、ウサギか!」
エミカ「しっ…!」
アルジ「……!」
エミカが先に見つける。
傷だらけのガムヤラトラゾウの姿を。
指差して、その居場所をアルジに教える。
小さな声でエミカは伝えた。
エミカ「…アルジ…」
アルジ「おう」
エミカ「…カルスで帰ることを考えると…」
アルジ「ああ」
エミカ「…使える魔術は限られる…」
アルジ「おう」
エミカ「雷砲を使う」
アルジ「雷術か…」
エミカ「1発撃つのが…精一杯だと思う…
あいつの動きが止まったら…」
アルジ「分かった。任せろ…!」
エミカが立ち上がる。
ガムヤラトラゾウが気づく。
驚異的な速さで放たれる雷砲。
大きな音を立てて命中。
ガムヤラトラゾウ「シャァアアアア…!!」
◇ ガムヤラトラゾウに1015のダメージ。
そして、アルジが走り出す。
アルジ(これで決める!!
今度は最後まで!容赦しない!)
大きく剣を振り下ろし、斬りつけようとする。
その瞬間だった。
アルジ「ぐああああああ!!!!!」
エミカ「アルジッ!!!!」
離れた場所にいたガシマとオンダク。
アルジの叫び声を聞く。
オンダク「あいつ…!」
ガシマ「やらかしたか!!」
ガムヤラトラゾウを痺れさせたのは一瞬。
アルジの攻撃は間に合わなかった。
◇ アルジに2254のダメージ。(HP3603→1349)
ガムヤラトラゾウの口から吐き出された黒い液体。
アルジはそれを大量に浴びた。
その熱さに倒れ込み、転がって苦しむ。
エミカ「アルジ!!!」
エミカが手をかざす。
光が出る。
アルジの傷を癒していく。
エミカ(ダメだ…!魔力が足りない!光が弱い!
これじゃ再生魔術にならない…!)
治療魔術で回復させる。
◇ アルジはHPが914回復した。(HP1349→2263)
アルジ「うう…ごめんな…エミカ…!」
エミカ「違う!アルジは悪くない!
雷術の威力が足りなかったんだ!」
その間にガムヤラトラゾウは逃げていく。
ガシマとオンダクが走ってきて合流する。
ガシマ「おい!!獲物は!?」
エミカ「………」
立ち上がり、魔波を感知。
深刻な顔で彼女は言う。
エミカ「海の方に逃げた…!」
オンダク「何!!?」
アルジたちは走って追いかける。
だが、ガムヤラトラゾウは見つからない。
生い茂る木々の間を駆け抜けて砂浜へ。
砂の上には黒い液体が垂れたあと。
波打ち際まで伸びていた。
ガシマ「チィッ!もう行っちまったのか」
オンダク「町を狙われたらまずいな…」
ガシマ「ああ…まずいなんてもんじゃねえ…!」
エミカは魔力回復薬を5錠飲む。
それから、カルスを取り出した。
砂浜の上で展開させる。
エミカ「乗って!!」
アルジたちは跳び乗る。
カルスは浮上する。
海原の上を低く飛ぶ。
エミカ(速度が上がらない…!)
ふらふらと揺れながらカルスは海の上を飛ぶ。
ガシマ「やつは今どこにいる?」
エミカ「向かってる!町に向かってる!!」
ガシマ「!!そうか…!」
オンダク「追いつけそうか?」
エミカ「できるだけのことはする…!」
そのとき。
ガシマが見つける。
海面に浮かんで泳ぐガムヤラトラゾウを。
3枚の背ビレを海面から出している。
体をくねらせ泳いでいる。
ガシマ「いたぜ!」
オンダク「あれか!!」
エミカもその姿を確認する。
だが、なかなか追いつけない。
遠くに見えていた町が徐々に近くなる。
エミカ「…くっ…!」
エミカの目に涙が浮かぶ。
歯を食いしばり、魔力をカルスに注ぐ。
不安定に揺れながらも少しずつ加速する。
ガシマ「よし、このまま追い越せ!
砂浜へ先に行くぞ!
警備隊とともに迎え撃つ!」
オンダク「その調子だ!もう少しだ!頑張れ!」
エミカ「………」
エミカは懸命に操縦した。
ほとんど尽きかけている魔力で。
そのときだった。
ガシマ「…おい、お前!何してる?」
ガシマはアルジに問いかけた。
アルジはカルスの端に立っている。
海面を見下ろしている。
アルジ「とどめを刺しにいく」
ガシマ「何言ってやがる!!」
アルジ「砂浜に先回りしてどうするんだ?
そこにやつが来るとは限らないだろ!」
ガシマ「!…なんだと…!!?」
アルジ「島に引き返すかもしれない!
オレたちを避けて
別な場所から上陸するかもしれない!」
ガシマ「アルジ…!てめえ…!よく言うぜ!
しくじっといて…!!」
アルジ「しくじったからオレが行く…!
オレがあいつにとどめを刺してくる!」
エミカを見てアルジは言う。
アルジ「カルスをあいつに近づけてくれ。
オレが跳び移れるように…!」
エミカ「…え!?」
オンダク「貴様!!何を言ってる!!」
ガシマ「ふざけんじゃねえ!!!」
アルジは力強く答えた。
アルジ「やる。必ずやる。オレを信じろ!!」
エミカ「…アルジ!」
ガシマ&オンダク「!!」
勇気の剣が強い光を放つ。
その光にガシマもオンダクも目を細めた。
ガシマ&オンダク「!!!?」
アルジは再び海を見下ろす。
ガムヤラトラゾウはすぐ近くにいた。
アルジ「とどめを刺したら、すぐに戻る。
オレが跳び移れるように
あいつの近くで飛ばしていてくれ」
エミカ「…本当にやるのか!」
ガシマ(本気なのか…!?)
オンダク(いかれたやつだ…!)
そして、アルジはカルスから跳んだ。
晴れた空の下、荒れた海の上。
縁環島の古代獣討伐は最終局面を迎える。
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 30
◇ HP 2263/3603
◇ 攻撃
47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 防御
38★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★
◇ 魔力 13★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、雅繊維戦衣
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り、
雷刃剣
◇ 魔術 雷動
◇ エミカ ◇
◇ レベル 26
◇ HP 2234/2234
◇ 攻撃 10★★★★★★★★★★
◇ 防御
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 魔力
46★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、濃色魔術衣
◇ 魔術 火球、火砲、火樹、火海、王火
氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術
◇ ガシマ ◇
◇ レベル 33
◇ HP 2178/2178
◇ 攻撃
36★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
27★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 素早さ
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 魔力 10★★★★★★★★★★
◇ 装備 練磨の大斧、金剛武道着
◇ 技 激旋回斬、大火炎車
◇ 魔術 火弾、火砲
◇ オンダク ◇
◇ レベル 35
◇ HP 2841/2841
◇ 攻撃
28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 防御
39★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 9★★★★★★★★★
◇ 装備 竜牙の長槍、超重装甲
◇ 技 竜牙貫通撃、岩撃槍
◇ 魔術 岩弾、岩壁
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 15
◇◇ 敵ステータス ◇◇
◇ ガムヤラトラゾウ ◇
◇ レベル 42
◇ HP 122553
◇ 攻撃
31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★
◇ 防御
37★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
29★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 魔力
44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★
◇ 秘力
36★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔術 火牙、火爪、火毛、王火
氷牙、氷爪、氷鱗、王氷
◇ 秘術 赤裂
青眠
黒液




