第215話 全力
林の中を進んでアルジたちはたどり着く。
縁環島の中心部、軍事実験が行われた場所に。
円形の大きく凹んだ地形が目の前に広がる。
アルジ&エミカ&ガシマ&オンダク「………」
表土がごっそり失われ、岩盤が露出している。
アルジ「近くで見るとやけにでかく感じるな」
エミカ「空から見るより高低差がすごい」
オンダク「気をつけろ。
過去に何人も落ちて死んだと聞く」
アルジ「死んだ…」
ガシマ「この急斜面だ。
打ちどころが悪ければ死ぬだろう」
ガシマが1人、凹みに向かって歩いていく。
その大きさを自分の目でよく確かめながら。
ガシマ「アマ円よりも…少し大きいぐらいか?」
凹みの方を向いたまま語る。
ガシマ「かつては多くの観光客が見にきた」
アルジ&エミカ「………」
ガシマ「この凹みの周りをぐるりと1周歩く。
そうすれば不思議な力がもらえる。
そう信じられていた。
観光地としての人気が頂点に達したとき、
老若男女が列をなし、歩いていたという。
この凹みを取り囲み、ゆっくりぐるぐると。
日が出ている間中、途切れなかったという。
だが、今じゃこの有様だ」
アルジ「見捨てられた島になった…だっけ」
ガシマ「そういうことだ。
みんな気づいちまったんだ。
この島には何もないことに。
不思議な力も迷信だと。
なんといっても軍事実験が生んだ負の遺跡。
1度悪い噂が広まれば人々の足は遠のく。
浮かれた観光客が落ちて死んだとか」
エミカ「地面をこんなに凹ませるなんて…
一体どういう実験だったんですか?」
オンダク「ここで何かを爆発させたようだ」
アルジ「何かを…?」
オンダク「秘力で何かを爆発させた。
何かは分かっていない」
エミカは深刻な顔で言う。
エミカ「…無理だと思う」
アルジ&ガシマ&オンダク「………」
エミカ「魔術じゃ…こんなに大きな穴は…
秘力…そういう別な力じゃなきゃ…」
オンダク「…そうか」
ガシマ「…とにかく行くぜ。
さっさと倒しちまおう」
ガシマが最初に下りていく。
崖のような斜面を。
凹みの中心に向かって。
その地形は、すり鉢状。
下へ降りるほど斜面はなだらか。
アルジ、エミカ、オンダクもガシマに続く。
エミカ「わっ!」
アルジ「大丈夫か?…うおっ!」
2人で転びそうになる。
足元の岩が崩れ落ちる。
ガラガラと、パラパラと。
斜面の上の方からオンダクが声をかける。
オンダク「ゆっくりでいい。慎重に行くぞ。
戦う前から負傷してはどうしようもない」
エミカは足を止めてじっと見つめる。
凹みの中心に掘られた深い穴を。
エミカ「………」
その奥から、ただならない量の魔波を感じる。
エミカ「魔波だ!強い魔波だ。中心の穴から」
アルジ「…オレにも分かる」
オンダク「間違いないな。あの穴だ」
ガシマ「あの穴にガムヤラトラゾウはいる!」
アルジたちは急な斜面を下り切る。
感じたことのない違和感をアルジは覚える。
アルジ「…なんだ?これは?」
エミカ「どうした?」
アルジ「なんか…さっきから重くないか?」
エミカ「重い…?」
アルジ「空気が…重い…」
エミカ「…言われてみると、そうかも」
アルジ「まるですべてが死んでるような。
時が止まったような…」
エミカ「…うん」
オンダク「オレにはその感覚分からんな。
だが、それも結局は秘力のせいじゃないのか?
何しろここは生命の存在を拒む場所だ」
アルジ「生命の存在を拒む…」
オンダク「草の1本も苔の1つも生えない場所。
どういう理由でこうなったのか。
それは知らないが」
ガシマ「秘術だろ。
ここが秘術で汚染された土地だからだ。
軍事実験の影響で地中に染みついた秘力。
そいつが拒んでるんだ。
生命が息吹き、根づくのを。
何千年も、ずっと拒み続けてんだろう」
アルジ「何千年も…」
アルジたちは凹みの中心にたどり着く。
深い穴は、もうすぐそこにあった。
その穴の直径はアルジの背丈ほどもある。
先頭のガシマが穴に近づく。
ガシマ「ちょっとばかりのぞいてみるか」
エミカ「気をつけて…」
ガシマ「任せとけ」
アルジ「大丈夫なのか…?」
手にした斧が赤い炎に包まれる。
いつ敵が飛び出してきても戦えるように。
彼が穴をのぞき込もうとした、そのとき。
ガシマ「!!?」
ドバッと大きな音が鳴る。
穴から液体が噴出する。
真っ黒な液体がガシマの全身にかかった。
ガシマ「ぐおおおおおおおおお!!!!」
アルジ、エミカ、オンダクが駆け寄る。
倒れこみ、のたうちまわるガシマの元へ。
◇ ガシマに1453のダメージ。(HP2178→725)
ガシマ「ぐ…ぐううううう…!!」
エミカが再生魔術を使う。
真っ黒な液体で焼かれた皮膚が治っていく。
ガシマ「く…くそ…!!」
エミカ(高温の液体…!これは魔獣の体液!?)
アルジとオンダクは武器を手に待ち構える。
穴からガムヤラトラゾウが現れるのを。
アルジ「いつでも来い!!」
ゆっくりと立ち上がるガシマ。
◇ ガシマはHPが全回復した。(HP725→2178)
彼の体は怒りで震えていた。
黒いシミが体にいくつも残っている。
ガシマ「この野郎…!!許さねえ…!!!」
斧を包む炎の勢いは強くなる。
ゴポゴポと穴から音が鳴る。
だが、一向に魔獣は現れない。
しばらくしてエミカが言う。
エミカ「私が魔術で攻撃してみる」
アルジ「そんなことして大丈夫か?」
エミカ「多分だけど…大丈夫…!」
オンダク「オレたちは…」
エミカ「後ろで見ててください」
ガシマ「…なら、距離をとるぞ。
あの液体はやば過ぎる!」
アルジ「おう」
穴から遠ざかるアルジたち。
エミカ(ここだ…。ここが理想的な距離。
液体が多少噴き出しても避けられる。
それでいて、氷術の威力も下がらない。
氷術…。そうだ。ここは氷術だ。
高熱には冷気を。
どんな魔獣か知らないけど凍らせてみる!)
エミカは天界石の杖を握りしめた。
たちまち強い冷気が彼女の周りに巻き起こる。
エミカ(ミリ!お願い!私に力を貸して!!
最大限の王氷を!!
あの穴へ撃ち込むために!!)
息を飲むアルジ。
ガシマとオンダクは彼女の魔力の勢いに後退り。
アルジ(この1発で終わっちまうかもな!
今回の古代獣は!)
ガシマは驚き、じっと見守る。
ガシマ(オレは…過去に1度…1度だけ見た!!
あれは…都に火を吹く魔獣が現れたとき!
大前隊と魔術院が討伐のため派遣されたとき!
そこで…オレは見た!たった1度だけ!!
都で1番の氷術使い魔術院院長ミナヨニ!
あの方の王氷を!そのとき!見た!!
圧倒的だった!!巨大な魔獣を…!
たった1発で仕留めてみせた…!
オレはあのとき度肝を抜かれた!
そして、思った!!
こんなに威力を高められるものなのかと!)
ガシマの額にたくさんの汗が浮かぶ。
ガシマ(だが!!どうだ!?今のエミカは!!
この冷気!はっきり分かる!超えている!
明らかにあのときのミナヨニを超えている!)
周囲の空気の水分が凍りつく。
キラリキラリと輝きだす。
オンダクは思わず笑う。
オンダク(この魔力…この魔術…いい勝負だ。
アヅミナに全然負けちゃいない…。
これほどの魔術師でありながら…
なぜ魔術院に属していない…?)
そして、撃ち込まれる。
エミカの全力の王氷が。
深い穴の中へ。
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 30
◇ HP 3603/3603
◇ 攻撃
47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 防御
38★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★
◇ 魔力 13★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、雅繊維戦衣
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り、
雷刃剣
◇ 魔術 雷動
◇ エミカ ◇
◇ レベル 26
◇ HP 2234/2234
◇ 攻撃 10★★★★★★★★★★
◇ 防御
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 魔力
46★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、濃色魔術衣
◇ 魔術 火球、火砲、火樹、火海、王火
氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術
◇ ガシマ ◇
◇ レベル 33
◇ HP 2178/2178
◇ 攻撃
36★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
27★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 素早さ
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 魔力 10★★★★★★★★★★
◇ 装備 練磨の大斧、金剛武道着
◇ 技 激旋回斬、大火炎車
◇ 魔術 火弾、火砲
◇ オンダク ◇
◇ レベル 35
◇ HP 2841/2841
◇ 攻撃
28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 防御
39★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 9★★★★★★★★★
◇ 装備 竜牙の長槍、超重装甲
◇ 技 竜牙貫通撃、岩撃槍
◇ 魔術 岩弾、岩壁
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 15




