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アルジ往戦記  作者: roak
213/300

第213話 着陸

アルジはナミナカ荘の風呂に浸かる。


アルジ(…いろいろあったんだな。

 ガシマもオンダクも)


大きな窓に目を向ける。

見えたのは夜の闇。


アルジ「………」


下の方からは明かりが見える。

目隠し板のわずかな隙間からチカチカと。

それは海を見張る警備隊の灯火の明かり。


アルジ(…今夜も落ち着いて休めそうだ。

 ありがとう。ドノカ町の人たち…)


目を閉じる。

湯の温度はちょうどよかった。

体を洗って浴室から出る。

かなりの時間が経っていた。


アルジ(ちょっと長湯したかな)


服を着て脱衣所を出る。

エミカが立って待っていた。


エミカ「温まったみたいだな」

アルジ「ああ、いい風呂だった。そっちは?」

エミカ「思ったより広くてよかった。

 イイナヨさんとホウノさんたちがいた」

アルジ「そっか」

エミカ「いろいろ話が聞けて楽しかった」

アルジ「そっか。よかったな」

エミカ「ああ。ガシマさんが1番人気だったな」

アルジ「………は!?」


宴会場に戻る。

ガシマとオンダクは布団に潜ろうとしていた。

アルジとエミカの布団も敷いてある。


アルジ「布団ありがとう」

オンダク「気にするな」

ガシマ「団子と干物は残しておいた。

 食ったら早めに寝ろ」

アルジ「ああ」


イイナヨが持ってきた2つの箱。

アルジはそれぞれ開けてみる。

団子も干物もたくさん残っていた。


アルジ「食わなくていいのか?」

ガシマ「食った。どっちもうまかった」

アルジ「ちょっとしか食ってないだろ」

ガシマ「必要な栄養は摂取したからな」

アルジ「必要な栄養って…」

オンダク「オレたちは活汁を飲んだ。

 活汁を飲めばとりあえず大丈夫だ」

アルジ「…活汁?」

ガシマ「お前たちも飲むか?特別な飲み物だ。

 戦地での栄養補給のため開発された」

アルジ「特別な飲み物なのか…」

エミカ「飲んでみようか」

アルジ「そうだな!」

ガシマ「ほら」


ガシマは荷物入れから1個取り出して投げた。

アルジは両手で受け取る。


アルジ「………」

ガシマ「一気に飲め」

アルジ「ああ」

エミカ「私にも少しくれ」

アルジ「分かった」


フタを開けて匂いをかぐ。


アルジ「匂いは…特にしないな。…いや…

 なんか…変な香りが…少し…とろみもある」

エミカ「………」


アルジは注意深く1口飲む。


アルジ「!!!?」


味わったことのない独特な風味に彼は驚いた。


ガシマ「はっはっ!」

オンダク「吐き出すなよ」

アルジ「…く…!」


顔をしかめながらなんとか飲み込んだ。


アルジ「こいつはかなりキツイな…!」

エミカ「私にもくれ」

アルジ「ああ」


容器をエミカに渡す。

彼女はためらうことなく口にした。


エミカ「…!!」

アルジ「キツイだろ」

エミカ「…うん。でも、飲めなくはない」

アルジ「本当か?」

エミカ「マシナシコの方がキツかった」

アルジ「あっちの方がマシだろ」


ガシマは笑って言う。


ガシマ「戦地での適応力はエミカが上みてえだな」

アルジ「適応力って…」

オンダク「活汁は貴重なものだ。残すなよ」

アルジ「慣れてみせるさ」

エミカ「ほら」


アルジは再び活汁を飲む。

目に涙が浮かんだ。


アルジ「げえ…」

エミカ「はは」


それから、団子と干物を食べた。


アルジ「どっちもうまい」

エミカ「特産品というだけあるな」


それぞれ3分の1ほど残す。

ガシマとオンダクはすでに寝ていた。

アルジとエミカも寝支度して布団に潜る。

温まった体。

柔らかい布団。

満たされた空腹。

深い眠りへ落ちていく。

速やかに滑らかに。



◆◆ 翌朝 ◆◆

ガシマが1番に起きて声を張る。


ガシマ「朝だ。起きろ」


日の出前。

空が明るくなり始める頃。

窓からは海の様子が見える。

縁環島の輪郭もぼんやりとだが確認できる。

アルジたちは身支度をして、朝食を済ませた。

朝食の内容は、団子、干物、そして、活汁。

団子と干物の箱はどちらも空になった。


アルジ「朝の活汁もなかなか効くぜ」

エミカ「栄養があるのは分かるけど」

オンダク「あれが好きな人間なんていない。

 大前隊の中にもな」

アルジ&エミカ「………」

オンダク「みんな我慢して飲んでいる。

 お前たちの飲みっぷりはむしろいい方だ」

ガシマ「あと2、3杯飲めば慣れるだろ」

アルジ「2、3本…!…げえ!」


エミカはアルジの背中をさすった。


オンダク「………」

ガシマ「…さて、そろそろ行くか」


アルジたちは宴会場を出て1階へ下りる。

裏口の戸を開けて海の方へ歩いていく。

警備隊が立っていた。


ガシマ「ご苦労だった」

ユウマン「何も異常ありません。

 夜通しここで見てましたが」

オンダク「海も静かだな」

ユウマン「はい。

 今日は天候に恵まれるでしょう」


水平線から日が上り始める。


ガシマ「こいつを頼む」

ユウマン「…はい」


ガシマは小さな物体をユウマンに手渡した。


ガシマ「日没までには戻る。だが…」

ユウマン「………」

ガシマ「戻らなかったときはそいつを宙に放れ」

ユウマン「はい」

ガシマ「そのときはお前たちも建物に退避しろ」

ユウマン「はい」

アルジ&エミカ「………」


ガシマが渡したのは合離蝶。

それに貼りつけられているのは1通の手紙。

その内容は、任務の失敗を伝えるもの。


ユウマン「島への移動は…?」

エミカ「私の魔術で行く」

ユウマン「魔術…!」


エミカはカルスを取り出して魔力を込める。

カルスは大きくなって砂浜の上を浮遊する。

警備隊員たちは目を丸くしてその様子を見ていた。


ガシマ「魔生体カルス。聞いたことはあるだろ」

ユウマン「はあ…。まさか…本当に…こんな…」

オンダク「悪いが、浜辺の警備を引き続き頼む」

ユウマン「はっ!もちろん!お任せください!」

オンダク「なるべく早く終わらせたいが…

 現地の状況次第だな」

ガシマ「…ああ」

アルジ&エミカ「………」

ユウマン「お気をつけて。

 任務成功をお祈りしております」


アルジたちはカルスに乗る。


エミカ「行くぞ」

アルジ&ガシマ&オンダク「おう」


勢いよく浮上した。

そのとき、下の方から声が聞こえてくる。


声「お気をつけてー!」


地上から何人もの声。

アルジたちは見下ろした。

そこにいたのは、ショウキ、イイナヨ。

そして、ホウノたち。

旅館の前に並んで立っていた。


アルジ「行ってくる!!」


アルジたちは手を振って応えた。

カルスは進む。

穏やかな海の上を。

縁環島をじっと見てオンダクは言った。


オンダク「オレたちの標的はガムヤラトラゾウ。

 …だが、それだけじゃない」

アルジ&エミカ「………」


ガシマが言う。


ガシマ「島にいる魔獣は全滅させる。

 全滅させない限り町に平和は戻らねえからな」

アルジ「ああ」


朝日に照らされカルスは海の上をさらに進む。

島が次第に大きく見えてくる。

エミカは現地の魔獣の魔波を感知し始める。


エミカ「………」

ガシマ「どうした?」

エミカ「いる」

アルジ「島の魔獣か?」

エミカ「ああ。強い。どれくらい強いか…

 まだはっきり分からない」

オンダク「慌てなくていい。

 分かったら教えてくれ」

エミカ「ああ」


アルジも魔獣の魔波を感じ取ろうとしてみる。


アルジ「…さっぱり分からん」


カルスは飛び続けて島の上空に到達する。


ガシマ「島全体を見せてくれ。左の方から右に」

エミカ「分かった」


その島は、ほぼ円形。

中央には岩盤がむき出しになった大きな凹み。

その周りを深く茂った草木が取り囲んでいる。

西側の海岸には数少ない島の人工物が見える。

ほとんど使われることのない古びた船着場。

廃墟となった資料館、物産館などの施設。

それらはひっそりとそこに残されていた。


アルジ「あれが…」

ガシマ「噂に聞く実験跡か」

エミカ「何か…物騒な感じがする」


アルジたちの目を特に奪ったもの。

それは島の中央にある円形の大きな凹み。

そこだけ草木が一切生えていない。

その凹んだ部分が島の大半を占めている。


エミカ「何かがいる。あの奥に…」


凹んだ部分の真ん中には大きな穴。

その穴は深く、真っ暗で底が見えない。


オンダク「中心の穴は…資料に書かれてないな」

ガシマ「最近できたものだろう」

オンダク「ガムヤラトラゾウが掘ったものか」

ガシマ「そう考えるのが自然だな」

アルジ「…巣みたいなもんか?」

オンダク「そのようだ」

エミカ「特に強い魔波があの穴から…」

アルジ「あの中にいるのか」

ガシマ「おそらくいるんだろう。そして…

 あの穴の底でガムヤラトラゾウは吸っている。

 軍事実験の影響で地中に残った力…

 未知なる力…秘力を…!」

アルジ&エミカ「………」

ガシマ「島の観察はそろそろいいだろう。

 着陸だ。乗り込むぞ。エミカ、頼む」

エミカ「ああ」


カルスは大きく旋回した。

そして、高度を下げていく。


ガシマ「中央の凹みはかなりの急斜面だ。

 その周りは森。となれば…」

エミカ「あの砂浜に着陸だな」


カルスは降りていく。

島の東側に広がる砂浜へ。


アルジ「…あれは!どういうことだ!?」

ガシマ「ほう…」


その砂浜で奇妙なものを見つけた。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 30

◇ HP   3603/3603

◇ 攻撃

 47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★

◇ 防御

 38★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★

◇ 魔力  13★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  勇気の剣、雅繊維戦衣がせんいせんい

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り

◇ 魔術  雷動


◇ エミカ ◇

◇ レベル 26

◇ HP   2234/2234

◇ 攻撃  10★★★★★★★★★★

◇ 防御

  30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

  30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  46★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、濃色魔術衣

◇ 魔術  火球、火砲、火樹、火海、王火

      氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷

      雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術


◇ ガシマ ◇

◇ レベル  33

◇ HP   2178/2178

◇ 攻撃

 36★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

 27★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★

◇ 素早さ

 30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★

◇ 魔力  10★★★★★★★★★★

◇ 装備  練磨の大斧、金剛武道着

◇ 技   激旋回斬、大火炎車

◇ 魔術  火弾、火砲


◇ オンダク ◇

◇ レベル 35

◇ HP   2841/2841

◇ 攻撃

  28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★

◇ 防御

  39★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

  19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  9★★★★★★★★★

◇ 装備  竜牙の長槍、超重装甲

◇ 技   竜牙貫通撃、岩撃槍

◇ 魔術  岩弾、岩壁


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 15

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