第212話 心境
◆ ナミナカ荘 ◆
町民たちは宴会場から出ていく。
ショウキ「これにて私どもは失礼します」
イイナヨ「おやすみなさい」
ホウノ「失礼します」
ナミナカ荘の経営者「どうぞ、ごゆっくり」
彼らはそろって1階の客室へ。
宴会場に残るアルジたち4人。
お守りと勇気の剣の光は消えていた。
ガシマ「アルジ。一体なんだ?その剣は」
アルジ「勇気の剣。
オレが生まれ育った村の宝剣だ」
ガシマ「宝剣、勇気の剣か」
アルジ「どうしてこの剣が作られたのか。
誰がなんのためにこの剣を作ったのか。
それはオレも分からない。
とにかく大昔からあるらしい」
ガシマ「謎多き剣ってわけか」
アルジ「そうだ」
オンダク「さっきの光はなんだ?
テノハにいたときも光っていた気が…」
剣を見てアルジは答える。
アルジ「力が宿ってるんだと思う。
この剣には。魔力とは違う力が。
得体の知れない不思議な力が。
オレは力をもらっていた。
強い敵と戦うたびに剣が光って…」
オンダク「剣が力を与える」
ガシマ「そんなことがあるのか」
アルジ「………」
オンダク「…面白い。
アルジ、お前は持ってるわけだ。
特別な物を。特別な力を」
アルジは小さく首を横に振る。
アルジ「オレにはない」
ガシマ&オンダク「………」
アルジ「武術大会で優勝したとか。
警備隊で活躍したとか。
あんたたちみたいな華々しい経験は。
そういう特別な経験はオレにはない」
ガシマ&オンダク「………」
アルジ「3年前、あいつらが現れたあの日、
大遊説の3人がナキ村に来たあの日とき、
村の秘宝、安定の玉が奪われたあの日、
それまでオレはのんきに暮らしていた。
どこかの町で事件が起きたとか、
どこかの村で魔獣が現れたとか、
そんなこと、気に留めないで生きていた。
友達と玉蹴り遊びしたり石投げ遊びしたり
たまには棒叩き遊びをしたりして、
楽しいことしかしてこなかった。
ややこしいことなんて
1つも考えないで暮らしてた」
エミカ(棒叩き遊びってなんだろう)
ガシマ&オンダク「………」
アルジ「それが3年前のあの日、変わった。
大遊説の3人が現れたとき、
安定の玉が奪われたとき、
いろんなことが大きく変わったんだ。
学校の先生が魔獣にやられた。
友達もやられた。
だけど、オレは生き残った。
この剣に選ばれて。
この勇気の剣に…認められて…」
ガシマ「そうか」
アルジ「小さなことかもしれない。
オレがここまでやってきたことは。
あんたたちが今までやったことと比べたら。
だけど、勇気の剣に選ばれたこと、
仲間たちに恵まれたことはオレの誇りだ。
今日ここまで旅を続けてこられたのは、
この剣と仲間たちがいてくれたおかげだ。
このことは、間違いない」
ガシマ&オンダク「………」
アルジ「なあ、エミカ」
エミカ「…ああ」
アルジ「今までありがとう」
エミカ「まだ旅は終わってないだろ」
アルジ「確かにそうだな」
ガシマは少し笑う。
ガシマ「これからだ」
アルジ「………」
ガシマ「実績なんてもんは。
これから積み上げていけばいい。
お前たちの戦いはこれからだ。
そうだろう」
アルジ「ああ」
ガシマ「まずは、明日、やるぞ」
アルジ「おう」
オンダクが立ち上がる。
オンダク「オオトノラコアを倒しただろ。
お前たちは。それも立派な実績だ」
アルジ「そういやそうだった」
オンダク「大事なことを忘れるな」
アルジ「懸賞金がまだだったからな。
それで実績って感じがしないのかも」
エミカ「それはそうかも」
ガシマ「金を数えてる最中だと言っただろ」
アルジ「こんなに時間がかかるのか?」
ガシマ「大金だからな」
アルジ「数えるだけだぜ?
出し渋ってるだけじゃないのか」
ガシマ「バ…バカなこと言うんじゃねえ。
とにかく連絡を待て!!」
アルジ&エミカ「………」
オンダク「とにかく」
アルジ&エミカ「………」
オンダク「お前たちはオオトノラコアを倒した。
あれは並の戦力で倒せるもんじゃない。
だから、オレたちは決めた。
お前たちと組むと。
お前たちとともに古代獣を倒すと。
そのことを忘れるな。そして、自信を持て。
…さて、オレは風呂に入る」
オンダクは宴会場から出ていった。
ガシマがアルジとエミカに問いかけた。
ガシマ「なんの話をしてたんだ?
オンダクと。さっき昔話してたって…」
アルジ「オンダクの家族のこととか」
エミカ「犯罪集団に報復されたって」
ガシマ「そうか」
アルジ&エミカ「………」
ガシマ「あいつは近いうちに再婚する」
アルジ「そうなのか」
ガシマ「少し前までは…もうずっと
独り身でいると決めてたみてえだが。
何か心境の変化があったんだろうな」
エミカ「なら今度こそ守らないと…ですね」
ガシマ「そうだな。
そういう意味でも成功させたい。
今回の任務は。
全員で古代獣を倒して全員で生きて帰るぜ。
任務に私情は挟みたくはねえが。
オンダクのこれからのことも考えるとな…」
アルジ「倒そうぜ。全員無傷で!」
ガシマ「その意気だ」
エミカ「島への移動はカルスですよね」
ガシマ「頼む」
エミカ「任せてください」
ガシマは立ち上がる。
窓から海の方を見る。
ガシマ「見張り、しっかりやってくれてんな」
アルジとエミカも立ち上がって見る。
暗い砂浜に灯火の光がいくつも見える。
その光は警備隊員たちの姿を照らす。
アルジ「いい人たちだな」
エミカ&ガシマ「………」
アルジ「ノイ地方の人たちは…
もっと変わった人たちかと思ってた」
エミカ「大事な食料もお守りもくれた」
ガシマ「宿も使わせてくれたしな」
アルジは拳を強く握る。
アルジ「…守りたい。
この町の人たちのためにも戦いたい」
エミカ「そうだな」
ガシマは床に座る。
アルジとエミカに言う。
ガシマ「お前たちも風呂に入ってこい。
山天楼には劣るが、それでも十分立派だ。
でかい窓からは海もよく見える。
…って、今はもう暗くて見えねえか」
エミカ「アルジ、行こうか」
アルジ「ああ」
ガシマ「女湯もなかなか立派だった」
エミカ「楽しみだ」
アルジ「入ったのか?」
ガシマ「ちらっと見ただけだ」
アルジ「ちらっと…!?」
ガシマ「誰もいねえんだから別にいいだろうが」
アルジ「…そうだな」
ガシマ「ゆっくりしてこい」
アルジ「ああ」
ガシマ「だが、もしものときは出てこいよ。
素っ裸で走ってこいとは言わねえ。
今日倒した魔獣が何頭海からやって来ようが、
服を着る時間くらいはオレ1人で稼いでやる」
アルジ「助かる」
そして、アルジとエミカは風呂へ向かう。
アルジが脱衣所に入るとオンダクがいた。
風呂から上がり、服を着たところだった。
オンダク「アルジ」
アルジ「なんだ?」
オンダク「テノハでのこと…」
アルジ「…?」
オンダク「あのとき、お前たちを見逃した。
ガシマの判断で」
アルジ「ああ」
オンダク「結果的によかったと思っている。
あのとき戦っていたら、こうはならなかった」
アルジ「そうかもな」
オンダク「だが、ガシマは責任を感じている」
アルジ「責任…?」
オンダク「バレたんだ。大君と政府の幹部に。
あのとき、オレたちが見逃したことが。
殺人事件の容疑者だったお前たちを…」
アルジ「そっか…」
オンダク「ガシマは軽薄に振る舞うことがある。
だが、根っこのところは真面目な男だ」
アルジ「ああ」
オンダク「民のため、国家のため、大君のため、
誰よりも強く思って動く」
アルジ「でも、28人ってのはどうなんだ?」
オンダク「?」
アルジ「恋人がいるって言ってただろ」
オンダク「あれか…」
アルジ「………」
オンダク「あいつは…ガシマは前に言っていた。
初めて彼女ができたのは6歳のときだと」
アルジ「は…?何…?」
オンダク「遠征先で試合を見ていた年上の少女。
声をかけられて文通するようになった。
そして、しばらくしてやめた」
アルジ「文通…」
オンダク「その女が1人目の恋人だそうだ」
アルジ「それは恋人なのか?」
オンダク「あいつに言わせれば、そうらしい」
アルジ「…そうか」
オンダク「大半がそういう女なんだろう。
28人のうちの大半が」
アルジ「そう…なのか」
オンダク「そして、
そんな女たちをあいつは全員覚えている」
アルジ「………」
オンダク「真面目なやつなんだ。
根っこのところは。
大君への忠誠心は隊で1番かもしれない」
アルジ「………」
オンダク「だからこそ、危ういときもある。
今回の任務…何がなんでも成功させよう…。
あいつは…そう思っていることだろう。
失った信頼を回復させるためにも」
アルジ「………」
オンダク「そういう意味でもオレは詫びた。
お前たちに。そして、ガシマにも。
あのとき、テノハでお前たちと会ったとき、
もっと別なやり方があったはずだ。
だが、それができなかった。
オレは頑なにお前たちを捕らえようとした。
実力行使で。だから、詫びた」
アルジ「そっか」
オンダク「だからってわけじゃないが、
いざというときは頼むぞ。
ガシマの力になってやってくれ」
アルジ「ああ、任せてくれ」
オンダク「今日の魔獣討伐も見事だった。
戦うところをこの目で見たわけじゃない。
だが、あの魔獣の死体の数を見て分かった。
お前たちの実力の一部が。
広場に着いたとき、オレは声が出なかった。
驚き、戸惑い、それから、こう思った。
オオトノラコアを倒しただけのことはあると。
明日はお前たちの実力を存分に見せてくれ。
オレたちも負けない。
大前隊の三頭として…な!」
アルジ「よろしく頼むぜ」
オンダクはニッと笑い、脱衣所から出ていった。
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 30
◇ HP 3603/3603
◇ 攻撃
47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 防御
38★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★
◇ 魔力 13★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、雅繊維戦衣
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り
◇ 魔術 雷動
◇ エミカ ◇
◇ レベル 26
◇ HP 2234/2234
◇ 攻撃 10★★★★★★★★★★
◇ 防御
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 魔力
46★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、濃色魔術衣
◇ 魔術 火球、火砲、火樹、火海、王火
氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術
◇ ガシマ ◇
◇ レベル 33
◇ HP 2178/2178
◇ 攻撃
36★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
27★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 素早さ
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 魔力 10★★★★★★★★★★
◇ 装備 練磨の大斧、金剛武道着
◇ 技 激旋回斬、大火炎車
◇ 魔術 火弾、火砲
◇ オンダク ◇
◇ レベル 35
◇ HP 2841/2841
◇ 攻撃
28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 防御
39★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 9★★★★★★★★★
◇ 装備 竜牙の長槍、超重装甲
◇ 技 竜牙貫通撃、岩撃槍
◇ 魔術 岩弾、岩壁
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 15




