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アルジ往戦記  作者: roak
210/300

第210話 本物

戸を叩く音。

下の方から聞こえてくる。

ガシマとオンダクは部屋から出ていく。

魔灯火と武器を手にして。

アルジとエミカは彼らを追いかける。

歩きながらアルジはエミカに聞く。


アルジ「…人か?」

エミカ「うん。魔獣ではない。

 それに…不自然に弱い。

 この魔波…もしかして…」


階段を下りる。

裏口が見える。

ガシマとオンダクは戸を開けた。

外に立っていたのはイイナヨ。

彼女の後ろには何人もの人。

全員が布を身にまとっていた。

青い刺繍の入った灰色の布を。


ガシマ「なんだ、あんたらか」

オンダク「危険だ。こんな時間に外に出て。

 建物の中にいろと言っただろ」

イイナヨ「ごめんなさい。

 どうしても…あなた方に…

 差し上げたいものがございまして」

ガシマ&オンダク「………」


町長のショウキが前に出てくる。


ショウキ「危険は承知しております。

 我々は話し合って決めたのです。外は危険。

 それでも、ここへ来る必要があると。

 町の警備隊からも皆様にお話がございます」

大柄な男「ドノカ町警備隊、

 隊長のユウマンと申します」

ガシマ「…上がれ。とにかくここは危ねえ」

ショウキ「はい」

ユウマン「はっ!!」

イイナヨ「失礼します」

アルジ&エミカ「………」


ぞろぞろと旅館に入ってくる町民たち。

その数24人。

宴会場に集まった。

全員が床に座る。

アルジたちは彼らと向かい合って座る。


ガシマ「で、なんだ?」

イイナヨ「こちらをどうぞ」


イイナヨは手に下げていた袋を差し出した。

その中には大きな箱が2つ。


イイナヨ「どうぞ。召し上がってください。

 お口に合うといいのですが…」

ガシマ「………」


箱を開ける。

団子と干物が入っていた。

それぞれの箱にぎっしりと。

草の香りと磯の香りが広がった。


ガシマ「…うまそうだな」

イイナヨ「どちらも町の特産品でございます。

 近くの山で採れる薬草を練り込んだ団子。

 近くの海で漁れる魚の干物でございます。

 少しでもお力になれればと思い…」

ガシマ「十分だ。心から感謝する」

イイナヨ「光栄でございます」


警備隊が勢いよく立ち上がる。

その数16人。

隊長のユウマンが声を張る。


ユウマン「本日は大変ありがとうございました!

 また、大変なときに職務を投げ出してしまい…

 申し訳ございませんでした…!」

オンダク「…いい。そんな謝るな」

ユウマン「しかし…!」

オンダク「あの状況は退避しても仕方ない。

 お前たち、よく訓練しているのは分かる。

 その体つき、鍛えていることは伝わる。

 町の警備隊としては十分な戦力だと思う。

 だが、今日のあの魔獣は強過ぎた」

ガシマ「戦い続けていたら全員死んだだろう」

ユウマン「…!!」

オンダク「…で、なんだ?お前たちの用件は。

 まさか謝るためだけに来たわけじゃあるまい」

ユウマン「…はっ!!」


一斉に武器を掲げる警備隊員たち。


ユウマン「今夜は我々が浜辺を見張ります」

ガシマ「そうかい」

ユウマン「魔獣が現れた際は…

 いち早くお知らせいたします。

 この鐘の音で!」


後方の隊員が手にしていた大きな鐘を鳴らす。

その音は、ガラン、ガランとよく響く。


オンダク「うむ…」

ユウマン「今夜はゆっくりお休みください。

 魔獣のことは気にせずに

 明日に備えてお休みください」

アルジ&エミカ「………」

ガシマ「…分かった。

 お前たちの心配り、ありがたくもらおう」

ユウマン「はっ!!!」

アルジ「ありがとう」

エミカ「ありがとうございます」

ユウマン「お気になさらず!

 行くぞ!!お前ら!!!」

警備隊員たち「はっ!!!!」


部屋を出て海へ向かう隊員たち。


アルジ「よかったな。エミカ」

エミカ「ああ。

 魔獣を感知しなくていいのは嬉しい」


部屋に残った町民は8人。

ショウキ、イイナヨ、ほかに6人。

6人のうち1人はナミナカ荘の経営者。


ナミナカ荘の経営者「宿はいかがですか?」

ガシマ「いい風呂だった。海がよく見えた。

 小さな宿だが立派なもんだ」

ナミナカ荘の経営者「ありがたいお言葉です」

ガシマ「食材は食い荒らされちまっていたが…」

ナミナカ荘の経営者「…そうでしたか。

 魔獣の仕業ですね。

 下の階に客室がございます。

 どうぞ、そちらもご利用ください」

ガシマ「いや、オレたちはここでいい。

 寝具を運んで寝るつもりだ。

 客室はお前たちが使え。

 今から帰るのは危険だろう。

 今日はここに泊まっていくといい。…なんて、

 使わせてもらってる人間のセリフじゃねえな」

ナミナカ荘の経営者「ははは…。

 町長、娘さん、私も泊まらせてもらいます。

 設備について何かありましたら、

 どうぞお申しつけください」

ガシマ「ああ。分かった」


経営者の後ろには5人の女が座っている。

いずれも若い。

かなり緊張している様子。


アルジ(この旅館で働いてる人たちか?

 …いや、違うな。そんな感じじゃない。

 オレやエミカより年下か…?

 まだ学校に通ってるくらいの…

 ミリと同じくらいか?)


そんな彼女たちに声をかけたのはガシマ。


ガシマ「どうした?お嬢さんたち」


イイナヨが5人の少女に目配せして話す。


イイナヨ「最後に…

 皆様にお渡ししたいものが…」

ガシマ「…なんだ?」


1人の少女が前に出る。

小さな袋を懐から取り出す。

ガシマの前に差し出した。

彼女の手は緊張で震えていた。


ガシマ「…なんだ?」

少女「私は、ホウノと申します…」

ガシマ「おう」

ホウノ「…お守りを…お作りいたしました…。

 皆様に…どうぞ…使っていただきたく…」

ガシマ「お守り…。そうか」


ガシマは袋をそっと開ける。

中には4つの小さな厚手の布

それぞれの布には長い紐。

首にかけられるようになっていた。


ガシマ「これは…?」

アルジ&エミカ&オンダク「………」

ホウノ「大変なお仕事と…お聞きしました…。

 どうか…皆様がご無事でありますよう…

 私たち…5人で一生懸命作りました…。

 明日は…こちらを身につけていただけたら…」

イイナヨ「どうぞ、よろしくお願いします」


ガシマはお守りの1つを手に取る。

じっと見つめる。


ガシマ「…うむ」


それから、ほかの3つも取り出す。

アルジ、エミカ、オンダクに渡す。


アルジ&エミカ&オンダク「………」


それは、どこにでもあるような布だった。

赤と黒の糸で細かな刺繍が施されている。


ガシマ「心を込めて作ったのが伝わってくる」

ホウノ「…!」

ガシマ「オレたちを…守ってくれそうだ」

ホウノ「………」


少女たちの顔がほころぶ。


ガシマ「作ってくれてありがとな。

 明日はこれを身につけて戦おう」


ガシマは早速首から下げた。

アルジ、エミカ、オンダクも首に下げる。


アルジ「どうだ?似合ってるか?」

ホウノ「大変…よくお似合いです…」


イイナヨがほほえむ。


イイナヨ「ノイ地方伝統のお守りでございます」

アルジ「伝統…」

イイナヨ「特別な力が込められております」

ガシマ「ほう…。特別な力…」

イイナヨ「赤と黒の糸…。

 この糸に力が込められています。

 赤は、動かす力でございます。

 黒は、繋げる力でございます。

 そのお守りは…

 作った者がお守りをお渡した方と繋がって、

 力を与えるものでございます」

エミカ「繋がって…力を与える…ですか」

イイナヨ「はい。

 これは…魔力とは異なる力。

 迷信だとおっしゃる方もいます。

 それでも、過去に起きています。

 お守りが効力を発揮した…。

 そう考えなければ、説明のつかないことが。

 過去に…実際に…起きているんです」

オンダク「…面白い」

ホウノ「私たちは…伝統を絶やさぬように…

 幼い頃からお稽古に励んでまいりました。

 いくらか…わずかばかりかもしれませんが、

 そのお守りが…皆様のお役に立てると…

 信じております…。願っております…」


そのとき。

エミカが気づく。


エミカ「アルジ!」

アルジ「…なんだ?」

エミカ「剣が…!」

アルジ「!!」


勇気の剣が光り始める。

薄暗い部屋の中、赤い光を力強く放つ。


アルジ「…これは!」

ガシマ「おい…なんだ…!?」

オンダク「アルジ…その剣は…一体…」


お守りも光り出す。

4人の首にかけられたお守り。

それぞれが光る。


エミカ「共鳴してる…?お守りと…!」

ガシマ「うお…!」

オンダク「この光…この感じ…見たことが…。

 まさか…!」

イイナヨ「え…え…!?」

ホウノ「こんなこと…こんなことが…!」


アルジは笑みを浮かべる。


アルジ「どうやら…

 あんたたちの力は本物みたいだぜ」

ホウノ「…!」


ホウノの目から涙がこぼれた。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 30

◇ HP   3603/3603

◇ 攻撃

 47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★

◇ 防御

 38★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★

◇ 魔力  13★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  勇気の剣、雅繊維戦衣がせんいせんい

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り

◇ 魔術  雷動


◇ エミカ ◇

◇ レベル 26

◇ HP   2234/2234

◇ 攻撃  10★★★★★★★★★★

◇ 防御

  30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

  30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  46★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、濃色魔術衣

◇ 魔術  火球、火砲、火樹、火海、王火

      氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷

      雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術


◇ ガシマ ◇

◇ レベル  33

◇ HP   2178/2178

◇ 攻撃

 36★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

 27★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★

◇ 素早さ

 30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★

◇ 魔力  10★★★★★★★★★★

◇ 装備  練磨の大斧、金剛武道着

◇ 技   激旋回斬、大火炎車

◇ 魔術  火弾、火砲


◇ オンダク ◇

◇ レベル 35

◇ HP   2841/2841

◇ 攻撃

  28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★

◇ 防御

  39★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

  19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  9★★★★★★★★★

◇ 装備  竜牙の長槍、超重装甲

◇ 技   竜牙貫通撃、岩撃槍

◇ 魔術  岩弾、岩壁


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 15

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