表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルジ往戦記  作者: roak
205/300

第205話 因縁

魔獣に襲撃された宿、ナミナカ荘。

その2階、宴会場。

そこからアルジたちは見続ける。

遠くの海原を。

縁環島を。

雨は少しずつ弱まっていった。

ガシマとオンダクは外へ出ていこうとする。


アルジ「どこに行く?」

ガシマ「海を見てくる」

オンダク「宿の中を見てくる」

アルジ「………」


エミカは部屋の隅へ。

床に座り込む。


エミカ「…疲れた。私はちょっと休む」


彼女は顔を伏せて目を閉じる。

宴会場には卓も椅子もない。

別な部屋にまとめて収納されていた。

広い床の真ん中でアルジは立ち尽くす。

外から聞こえるのは静かな波の音。


アルジ(…オレはまだそんなに疲れてない。

 まだまだ剣を振れる。魔力もまだある。

 少し…魔術技の練習でもしてみるか)


目を閉じて深呼吸。

意識を集中。

魔力を高めていく。

アルジはつかみ始めていた。

魔力を制御する感覚を。


アルジ(よし…やるか!)


目を開けて剣を振り上げる。

バチバチと雷光をまとう勇気の剣。

力強く振り下ろす。


アルジ「…くっ!!」


振り下ろした瞬間、またも雷光は消えた。

エミカは目を開けてアルジに言う。


エミカ「…よくなってきた。

 次はもっとうまくいくよ」

アルジ「どうだろな…って、起こしてごめんな」

エミカ「いいよ。

 頑張ってる人を見るのは好きだ。

 気にしないで続けてくれ」

アルジ「…ああ」


ガシマが戻ってきた。

少し雨に濡れていた。


ガシマ「やけに静かだ。

 しばらく魔獣は来ねえだろう」

アルジ「そっか」

ガシマ「魔術技の練習か?」

アルジ「ああ。

 さっきの戦い物足りなかったからな」

ガシマ「ふん…言うじゃねえか」


ガシマは斧を手にする。


アルジ「なんだ…?」

ガシマ「勝負だ」

エミカ「…?」


ガシマは斧を構える。

今にも斬りかかってきそうな顔。


アルジ「おい、待ってくれ。何考えてるんだ?」

ガシマ「今ここでオレと勝負だ」

アルジ「!?」

エミカ「………」

ガシマ「昨日から気になっていた。

 本気で斬り合ったらどっちが勝つのか。

 試してみたくてしょうがねえ。

 だから、構えろよ」


斧の刃をアルジに向ける。


アルジ「本気か?」

ガシマ「1度だけでいい。1度やれば分かる。

 本気でぶつかってこい。刃と刃。

 遊びじゃない。全力の戦いだ」

エミカ(冗談で言ってるようには見えない)

アルジ「そんなことやってる場合か?

 オレたちは古代獣と戦うんだろ。

 ケガでもしたら…」


ガシマはエミカに言う。


ガシマ「もしものときは頼む」

エミカ「…え?」

ガシマ「お前、光術使えるだろ。

 魔力の感じで…なんとなくだが分かる…」

エミカ「そんな…」

アルジ「冗談だろ…?」

ガシマ「アルジ」

アルジ「………」

ガシマ「さっさと構えろ!」

アルジ「…!」


アルジも剣を構える。


アルジ「…いいぜ、やってやる」

エミカ「アルジ…」

アルジ「大丈夫だ。エミカは見ててくれ」

ガシマ「やっと…その気になったか。

 急所は外してやるからな。安心しろ」

アルジ「へっ!

 オレにはそんな技術…

 ないかもしれないぜ!?」

ガシマ「ならオレが全部避けてやる」


宴会場の中央でにらみ合う両者。

張り詰める空気。

エミカは息苦しさを覚える。


エミカ「………」


ガシマの額に汗が浮かぶ。

彼の顔面は紅潮。

頭皮が熱を帯びる。

逆立った頭髪が揺れ動く。


ガシマ(…伝わる。…アルジ。

 お前の力が…お前の技が…。

 空気を介して伝わる!)

アルジ(隙がない…。

 簡単に踏み込めない…。何かある…。

 何か…分厚い…空気の壁のような…。

 うかつに踏み込めば…

 あっさり斬られてしまう…!

 これが大前隊…!これが三頭…!

 だが…!今のオレなら…!!)

ガシマ(10回に…2、3回ってところか?)


ガシマは構えを解く。


ガシマ「…大体分かった」

アルジ「……?」

ガシマ(…2、3回なんてもんじゃねえ。

 オレがあいつに勝てるのは…

 10回に1回もねえかもな。

 大火炎車を使ったとしても…!)

アルジ「…どうした?」

ガシマ「やめだ」

アルジ&エミカ「………」


ガシマは窓の外を見る。

海を眺める。


ガシマ「戦おうってのは冗談だ。

 なかなかの好演だっただろ」


笑いかけるガシマ。


アルジ「笑えないぜ」

ガシマ「………」


縁環島を見てガシマは言う。


ガシマ「ここからじゃ見えねえな」

アルジ「…何が?」

ガシマ「あの島の中心がどうなっているか」

アルジ「ああ…」

ガシマ「遥か昔。古代王国の時代。

 あの島でいくつも危険な実験が行われた」

アルジ「そうなのか」

ガシマ「今もその影響が残ってるらしい」

アルジ「どんな?」

ガシマ「秘術だ」

アルジ「秘術…」

ガシマ「詳しいことはオレも知らん。

 危険な軍事実験が何度も行われたらしい。

 あの島の中心で。

 秘術を使った大爆発を伴う実験だそうだ」

アルジ「そうなのか」

ガシマ「おかげで島の真ん中は大きく凹んだ。

 その凹んだところは、爆発の影響か、

 草の1本も生えない荒れ地と聞く」

アルジ「行った人がいるのか?あの島に」

ガシマ「ああ。いる。たくさんいた。

 昔は多くの観光客が訪れたらしい。

 古代遺跡の不思議な力が得られる。

 そんな話を信じて。

 幼子から年寄りまであの島に押しかけた」

アルジ「今は?」

ガシマ「もともと何もない島だ。

 飽きられちまった。

 町は少ない観光資源を盛り上げようと

 島にちなんだ料理を創作しては

 名物だと言って売り出したり、

 実在しない鳥獣をでっちあげては

 島の固有種と言って触れ込んだり、

 躍起になってた時期もあったようだ。

 10年ほど前には船の定期便もなくなった。

 今じゃほとんど誰も寄りつかない。

 見捨てられた無人島だ。

 年に数人、物好きが訪れるらしいが」

アルジ「そういう島なのか」

ガシマ「そういう島だ。

 そして、島の中心部。最も凹んだところ。

 古代獣はおそらくそこにいる」

アルジ「地中の養分を吸って…か」

ガシマ「養分ってのは誤りだ。

 分かりやすいように説明したに過ぎない」

アルジ「なら一体なんなんだ?」

ガシマ「秘力だ」

アルジ「秘力…」

ガシマ「未知なる力。秘力。どんな力か。

 オレも詳しいところは知らない。

 縁環島の地中にはそいつが残ってるらしい。

 古代の軍事実験で使われた力の残滓が。

 長い年月、弱まることなく

 その力は地中にとどまり続けてる。

 そして、ガムヤラトラゾウは吸収している。

 その力を吸い上げて強くなっているらしい」

アルジ「…そうなのか」

ガシマ「魔力とは異なる。

 太古の人々が使っていた力だ」


ガシマはアルジの方を向いて言う。


ガシマ「さっきは悪かったな」

アルジ「…え?」

ガシマ「お前を本気にさせてみたかった」

アルジ「………」

ガシマ「そうしないと強さは分からない」

アルジ「もう少しであんたを斬るとこだったぜ」

ガシマ「フッ…」

アルジ「………」

ガシマ「…大体分かった。さっきので。

 オオトノラコアを倒しただけのことはある。

 町にいた魔獣を大量に斬っただけのことはある。

 明日の戦いも少しは楽をさせてもらえそうだ」

アルジ「………」

ガシマ「強いな。お前」

アルジ「………」

ガシマ「オレはずっと思っていた。

 ガキの頃から」

アルジ「…何をだ?」

ガシマ「1番になれると。

 大陸で1番の戦士になれると」

アルジ「1番…」

ガシマ「大前隊には強いやつらがいる。

 大陸中から選び抜かれた戦士たちが。

 その中でも第一隊は頂点。頂点の10人。

 そこで1番になれば…

 それは大陸で1番強いということ。

 安直な話だ。

 だが、オレは実際にそうだと思っていた」

アルジ「あんたが大前隊に入ったのは…」

ガシマ「………」


ガシマは話す。

彼が入隊した経緯について。

そして、エオクシとの因縁について。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 30

◇ HP   3603/3603

◇ 攻撃

 47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★

◇ 防御

 38★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★

◇ 魔力  13★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  勇気の剣、雅繊維戦衣がせんいせんい

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り

◇ 魔術  雷動


◇ エミカ ◇

◇ レベル 26

◇ HP   2234/2234

◇ 攻撃  10★★★★★★★★★★

◇ 防御

  30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

  30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  46★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、濃色魔術衣

◇ 魔術  火球、火砲、火樹、火海、王火

      氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷

      雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術


◇ ガシマ ◇

◇ レベル  33

◇ HP   2178/2178

◇ 攻撃

 36★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

 27★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★

◇ 素早さ

 30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★

◇ 魔力  10★★★★★★★★★★

◇ 装備  練磨の大斧、金剛武道着

◇ 技   激旋回斬、大火炎車

◇ 魔術  火弾、火砲


◇ オンダク ◇

◇ レベル 35

◇ HP   2841/2841

◇ 攻撃

  28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★

◇ 防御

  39★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

  19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  9★★★★★★★★★

◇ 装備  竜牙の長槍、超重装甲

◇ 技   竜牙貫通撃、岩撃槍

◇ 魔術  岩弾、岩壁


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 15

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ