第200話 特例
◆ フマトマの国 ミノリの町 ◆
アルジたち4人はカルスから降りた。
近くで遊んでいた3人の子どもが駆けてくる。
子ども「………」
オンダク「やあ、
どこか休める場所を教えてくれないか?」
子A「こっち!」
アルジ(オンダクって…
あんな優しい声も出せるのか)
野原を歩いて町の中へ。
3人の子どもに案内されて歩く。
大通りを歩いて着いたのは小さな茶屋。
焼き菓子の匂いが辺りに漂う。
子A「父ちゃん」
店主「なんだ、ケイチ」
店の奥から現れたのは中年の男。
この茶屋の店主。
アルジたち4人の姿を見て彼は驚く。
店主「これは…!」
アルジ「…?」
店主「………」
ケイチ「休みたいんだって」
店主「…ほっ」
ガシマ「休ませてくれ」
店主「お客でしたか」
ガシマ「なんだと思ったんだ?」
店主「私を逮捕しにきたのかと…」
ガシマ「なんだ?
なんかやましいことでもしてんのか?」
店主「そんなことはございません!
その武器が…恐ろしかったものですから」
ガシマは携えた斧を見る。
ガシマ「…すまねえな。
これは大事な商売道具。
怖がらせようなんて気はさらさらねえ」
店主「そうですか。さ、どうぞ。こちらへ」
店主は店の中を案内する。
いくつかの長椅子と卓が並ぶ。
そこで食事をとることができた。
4人は並んで座る。
山天楼の弁当を出して食べ始めた。
店主「立派なお食事で」
ガシマ「持ち込んだものを食わせてくれ」
店主「ええ、いいですよ。
お茶をお出ししましょう」
店主は茶を持ってくる。
オンダク「菓子を作ってるのか」
店主「ええ。
近くで採れる芋で作った菓子です」
オンダク「いい匂いだ」
店主「素朴な味わいの菓子ですが、
多くの方々に愛されております。
食後にもしよろしければ」
オンダク「もらおう」
アルジとエミカは弁当を食べ続ける。
2人とも空腹だった。
宿で渡された豪華な弁当箱。
1段目と2段目に分かれている。
いくつもの料理が彩りよく詰められていた。
アルジ「どれもうまい…。ありがとう。山天楼」
エミカ「食べるの速いな」
アルジ「全部食ったぜ」
ガシマ「どれも一級品の料理だ。
ちゃんと味わったのか?」
アルジ「ああ、うまかったぜ。ごちそうさま」
一気に茶を飲むアルジ。
むせて激しく咳き込む。
エミカが背中をさする。
ガシマとオンダクはその様子を見ていた。
ひどく引きつった顔で。
エミカ「大丈夫か?」
アルジ「あ…ああ…ありがとう。
けほっ…けほっ…」
ガシマ(ったく、呑気なもんだぜ…)
オンダク(こいつが…
オレたちと同等に戦えるとは思えん…)
エミカ、ガシマ、オンダクも食事を終える。
4人分の弁当箱は空になった。
店主が焼き菓子を持ってくる。
茶を飲みながら今度はそれを味わう。
アルジ「うまい!」
エミカ「素朴だけど、これはこれで」
ガシマ「なんか懐かしい感じがするな」
店主「気に入ってもらえてよかったです」
アルジたちを案内した3人の子ども。
彼らも店内にいた。
3人ともオンダクの槍が気になる様子。
近寄ってじっと見つめている。
オンダク「どうした?」
ケイチ「大きい槍だ!」
目を輝かせている。
オンダク「しょうがねえ。見せてやる」
オンダクは立ち上がって槍をつかむ。
子どもたちを店の外へ連れていく。
そして、槍の舞いを見せた。
その動きは力強く情熱的。
3人の子どもは釘づけ。
店の中から窓越しにアルジとエミカも眺めていた。
アルジ「あの動き、すごいな」
エミカ「ああ」
ガシマはボソリと言う。
ガシマ「ちょうどあれくらいの年頃だったか」
アルジ「え?何が?」
ガシマ「オンダクの子どもだ」
アルジ&エミカ「………」
ガシマ「今はもういない、あいつの…」
アルジ&エミカ「………」
アルジたちは店主に礼を言う。
会計を済ませて店を出る。
オンダク「元気でな」
ケイチ「じゃあね」
町を出て平原を歩く。
エミカがカルスを取り出す。
ガシマ「行けるか?」
エミカ「大丈夫。十分休んだから」
アルジ「さすがだな!大魔術師エミカ」
エミカ「大は余計だよ」
カルスに乗る4人。
浮上して空の高みを突き進む。
ノイ地方に向かって。
遠い空にどんよりとした雲が広がる。
◆ 都 大君の城 ◆
1人の男が城に呼ばれた。
男の名はモリワク。
大前隊第三隊の戦士。
モリワク(一体なんなんだ…?
こんな急に呼び出しとは…?)
頭をかきながら階段を上る。
彼の周りには4人の付添人。
早朝、その4人は彼の自宅に現れた。
そして、彼を城へと連れ出した。
彼が逃げ出さないよう見張りながら。
モリワクら5人は階段を上がっていく。
モリワク(しかも…総合統合官が直々に…?
一体なんの用事だ…?)
5階、6階と上がる。
壁や天井に目をやり、彼は思う。
モリワク(…けっ!随分と立派な城だこと。
上の階はこんなふうになってんのか。
三隊じゃこんなところ来る機会ねえからなぁ)
そして、最上階の7階に着く。
彼が向かうのはシノ姫の間。
彼を城に呼んだのは彼女だった。
付添人の1人が言う。
付添人A「第三隊モリワク、
ただいま連れて参りました」
シノ姫「入って…」
付添人に背中を押されるモリワク。
シノ姫の間に入っていく。
奥でシノ姫は1人で座っていた。
モリワク(なんだ…?この部屋…。
朝だってのに…薄暗くして…
気味悪い部屋だな!!)
シノ姫は彼に笑いかける。
シノ姫「第三隊…モリワク…」
モリワク「………」
シノ姫「返事は?」
付添人に小突かれてモリワクは渋々応える。
モリワク「はぁ、なんでしょう?」
シノ姫「あなたに大事な任務を与えます」
モリワク「任務ですか?」
シノ姫「ええ。
そのためにあなたは生かされたのです」
モリワク「………」
モリワクは犯罪を犯していた。
きっかけは賭け事。
負けに負け、彼は全財産を失った。
知人から金を借り、さらに賭け事をした。
だが、勝って儲けることはない。
さらに負け続けた。
食料を買う金もなくなった。
ついには盗みを働くようになる。
モリワク(生かされただと?ざけんなよ!)
昨日のこと。
知人がモリワクを訪ねる。
彼は多額の金をモリワクに貸していた。
早く借金を返すようにと催促する。
モリワクが住む借家へ行って大声を上げた。
金を返せ。
人でなし。
何度も大声を上げる。
モリワクは部屋の隅で息を潜める。
じっと我慢し続ける。
だが、知人はなかなか帰らない。
声を枯らしながら罵り続ける。
そして、とうとう限界が訪れる。
モリワクは家から飛び出し、斬り殺した。
外で声を上げ続けていた知人を。
目撃者に通報されて彼は逮捕される。
通常なら即日死罪となって処刑。
だが、彼は特例的に許された。
シノ姫によって。
シノ姫「あなたの任務を伝えます」
モリワク「楽な仕事だとありがてえなぁ」
シノ姫「それは…」
モリワク「報酬は弾めよ!」
付添人の1人がモリワクの後頭部を強く叩く。
モリワク「…て!!」
シノ姫「あなたに与える任務は…」
◆ カルスの上 ◆
アルジは剣を構える。
雷光が剣を包み込む。
ガシマ「そうだ!そのまま剣を振り下ろせ!」
アルジ「うおお!!」
だが。
振り下ろそうとした瞬間に雷光は消えた。
アルジ「………」
ガシマ「だめか」
オンダク「まだまだ訓練がいるな」
アルジ「クソ…!」
そして、とうとうカルスはノイ地方に。
アルジたちの頭上には分厚い雲が広がる。
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 30
◇ HP 3603/3603
◇ 攻撃
47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 防御
38★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★
◇ 魔力 13★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、雅繊維戦衣
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り
◇ 魔術 雷動
◇ エミカ ◇
◇ レベル 26
◇ HP 2234/2234
◇ 攻撃 10★★★★★★★★★★
◇ 防御
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 魔力
46★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、濃色魔術衣
◇ 魔術 火球、火砲、火樹、火海、王火
氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術
◇ ガシマ ◇
◇ レベル 33
◇ HP 2178/2178
◇ 攻撃
36★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
27★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 素早さ
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 魔力 10★★★★★★★★★★
◇ 装備 練磨の大斧、金剛武道着
◇ 技 激旋回斬、大火炎車
◇ 魔術 火弾、火砲
◇ オンダク ◇
◇ レベル 35
◇ HP 2841/2841
◇ 攻撃
28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 防御
39★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 9★★★★★★★★★
◇ 装備 竜牙の長槍、超重装甲
◇ 技 竜牙貫通撃、岩撃槍
◇ 魔術 岩弾、岩壁
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 15