第199話 特訓
澄み切った青空。
カルスは飛び続ける。
アルジたち4人を乗せて。
見下ろせば広大な山林。
遠くには小さな町が見える。
爽やかな朝が訪れていた。
カルスの速度はますます上がる。
ガシマ「朝から飛ばし過ぎじゃねえのか?」
エミカ「大丈夫」
オンダク「近くの町で休んでもいい」
エミカ「ありがとう。でも、まだ行けます」
オンダク「そうか」
ガシマ「確かにそんな感じだな」
カルスを満たすエミカの魔力。
アルジ「どうだ。エミカの魔力」
ガシマ「偉そうにしやがって」
オンダク「お前の力じゃないだろ」
アルジ(今度はオレの力を見せてやるぜ)
アルジは少し笑う。
アルジ「くくく」
ガシマ&オンダク「?」
エミカ「………」
アルジ「オレにも魔力がある」
ガシマ&オンダク「………」
アルジ「オレは雷術が使える」
オンダク「ほう。やってみろよ」
アルジは意識を集中させる。
魔波が全身からあふれ出す。
肩から、指先から、小さな雷光。
彼の周りで弾ける。
アルジ「どうだ!」
ガシマ「ひでえゆがんだ魔力だな」
オンダク「ぎこちない魔術だ。
ろくに訓練してないだろ?」
アルジ「な…何!?」
エミカ「大目に見てほしい」
ガシマ「…む?」
エミカ「3日前だから。
アルジが雷術を習得したのは」
ガシマ&オンダク「………」
肩を落として魔力を静めるアルジ。
ガシマとオンダクは真剣な表情。
ガシマ(3日前で…これだと…?)
オンダク(まさか…信じられん…)
エミカ「実戦だともう少しマシになる」
アルジ「あんまり慰めになってないぜ」
ガシマ(アルジの魔力…そのものは大きい。
オレよりもオンダクよりも。強さがある。
ユイやシンモクには及ばない…
だが…それでも強い)
オンダク(こいつの魔力…磨けば化ける…)
ガシマ「オンダク」
オンダク「おう」
アルジ「…?」
ガシマ&オンダク「………」
アルジ「なんだ?」
ガシマ「アルジ、お前もっと強くなりたいだろ」
アルジ「…ああ、それはもちろんだ」
オンダク「その魔力、鍛えれば伸びる。
今よりもずっと実戦で使えるになる」
アルジ「ああ、そうなりゃいいけど…」
ガシマ「魔術技を使えるようになりたくないか?」
アルジ「!!
ああ、オレも使ってみたい!」
オンダク「教えてやる」
アルジ「本当か!?」
ガシマ「ああ。
だが、何もかも教えられるわけじゃない。
魔術と武器を足し合わせる基礎的技術。
そこまでだ」
アルジ「ああ」
オンダク「お前は雷術、ガシマは火術。
そして、オレは岩術。
それぞれ勝手が違うからな。
助言できるのは基礎の部分だけ。
あとは自分でなんとかしろ。
魔術技の習得は自分でやるんだ」
アルジ「ああ、分かった!」
早速カルスの上で特訓が始まった。
ガシマ「違う!そうじゃない!!」
オンダク「もっと想像しろ!!
武器と魔力を!同化させろ!!」
アルジ「…おう!」
エミカ(うるさい…)
アルジは剣を構えて魔力を高める。
ガシマとオンダクは指導。
指導する2人の熱は高まっていく。
ついには3人で武器を手に魔力を高める。
オンダク「こうだ!もっとこうしろ!!
武器と魔力!同時に意識を向けろ!!」
アルジ「おう!」
ガシマ「そうだ!それだ!今できたぞ!!」
アルジ「…本当か!?」
ガシマ「一瞬だがな!!」
アルジ「よしっ!!
この調子で今日中に習得してやるぜ!!」
アルジは勇気の剣を構える。
オンダク「ふっ…」
ガシマ「はは…」
アルジ「…どうした?なんだ?」
オンダク「いや…今日中に習得…か…」
ガシマ「………」
オンダク「オレは6年かかった」
アルジ「…え?」
オンダク「魔術技習得に6年かかった。
自在に出せるようになるまでな」
アルジ「…6年!!?」
オンダク「今日中に習得…
そんなことができたら本当に大したものだ」
アルジ「………」
ガシマ「手を止めるな」
アルジ「お、おう…」
エミカ(よかったな、アルジ。
思いがけずいい師に巡り会えて…)
ガシマ「そうだ!その感じだ!!
さあ!!!もう1度やれ!!」
アルジ「おう」
エミカ(少しうるさいけど…)
武器に魔力をまとわせる。
それが魔術技の基本。
安定して魔術技を使うには魔力の制御が必須。
アルジにはそれがほとんどできていなかった。
アルジ「ふぅ…ふぅ…」
ガシマ「魔力切れか」
オンダク「休んどけ。回復したらまた特訓だ。
お前くらいの年齢ならすぐ回復するだろう」
アルジ「疲れた…」
3人は座り込む。
エミカは方位磁針を確かめた。
エミカ(…大丈夫)
カルスは東北東へ飛び続ける。
前方の山の上には薄い雲がかかっている。
右手には海。
ガシマ(順調…だな)
アルジはガシマとオンダクに聞いた。
アルジ「ノイ地方ってどんなところだ?」
ガシマ「行ったことねえのか」
アルジ「ない。…あるのか?」
ガシマ「任務で何度か行った」
オンダク「オレも2回ほど行ったな」
アルジ「どんなところなんだ?」
ガシマ「どんなところって言われてもな。
だだっ広いところだからな。
一言じゃ言い表せねえ。
まあ、全体として言えることは、
寒くて乾燥したところってことだ」
オンダク「寂れてる町も栄えてる町もある。
そういうのはほかの地方と変わらん」
アルジ「住んでる人は?いい人たちか?
ノイ民じゃなくても話してくれるのか?」
ガシマ「地域による」
オンダク「そうだな」
アルジ(マスタスとロニとラグアが生まれた地。
ノイ地方…。どんな人が暮らしてるのか)
エミカ「…国にもよるのか?」
ガシマ「その傾向はあるかもな」
アルジ「国はないだろ。ノイ地方って…」
エミカ「ああ、今はもうないけど…」
オンダク「昔あった」
アルジ「あったっけ」
ガシマ「ノイ地方が政府に統治される前のこと。
もう50年以上も前のことになる。
今は解体されたが4つの国があった」
エミカ「ユキミ、ナモナ、ニテツ、マクタ」
ガシマ「そうだ。よく知ってるな」
アルジ「エミカも行ったことあるのか?」
エミカ「ないよ。
でも、詳しく教えてもらったんだ。
北土の魔術研究所にいたときに。
ノイ地方の歴史について」
アルジ「へえ…」
エミカ「そういう必修講座があるんだ。
北土の魔術研究所にとっても
ノイ地方は大事だから…」
オンダク「ノイ地方と深い縁があるようだな」
エミカ「はい。ノイ地方の優れた魔術師が
北土の魔術研究所と関わらないことはない。
そんな話もあるくらいですから」
ガシマ「ノイ民が魔術研究所で働くとなれば
大体そこしかねえもんな」
エミカ「そうです」
アルジ「魔術院は?」
エミカ「ノイ民は魔術院に入れない。
ごまかして入ったとしても除籍される。
ノイ民だと分かった瞬間に」
アルジ「…厳しいな」
ガシマ「過去にいろいろ騒動があった。
ノイ地方と魔術院は。
今こうなっているのは当然だ」
オンダク「警戒してんだろう。
研究成果を盗まれないように」
アルジ「…そっか。
オレたちが行くのはどこの国なんだ?」
ガシマ「もともとナモナの国だったところ」
オンダク「友好的な者が暮らしていると聞く」
アルジ「それなら少し安心だぜ」
ガシマ「石を投げられるとでも思ったか?」
アルジ「いや、さすがにそんな心配は…。
だけど、大遊説の3人…
あいつらの出身地だからな。
住人がどんな人たちか気になった」
エミカ「住民ならいいけど…
降りた瞬間、魔獣と戦う…
そうなることも想定しとかないとな」
アルジ「………」
ガシマ「むしろその可能性が高い」
カルスの速度が少しずつ落ちていく。
エミカの額に薄らと汗が浮かぶ。
ガシマ「左の方に町が見えるだろ」
エミカ「…はい」
ガシマ「そこで休憩だ」
エミカ「分かった」
ガシマ「上出来だ。
この時間でここまで来れりゃあ」
平地を見つけてカルスは着陸する。
着いたのはフマトマの国、ミノリの町。
フマトマは大陸北部の大国。
ノイ地方と隣接し、広大な国土を誇る。
その南部の小さな町にアルジたちは降り立った。
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 30
◇ HP 3603/3603
◇ 攻撃
47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 防御
38★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★
◇ 魔力 13★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、雅繊維戦衣
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り
◇ 魔術 雷動
◇ エミカ ◇
◇ レベル 26
◇ HP 1883/2234
◇ 攻撃 10★★★★★★★★★★
◇ 防御
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 魔力
46★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、濃色魔術衣
◇ 魔術 火球、火砲、火樹、火海、王火
氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術
◇ ガシマ ◇
◇ レベル 33
◇ HP 2178/2178
◇ 攻撃
36★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
27★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 素早さ
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 魔力 10★★★★★★★★★★
◇ 装備 練磨の大斧、金剛武道着
◇ 技 激旋回斬、大火炎車
◇ 魔術 火弾、火砲
◇ オンダク ◇
◇ レベル 35
◇ HP 2841/2841
◇ 攻撃
28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 防御
39★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 9★★★★★★★★★
◇ 装備 竜牙の長槍、超重装甲
◇ 技 竜牙貫通撃、岩撃槍
◇ 魔術 岩弾、岩壁
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 15