第198話 予定
◆ 山天楼 客室 ◆
明日の予定について話し合うアルジたち。
ガシマ「明日、オレたちはノイ地方に行く。
目指すは海辺の小さな町だ。ドノカという」
アルジ&エミカ「………」
ガシマ「縁環島に最も近い町だ。
移動手段はもちろんカルス。
エミカ、頼むぜ」
エミカ「はい」
アルジ「ドノカって町に着いたら…
すぐ島に行くのか?」
ガシマ「状況次第だ」
アルジ「………」
オンダク「現地がどうなってるか分からない。
海から大量の魔獣が攻めてきたらしい。
何隻もの漁船が沈められたと聞く。
町民の多くが避難しているそうだ。
町の警備隊とノイ府防衛隊が戦っている。
だが、状況はあまりよくないと聞いた」
ガシマ「すでに町が壊滅しているかもしれない」
アルジ&エミカ「…!」
オンダク「現れた魔獣は…
手足が生えた魚のような化け物らしい。
強力な魔術を使ってくるそうだ。
縁環島から海を渡って来たのだろう。
オレたちはまずそいつらを叩く」
ガシマ「激しい戦いが待っているだろう。
オンダク、オレ、アルジ。
3人で一気に潰す」
アルジ「おう」
エミカ「私も戦う」
ガシマ「気持ちは嬉しいが、やめときな」
エミカ「なんでですか?」
オンダク「明日の飛行は長距離だ。
早朝に出て、到着は夕方になるだろう。
戦うための魔力を残そうなんて思うな」
エミカ「…そうか」
ガシマ(アヅミナなら…
昼には到着して戦ってくれるんだろうが。
こいつにそれを期待するのは無理ってもんだ)
アルジ「エミカ、心配するな。
魔獣は全部オレたちが倒すから」
エミカ「ああ。今回は任せるよ」
オンダク(アルジ…貴様はどこまで戦える?
ガシマ…お前はこいつを買い被り過ぎだ。
オオトノラコア討伐は確かに評価に値する。
だが、まさかエオクシと同等とは思えん。
オレの目には…そうは見えない…)
ガシマはエミカへ何かを渡す。
ガシマ「方位磁針だ」
エミカ「………」
ガシマ「明日は日の出とともにここを出る。
東北東に向かってひたすらカルスを飛ばせ」
エミカ「分かった」
アルジ「朝飯は?」
オンダク「弁当を頼んでおいてある。
宿の者が部屋に届けてくれるだろう」
アルジ「そっか」
アルジの腹が鳴る。
ガシマ「………」
アルジ「なんか腹が減ってきたな…」
オンダク「さっきあれだけ食っただろうが」
ガシマ「弁当1つ…追加だな」
オンダク「今持ってきてもらうか」
アルジ「助かるぜ!」
エミカ「私も…欲しい」
オンダク「お前ら…
明日はたくさん働いてもらうぞ」
アルジ「おう!」
エミカ「はい!」
オンダクは部屋から出ていった。
ガシマ「返事の勢いは合格だ」
アルジ「返事だけか?」
ガシマ「明日の戦いで実力を見せてみろよ。
そして…オレたちから合格を勝ち取ってみろ」
アルジ「ああ、見てやがれ」
エミカ(合格って…なんだろう。
懸賞金のことか?)
しばらくしてオンダクが戻ってくる。
2人分の弁当を持ってきた。
アルジ「うおー!ありがとう」
エミカ「ありがとうございます」
オンダク「さっさと食えよ」
アルジとエミカは食べて寝支度を始める。
ガシマとオンダクは布団に潜る。
ガシマ「お前たちも早く寝ろ。
休息も任務と思え」
アルジ「分かってる」
オンダク「どっか行くんじゃねえぞ」
アルジ「行かねえよ」
ガシマ「寝不足で墜落でもされたら、
たまったもんじゃねえからなぁ」
エミカ「ちゃんと寝ます!」
アルジが部屋の明かりを消す。
柔らかな布団が心地よい。
その宿での眠りは深い癒しとなった。
◆◆ 次の日 ◆◆
日の出前にアルジは目を覚ます。
体を起こしてぼんやりと客室を見回す。
空は白み始めている。
ほのかな光が窓から入っている。
ガシマとオンダクはいなかった。
隣の布団を見る。
エミカの姿もそこになかった。
アルジ(みんな早いな…)
顔を洗い、着替えて外に出る。
旅館の前庭にエミカが立っていた。
魔術衣を着て杖を握りしめている。
遠くの崖を静かに見つめていた。
アルジ「………」
エミカが気づいて振り向く。
エミカ「アルジ、おはよう」
アルジ「おはよう」
エミカ「なんだ?どうかしたか?」
アルジ「綺麗だ」
エミカ「似合わないセリフだな」
アルジ「………」
エミカ「ガシマさんの真似か?」
アルジ「そんなんじゃないぜ」
エミカ「………」
アルジ「ガシマ…そうだ、あいつ…
とんでもない遊び人だったぜ。
リネが言ってたとおりだったな。
エミカも気をつけた方がいい」
エミカ「心配しなくていいよ。
私の好みじゃないから」
アルジ「そうか…」
エミカ「うん」
アルジ「さっきは何を見てたんだ?
魔獣でもいるのか?」
エミカが見ていた遠くの崖。
そこにアルジも目を向ける。
だが、獣の姿は見当たらない。
エミカは少し笑って言う。
エミカ「そうじゃないよ。
今日の飛行に備えて気持ちを整えてた。
遠くをじっと見てると落ち着くんだ。
うまく飛べますようにって
魔力にお願いもした」
アルジ「そっか。
カルスの操縦ありがとな。
今日も頼むぜ」
エミカ「ああ。
カルスは思ったより簡単に動かせた。
昨日で結構慣れたけど、やっぱりまだ不安。
揺れるかもしれない。
落ちないように捕まってるんだぞ」
アルジ「ああ。魔獣との戦いは任せろ」
エミカ「心強い。その心意気…合格だ」
アルジ「そいつは嬉しい」
エミカ「何か賞品を渡せたらいいけど」
アルジ「いいさ。一緒に手に入れようぜ」
エミカ「懸賞金だな」
アルジ「ああ。ガラヤマトラゾウ…だっけ?
そいつも倒して今度こそ手に入れようぜ」
エミカ「うん。私も現地でできることはやる」
アルジ「ああ、頑張ろうぜ!
ガシマとオンダクは?
どこにいるか知ってるか?
部屋にはいなかったけど…」
エミカ「2人は私より先に起きてた。
裏庭にいると思う。
挨拶しようとしたけどできなかった」
アルジ「できなかった?どういうことだ?」
エミカ「魔術の訓練中だったから。
すごい集中力で目を閉じてたから」
アルジ「あいつらが…魔術の訓練を?」
エミカ「そうだ。
魔力そのものはそんなに強くないけど、
2人とも澄み切った魔波を発してた。
日頃の鍛錬の証だよ。
やっぱり2人は一流の戦士だ。
戦いの専門家だよ。見ててそう思った」
アルジ「そうか」
エミカ「戦場では心強い味方になってくれる」
アルジ「そっか」
エミカ「普段は遊び人でもな」
アルジ「頼りにしてみるか」
エミカ「私はそろそろ部屋に戻るよ」
アルジ「ああ」
エミカは宿に戻っていく。
アルジは裏庭へ向かった。
よく手入れされた庭園。
その中に立つ2人の男。
ガシマとオンダクだった。
アルジ(魔術の訓練って…
一体何をしてるんだ?)
武器を構える2人。
ガシマの斧の刃は真っ赤な炎をまとう。
オンダクの槍の先端は硬い岩に包まれる。
アルジ「あれは…!」
ガシマ「よう、アルジ」
オンダク「やっと起きたか」
アルジ「その武器…一体どうなって…」
ガシマは得意げに斧をかざして見せる。
ガシマ「見たことねえのか?魔術技だ」
アルジ「魔術技」
オンダク「魔術と武器を組み合わせる。
そうすることで攻撃力が跳ね上がる。
それが魔術技だ」
アルジ「ああ…」
アルジは思い出す。
タラノスの雷神剣を。
ミシダムの銀葉の舞を。
ガシマ「魔術技は今じゃ大前隊でも当たり前。
二隊にも三隊にも使えるやつがいるぜ」
アルジ「そうなのか」
ガシマ「そして、そういうやつらが上がる。
三隊から二隊に、二隊から一隊に…な。
アルジ、お前にも魔力があるなら…」
オンダク「ガシマ」
ガシマ「おう」
オンダク「そろそろ日の出だ」
ガシマ「そうだな。行くか」
アルジ「………」
アルジたちは宿に戻る。
客室で従業員から弁当を受け取る。
2段重ねの大きな弁当箱が4つ。
その1つをオンダクから受け取るアルジ。
アルジ「うお、この重み…すごいな!」
オンダク「朝と昼。2食分詰めてもらってある」
エミカ(本当に一気に飛ぶ予定みたいだ。
頑張らないと…!)
ガシマが宿代と弁当代を支払い、やってくる。
そして、アルジたち4人は宿を出た。
カルスに乗ってノイ地方へと飛び立った。
アルジ(ありがとう。山天楼)
空から宿を見下ろしてアルジは心から感謝した。
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 30
◇ HP 3603/3603
◇ 攻撃
47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 防御
38★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★
◇ 魔力 13★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、雅繊維戦衣
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り
◇ 魔術 雷動
◇ エミカ ◇
◇ レベル 26
◇ HP 1883/2234
◇ 攻撃 10★★★★★★★★★★
◇ 防御
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 魔力
46★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、濃色魔術衣
◇ 魔術 火球、火砲、火樹、火海、王火
氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術
◇ ガシマ ◇
◇ レベル 33
◇ HP 2178/2178
◇ 攻撃
36★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
27★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 素早さ
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 魔力 10★★★★★★★★★★
◇ 装備 練磨の大斧、金剛武道着
◇ 技 激旋回斬、大火炎車
◇ 魔術 火弾、火砲
◇ オンダク ◇
◇ レベル 35
◇ HP 2841/2841
◇ 攻撃
28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 防御
39★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 9★★★★★★★★★
◇ 装備 竜牙の長槍、超重装甲
◇ 技 竜牙貫通撃、岩撃槍
◇ 魔術 岩弾、岩壁
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 15