第195話 遠征
◆◆ 現在 ◆◆
◆ 大陸北部 上空 ◆
日は沈みかけ、空は一層暗くなる。
アルジたちの乗ったカルスは飛び続ける。
北へ、北へ、まっすぐに。
遠くに見えるとがった山を目印にして。
オンダク「もっと高度を上げていけ。
その方が速く飛べる」
エミカ「…はい」
力強く上がる。
空の高みへ。
山地の森も遥か下に見えるほど。
アルジ「あれ?…そういや…なんか変だな」
ガシマ「なんだ?どうかしたか?」
アルジ「カルスの上って…
なんでこういう感じなんだ?」
エミカ&ガシマ&オンダク「……?」
アルジ「風とか…全然感じない。
特に寒くもないし…」
ガシマ「…ああ、そんなことか。
それは魔風壁のおかげだ」
アルジ「魔風壁…」
ガシマ「ああ。
そいつがカルスの上の環境を整えてくれる。
地上とほとんど変わらないようにな。
操縦者の魔力が空気の壁を作っているんだ」
アルジ「操縦者の魔力…
ってことは、エミカのおかげなのか」
ガシマ「そういうことだ」
エミカ「空気の壁を作ってるなんて…
全然意識してなかったけど…」
オンダク「意識しなくても勝手に作ってくれる」
エミカ「勝手に…」
オンダク「それだけよくできてるということだ。
カルスってやつは」
ガシマ「だからここは強い風が吹かない。
空気が薄くなることもない。
寒くもならないし雨も当たらない。
匂いも…普通に嗅げる」
アルジ「匂い…」
ガシマ「おい、アルジ」
アルジ「…なんだ?」
ガシマ「お前、さっきから何持ってやがる。
うまそうな匂いがして気になってんだ」
アルジ「…は?…あ、ああ…」
アルジは思い出す。
レンカマク料理の店でもらった団子を。
荷物入れの中から取り出して見せる。
団子の入った袋を。
アルジ「ナクサの町の食堂でもらった団子だ」
ガシマ「腹が減ってんだ。1個くれ」
アルジは袋から出して渡す。
受け取るなりガシマはそれを食べる。
ガシマ「…うめえ!」
オンダク「なんだ、うまそうだな」
アルジ「あんたにもやるぜ」
オンダクにも渡す。
オンダク「…なかなかだな」
ガシマ「この味はレンカマク団子か。
懐かしいな。思い出すぜ」
アルジ「何を?」
ガシマ「遠征だ。
オレはレンカマクに遠征したことがある。
もう10年も前になるか。
ちょうど武術大会があってな。
そのとき店で食べた味とそっくりだ」
アルジ「そうなのか」
ガシマ「ああ」
アルジ(武術大会でそんなところまで行くのか。
…今から10年前。何歳だったんだ?
まだ学校に通ってる頃じゃないのか?
そんな前に食べた団子の味を覚えてるのか?
いや、それはまあ…どうでもいいとして…。
大前隊ガシマ…やっぱりこの男…
根っからの戦士ってわけか)
ガシマ「懐かしくなった。もう1個くれ」
アルジ「ああ、いいぜ」
もう1個渡す。
さらに。
オンダク「オレもくれ」
アルジ「おう」
オンダクにも渡す。
アルジ「あれ…?」
ガシマ「ふぅ…。ありがとな。アルジ!」
アルジ「いや…」
オンダク「うまかったぞ。なかなかだ」
アルジ「…そっか。なら、よかった」
空になった団子の袋を荷物入れにしまう。
アルジ(…オレの分がなくなっちまった。
だけど…まぁ、いいか…。
その分、宿でたらふく食ってやるぜ!)
ますます暗くなる空。
カルスは飛び続ける。
目印にしていたとがった山。
かなり近くにある。
徐々に高度を下げていく。
その山の中腹には大きな宿。
ガシマ「あれが今日泊まる宿だ」
アルジ「…でかいな」
エミカ「立派な宿…」
オンダク「右の方に平場があるだろ。
ほら、そこだ」
エミカ「…はい」
オンダク「そこにカルスを下ろせ」
エミカ「分かった」
カルスはゆっくりと降下していく。
ふらりふらりと揺れながら。
ガシマはエミカの横顔をじっと見る。
エミカ「…なんだ!?」
ガシマ「真剣だな」
エミカ「真剣だ!…悪いか!?」
ガシマ「別に悪くねえ。
いい顔してんなと思ったもんでな」
エミカ「え……え!?」
アルジ「!?」
無事着陸する。
4人は地面に降り立つ。
日はすっかり沈んでいた。
空を見上げれば星々が輝いている。
ガシマ「カルスはお前が持ってろ」
エミカ「…分かった」
小さくなったカルス。
荷物入れにしまうエミカ。
ガシマ「よし、じゃあ行くぜ」
歩き出すガシマとオンダク。
アルジとエミカは彼らについて行く。
立派な玄関を抜ける。
中へ入っていくアルジたち4人。
従業員「山天楼へようこそ」
山天楼がその宿の名前。
大陸北部の2大国、カニタとイリモ。
両国の国境付近にその温泉宿はある。
多くの旅人が立ち寄り、疲れを癒す。
その温泉の歴史は古い。
開湯は約1000年前。
かつて多くの賊を討った伝説の武人タツマ。
彼が旅の途中で見つけたのがこの温泉。
そんな伝説がある。
エミカ「綺麗だ…」
アルジ「…すげーな」
天井や壁の造り、置かれた調度品。
どれも豪華。
アルジとエミカは息を飲む。
オンダク「見てくれだけじゃない。
従業員のもてなしもいい。
多くの要人がよく訪れる」
アルジ「…そうなのか」
ガシマ「そして、温泉宿格付け上位の常連だ。
去年までは2位とか3位だった。
だが、今年は堂々の1位。
大陸で最も評価の高い宿ってことだ。
…ま、オレはそんな格付けに興味ないが」
エミカ(かなり興味ありそう…)
従業員「お部屋にご案内いたします」
華やかな廊下。
歩いて着いたのは広い客室。
10人は優に泊まれるような広さ。
アルジ&エミカ「………」
オンダク「圧倒されて声も出ないか?」
ガシマ「風呂だ。風呂に入るぞ。
お前たちどうする?」
アルジ「オレも行く」
エミカ「私も」
客室を出て風呂へ向かう4人。
男湯と女湯で別れる。
エミカ「それじゃ、ここで」
アルジ「先に上がったらここで待ってるぜ」
そして、浴場へ。
洗い場で体を洗い、風呂に入るアルジ。
アルジ(やっぱり温泉はいいぜ。
疲れが取れてく感じがする。
それにしても…この風呂…広いな…)
100人は優に入れる広さ。
アルジは見つける。
湯に浸かるガシマとオンダクを。
アルジ(…一体どんな巡り合わせだろうな。
まさかあいつらと同じ温泉に浸かるとは…。
今日のところは…やめといてやるぜ。
頭の中であんたたちを斬るのは)
ガシマ「おい!!」
アルジ「…!?」
ガシマが近づいてくる。
ガシマ「なんだ、お前」
アルジ「…なんだ?」
ガシマ「今、よからぬことを考えただろ!」
アルジ「か…考えてねえ!」
オンダクもやってくる。
オンダク「おい」
アルジ「な…なんだ!」
オンダクの低く太い声。
思わず身構えるアルジ。
オンダク「どういう関係なんだ?お前たちは」
アルジ「…?」
オンダク「結婚してるのか?」
アルジ「…そんなんじゃねえ」
ガシマ「なら恋人か?付き合ってんのか?」
アルジ「そういうわけでもない…」
ガシマ「なら、なんなんだ?」
オンダク「なぜ2人で旅してる?」
アルジ「エミカは…
オレが頼りにしてた魔術師の弟子だ。
オレが旅立つときも迎えに来てくれて…
それで、もともと4人で旅してたんだ。
でも、2人が死んでしまって…
それからオレたちは…2人だけで…」
ガシマ&オンダク「………」
アルジ「あれ…」
ガシマ&オンダク「……?」
アルジ「………」
アルジの言葉はそこで途切れた。
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 30
◇ HP 3603/3603
◇ 攻撃
47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 防御
38★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★
◇ 魔力 13★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、雅繊維戦衣
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り
◇ 魔術 雷動
◇ エミカ ◇
◇ レベル 26
◇ HP 1883/2234
◇ 攻撃 10★★★★★★★★★★
◇ 防御
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 魔力
46★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、濃色魔術衣
◇ 魔術 火球、火砲、火樹、火海、王火
氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術
◇ ガシマ ◇
◇ レベル 33
◇ HP 2178/2178
◇ 攻撃
36★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
27★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 素早さ
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 魔力 10★★★★★★★★★★
◇ 装備 練磨の大斧、金剛武道着
◇ 技 激旋回斬、大火炎車
◇ 魔術 火弾、火砲
◇ オンダク ◇
◇ レベル 35
◇ HP 2841/2841
◇ 攻撃
28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 防御
39★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 9★★★★★★★★★
◇ 装備 竜牙の長槍、超重装甲
◇ 技 竜牙貫通撃、岩撃槍
◇ 魔術 岩弾、岩壁
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 15