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アルジ往戦記  作者: roak
191/300

第191話 脱出

カタムラは背中を斬られて倒れた。

そばには竜の守護兵が立っている。

赤い鱗に覆われて剣を手にしている。


エオクシ(あいつは…)


考えるより先にエオクシは動いた。

駆け出して剣を振り下ろす。

重い金属音。

竜の守護兵はエオクシの斬撃を剣で受けた。

すぐにアヅミナが駆け出す。

音を立てず、黒い影のように移動。

竜の守護兵に近づいて杖を振る。

頭部目がけて暗球を飛ばす。


竜の守護兵「…グオ…」


精神操作が決まる。

竜の守護兵の動きが止まる。

エオクシが斬っていく。

壮刃剣を振り回して。

胸を。

◇ 竜の守護兵に9233のダメージ。

腹を。

◇ 竜の守護兵に8191のダメージ。

頭を。

◇ 竜の守護兵に10405のダメージ。

◇ 竜の守護兵を倒した。


エオクシ&アヅミナ「………」


溶けていく竜の守護兵を見下ろす2人。


エオクシ「こいつは最初に倒したのと…」

アヅミナ「…復活した?」

エオクシ「どうだろうな…」


カタムラを見る。

背中を深々と斬られている。

もう助からないことは明白。


アヅミナ「…カタムラが死んだ」

エオクシ「………」


草むらの中サヤノは1人震えている。

まだ温かいカエノの手を握りながら。

おびえた顔でエオクシとアヅミナを見る。


アヅミナ(起動装置を壊せるのはカタムラ。

 その彼が…死んだ。任務は失敗…)


アヅミナは疲れ果てた顔。


アヅミナ「もう帰ろう…。あたしたちは…」

エオクシ「いや…まだだ」

アヅミナ「………」


エオクシはサヤノのところへ歩いていく。

座り込む彼女を見下ろす。


エオクシ「どうする…?」


サヤノに問いかける。


エオクシ「…帰るか?」

サヤノ「………」


アヅミナもサヤノの元へ。


アヅミナ「起動装置の破壊…できなくなった。

 カタムラがその役目を担っていた。秘術で…」

サヤノ「まだ…分からないんじゃないですか?」

アヅミナ「………」

エオクシ「ああ…」


サヤノは立ち上がる。

魔道衣についた土を払って。


サヤノ「起動装置がどんなものか。

 まだ分かりませんよね?

 まだ見てないんだから。

 私の王岩で、エオクシさんの剣で、

 もしかしたら壊せるんじゃないですか?」

アヅミナ「………」

エオクシ「アヅミナ、見てみねえか?

 魔真体の起動装置が…一体どんなものか」

アヅミナ「………」

サヤノ「私は行きたいです。そうでないと…」

エオクシ&アヅミナ「………」

サヤノ「そうしないと…」

エオクシ「ああ…」

アヅミナ「…うん」

サヤノ「マユノとカエノが…浮かばれません…」


サヤノの目からポロポロと涙がこぼれる。


エオクシ「…行こう」


3人は歩き出す。

泉から伸びた黒い水の跡をたどって。

それは林の中をまっすぐ伸びる。

巨方庭の南側から北側に向かって。

3人は横に並んで歩く。

歩きながらサヤノは言う。


サヤノ「それに、私、信じてるんです」

エオクシ&アヅミナ「………」

サヤノ「カエノの2つ目の仮説を。

 装置を破壊すれば…傷は癒えて…

 すべての苦しみから解放される。

 秘術の力で…。

 魔術にできないことが秘術にはできる。

 そうです。全部元に戻るんです。

 傷が治って、命が戻って。

 みんなで…なぁんだって笑うんです。

 ここまで来て、帰るわけにはいきませんよ」

エオクシ&アヅミナ「………」

サヤノ「さっき、赤い魔生体も復活しました。

 あれはカエノの仮説を補強する事象です。

 ここには特別な力が満ちているんでしょう。

 亡くなった人を蘇らせる特別な力が。

 だから、マユノもカエノも生き返る。

 私たちが装置の破壊さえすれば。

 どうでしょうか?

 私、おかしなことを言ってるでしょうか?」

エオクシ「いや…」

アヅミナ「起動装置を…見てから考えましょう」

サヤノ「ワクワクしてきました」


サヤノは右手を大きく振って歩く。

左腕には3本の杖が抱えられていた。

マユノとカエノとサヤノ。

3人の杖が。


アヅミナ「…!!」


最初に感知したのはアヅミナ。

急に立ち止まる。


サヤノ「どうしました?」

アヅミナ「………」

エオクシ「おい、どうした?」

アヅミナ「…いる」


アヅミナは前方を指差す。

エオクシは彼女の指差す方を見る。


エオクシ「………」


遠くには巨石が並んでいるのが見える。

巨方庭の中心。

カタムラが手帳に配置を記録した巨石。

遠くに小さく見えている。

エオクシは目を凝らして見つける。

それらの巨石の陰に竜の守護兵を。


エオクシ「…こいつはやべえな」


サヤノも感知する。

彼女の顔から一瞬で笑みが消えた。

深い失望の表情に変わる。


サヤノ「…嫌…嫌だ…こんなの…嘘だ…」


巨石の陰からぞろぞろと竜の守護兵が現れる。

赤が7体、青も7体、白が3体。

武器を構えてエオクシたちを見ている。


サヤノ「もう…嫌っ…!!!」

エオクシ「…どうなってやがる…!

 どうなってやがる!!」


その理不尽な敵の数。

憤るエオクシ。


アヅミナ「あれがもしも…もしも…

 あたしたちが使った魔術も…剣術も…

 すべて学習済みだとしたら…?」

エオクシ「今度こそ…やられる…!」


11体の竜の守護兵が歩いて向かってくる。

武器を手に、目を青白く光らせながら。

たまらずサヤノは叫び出す。


サヤノ「いやぁぁぁあああああ!!!」

エオクシ&アヅミナ「………」

サヤノ「帰る!!もう…帰る…!!

 嫌だ!こんなの嫌だ!!

 絶対!!嫌だ!!帰りたい!!

 早く帰りたい!!!」

エオクシ「ああ!帰るぜ!!」


うなずくアヅミナ。

荷物入れから素早くカルスを取り出す。

11体が走り出す。


エオクシ「走ってくるぜ!!」

アヅミナ「声をかける!その場で跳んで!」

サヤノ「…!!?」

アヅミナ「膝を抱えて!できるだけ高く!!!」

エオクシ「おう!」


アヅミナはカルスに魔力を込める。

それは、全身から絞り出す最後の力。


アヅミナ「跳んで!!」


3人は跳ぶ。

アヅミナはカルスを地面に落とす。

そして、一気に巨大化させた。

3人の体が宙に浮いているうちに。

巨大化したカルスは勢いよく上昇する。

甲板に足や膝をぶつけるエオクシたち。

頭上で伸びていた木々の枝葉に背中が当たる。

頭を抱えて、伏せて、耐える3人。

林の中からカルスは浮上する。

飛行高度はすぐに木々の高さを超える。

脱出は成功した。


アヅミナ(なんとかうまくいった…)


カルスによる緊急脱出法。

非常に精密な魔力の制御が要求される。

カエノの杖がサヤノの腕からこぼれ落ちる。


サヤノ「あっ!!」


アヅミナは機敏に追いかけて、それを拾う。


サヤノ「…ありがとう」

アヅミナ「………」


エオクシは林を見下ろす。

林の中、竜の守護兵たちが立っている。

カルスをじっと見上げている。


エオクシ「気味の悪いやつらだぜ…」


カルスは不安定な飛行を続ける。

右左に揺れる。

速度が出ない。

ゆらりゆらりと宙を漂うように進む。

それが今のアヅミナにとって精一杯の操縦。


サヤノ「アヅミナさん」

アヅミナ「魔力がもう…ほとんどない。

 ソネヤさんのところで薬をもらおう。

 きっとあるはず…」

サヤノ「私も手伝います」

エオクシ「………」


飛行がわずかに安定する。


アヅミナ「ありがとう。でも、無理しないで」

サヤノ「はい」


サヤノの目からポロポロと涙が落ちる。

もう助からない。

マユノもカエノも。

そのことを実感して彼女は泣いた。

顔を伏せて首を振る。

何度も鼻をぐすんと鳴らす。


エオクシ&アヅミナ「………」

サヤノ「…弁解をさせてください」


涙をふいてサヤノは言う。


アヅミナ「弁解って…何?」

サヤノ「はい…」



◇◇ ステータス ◇◇

◇ エオクシ ◇

◇ レベル 37

◇ HP   3451/3692

◇ 攻撃

 49★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★

◇ 防御

 44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★

◇ 素早さ

  46★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★

◇ 魔力

◇ 装備  壮刃剣、戦究防護衣

◇ 技   天裂剣、地破剣


◇ アヅミナ ◇

◇ レベル 35

◇ HP   404/404

◇ 攻撃   1★

◇ 防御   2★★

◇ 素早さ

 40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★

◇ 装備  大法力の魔杖、漆黒の術衣

◇ 魔術

  火弾、火矢、火球、火砲、火羅、火嵐、王火

  氷弾、氷矢、氷球、氷刃、氷柱、氷舞、王氷

  暗球、精神操作、五感鈍化、魔病感染、

  酷死魔術


◇ サヤノ ◇

◇ レベル 37

◇ HP   953/961

◇ 攻撃   1★

◇ 防御  11★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 46★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★

◇ 装備  清化印の魔杖、光心の魔道衣

◇ 魔術  岩弾、岩砲、王岩

      雷弾、雷槍

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ 持ち物 ◇

◇ 活汁 95

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