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アルジ往戦記  作者: roak
19/300

第19話 寄付

アルジとエミカは運び出す。

カクノオウの館から財宝を。

華やかな装飾品。

重たい彫像。

大きな絵画。

古い家具。

館の中と外を数往復。

それだけでちょっとした宝の山ができた。


アルジ「素手じゃ到底運び切れないな」

エミカ「裏手に台車があったぞ」

アルジ「それを使おう」


館の裏に大きな台車。

ひっそりと置かれている。

長い間使われていなかったのか。

ところどころ傷んでいる。

アルジは試しに引いてみる。


アルジ「なんとか行けそうだぜ!」

エミカ「どんどん積もう」


財宝を積めるだけ積んだ。

積み切れなかったものは館の中へ戻す。


アルジ「残りは任せよう。ワノエ警備隊に」

エミカ「そうだな」


アルジが台車を引く。

エミカは後ろから押す。

ごとんごとんと音を立てて進む。

右に、左に小さく揺れながら。

行きの道では魔物が次々と現れた。

だが、帰り道は驚くほど静か。

辺り一帯が呪いから解放されたかのよう。

カクノオウがいなくなったことで。

日は高く上っている。

昼になろうとしていた。

台車の車輪が大きな起伏を乗り越える。

積まれた財宝がガタンと揺れる。

小さな花瓶が地面に落ちた。

エミカが慌てて拾い上げる。


エミカ「よかった…。割れてない」


茂った草が落下の衝撃を和らげた。


アルジ「ちょっと強引だったか。ごめんな」

エミカ「これ相当高そうだ」

アルジ「そうなのか?」

エミカ「うん。割れなくてよかった」

アルジ「オレには値打ちが分からないな」


エミカは花瓶を荷台に戻す。

そのとき、彼女は目を奪われた。

積まれたいくつもの装飾品。

その中の1つを立ち尽くして見つめる。


アルジ「欲しいのがあったのか?」

エミカ「…いや、特に」

アルジ「…これか」

エミカ「………」


エミカが見ていたもの。

それは綺麗な首飾り。

緑の大きな宝石がはめ込まれている。


アルジ「今度…そういうの買ってやるよ」

エミカ「え?」

アルジ「?」

エミカ「私に?アルジが…?」

アルジ「ああ、そうだけど…」

エミカ「なんでだ?」

アルジ「え?」

エミカ「なんでアルジが私に買うんだ?」

アルジ「あれ…?はは…」

エミカ「………」

アルジ「なんか変なこと言っちまったかな…?

 ははは…はは…ははは…」

エミカ「約束だぞ!」

アルジ「お…おう」



◆ ワノエ ◆

歩き続けてワノエに戻る。

早速、警備隊の本部へ足を運んだ。



◆ ワノエ警備隊本部 ◆

大きな建物がそびえている。

アルジとエミカは台車を敷地へ入れる。

すると、1人の警備隊員がやってくる。


警備隊員「なんだ!お前ら!」

アルジ「カクノオウを倒した」

警備隊員「なんだと!?カクノオウを…?」

アルジ「あと、財宝だ」

エミカ「カサナ家から奪われた財宝です。

 取り返しました。警備隊へ寄付します」

警備隊員「な…何…!?」

アルジ「町の警備に役立ててくれ」

警備隊員「………」

エミカ「これで全部じゃありません。

 ダブカの館にまだまだあります」

アルジ「オレたちが運べたのはこれだけだ」

警備隊員「………」


警備隊員は呆然としていた。


アルジ「じゃあな」

エミカ「さようなら」

警備隊員「ちょっと待て!」


振り返るアルジとエミカ。


警備隊員「君たち…!名前は!?」

アルジ「オレはアルジ」

エミカ「私はエミカ」

警備隊員「なぜ…こんなことを?」

アルジ「そうだな…」


アルジは少し笑ってから答える。


アルジ「オレたちが求めるのは星の秘宝。

 そういうものじゃないんだ」

警備隊員「星の秘宝…?」

エミカ「そういうことだから」


そして、2人は警備隊本部をあとにした。

財宝を台車ごと置いたまま。

ワノエの町の表通りを2人は歩く。


エミカ「オレたちが求めるのは星の秘宝…。

 そういうものじゃないんだ…!」

アルジ「は…?」

エミカ「…決まったな」

アルジ「バカにしてるだろ」

エミカ「してないしてない」


焼き魚を売る露店。

アルジとエミカの目にとまる。

店主がせっせと網で魚を焼く。

周りに客が群がってその様子を見ている。

食欲をそそる香りが広がっていた。


アルジ「腹が減ったな」

エミカ「それもそうだけど、

 私はお風呂に入りたい」

アルジ「それもそうだな」

エミカ「リネ先生の館へ行こう」

アルジ「大魔術師様のところか」

エミカ「そうだ。報告したい。

 カクノオウのこともマスタスのことも。

 それと…」

アルジ「それと?どうした?」

エミカ「アルジも疲れてるだろ?」

アルジ「ああ。まあな」

エミカ「先生のところで休んでいくといい。

 温泉もあるんだ。あの館には」

アルジ「!!そうなのか!分かった。行こう」



◆ 大魔術師リネの館 ◆

ミリが出てくる。


挿絵(By みてみん)


ミリ「わっ!どうしたの?エミカ!

 そんなボロボロになって…」

エミカ「雷を浴びた」

ミリ「ええ!?大丈夫だったの!?」

エミカ「…なんとか」

ミリ「…あら、あんたもまた来たの?」

アルジ「悪いか?」

ミリ「別にいいけどさ。

 エミカをちゃんと守ってよね」

アルジ「…ああ」


アルジは唇をかむ。


アルジ(もっと強くならなきゃな…!)


昨日と同じ広間へ通される。


リネ「あなたたち…」


白い大きな椅子に彼女は座っていた。

アルジたちの姿を見て少し驚いた様子。


リネ「何か大変なことがあったようですね」

アルジ「カクノオウを倒してきた」

リネ「…そうですか。それはお疲れ様でした」

アルジ「あんたの昨日の助言にならったんだ。

 人と出会い、悪と戦え…だろ?」

リネ「………」

エミカ「先生、カクノオウは…」

リネ「エミカ」

エミカ「…はい」

リネ「火術…上達したようですね」

エミカ「…はい。高めることができました。

 ダブカに住み着いた魔獣と戦う中で…」

リネ「実戦経験は何よりの宝物。

 ですが、無理は禁物ですよ」

エミカ「はい」

リネ「アルジさん」

アルジ「ああ」

リネ「強盗団の悪事は聞いていました。

 そして、カクノオウの強さも。

 警備隊でも手を出せないほどだと…」

アルジ「………」

リネ「それをあなたは見事倒した。

 どうやら…あなたは本当に選ばれた。

 勇気の剣の持ち主として」

アルジ「ああ…」

リネ「その剣は謎の多い剣。

 昔からナキ村で大切にされてきた。

 そのことは分かっていますが…。

 扱う力が大きくなるほど

 正しく扱うことが求められます。

 これからも…十分気をつけてくださいね」

アルジ「…ああ」

リネ「2人とも本当によくやりました。

 少し疲れたでしょう。

 今日はゆっくりお休みなさい。

 安息の間が2部屋空いていますから。

 それと…」


リネは腕を伸ばす。

手にした杖をアルジとエミカに向ける。

柔らかな光が2人を包み込む。

傷が癒えていく。


アルジ「…これは!?」

エミカ「治療魔術…リネ先生の魔術の1つだ」

リネ「少しは楽になった?」

エミカ「はい。ありがとうございます」

アルジ「ありがとう」


◇ アルジはHPが全回復した。(HP98→347)

◇ エミカはHPが全回復した。(HP11→190)


リネ「離れに温泉もあります。

 どうぞお好きに使いなさい」

エミカ「ありがとうございます」

アルジ「…ありがとう」

エミカ「私が先に入るから」

アルジ「ああ」

エミカ「入ってくるなよ」

アルジ「!行かねえよ!!」


リネはほほえみながら2人を見ていた。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 8

◇ HP   347/347

◇ 攻撃  12★★★★★★★★★★★★

◇ 防御  6★★★★★★

◇ 素早さ 8★★★★★★★★

◇ 魔力  2★★

◇ 装備  勇気の剣、革の鎧

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃


◇ エミカ ◇

◇ レベル 6

◇ HP   192/192

◇ 攻撃  3★★★

◇ 防御  3★★★

◇ 素早さ 7★★★★★★★

◇ 魔力  9★★★★★★★★★

◇ 装備  術師の杖、術師の服

◇ 魔術  火球、火砲


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療薬 8

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