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アルジ往戦記  作者: roak
189/300

第189話 続行

真っ暗になった地下空間。

宙に放たれる1個の小さな光玉。

放ったのはカタムラ。

その光は暗闇を追い払う。


カタムラ「この辺が考えどころのようです」

エオクシ「………」

カタムラ「進むか、退くか」


倒した竜の守護兵が溶け出した。

ドロドロになって広がる。

それとほぼ同時に白い光の筋が地面に現れる。

岩の起伏をいくつも越える。

地下空間の外へ伸びる。


アヅミナ「魔力は尽きた。あたしだけじゃない。

 カエノさんも。サヤノさんも。みんな尽きた。

 ここまで魔力を使い果たすと必要なのは休養。

 薬を飲んでもその場しのぎにしかならない」

カエノ&サヤノ「………」

アヅミナ「エオクシの攻撃も通じない。

 さっきの戦いではっきり分かった。

 竜の化け物は彼の技を全部見切ってる。

 どう攻めても予測して対処してくる。

 もうまともに戦って勝てる相手じゃない」

エオクシ「………」

アヅミナ「巨方庭の南にあるという泉。

 今からそこへ行ったとして…

 また化け物と戦うことになったとして…

 あたしたちが勝てる見込みは…ない。

 さっきみたいなのが現れたら、なおさら。

 最悪の場合…みんな…死ぬ…」

カタムラ「………」

アヅミナ「だから…退くべきだと思う。

 都へ帰って報告すべきだと思う。

 任務は失敗したと…。

 これ以上…犠牲を出さないためにも…」


カエノはマユノの元へ歩いていく。

見開かれたまま動かないマユノの両眼。

それを見てカエノは彼女の死を再認識。

マユノの手に握られた魔杖をそっと取り上げる。


カエノ「マユノ…さよなら。今までありがと…」

エオクシ「…クソ…!」

サヤノ「…マユノ…うう…マユノ…」

アヅミナ「………」

カタムラ「大切な仲間の死を…弔いましょう」


5人は輪になって座り込み、押し黙る。

カタムラの小さな光玉は宙に浮かび続ける。


カタムラ「少し休みませんか?

 光玉の心配はいりません。

 これでも鍛えていますからね。

 まだしばらくは問題なく出し続けられます。

 みなさん疲れているようです。

 こんなときは休むのが一番です。

 任務のことなど忘れてしまうんです。

 私も研究で行き詰まることがあります。

 そんなときは休養を心がけています。

 近所を散歩したりお茶を飲んだり。

 すると、ポンとよい考えが浮かびます。

 よい休養がよい仕事を生むのです。

 凝り固まってはいけません。

 柔軟に行きましょう。

 気晴らしに空を眺めてもいいでしょう。

 なんて、ここからでは空は見えませんが」

カエノ「…フフフ!」

エオクシ&アヅミナ&サヤノ「………」

カエノ「みなさん、見ましたか?」

エオクシ「…?」

アヅミナ&カタムラ&サヤノ「………」

カエノ「最後、ドンって!見ましたか?

 私の王雷、サヤノも見たよね?」

サヤノ「…はい」

カエノ「本当は…

 あなたに最後、決めてもらいたかった。

 だけど、ごめんね。

 敵が動いたのを見て、思ったんだ。

 私がやらなきゃって思ったんだ」

エオクシ&アヅミナ&カタムラ「………」

カエノ「カタムラさん」

カタムラ「…はい。なんですか?」

カエノ「例えば、こんな考えどうでしょうか?

 こういうことはあり得るでしょうか?

 新しい仮説です。私の仮説です」

カタムラ「どんな仮説ですか?」

カエノ「はい。傷が治るんです。

 4体の化け物を倒したら傷が治るんです!

 サヤノの光る傷が1つ残らず消えるんです!

 こういうことってありそうですか?」

カタムラ「どう…でしょうかね?」

カエノ「あはっ!分かりませんよね!

 カタムラさんも分かりませんよね!

 ごめんなさい!全然ないんです!

 あなたを困らせる気は全然ないんです!!

 ごめんなさい!気にしないでください!」

エオクシ&アヅミナ&カタムラ&サヤノ「………」

カエノ「それとも…どうでしょうか?

 起動装置を発見して…破壊する!

 そうしたら、治る。

 こういうこともあり得ませんか?

 だって私たちって試されてるんですよね?

 力があるか。知恵があるか。

 試されてるんですよね?

 試練を乗り越えたらご褒美がある…。

 試練って大体そういうものですよね。

 みんなの傷が治って無事に帰れる!

 そういうことがあってもいいですよね!

 ご褒美としてケガがきれいに治るんです!

 マユノも生き返ったりして!

 体がすっかり元に戻るんです!

 あれ、私、何してたんだろう?なんて!

 言っちゃったりして目覚めるんです!」

エオクシ&アヅミナ&カタムラ&サヤノ「……」

カエノ「ねえ!これってすごくないですか?

 素晴らしくないですか?夢見てたみたいに!

 全部!全部の悪い出来事が消えるんです!

 どんなに悪い夢を見ても、

 目覚めた途端、消えるように!

 素晴らしいですよね!ねえ、カタムラさん!」

カタムラ「…私もそうであればいいと思いますが」

エオクシ&アヅミナ&サヤノ「………」

カエノ「そうだ!

 秘術の力がそういう力だったら…!」


カエノはパチンと手を叩いた。


カエノ「決まりです。続行です」

アヅミナ「…え?」

カエノ「任務は続行すべきだと思います」

エオクシ&アヅミナ&カタムラ&サヤノ「……」

カエノ「進むか、退くか。進むべきです!

 私たちはやるべきです!投げ出さないで!

 最後まで!やるべきです!

 どんな不思議なことが起こるのか、

 私たち分からないんですから!

 どんな素敵なことが待ってるか、

 私たち知らないんですから!

 せっかくここまで来たんですから!

 エオクシさん!!」

エオクシ「………」

カエノ「あらあら!ダメですよ!!

 ダメじゃないですか!!

 そんな気弱でどうするんですか!?

 大前隊の戦士なんですよね!?

 エオクシさんは1番強いんですよね!?

 そんな人がそんなことじゃいけませんよ!」

エオクシ「………」

アヅミナ「無理」

カエノ「………」

アヅミナ「次の敵を…倒すなんて無理だから」

カエノ「あらあら!決めつけはよくないですよ?」

アヅミナ「じゃあ言ってみて。

 どうやって戦うの?」

カエノ「王氷です」

アヅミナ「…王氷?」

カエノ「1回だけでいいんです」

アヅミナ「1回だけって…」

カエノ「現れたら、すぐに」

アヅミナ「………」

カエノ「さっきの化け物に王火を使ったように。

 アヅミナさんの王氷で凍らせてください。

 アヅミナさんの王氷はまだ使ってません。

 これまで倒してきた竜の化け物に。

 ですから、効くはずです」

アヅミナ「それで?そのあとは?どうするの?」

カエノ「あとは私に任せてください」

アヅミナ「何をする気?」

カエノ「お楽しみに。必ず倒して見せます」

サヤノ「カエノ…?」

カエノ「どうしたの?」

サヤノ「何をするつもり?」

カエノ「だから!楽しみにしててよ」

エオクシ&アヅミナ「………」

カタムラ「…挙手をしましょうか」


ほかの4人の顔を見て、カタムラは求めた。


カタムラ「任務をやめるべきだと思う方は挙手を」


アヅミナとサヤノの手が上がる。


カタムラ「任務を続けるべきだと思う方は挙手を」


カタムラとカエノの手が上がる。


カタムラ「エオクシさんは…?」


エオクシは黙ってしばらく考える。

そして、口を開く。


エオクシ「任務は…続行だ…!!」


カエノが笑顔になった。

アヅミナとサヤノは眉をひそめる。

大きくうなずくカタムラ


カタムラ「3対2…。任務を続けます。

 いいですね?」

アヅミナ&サヤノ「………」


5人は立ち上がる。

マユノの死体はエオクシが布に包んで背負う。

カエノは魔力回復薬を10錠飲んだ。

白い光の筋に沿って地下空間を歩いて進む。

途中でカタムラの光玉が消えた。


カタムラ「すみません。魔力の限界です」


代わりにカエノが光玉を出す。

5人は縦穴を黙々と登った。


カタムラ「外の空気というものは…

 爽やかでいいものですね」


洞穴から出てカタムラは言った。

外はどんよりと暗い。


アヅミナ(…日の入りまで時間はない。

 これから泉のある場所まで歩いて…

 化け物と戦うとして…勝てたとして…

 起動装置までたどり着けるのか…

 全然分からない)


エオクシは背負っていたマユノを寝かせる。

草むらの中、隠すように。


エオクシ「ここで…お別れだ」

カエノ「任務が終わったら迎えに来ましょう。

 それまで魔獣に見つかりませんように…」

サヤノ「………」

アヅミナ「時間がない。早く行きましょう」

カエノ「はい!」


足早に進む。

巨方庭の東側から南側へ。

エオクシ、カタムラ、アヅミナは進む。

その後ろをカエノとサヤノが歩く。

林の中は不気味なほど静か。

白い光の筋は途切れることなく伸びる。

エオクシたち5人に道を示している。

そして、南の泉が見えてくる。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ エオクシ ◇

◇ レベル 37

◇ HP   3451/3692

◇ 攻撃

 49★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★

◇ 防御

 44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★

◇ 素早さ

  46★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★

◇ 魔力

◇ 装備  壮刃剣、戦究防護衣

◇ 技   天裂剣、地破剣


◇ アヅミナ ◇

◇ レベル 35

◇ HP   404/404

◇ 攻撃   1★

◇ 防御   2★★

◇ 素早さ

 40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★

◇ 装備  大法力の魔杖、漆黒の術衣

◇ 魔術

  火弾、火矢、火球、火砲、火羅、火嵐、王火

  氷弾、氷矢、氷球、氷刃、氷柱、氷舞、王氷

  暗球、精神操作、五感鈍化、魔病感染、

  酷死魔術


◇ カエノ ◇

◇ レベル 36

◇ HP   1084/1181

◇ 攻撃   3★★★

◇ 防御

20★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★

◇ 魔力

 45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★

◇ 装備  超放気の魔杖、連星の魔道衣

◇ 魔術  雷弾、雷砲、雷破、雷花、王雷

      氷弾、氷矢

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ サヤノ ◇

◇ レベル 37

◇ HP   953/961

◇ 攻撃   1★

◇ 防御  11★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 46★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★

◇ 装備  清化印の魔杖、光心の魔道衣

◇ 魔術  岩弾、岩砲、王岩

      雷弾、雷槍

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ カタムラ ◇

◇ レベル 16

◇ HP   766/766

◇ 攻撃   7★★★★★★★

◇ 防御   9★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 17★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  14★★★★★★★★★★★★★★

◇ 秘力   3★★★

◇ 装備  魔鉱石の短剣、秘術道具(空球)、

     探検用強化研究衣

◇ 魔術  光玉、治療魔術

◇ 秘術  青珠


◇ 持ち物 ◇

◇ 活汁 95、魔力回復薬 50

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