第189話 続行
真っ暗になった地下空間。
宙に放たれる1個の小さな光玉。
放ったのはカタムラ。
その光は暗闇を追い払う。
カタムラ「この辺が考えどころのようです」
エオクシ「………」
カタムラ「進むか、退くか」
倒した竜の守護兵が溶け出した。
ドロドロになって広がる。
それとほぼ同時に白い光の筋が地面に現れる。
岩の起伏をいくつも越える。
地下空間の外へ伸びる。
アヅミナ「魔力は尽きた。あたしだけじゃない。
カエノさんも。サヤノさんも。みんな尽きた。
ここまで魔力を使い果たすと必要なのは休養。
薬を飲んでもその場しのぎにしかならない」
カエノ&サヤノ「………」
アヅミナ「エオクシの攻撃も通じない。
さっきの戦いではっきり分かった。
竜の化け物は彼の技を全部見切ってる。
どう攻めても予測して対処してくる。
もうまともに戦って勝てる相手じゃない」
エオクシ「………」
アヅミナ「巨方庭の南にあるという泉。
今からそこへ行ったとして…
また化け物と戦うことになったとして…
あたしたちが勝てる見込みは…ない。
さっきみたいなのが現れたら、なおさら。
最悪の場合…みんな…死ぬ…」
カタムラ「………」
アヅミナ「だから…退くべきだと思う。
都へ帰って報告すべきだと思う。
任務は失敗したと…。
これ以上…犠牲を出さないためにも…」
カエノはマユノの元へ歩いていく。
見開かれたまま動かないマユノの両眼。
それを見てカエノは彼女の死を再認識。
マユノの手に握られた魔杖をそっと取り上げる。
カエノ「マユノ…さよなら。今までありがと…」
エオクシ「…クソ…!」
サヤノ「…マユノ…うう…マユノ…」
アヅミナ「………」
カタムラ「大切な仲間の死を…弔いましょう」
5人は輪になって座り込み、押し黙る。
カタムラの小さな光玉は宙に浮かび続ける。
カタムラ「少し休みませんか?
光玉の心配はいりません。
これでも鍛えていますからね。
まだしばらくは問題なく出し続けられます。
みなさん疲れているようです。
こんなときは休むのが一番です。
任務のことなど忘れてしまうんです。
私も研究で行き詰まることがあります。
そんなときは休養を心がけています。
近所を散歩したりお茶を飲んだり。
すると、ポンとよい考えが浮かびます。
よい休養がよい仕事を生むのです。
凝り固まってはいけません。
柔軟に行きましょう。
気晴らしに空を眺めてもいいでしょう。
なんて、ここからでは空は見えませんが」
カエノ「…フフフ!」
エオクシ&アヅミナ&サヤノ「………」
カエノ「みなさん、見ましたか?」
エオクシ「…?」
アヅミナ&カタムラ&サヤノ「………」
カエノ「最後、ドンって!見ましたか?
私の王雷、サヤノも見たよね?」
サヤノ「…はい」
カエノ「本当は…
あなたに最後、決めてもらいたかった。
だけど、ごめんね。
敵が動いたのを見て、思ったんだ。
私がやらなきゃって思ったんだ」
エオクシ&アヅミナ&カタムラ「………」
カエノ「カタムラさん」
カタムラ「…はい。なんですか?」
カエノ「例えば、こんな考えどうでしょうか?
こういうことはあり得るでしょうか?
新しい仮説です。私の仮説です」
カタムラ「どんな仮説ですか?」
カエノ「はい。傷が治るんです。
4体の化け物を倒したら傷が治るんです!
サヤノの光る傷が1つ残らず消えるんです!
こういうことってありそうですか?」
カタムラ「どう…でしょうかね?」
カエノ「あはっ!分かりませんよね!
カタムラさんも分かりませんよね!
ごめんなさい!全然ないんです!
あなたを困らせる気は全然ないんです!!
ごめんなさい!気にしないでください!」
エオクシ&アヅミナ&カタムラ&サヤノ「………」
カエノ「それとも…どうでしょうか?
起動装置を発見して…破壊する!
そうしたら、治る。
こういうこともあり得ませんか?
だって私たちって試されてるんですよね?
力があるか。知恵があるか。
試されてるんですよね?
試練を乗り越えたらご褒美がある…。
試練って大体そういうものですよね。
みんなの傷が治って無事に帰れる!
そういうことがあってもいいですよね!
ご褒美としてケガがきれいに治るんです!
マユノも生き返ったりして!
体がすっかり元に戻るんです!
あれ、私、何してたんだろう?なんて!
言っちゃったりして目覚めるんです!」
エオクシ&アヅミナ&カタムラ&サヤノ「……」
カエノ「ねえ!これってすごくないですか?
素晴らしくないですか?夢見てたみたいに!
全部!全部の悪い出来事が消えるんです!
どんなに悪い夢を見ても、
目覚めた途端、消えるように!
素晴らしいですよね!ねえ、カタムラさん!」
カタムラ「…私もそうであればいいと思いますが」
エオクシ&アヅミナ&サヤノ「………」
カエノ「そうだ!
秘術の力がそういう力だったら…!」
カエノはパチンと手を叩いた。
カエノ「決まりです。続行です」
アヅミナ「…え?」
カエノ「任務は続行すべきだと思います」
エオクシ&アヅミナ&カタムラ&サヤノ「……」
カエノ「進むか、退くか。進むべきです!
私たちはやるべきです!投げ出さないで!
最後まで!やるべきです!
どんな不思議なことが起こるのか、
私たち分からないんですから!
どんな素敵なことが待ってるか、
私たち知らないんですから!
せっかくここまで来たんですから!
エオクシさん!!」
エオクシ「………」
カエノ「あらあら!ダメですよ!!
ダメじゃないですか!!
そんな気弱でどうするんですか!?
大前隊の戦士なんですよね!?
エオクシさんは1番強いんですよね!?
そんな人がそんなことじゃいけませんよ!」
エオクシ「………」
アヅミナ「無理」
カエノ「………」
アヅミナ「次の敵を…倒すなんて無理だから」
カエノ「あらあら!決めつけはよくないですよ?」
アヅミナ「じゃあ言ってみて。
どうやって戦うの?」
カエノ「王氷です」
アヅミナ「…王氷?」
カエノ「1回だけでいいんです」
アヅミナ「1回だけって…」
カエノ「現れたら、すぐに」
アヅミナ「………」
カエノ「さっきの化け物に王火を使ったように。
アヅミナさんの王氷で凍らせてください。
アヅミナさんの王氷はまだ使ってません。
これまで倒してきた竜の化け物に。
ですから、効くはずです」
アヅミナ「それで?そのあとは?どうするの?」
カエノ「あとは私に任せてください」
アヅミナ「何をする気?」
カエノ「お楽しみに。必ず倒して見せます」
サヤノ「カエノ…?」
カエノ「どうしたの?」
サヤノ「何をするつもり?」
カエノ「だから!楽しみにしててよ」
エオクシ&アヅミナ「………」
カタムラ「…挙手をしましょうか」
ほかの4人の顔を見て、カタムラは求めた。
カタムラ「任務をやめるべきだと思う方は挙手を」
アヅミナとサヤノの手が上がる。
カタムラ「任務を続けるべきだと思う方は挙手を」
カタムラとカエノの手が上がる。
カタムラ「エオクシさんは…?」
エオクシは黙ってしばらく考える。
そして、口を開く。
エオクシ「任務は…続行だ…!!」
カエノが笑顔になった。
アヅミナとサヤノは眉をひそめる。
大きくうなずくカタムラ
カタムラ「3対2…。任務を続けます。
いいですね?」
アヅミナ&サヤノ「………」
5人は立ち上がる。
マユノの死体はエオクシが布に包んで背負う。
カエノは魔力回復薬を10錠飲んだ。
白い光の筋に沿って地下空間を歩いて進む。
途中でカタムラの光玉が消えた。
カタムラ「すみません。魔力の限界です」
代わりにカエノが光玉を出す。
5人は縦穴を黙々と登った。
カタムラ「外の空気というものは…
爽やかでいいものですね」
洞穴から出てカタムラは言った。
外はどんよりと暗い。
アヅミナ(…日の入りまで時間はない。
これから泉のある場所まで歩いて…
化け物と戦うとして…勝てたとして…
起動装置までたどり着けるのか…
全然分からない)
エオクシは背負っていたマユノを寝かせる。
草むらの中、隠すように。
エオクシ「ここで…お別れだ」
カエノ「任務が終わったら迎えに来ましょう。
それまで魔獣に見つかりませんように…」
サヤノ「………」
アヅミナ「時間がない。早く行きましょう」
カエノ「はい!」
足早に進む。
巨方庭の東側から南側へ。
エオクシ、カタムラ、アヅミナは進む。
その後ろをカエノとサヤノが歩く。
林の中は不気味なほど静か。
白い光の筋は途切れることなく伸びる。
エオクシたち5人に道を示している。
そして、南の泉が見えてくる。
◇◇ ステータス ◇◇
◇ エオクシ ◇
◇ レベル 37
◇ HP 3451/3692
◇ 攻撃
49★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 防御
44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★
◇ 素早さ
46★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★
◇ 魔力
◇ 装備 壮刃剣、戦究防護衣
◇ 技 天裂剣、地破剣
◇ アヅミナ ◇
◇ レベル 35
◇ HP 404/404
◇ 攻撃 1★
◇ 防御 2★★
◇ 素早さ
40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 装備 大法力の魔杖、漆黒の術衣
◇ 魔術
火弾、火矢、火球、火砲、火羅、火嵐、王火
氷弾、氷矢、氷球、氷刃、氷柱、氷舞、王氷
暗球、精神操作、五感鈍化、魔病感染、
酷死魔術
◇ カエノ ◇
◇ レベル 36
◇ HP 1084/1181
◇ 攻撃 3★★★
◇ 防御
20★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 魔力
45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★
◇ 装備 超放気の魔杖、連星の魔道衣
◇ 魔術 雷弾、雷砲、雷破、雷花、王雷
氷弾、氷矢
光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術
◇ サヤノ ◇
◇ レベル 37
◇ HP 953/961
◇ 攻撃 1★
◇ 防御 11★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
46★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★
◇ 装備 清化印の魔杖、光心の魔道衣
◇ 魔術 岩弾、岩砲、王岩
雷弾、雷槍
光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術
◇ カタムラ ◇
◇ レベル 16
◇ HP 766/766
◇ 攻撃 7★★★★★★★
◇ 防御 9★★★★★★★★★
◇ 素早さ
17★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 秘力 3★★★
◇ 装備 魔鉱石の短剣、秘術道具(空球)、
探検用強化研究衣
◇ 魔術 光玉、治療魔術
◇ 秘術 青珠
◇ 持ち物 ◇
◇ 活汁 95、魔力回復薬 50