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アルジ往戦記  作者: roak
185/300

第185話 無益

エオクシたちは歩き続ける。

青い光の筋に導かれて。

西から東へ進んでいく。

そして、巨方庭の真ん中に来た。


カタムラ「これは…」

エオクシ「なんだ?」


円形に配置された巨石。

大きなものはカタムラの背丈の倍ほど。


カタムラ「何か意味がありそうですね」

エオクシ「調べるか?」

アヅミナ「光の筋はあっちに続いてるけど」


光の筋は巨石と巨石の間を通り抜けている。

東の方へ伸びていた。

カタムラは巨石の配置を手帳に書いていく。

1つ1つの石の形や大きさを確かめながら。

立って見守るエオクシたち5人。

声を上げたのはマユノ。


マユノ「少し休憩にしませんか?」

エオクシ「そうだな」

マユノ「歩き続けて、戦い続けて、

 少し疲れが出てきました。

 お腹も空いてきましたし…」

カタムラ「いいでしょう。

 まだ探検は続きますから。

 この辺で一休みしましょう。

 私は調査をさせてください。

 気になるものですから。

 この石の並び方が…。

 どうぞ、気にせずお休みください」


カタムラ以外は近くの巨木の根に腰を下ろす。

一息ついて栄養を補給する。


エオクシ「クソ!相変わらずまずいぜ!!」


飲んだのは活汁かつじる

戦地で栄養補給するため開発された粉末飲料。

紙の容器に入っていて手軽に摂取できる。

今回の任務に当たって大量に支給されていた。


マユノ「私はそうでもありませんよ」

カエノ「慣れればまあまあです」

サヤノ「変わった味ですね」

アヅミナ(まずい)


日は傾き始める。


アヅミナ(日没までに起動装置を探す。

 探せなければ、その日の調査は終了。

 続きは次の日に。現地で夜を明かさない。

 任務を命じられたとき、みんなで決めた。

 彼の巨石の調査が長引くようなら…

 今日のところはこれで帰るのも

 1つの方法かもしれない。

 だけど…私たちを導くこの光の筋は

 いつまで残ってくれるんだろう。

 また最初から…

 なんてことにならなければいいけど)


カタムラは休まず調査を続ける。

エオクシたちは静かに彼を待つ。

マユノはサヤノを見て考えた。


マユノ(おかしい。

 あの子の傷が治らないのは。

 あれだけ再生魔術をかけたのに。

 エオクシは治ったのに。何か原因がある。

 それが分かれば治せるかもしれない)

サヤノ「マユノ、どうかした?怖い顔して」

マユノ「大丈夫。なんでもありません」


カタムラが5人の元へ歩いてくる。


カタムラ「終わりました。

 探検を再開しましょう」

エオクシ「何か手がかりになるものは?」

カタムラ「直接的なものはありません。

 ですが、今後の調査次第では…

 あの石の配置は太古の王族の…」

エオクシ「そうか」

カタムラ「………」

エオクシ「難しいこと言われても分からねえ。

 起動装置を見つけたら教えてくれ。

 邪魔なもんは全部斬り払ってやっから」

カタムラ「ええ。お願いします。

 それでは行きましょう」


東へ向かって歩き出すエオクシたち。

再び青い光の筋をたどって進む。

林の中は静まり返っていた。


アヅミナ(魔獣の魔波を感じなくなった。

 あたしたちを避けて逃げていったのか)


しばらく進むと、急斜面が行く手を阻む。

その斜面を光の筋はまっすぐ進んでいる。


エオクシ「登れねえこともねえな?」

カタムラ「はい」


エオクシたちは迂回しない。

木の枝につかまって乗り越えようとする。


マユノ「大丈夫?」

カエノ「大丈夫!」

サヤノ「…うわ!!」

カエノ「サヤノ!」


エオクシ、アヅミナ、カタムラは上で待つ。

光術三姉妹が無事に登り終えるのを。


マユノ「お待たせしました」

アヅミナ「慌てなくていいから。無理しないで」

マユノ「はい」

サヤノ「いてて…」


さらに歩くと前方に巨大な岩が見えてくる。

青い光の筋はその岩へ続く。


カタムラ「どうやら…

 あの岩が東の要所のようですね。」

エオクシ「行くか」

カタムラ「いざというときはお願いしますね」

エオクシ「任せとけ」


そのとき、マユノが手を挙げた。


マユノ「あの、皆さん。少しいいですか?」


彼女は5人の視線を集める。


エオクシ&アヅミナ&カタムラ「………」

マユノ「私から1つ提案させてください」

カエノ&サヤノ「……?」

マユノ「複雑なことではありません。

 1つ。そうです。たった1つ。

 こうしてはどうか?

 という私からの提案です」

アヅミナ「何?」

マユノ「ええ。それをこれからお話します。

 アヅミナも賛同いただけると嬉しいです」

アヅミナ「だからどんなこと?」

マユノ「はい…」


彼女は考えていた。

歩きながら1人で。

サヤノの傷が治らないのはなぜか。

どうしたら傷は治るのか。

彼女は1つの仮説を立てていた。


マユノ「次、化け物が現れたときのことです」

エオクシ&アヅミナ&カタムラ「………」

マユノ「サヤノに戦わせてほしいのです」

サヤノ「え…?」

カエノ「マユノ…何を…」

エオクシ「…どういうことだ?」

マユノ「はい。今からお話します。

 …私なりの考えがありますので」

アヅミナ「………」


困惑するカエノとサヤノ。

彼女たちにほほえみかけるマユノ。

それからエオクシ、アヅミナ、カタムラを見る。

毅然とした態度で。


マユノ「考えてました。

 青白く光る傷のことを。

 竜の化け物の目から出る光線。

 当たると光る傷が体に残る。

 エオクシの傷は消えた。

 でも、サヤノの傷は消えない。

 何が違うのか。考えたんです。

 2人には同じ再生魔術を…

 いえ、サヤノには…

 3倍も4倍も強い再生魔術をかけた。

 これは、どんな大ケガでも治せる強さ。

 でも、傷は消えなかった。

 エオクシは消えて、サヤノは消えなかった。

 2人の傷の何が違うのか。私は考えました」

エオクシ「………」

マユノ「まず、傷そのものに違いはありません。

 サヤノの方がいくらか広範囲ではあります。

 ですが、2人が負った傷に違いはない。

 光を放ち、痛みはほとんどない。

 当たったとき熱を感じた。

 同じような傷です。

 同じ種類の傷ならば…

 一方は治せたのにもう一方は治せない。

 こんなこと普通はありません。

 もちろん程度の差はあります。

 重い傷を治すには強い再生魔術が必要です。

 同じ骨折でも…

 1本より複数折れているときの方が

 回復には強い再生魔術を使います。

 1本の骨折を治すときよりも

 強い再生魔術を使えば複数の骨折も治せる。

 でも、今回は違いました。

 3倍も4倍も強い再生魔術を使ったのに

 サヤノの傷は一向に治りませんでした。

 そんなことはありません。

 では、どういうことでしょうか?

 エオクシとサヤノ。

 2人の傷の何が違うのでしょうか?」

サヤノ「………」

マユノ「しばらく考えて私は気づきました。

 傷の違いについていくら考えても無益だと。

 2人の傷に違いなどないのではないかと。

 では、違いはどこにあるのでしょう?

 違いは…いいえ…間違いは…

 全然別なところにあったのです」

アヅミナ「………」

マユノ「エオクシの傷は再生魔術で治った。

 この前提が大きな間違いだったのです。

 光る傷は再生魔術で治せるものではない。

 そういうことだと思うのです」

エオクシ「………」

マユノ「それでは…

 何が彼の傷を治したのでしょうか。

 エオクシは竜の頭の化け物を倒した。

 でも、サヤノは倒してない。これです。

 おそらく…あの目から出る光線は…

 試される者が誰なのか…

 定めるための儀式のようなもの…。

 化け物を倒すことができれば、

 その呪いのような傷から解放される。

 こういうことじゃないかと私は思います。

 私たちは試されている。

 アヅミナさんも言ってましたよね。

 竜の化け物は2体ともエオクシが倒した。

 正確に言えば…エオクシがとどめを刺した。

 それでエオクシさんは認められた。

 実力を。だから、呪いの傷が消えたのです。

 でも、サヤノは…まだ認められていません。

 だから、光る傷を負い続けている。

 …どうでしょうか?私のこの説明。

 筋が通っているとは思いませんか?

 ですから、さっきの提案を…」

アヅミナ「そんなのダメ」



◇◇ ステータス ◇◇

◇ エオクシ ◇

◇ レベル 37

◇ HP   3451/3692

◇ 攻撃

 49★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★

◇ 防御

 44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★

◇ 素早さ

  46★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★

◇ 魔力

◇ 装備  壮刃剣、戦究防護衣

◇ 技   天裂剣、地破剣


◇ アヅミナ ◇

◇ レベル 35

◇ HP   404/404

◇ 攻撃   1★

◇ 防御   2★★

◇ 素早さ

 40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★

◇ 装備  大法力の魔杖、漆黒の術衣

◇ 魔術

  火弾、火矢、火球、火砲、火羅、火嵐、王火

  氷弾、氷矢、氷球、氷刃、氷柱、氷舞、王氷

  暗球、精神操作、五感鈍化、魔病感染、

  酷死魔術


◇ マユノ ◇

◇ レベル 36

◇ HP   1176/1181

◇ 攻撃   4★★★★

◇ 防御

18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 42★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★

◇ 装備  蒼天想の魔杖、来陽の魔道衣

◇ 魔術  氷弾、氷柱、氷裂、氷波、王氷

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ カエノ ◇

◇ レベル 35

◇ HP   1084/1103

◇ 攻撃   3★★★

◇ 防御

20★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★

◇ 魔力

 44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★

◇ 装備  超放気の魔杖、連星の魔道衣

◇ 魔術  雷弾、雷砲、雷破、雷花、王雷

      氷弾、氷矢

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ サヤノ ◇

◇ レベル 36

◇ HP   953/961

◇ 攻撃   1★

◇ 防御  11★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 43★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★

◇ 装備  清化印の魔杖、光心の魔道衣

◇ 魔術  岩弾、岩砲、王岩

      雷弾、雷槍

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ カタムラ ◇

◇ レベル 16

◇ HP   766/766

◇ 攻撃   7★★★★★★★

◇ 防御   9★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 17★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  14★★★★★★★★★★★★★★

◇ 秘力   3★★★

◇ 装備  魔鉱石の短剣、秘術道具(空球)、

     探検用強化研究衣

◇ 魔術  光玉、治療魔術

◇ 秘術  青珠


◇ 持ち物 ◇

◇ 活汁 95、魔力回復薬 80

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