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アルジ往戦記  作者: roak
184/300

第184話 不安

林の中を歩くエオクシたち。

時刻は昼になろうとしていた。

相変わらずの曇り空で辺りは暗かった。

コダイオオカミの襲撃はない。


エオクシ「あいつら怯えて逃げたな。

 オレたちの強さを学習したわけだ」

アヅミナ「…いることはいる。

 でも、あたしたちから離れて隠れてる。

 姿を見せないようにしてる」

カタムラ「安心して歩けます。

 あなた方のおかげです。

 本当にありがとうございます」


エオクシが先頭を歩く。

その後ろにカタムラ、アヅミナと続く。

光術三姉妹が最後尾。


マユノ「サヤノ、さっきの大丈夫?」

サヤノ「うん。

 当たったときは熱かったけど…」

カエノ「傷は治ったの?」

サヤノ「もう痛くない。大丈夫だから」


青い光の筋はエオクシたちを導く。

東へ、東へと。

歩きながらカタムラは言う。


カタムラ「巨方庭について

 今の私の考えを述べておきます」

エオクシ&アヅミナ「………」

カタムラ「東西南北。

 巨方庭にある4つの拠点。

 それぞれに竜の頭の化け物がいる。

 彼らは遺跡の守護者。侵入者を排除する。

 そして、彼らを倒した者は認められる」

エオクシ「認められるってどういうことだ?」

カタムラ「魔真体の所有にふさわしい者として

 認められるということです」

アヅミナ「試されてるってわけね」

カタムラ「そうです。私たちは試されている。

 多分。魔真体にふさわしい力を持つ者か。

 秘術人形と戦うことで試されているのです。

 そして、4つの拠点で化け物を倒したとき…

 私たちはおそらく導かれるのです。

 魔真体の起動装置…古王の祭壇に…」

エオクシ「じゃあ、あと半分か。

 4体のうち2体倒したからな」

アヅミナ「罠じゃないといいんだけどね」

カタムラ「………」


アヅミナは歩きながら考える。


アヅミナ(今の話が本当なら…

 化け物はあと半分。

 任務成功が見えてきた。

 でも、気になるのは学習能力。

 さっきのカタムラの話も本当だとしたら、

 次の戦いはかなり厳しいものになる。

 エオクシの剣はほとんど見切られてる。

 さっきも大分苦戦していた。

 次の化け物には普通の斬り合いは無理。

 そう思っていていい。

 それなら、魔術で戦うしかない。

 マユノの王氷もカエノの雷術も…

 さっきの戦いで竜の化け物に使った。

 あれらも見切られたとしたら…

 王火だ。あたしの王火だ。

 あたしの王火でなんとかしよう。

 だけど…その次は?

 その次の4体目の化け物はどう戦う?

 サヤノの岩術…?手札は限られてる…)


サヤノが木の根につまずいて転倒した。


サヤノ「いったー…」

マユノ「大丈夫?」

サヤノ「大丈夫です。ごめんなさい」

カエノ「ほら、立って」


手を差し出すカエノ。


サヤノ「ありがとう」


エオクシ、アヅミナ、カタムラは立ち止まる。

振り返り彼女たちを見る。

サヤノが立ち上がるとき。

カエノは見つけた。


カエノ「サヤノ。それ…」


サヤノの魔道衣。

ポツンと1つ、青白く光る点。

魔道衣にいくつもあった点の1つ。

消えずに残っていた。


エオクシ「………」

カタムラ「…光ってますね」

アヅミナ「………」


カエノの顔に不安の色が浮かぶ。


カエノ「ねえ、サヤノ。体の光は消えたの?」

サヤノ「痛みはないんだけど…」


マユノも顔を曇らせる。


マユノ「見せて」

サヤノ「…はい」


服をめくり上げ、腹を見せる。


マユノ(全部で8つ…。

 しかも…1つ1つが大きい…。

 エオクシのときよりも…)

サヤノ「ほかにもあります」

マユノ「…ほかにも?」

サヤノ「腰のところにも…」

マユノ&カエノ「………」

サヤノ「再生魔術をかけてたんだけど…

 全然消えなくて」


マユノは提案した。

エオクシ、アヅミナ、カタムラに向かって


マユノ「あの…

 少し外させてもらってもいいでしょうか?」

エオクシ「ああ。いいよな。カタムラさん」

カタムラ「ええ」


アヅミナが前に出る。


アヅミナ「あたしも行く。…いい?」

マユノ「…はい」


アヅミナ、マユノ、カエノ、サヤノ。

4人は去っていく。

太い木の根で膨らんだ地面。

その向こうへ消えていく。

エオクシとカタムラは座って待つ。


アヅミナ「周りの様子はあたしが見てる。

 だから、あなたたちは再生魔術に専念して」

マユノ「ありがとう」

カエノ「ありがとうございます」


サヤノは服を脱いですべての傷を見せる。


マユノ&カエノ「…!!」


腰にできていた傷は特に大きかった。

青白い光を放ち続けている。


マユノ「今、治すからね」

カエノ「心配いらないよ」

サヤノ「…うん」


サヤノの目からポロポロと涙がこぼれた。

マユノとカエノは再生魔術の光を当てる。

だが、一向に傷は治らない。

マユノもカエノも額に汗を浮かべる。

杖を持つ手が震え始める。


アヅミナ「………」


アヅミナは、サヤノが泣く声を聞く。


マユノ(魔力が…尽きる…)

カエノ(もう限界…)


2人の再生魔術の光が消える。

結局、傷は1つも消えなかった。


サヤノ「…ごめんなさい。

 …私のためにありがとう」

マユノ「まだだよ…!サヤノ!」

カエノ「諦めるのは早いから…!」


魔力回復薬を飲む2人。

再び再生魔術をサヤノにかける。


アヅミナ「………」


またも2人の魔力が尽きる。


マユノ&カエノ「………」


サヤノは心配そうに2人を見つめる。

見かねたアヅミナが歩き出す。


アヅミナ「あたしにも見せて」

マユノ「何を…する気…?」

カエノ「………」


マユノもカエノも意識が朦朧としていた。


アヅミナ「傷をよく見るだけ。

 マユノさんもカエノさんも…

 もう十分やったから。

 あとはもう無理しちゃダメ」

マユノ&カエノ「………」


2人とも何か言いたそうな顔。

だが、言葉が出てこない。

そのまま2人は気を失って目を閉じる。

倒れる彼女たちの体をそっと寝かせる。

アヅミナはマユノを、サヤノはカエノを。

それから、アヅミナはじっと見つめた。

サヤノの光る傷を1つ1つ。


サヤノ「アヅミナさん…」

アヅミナ「シノ姫なら…

 どうすればいいか分かるかも」

サヤノ「シノ姫様…ですね?」

アヅミナ「ええ。

 これと似た光を前に見せられたことがある。

 だから、あの人なら何か分かるかも。

 治す方法も知ってるかもしれない」

サヤノ「本当…ですか?」

アヅミナ「ええ。

 あたしがあなたを連れていく。

 この任務が終わったら見てもらう。

 傷を消してくれるかもしれない。

 だから…今は我慢してくれる?」

サヤノ「はい。

 今は特に痛みもありませんので大丈夫です。

 ただ…不安で…。

 不安な気持ちが募っていって…」


目からポロポロと涙をこぼす。

アヅミナはそっと彼女の頬をなでる。

ほほえみかけた。

サヤノを安心させるため。

それが彼女にできる精一杯のことだった。


サヤノ「…ごめんなさい。

 …ありがとうございます」

アヅミナ「さあ、服を着て。

 任務の続きをしよう」

サヤノ「はい…!」


サヤノは服を着る。

アヅミナはマユノとカエノを起こす。


マユノ「…うう…」

カエノ「…ん…」


サヤノが2人に向かって言う。


サヤノ「さっきはありがとう」

マユノ「サヤノ…」

カエノ「…治ったの?」


アヅミナが首を横に振る。


アヅミナ「いいえ」

マユノ&カエノ「………」

アヅミナ「この任務が終わったら、

 シノ姫に話して見てもらう。

 秘術使いなら治す方法が分かるかもしれない。

 あの光はきっと秘術の光だと思う」

マユノ&カエノ「………」


サヤノは声に力を込めて言う。


サヤノ「任務続行です。

 エオクシさんたちと合流しましょう」


歩き出す4人。

木の根を越えて、元の道へ戻る。

エオクシとカタムラが待っていた。


エオクシ「終わったか」

アヅミナ「うん」

エオクシ「…悪かったな。

 オレが光線を避けたばっかりに…」

サヤノ「いいえ。気になさらないでください」

エオクシ「けど、無事に治ってよかったぜ」

アヅミナ「治ってない」

エオクシ「…は?」

アヅミナ「帰ったらシノ姫に見てもらう」

エオクシ「…そうか」

サヤノ「今は痛みもありませんので」

エオクシ「…ならよかった。

 だが、治らないって変だな。

 オレは治ったのによ」

マユノ「………」


そして、6人は再び歩き出す。

巨方庭の東に向かって。

青い光の筋をたどって。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ エオクシ ◇

◇ レベル 37

◇ HP   3451/3692

◇ 攻撃

 49★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★

◇ 防御

 44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★

◇ 素早さ

  46★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★

◇ 魔力

◇ 装備  壮刃剣、戦究防護衣

◇ 技   天裂剣、地破剣


◇ アヅミナ ◇

◇ レベル 35

◇ HP   404/404

◇ 攻撃   1★

◇ 防御   2★★

◇ 素早さ

 40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★

◇ 装備  大法力の魔杖、漆黒の術衣

◇ 魔術

  火弾、火矢、火球、火砲、火羅、火嵐、王火

  氷弾、氷矢、氷球、氷刃、氷柱、氷舞、王氷

  暗球、精神操作、五感鈍化、魔病感染、

  酷死魔術


◇ マユノ ◇

◇ レベル 36

◇ HP   1176/1181

◇ 攻撃   4★★★★

◇ 防御

18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 42★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★

◇ 装備  蒼天想の魔杖、来陽の魔道衣

◇ 魔術  氷弾、氷柱、氷裂、氷波、王氷

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ カエノ ◇

◇ レベル 35

◇ HP   1084/1103

◇ 攻撃   3★★★

◇ 防御

20★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★

◇ 魔力

 44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★

◇ 装備  超放気の魔杖、連星の魔道衣

◇ 魔術  雷弾、雷砲、雷破、雷花、王雷

      氷弾、氷矢

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ サヤノ ◇

◇ レベル 36

◇ HP   953/961

◇ 攻撃   1★

◇ 防御  11★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 43★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★

◇ 装備  清化印の魔杖、光心の魔道衣

◇ 魔術  岩弾、岩砲、王岩

      雷弾、雷槍

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ カタムラ ◇

◇ レベル 16

◇ HP   766/766

◇ 攻撃   7★★★★★★★

◇ 防御   9★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 17★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  14★★★★★★★★★★★★★★

◇ 秘力   3★★★

◇ 装備  魔鉱石の短剣、秘術道具(空球)、

     探検用強化研究衣

◇ 魔術  光玉、治療魔術

◇ 秘術  青珠


◇ 持ち物 ◇

◇ 活汁 100、魔力回復薬 80

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