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アルジ往戦記  作者: roak
183/300

第183話 大量

エオクシたちは巨方庭の西側に来た。

目の前には1棟の建造物。

ひっそりとそれは建っている。

積み上げられた石が外壁を成す。

その外壁の真ん中に縦長の暗い穴。

人が1人通れる高さと幅。

赤い光の筋はその中へ続いている。


エオクシ「この形。家じゃねえな」

カタムラ「小さな城のような…」

エオクシ「…そうだな」

カタムラ「古代の貴族の邸宅にも似ています。

 入ってみれば何か分かるかもしれません」

エオクシ「おし、行くぜ!」


エオクシが建物に入っていく。

中は真っ暗。

マユノとカエノが光玉を飛ばす。

宙に浮かび、周囲を照らす。

建物の中は石の壁で仕切られていた。

小さな部屋がいくつもある。

エオクシたちは通り過ぎていく。

部屋を1つ、また1つ。

それぞれの部屋には特に何もない。

積もった砂や土以外に。

赤い光の筋は床に沿って奥へ伸びている。


エオクシ「石板だ」


エオクシたちは見つける。

壁に埋め込まれた円形の石板を。

その石板にも赤い光が灯っていた。

描かれた正方形の頂点。

その1点が赤く光っている。


エオクシ「さっき岩山で見たのと同じだな」

カタムラ「ふむ…光の筋は…」


壁を伝って上へ伸びていた。

天井に空けられた小さな穴の中に入っている。

その先はどこへ伸びているか見えない。


エオクシ「押してみるか?」

カタムラ「…ええ」

アヅミナ「さっきの岩山でも…?」

エオクシ「ああ。

 カタムラさんが石板を押したんだ。

 ゴトンとでかい音がして下りてみたら…」

アヅミナ「化け物がいたわけね」

エオクシ「そういうことだ」

マユノ&カエノ&サヤノ「………」


光術三姉妹の表情がにわかに引き締まる。

サヤノは周囲をちらりちらりと見回した。

だが、怪物らしき者の姿はない。


カタムラ「いいですか?押しますよ」

エオクシ「おう!いつでもやりやがれ!!」


カタムラは石板を押す。

ゴトンと大きな音がした。

竜の守護兵が現れる。

その居場所を最初に感知したのはアヅミナ。


アヅミナ「出口の方だよ」


1人で走り出す。

ほかの5人が彼女を追う。

エオクシが前に出る。

アヅミナと並んで竜の守護兵と対峙。

守護兵は建物の外。

出入口付近で待ち構えていた。


エオクシ「さっきと似たような姿だな」

アヅミナ「色が違う。持ってる武器も」


竜の頭部に人の体。

青く硬い鱗に覆われている。

その上に分厚い鎧。

両手には太く長い槍。

その先端には黒い刃。

アヅミナは小さな声で伝える。


アヅミナ「魔病感染を使う」


エオクシが後退。

アヅミナから距離をとる。

サヤノがマユノとカエノを避難させる。

建物の奥の方へ。

アヅミナが魔力を高めたそのとき。

竜の守護兵は地面を蹴って後ろへ跳んだ。


アヅミナ「え…!?」


槍を構えてじっとアヅミナの様子を伺う。


アヅミナ(あの距離は…

 ちょうど魔病感染の射程外…。

 あたしが使うことを予知して跳んだ…?)


風が吹く。

アヅミナの横を通り抜ける。

建物の外へ。

エオクシだった。

建物の外へ駆け出して竜の守護兵に斬りかかる。

剣を振り上げて渾身の一撃を繰り出した。


エオクシ「!!」


振り下ろした剣は槍で受け止められた。

ゴキンと大きな音が響く。


エオクシ「なんの!!」


素早く2撃目を撃ち込む。

だが、槍で受け流される。

3撃目。

槍で弾かれる。


エオクシ(クソ!!!)


さらに攻撃を繰り出す。

だが、槍で防がれる。

守護兵の体にはかすりもしない。

予想を超えた反応の速さにエオクシは焦る。


カタムラ(恐ろしい連続攻撃…!

 並の戦士が相手なら…

 とっくに勝負は決している。

 あの猛攻を完全に封じる能力とは…!?)

マユノ「サヤノ!」


サヤノが建物から出ていった。


サヤノ「戦う!私も!」

アヅミナ「…!」


アヅミナも外へ出た。

光術三姉妹、カタムラもあとに続く。

守護兵が槍を振り回す。

エオクシは身をかがめてかわす。

そして、反撃する。


エオクシ「食らえ!!!」


天裂剣が守護兵の腹をとらえる。

鎧を破壊し、肉を裂いた。

◇ 竜の守護兵に9155のダメージ。

次の瞬間。

守護兵の目が青白く光る。


エオクシ「お!!」


目から飛び出す光線。

素早く動いて避けた。


エオクシ「2度も食らうかよ!!」


青白い光線はサヤノに当たる。


サヤノ「…うっ!!」

エオクシ「…!!」


サヤノに駆け寄るマユノとカエノ。

彼女の魔道衣には点々と青白い光。


マユノ「サヤノ!!」

カエノ「大丈夫!?しっかり!」

サヤノ「大丈夫…!

 熱いけど…そんなに痛くないから!

 それよりも…エオクシさんの援護を!」

カエノ「分かった!

 分かったから後ろで休んでて!」


サヤノは退く。

建造物の壁に背を預ける。

自分の体に再生魔術を使う。

マユノとカエノは守護兵をにらむ。

エオクシの苦戦は続いていた。

何度も剣を振るが、攻め切れない。

一方、守護兵の攻撃は勢いを増していく。

黒い刃がエオクシの肩をかすめた。

◇ エオクシは241のダメージ。

 (HP3692→3451)


エオクシ(強え!今まで戦った誰よりも!!

 だが、この強さ…!妙だ!!

 オレの手の内を…

 あらかじめ知ってるような!

 そんな強さだ!)


エオクシは後方へ跳んで間合いをとる。

肩で息をしていた。

距離をつめていく守護兵。

その様子をアヅミナは見ていた。

杖を構えて魔力を高めながら。

そんな彼女にカタムラは声をかける。


カタムラ「アヅミナさん。

 あなたも気づきましたね?」

アヅミナ「………」

カタムラ「彼らの学習能力に…」


マユノとカエノが杖を構える。

アヅミナより先に彼女たちが動いた。

バチン、と音がする。

守護兵に雷砲が命中した。

◇ 竜の守護兵に833のダメージ。

撃ったのはカエノ。


カエノ「エオクシさん!

 敵から離れてください!」

エオクシ「悪いな…!」


エオクシはその場から離れる。

倒せなかったことに自責の念を抱きながら。

竜の守護兵の注意はカエノに向けられる。

槍を構えて突進する素振りを見せたとき。

彼女の杖から次の魔術が放たれる。

いくつもの雷の花が咲く。

守護兵を取り囲む。

◇ 竜の守護兵に2073のダメージ。


マユノ「行くよ!!」


今度はマユノ。

強力な冷気が杖から飛び出す。

竜の守護兵を凍えさせる。

王氷が命中。

◇ 竜の守護兵に4992のダメージ。


マユノ「エオクシ!今です!」

エオクシ「おし!!」


エオクシは竜の守護兵に地破剣を見舞った。

頭を割り、胸部、腹部を深々と斬った。

◇ 竜の守護兵に12988のダメージ。

◇ 竜の守護兵を倒した。

◇ エオクシたちは戦いに勝利した。

地面に崩れ落ちる守護兵。

マユノとカエノは胸をなで下ろす。

剣を手にしたまま曇った顔のエオクシ。

カタムラがそんな彼の元へ行く。


カタムラ「違和感…ですね?」

エオクシ「………」

カタムラ「あなたの攻撃は見事でした。

 寸分の狂いもなく敵の急所を狙っていた。

 素人の私から見てもよく分かります。

 それくらい素晴らしかった。

 ええ、欠点など1つもない。

 完璧な攻めに見えました。

 ですが、その攻撃に敵は対応した。

 あなたの動きを予知しているかのように」

エオクシ「…そうだ」

マユノ&カエノ「………」

エオクシ「予知している。そんな感じだ」

カタムラ「………」


アヅミナがカタムラに問いかける。


アヅミナ「さっき言ってた学習能力って?」

カタムラ「その名のとおり学習する力。

 竜の頭の化け物は学習しているようです。

 あなた方の戦い方を。魔術を。剣術を。

 アヅミナさんの闇魔術が見破られたのも…」

エオクシ「ちょっと待て。

 さっき倒した化け物は別物だろ。

 岩山で倒した化け物とは」

カタムラ「それが不思議なのです」

アヅミナ「体は別…

 だけど、知識や記憶は共有している。

 …そういうこと?」

カタムラ「ええ、そういうことです」

マユノ「そうなると…」

カタムラ「…気づかれましたか?」

カエノ「化け物と戦えば戦うほど…

 私たちの戦いは厳しくなる」

カタムラ「そうです。

 私たちの手札は減っていくのです。

 さっきあなた方は雷術、氷術を使った。

 竜の頭の化け物に。

 それらもおそらく学習した。

 そして、これも私の推測ですが、

 あと2体、化け物と戦うことになる。

 魔真体の起動装置に到達するまでに。

 北、西、と来て…」

エオクシ「南と東…ってわけか」


そのとき、新たな光の筋。

建造物の中から青い光の筋が伸びる。

地面に沿って、曲がりくねりながら。

エオクシとカタムラの間を通り抜ける。

そして、そのまま林の奥へ伸びていく。


カタムラ「次は東…のようですね」


一方、北の岩山から伸びていた赤い光は消えた。

ゴボゴボと音を立て、竜の守護兵が溶けていく。

体が、鎧が、武器が、形を失っていく。

そして、青黒い泥のような塊になった。


エオクシ「なんだ…!?」

マユノ&カエノ「……!」

アヅミナ「…嘘じゃなかったでしょ。

 岩山で倒したあいつも最後はこうなった」


カタムラは目を見開いて肩を震わせる。


カタムラ「すごい。これはすごい仕掛けです。

 光が導いて…秘術人形がいて…

 倒すと溶け出して…。

 敵の攻撃を学習することもできる。

 これは…これは…!」

エオクシ「これは…?なんだ?」

カタムラ「無理ではない。

 確かに、無理ではありません。

 秘術があれば…強力な秘術があれば…

 しかし、しかしですよ!

 並大抵の秘力ではこんなものはできない。

 ですが…あれを、ああすれば…!」

アヅミナ「…あれって…?」

カタムラ「大量の魔力と秘力。

 組み合わせて注ぐのです。

 ですが、これだけの仕掛けです。

 しかも、大昔から続いている。

 何十、いや、何百もの術師の力が必要…。

 選ばれた有能な術師たちが…

 命を削る思いで力を注いだ。

 そうでなければ、こんな遺跡できません。

 こんな複雑な仕組みは実現しません。

 …感動です。

 こうしてここにいられることは…

 感動的な体験です」

エオクシ「オレにはよく分からねえな」

アヅミナ「任務を続けましょう」

カタムラ「………」


エオクシたちは歩き出す。

今度は青い光の筋に沿って。

再生魔術を使い続けていたサヤノ。

彼女も歩き出す。

エオクシたちに追いつく直前。

魔道衣の襟からちらりと自分の腹部を見る。


サヤノ(光が…消えない…)



◇◇ ステータス ◇◇

◇ エオクシ ◇

◇ レベル 37

◇ HP   3451/3692

◇ 攻撃

 49★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★

◇ 防御

 44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★

◇ 素早さ

  46★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★

◇ 魔力

◇ 装備  壮刃剣、戦究防護衣

◇ 技   天裂剣、地破剣


◇ アヅミナ ◇

◇ レベル 35

◇ HP   404/404

◇ 攻撃   1★

◇ 防御   2★★

◇ 素早さ

 40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★

◇ 装備  大法力の魔杖、漆黒の術衣

◇ 魔術

  火弾、火矢、火球、火砲、火羅、火嵐、王火

  氷弾、氷矢、氷球、氷刃、氷柱、氷舞、王氷

  暗球、精神操作、五感鈍化、魔病感染、

  酷死魔術


◇ マユノ ◇

◇ レベル 36

◇ HP   1176/1181

◇ 攻撃   4★★★★

◇ 防御

18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 42★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★

◇ 装備  蒼天想の魔杖、来陽の魔道衣

◇ 魔術  氷弾、氷柱、氷裂、氷波、王氷

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ カエノ ◇

◇ レベル 35

◇ HP   1084/1103

◇ 攻撃   3★★★

◇ 防御

20★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★

◇ 魔力

 44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★

◇ 装備  超放気の魔杖、連星の魔道衣

◇ 魔術  雷弾、雷砲、雷破、雷花、王雷

      氷弾、氷矢

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ サヤノ ◇

◇ レベル 36

◇ HP   953/961

◇ 攻撃   1★

◇ 防御  11★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 43★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★

◇ 装備  清化印の魔杖、光心の魔道衣

◇ 魔術  岩弾、岩砲、王岩

      雷弾、雷槍

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ カタムラ ◇

◇ レベル 16

◇ HP   766/766

◇ 攻撃   7★★★★★★★

◇ 防御   9★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 17★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  14★★★★★★★★★★★★★★

◇ 秘力   3★★★

◇ 装備  魔鉱石の短剣、秘術道具(空球)、

     探検用強化研究衣

◇ 魔術  光玉、治療魔術

◇ 秘術  青珠


◇ 持ち物 ◇

◇ 活汁 100、魔力回復薬 100


◇◇ 敵ステータス ◇◇

◇ 竜の守護兵(青) ◇

◇ レベル 37

◇ HP   28777

◇ 攻撃

 44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★

◇ 防御

 44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★

◇ 素早さ

 40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 秘力  12★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  青竜の剣、青竜の鎧

◇ 魔術  氷弾、氷砲、王氷

◇ 秘術  青深

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