第180話 光線
エオクシたちは眺めた。
岩山から、巨方庭全体を。
カタムラ「南に泉、西に建造物、東に洞穴…。
それらがあるということですが…」
エオクシ「どれも見えねえな」
アヅミナ「林に隠れちゃってる。
行ってみないと分からないね」
マユノ&カエノ&サヤノ「………」
遠く向こうには管理者の館が小さく見える。
カタムラが動く。
岩山を登り始めた。
エオクシが追う。
エオクシ「1人ですたすた行くなって」
カタムラ「感じるのです」
エオクシ「魔力か?」
カタムラ「いえ、秘力です。この山の上の方に」
エオクシ「秘力か」
赤茶けた荒々しい岩肌の急斜面。
2人は登っていく。
アヅミナはその場から動かない。
マユノ「行かなくていいんですか?」
アヅミナ「あなたたちは行ってあげて」
マユノ「………」
アヅミナ「あたしは下を見てる」
マユノ「行こう。カエノ、サヤノ」
アヅミナ「下に8頭」
マユノ「………」
アヅミナ「魔獣がいる。うろついてる。
そいつらが上がってこないかここで見てる」
マユノ&カエノ&サヤノ「………」
アヅミナ「上の方に魔獣はいないみたい。
でも、あなたたちは行ってあげないとね。
彼らが転落でもしたら治療が必要だから」
顔を見合う光術三姉妹。
アヅミナ(魔獣の魔波には特別なゆらぎがある。
位置を正確に把握するには経験がものを言う。
あなたたちは、ちゃんと感じ取れていた?
…分かんないよね。分かるわけないよね。
あなたたちが今までやってきたお仕事は…
そんなの感知する必要ないんだからね)
マユノはその場を離れる。
エオクシを追いかけた。
カエノがそれに続く。
サヤノはその場にとどまった。
アヅミナ「行かなくていいの?」
サヤノ「私はここに残ります。
治療は2人がいれば十分ですから」
アヅミナ「そう」
カタムラは息を切らして岩山を駆け上がる。
そして、頂上にたどり着く。
そこは人が1人どうにか座れるほどの広さ。
中心には握り拳ほどの小さなくぼみ。
カタムラは顔を近づけてそのくぼみを見る。
カタムラ(このくぼみからか。感じるぞ。
わずかに秘力が漏れ出ている…。
ここで試すか?
青珠を…ここで…いや…待て…!)
エオクシ「よう」
カタムラ「はい」
エオクシは頂上のすぐ下の斜面にいた。
そこからカタムラを見上げて問いかける。
エオクシ「なんかあったか?」
カタムラ「いや…気のせいだったようです」
エオクシ「…なんだ。気のせいか」
カタムラ「下りましょう」
2人は斜面を下りる。
カタムラ(…あれが起動装置かどうか。
今は分からない。
ほかの場所も見てみなければ。
…あるかもしれない。
もっと強い秘力を感じる場所が
空振りは致命的。
青珠は大量の秘力を消費する。
1度使えば3日は休養を要する。
それは致命的な遅れになりかねない。
ここで試すのは…まだ早い…!)
斜面を下りながらエオクシは言う。
エオクシ「さっき変なもん見つけたぜ」
カタムラ「変なもん?」
エオクシ「ありゃ一体なんだろうな?
小せえ石の板みたいなのが埋め込まれてた。
斜面に。どういうことか分かるか?」
カタムラ「どこですか?見せてください」
エオクシは場所を教える。
エオクシ「これだ」
カタムラ「………」
そこへマユノとカエノがやってくる。
マユノ「エオクシ」
エオクシ「よう、これ見てくれよ」
マユノ「なんでしょうか?」
白くて小さな円形の石板。
斜面に埋め込まれている。
その大きさは手のひらほど。
カタムラは首を傾げる。
エオクシ「分かんねえか?」
カタムラ「…ええ」
石板には正方形の図形。
カタムラ「この石板…
誰かが意図的に埋め込んだ。
それは明らかですが…これは…」
マユノ「何かの目印でしょうか?」
カエノ「どういう意味でしょう?」
エオクシ「なんだろうな。
そいつが起動装置の場所を教えてくれんなら
話は早いんだがな!!」
カタムラ「少し…押してみましょうか」
カタムラは石板を手で押した。
そのとき。
下の方でゴトンと大きな音がした。
カタムラ「…?」
エオクシ「なんだ?今の音は?」
カタムラ「さぁ…」
マユノ&カエノ「………」
岩山の下の方。
アヅミナとサヤノは林を見下ろしている。
サヤノ「あの」
アヅミナ「何?」
サヤノ「さっきの王火は…」
アヅミナ「さっきの王火?」
サヤノ「カルスの上から…
あなたが鳥の群れに放った王火です」
アヅミナ「それがどうかした?」
サヤノ「どうやって威力を高めたんですか?」
アヅミナ「………」
アヅミナはサヤノの顔を見て言う。
アヅミナ「思いを込める」
サヤノ「思い」
アヅミナ「戦闘用の魔術もほかの魔術と一緒。
強い思いを込めれば、それだけ強くなる。
必ず倒す、許さない。そういう気持ち。
そういう気持ちが魔術の威力を高める」
サヤノ「必ず倒す、許さない、ですか」
アヅミナ「あなただってそうでしょ?
治療魔術を使うとき、
治したいって強く思うでしょ」
サヤノ「はい。それはそうですけど」
アヅミナ「あなたの岩砲なかなかいいと思う」
サヤノ「ありがとうございます」
アヅミナ「だけど、迷いを感じた」
サヤノ「迷いですか?」
アヅミナ「自分でも気づかない無意識の迷い。
この魔術で戦えるのか。倒せるのか。
本当に大丈夫か。そんな迷い。
それが、心に隙を生む。魔術を鈍らせる。
もっと思い切って、大胆に戦ってみたら?
魔力は十分なんだから、自信を持って」
サヤノ「ええ、そうしてみます」
アヅミナ「あなたの岩術、まだまだ化ける。
雷術の素質は…あまり感じないけど」
サヤノ「雷術はカエノとの絆です。
一緒に鍛えてきました。
正魔術師になりたてのときから。
これからも…」
アヅミナ「あなたはあなたでいいと思うけど。
無理に不得意な魔術を使ってると力が台なし」
サヤノ「…そうですか。…!!?」
サヤノがアヅミナの背後を指差す。
サヤノ「アヅミナさん!」
アヅミナ「…?」
アヅミナが後ろを振り向く。
そこにいたのは1体の怪物。
竜の頭部。
人の胴体。
肌には赤い鱗。
頑強な鎧を装備。
手にしているのは長い剣。
その怪物は竜の守護兵。
巨方庭の侵入者を待ち受ける。
アヅミナ(…一瞬で現れた。
まったく魔力を感じさせずに。
どうやって?それよりも…この姿…似てる。
虚構街で遭遇した化け物と…)
サヤノ「もっと大胆に…思い切り…」
サヤノはつぶやいて杖に魔力を込める。
サヤノ「アヅミナさん、どいてください」
アヅミナ「…やってみて」
サヤノの杖から岩石が勢いよく飛び出す。
竜の守護兵は剣を振り回して弾き飛ばす。
サヤノが放った岩砲のすべてを。
サヤノ「そんな…!!」
アヅミナ(強い…。
並の攻撃じゃ話にならない。
こういう敵には…あれがいい…)
今度はアヅミナが杖を構える。
アヅミナ「あたしから離れて」
サヤノ「はい」
アヅミナ「もっと!」
サヤノ「!…え?」
サヤノはさらに後退りする。
サヤノ(この胸を締めつけるような感じ…
闇の魔力…!)
アヅミナの周りに黒い煙が巻き起こる。
竜の守護兵は彼女に近づいていく。
剣を振り上げようとしたとき。
その煙は竜の守護兵へ飛んでいく。
守護兵は剣を激しく振り回す。
だが、その煙はかき消せない。
まとわりついて離れない。
そして、奪っていく。
竜の守護兵の活力を。
体の動きが鈍くなる。
だらりと両腕が垂れ、ガクリと肩を落とす。
アヅミナ「…効いた?」
闇の魔術、魔病感染。
極小の暗球を無数に放ち、敵を包む。
敵の全身から力を奪っていく。
◇ 竜の守護兵の攻撃力が低下した。
◇ 竜の守護兵の防御力が低下した。
◇ 竜の守護兵の素早さが低下した。
竜の守護兵「ぐ…ア…」
そこに斬撃が降り注ぐ。
エオクシだった。
竜の守護兵の肩から腹にかけて縦に裂く。
◇ 竜の守護兵に8288のダメージ。
崩れ落ちる守護兵。
追撃を加えようとしたそのとき。
エオクシ「…?」
守護兵の両眼が不気味に光る。
青白い光線が放たれる。
アヅミナはただならない脅威を感じ取る。
アヅミナ「エオクシ!」
光線はエオクシの体を貫いた。
エオクシ「は!!?」
◇◇ ステータス ◇◇
◇ エオクシ ◇
◇ レベル 37
◇ HP 3692/3692
◇ 攻撃
49★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 防御
44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★
◇ 素早さ
46★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★
◇ 魔力
◇ 装備 壮刃剣、戦究防護衣
◇ 技 天裂剣、地破剣
◇ アヅミナ ◇
◇ レベル 35
◇ HP 404/404
◇ 攻撃 1★
◇ 防御 2★★
◇ 素早さ
40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 装備 大法力の魔杖、漆黒の術衣
◇ 魔術
火弾、火矢、火球、火砲、火羅、火嵐、王火
氷弾、氷矢、氷球、氷刃、氷柱、氷舞、王氷
暗球、精神操作、五感鈍化、魔病感染、
酷死魔術
◇ マユノ ◇
◇ レベル 36
◇ HP 1176/1181
◇ 攻撃 4★★★★
◇ 防御
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
42★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★
◇ 装備 蒼天想の魔杖、来陽の魔道衣
◇ 魔術 氷弾、氷柱、氷裂、氷波、王氷
光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術
◇ カエノ ◇
◇ レベル 35
◇ HP 1084/1103
◇ 攻撃 3★★★
◇ 防御
20★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 魔力
44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★
◇ 装備 超放気の魔杖、連星の魔道衣
◇ 魔術 雷弾、雷砲、雷破、雷花、王雷
氷弾、氷矢
光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術
◇ サヤノ ◇
◇ レベル 35
◇ HP 953/961
◇ 攻撃 1★
◇ 防御 11★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 清化印の魔杖、光心の魔道衣
◇ 魔術 岩弾、岩砲
雷弾、雷槍
光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術
◇ カタムラ ◇
◇ レベル 16
◇ HP 766/766
◇ 攻撃 7★★★★★★★
◇ 防御 9★★★★★★★★★
◇ 素早さ
17★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 秘力 3★★★
◇ 装備 魔鉱石の短剣、秘術道具(空球)、
探検用強化研究衣
◇ 魔術 光玉、治療魔術
◇ 秘術 青珠
◇ 持ち物 ◇
◇ 活汁 100、魔力回復薬 100
◇◇ 敵ステータス ◇◇
◇ 竜の守護兵(赤) ◇
◇ レベル 37
◇ HP 29874
◇ 攻撃
31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
32★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
20★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 秘力 15★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 赤竜の剣、赤竜の鎧
◇ 魔術 火弾、火砲、王火
◇ 秘術 赤刻