第176話 処罰
アルジはエミカを見つめる。
エミカ「………」
アルジ(寝てる…)
アルジも目を閉じた。
アルジ(オレも眠くなってきた…。
急に魔獣が現れることもないだろう)
そのとき、声が聞こえる。
エミカ「アルジ…」
アルジ「…?」
とても小さな声だった。
アルジ「どうした?」
エミカは目を閉じたまま。
アルジ「…寝言か?」
エミカ「…みたかった…」
アルジ「みたかった?」
エミカ「………」
アルジ「何が見たかった?」
エミカに近づくアルジ。
肩と肩が触れる。
エミカ「………」
アルジ「…?」
エミカ「………」
アルジ「どうした?」
エミカ「………」
アルジ(ただの寝言か。起こしたら悪いな)
それから、アルジは見つめた。
眠っているエミカの顔を。
アルジ「………」
閉じた目と口、そして、鼻の頭。
彼女の顔を作る1つ1つの形。
アルジは静かに見つめる。
アルジ(エミカって…
近くで見るとこういう顔なんだ)
頬の輪郭は緩やかな曲線を描いている。
アルジ「エミカ…」
その曲線にアルジはそっと指で触れた。
アルジ「!!?」
あたたかくてやわらかい。
もう1度触れてみる。
アルジ「!!…これは!!」
エミカ「…ん…」
アルジ「!」
エミカが目を開ける。
アルジ「あ…」
エミカ「…!?」
跳びのくようにアルジから離れる。
エミカ「…なんだ!何した!?」
アルジ「起こしてごめん。
少し触ってみたくなって…」
エミカ「触った!?」
アルジ「少しだ!ほんの少し…」
エミカ「もしかして…!」
アルジ「…?」
エミカ「…口づけしたのか!?」
アルジ「!!してねーよ!」
エミカ「口づけしたのか!!」
アルジ「してねーって!んなことは!」
エミカ「………」
アルジ「ああ、そう言えば…!
さっき…なんか言ってたぜ」
エミカ「え?」
アルジ「気づいてなかったのか?
じゃあ、やっぱり寝言か」
エミカ「…なんて言ってた?」
アルジ「よく聞こえなかったけど…
見たかったとか、なんとか言ってた」
エミカ「見たかった…?」
エミカはしばらく空を見上げる。
エミカ「お腹が空いた」
アルジ「団子でいいか?」
エミカ「うん。それしかないだろ」
アルジ「まぁな」
アルジは袋を渡す。
エミカは中から出して食べ始める。
目の前の池をぼんやりと眺めながら。
静かに時間は流れる。
日は傾き始めていた。
近くに人の姿はない。
広い公園を貸し切っているかのよう。
アルジは大きなあくびをして目を閉じる。
全身の力が抜けていく。
意識が眠りに沈んでいく。
そのとき。
アルジ「……?」
頬に何かが触れた。
やわらかく、あたたかい何かが。
アルジは目を開ける。
すぐ近くにエミカの顔。
アルジ「…?」
エミカ「………」
アルジ「…エミカ」
エミカ「触れてみたくなった…だけだ」
アルジ「!!?…エミカ!」
エミカ「!!」
アルジがエミカの肩に触れようとしたとき。
後方の空に1つの影。
エミカ「何か来る!」
アルジ「…え!!?」
その影は次第に大きくなる。
鳥のような形が見えてくる。
エミカ「あれは…魔生体カルス…?」
アルジ「なんで…?」
エミカ「分からない。でも、すごい魔波。
全部で…6人くらい乗ってる!」
アルジ「そうか…!分かったぜ!!
やっと懸賞金を持ってきたか!」
アルジとエミカは立ち上がる。
飛んでくるカルスをじっと見つめた。
小高い丘の上の広場に着陸する。
乗っている人の姿も確認できた。
6人。
エミカの予想は正しかった。
アルジ「行くぜ!」
エミカ「行こう!」
坂道を駆け上がる。
カルスの方を目指す。
地上に降り立ったのは2人。
残りの4人はカルスに乗ったまま。
近づくにつれて姿が見えてくる。
アルジ「え!!?…あれって…!
もしや……げえっ!!!」
エミカ「そんな!!なんでっ…!!」
思わず立ち止まるアルジとエミカ。
降り立った2人の男。
彼らには見覚えがあった。
ガシマ「また会ったな」
アルジ「…なんでここに!!」
オンダク「今度は逃げるなよ」
ガシマとオンダクは笑っている。
身構えるアルジとエミカ。
アルジ「懸賞金は!?」
ガシマ「そんなものはない」
アルジ「じゃあ何しに来た!」
オンダク「お前たちを逮捕しに来た」
アルジ「何!!?」
オンダク「冗談だ」
アルジ「!!…てめえ!!」
エミカ(…ひどい冗談だ)
カルスは宙に浮かぶ。
操縦するのは4人の魔術師。
彼らは送迎係。
依頼を受けて大陸各地へ人を運ぶ。
係の1人がガシマとオンダクに手を振る。
送迎係の男「それでは、我々は失礼します!!」
ガシマ「おう、ありがとな」
オンダク「気をつけて帰れよ」
カルスは方向転換し、急上昇する。
そして、空の彼方へ飛んでいった。
広場に残ったのは4人だけ。
向かい合う。
ガシマ「早速だが、用件を伝えよう」
アルジ&エミカ「………」
ガシマ「力を貸してほしい」
アルジ&エミカ「…?」
ガシマ「オレたちはある任務を命じられた。
お前たちの力を貸してくれ。
その任務を果たすため。
オオトノラコアを倒した…お前たちの力を」
アルジ「…どんな任務だ?」
◆◆ 昨夜 ◆◆
◆ 都 シノ姫の間 ◆
シノ姫はガシマとオンダクに問いただす。
魔学校マスで何があったのか。
その真相について。
彼女は懐から印を取り出す。
秘術道具、幻印。
その先端に赤い光が灯る。
ガシマ&オンダク「…!!?」
シノ姫「受ける罰は軽ければ軽いほどいいと
私は思うんだけど…
あなたたちの考えは違うんですか?」
ガシマは素早く床に膝をつき、うなだれた。
涙を流しながらシノ姫に謝罪する。
ガシマ「申し訳ございませんでした!
シノ姫様のおっしゃるとおりです!!
現地にて!!アルジ!エミカ!
2人を見逃しました!!」
オンダク「…!!?」
オンダクも床に膝をつく。
深く頭を下げて大きな声で詫びた。
オンダク「申し訳ございませんでした!!」
シノ姫は印に込めた力を解く。
赤い光は急速に消える。
シノ姫「そうですか…。
あなたたちの処遇は…そうですね…
大君に決めていただきましょう…」
ガシマ&オンダク「…!!」
印を懐にしまってシノ姫は言う。
大君がシノ姫の間に入ってくる。
小さく足音を立てて。
ガシマとオンダクは驚き、立ち上がる。
オンダク「トキノナガ様…」
ガシマ「どうか…寛大な処分を…」
大君はガシマとオンダクの顔を見る。
2人の間を歩いて通り抜ける。
そして、シノ姫の隣に座る。
小さな声で彼女に告げた。
ガシマとオンダク。
2人にどんな罰を与えるべきか。
シノ姫はうなずいてほほえんだ。
シノ姫「素晴らしい処罰です」
ガシマ&オンダク「………」
シノ姫は告げる。
ガシマとオンダクが受ける罰を。
シノ姫「ガシマ、オンダク」
ガシマ&オンダク「………」
シノ姫「一隊は重要な任務に当たっています。
危険な古代遺跡の探索。
極めて悪しき賊の討伐。
国家の将来を左右する、これら重大任務。
あなたたちには…任せられません」
ガシマ&オンダク「………」
扇を畳み、懐にしまう。
シノ姫「代わりに…
とっておきの任務を与えましょう」
ガシマ&オンダク「………」
シノ姫「今のあなたたちに…
ふさわしい任務を…。
それがあなたたちへの罰です」
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 30
◇ HP 3603/3603
◇ 攻撃
47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 防御
38★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★
◇ 魔力 13★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、雅繊維戦衣
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り
◇ 魔術 雷動
◇ エミカ ◇
◇ レベル 26
◇ HP 1883/2234
◇ 攻撃 10★★★★★★★★★★
◇ 防御
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 魔力
46★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、濃色魔術衣
◇ 魔術 火球、火砲、火樹、火海、王火
氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 15