第173話 覚醒
魔雷矢、魔氷矢が2本ずつ。
ほぼ同時に放たれた。
4本の矢は、天に向かって飛んでいく。
キラリキラリと輝いて、彼方に消えた。
アルジ&エミカ「………」
ゲンダ「まじないだ」
アルジ「まじない…」
ゲンダ「武運に恵まれるように。
オレたちから景気づけだ」
アルジ&エミカ「………」
ゲンダは静かに笑う。
ゲンダ「さっきオレたちは見てきた。
コノマノヤタラズマの死体を。
死体を見ただけで伝わってきた。
アルジとエミカのすごさが」
ゲンダ「オレたちは誇りに思う。
お前たちと一緒に戦えたことを」
アルジ「照れるぜ」
ゲンダ「アルジ、往戦だ」
アルジ「…?」
ゲンダ「知らないか」
ゲンダはアルジに説明した。
往戦。
その言葉について。
ゲンダ「もう使われなくなった古い言葉だ。
ナキ村や近くの村や町で使われていた。
今じゃ使う人がいなくなった。
古文書を読むときぐらいしか目にしない。
オレはこの言葉を気に入っている」
アルジ「………」
ゲンダ「往戦するんだ」
アルジ「………」
ゲンダ「とどまるな。敵を待つな。
敵地に行って戦え。自分から。
踏み出せ。進み続けろ。そして、戦え。
…この言葉はそういう意味だ」
アルジ「………」
ゲンダ「お前たちならオレが言わなくても
やってくれるんだろうが。はははは…」
アルジ「往戦か。やってみる。ゲンダさん」
ゲンダ「ああ。期待してる」
ゲンダは続けてアルジたちに伝える。
ゲンダ「オレたちも戦い続ける」
アルジ&エミカ「………」
ゲンダ「オレたちも戦い続けることにした。
狩りはやめない。
氷雷陣。絶対の自信を持っていた。
だが、今回は通用しなかった。
それだけに本当に落ち込んだ。
猟師をやめたくなるほど。
だが、やっぱり続けることにした。
オレたちは根っからの猟師。
やっぱり狩りを続けていくしかない。
そう思ったからだ。
6人で真剣に話し合った結果だ。
これからも魔雷矢と魔氷矢で戦い続ける。
これは完全な戦術ではない。
そのことは今回よく分かった。
だけど、続けていく。なぜか。
オレたちだけじゃないからだ。
オレたちだけじゃない。ほかにもいる。
魔獣と戦っている者はほかにも。
オレたちの魔雷矢、魔氷矢、そして、
天乱陣と氷雷陣が通用しなかったら…
そのときはほかの誰かに任せたらいい。
お前たちのような強い者たちに…。
…なあ、アルジ。それでもいいだろ」
アルジ「いいと思うぜ」
ゲンダ「そうか!」
アルジ「ゲンダさんたちはこれからどうする?
大陸首位猟師とコズマ国へ行くのか?」
ゲンダ「しばらくはここにとどまる。
獣の処理、ミノマノ村の調査、基地の撤去。
やることはそれなりにある。
ナクサの警備隊も協力的で助かっている」
アルジ「そっか」
ゲンダはコイナミの顔を見る。
彼女は小さくうなずき、前に出てくる。
ゲンダからアルジに伝える。
ゲンダ「アルジ、お前に渡したい物がある」
アルジ「なんだ?」
ゲンダ「10年ほど前、
オレはナキ村を飛び出した」
アルジ「ああ」
ゲンダ「自分を試してみたい。
そんな思いで村を出た。
小さな村を出て、村の外で。
一体オレに何ができるのか。
どんな力があるのか。知りたかった。
試してみたかった。
そして、こうして猟師になることができた」
アルジ「そっか」
ゲンダ「そんなオレを…
ずっと守ってくれていた物がある。
持ち歩いて、ともに時間を過ごしてきた」
アルジ「なんだ?」
ゲンダ「当時、ナキ村の村長がオレにくれた。
旅のお守りとして。オレが旅立つ日に。
そして、そいつは今…
オレの弟子に引き継がれている」
コイナミが懐から何かを取り出す。
出てきたのは、茶色の小さな袋。
中に何かが入っている。
彼女は中の物を慎重に取り出した。
それは太陽の光を受けてキラリと輝く。
彼女の片手に収まるくらいの大きさ。
アルジ「…?」
エミカ(金属の…かけら…?)
ゲンダは当時の自分を思い出す。
そして、笑いながら話した。
ゲンダ「何度も頼んだんだ。村長に。
勇気の剣をくれと。
オレは村を出て偉業を成し遂げる。
だから、その剣をくれと。
だが、村長は拒んだ。
その代わり、オレにくれた。そのお守りを。
剣ではないがとても大事なものだと言って。
本当に偉業を成し遂げて帰ってきたのなら、
剣をくれてやることを考えてもいいと言って。
大陸首位猟師。
オレがそれになったら、取りにいこう。
決めていた。だが、それはどうやら難しい。
そう思い始めていた。
そうしたら、お前が現れた。
勇気の剣を持って」
アルジ「………」
ゲンダ「最初は悔しかった。
だが、それでいいと思った。
いや、それがいいと思った。
お前こそ剣にふさわしい人間だ」
アルジ「ゲンダさん」
ゲンダ「剛刃波状斬撃。勇気の剣の奥義。
剣に選ばれた者だけが使える技だ。
ナキ村で…古い書物で読んだことがある。
アルジ。オレは震え上がる思いがした。
お前の剛刃波状斬撃を見せられたとき。
見事な技だ。見事な戦いぶりだ。アルジ」
アルジ「…ありがとう」
ゲンダ「そんなお前の技を…戦いを…
もっと完全なものにしてほしい。
オレは切に願う」
アルジ「ああ、もっと鍛えて強くなる」
ゲンダ「そういうことじゃないんだ」
アルジ「…?」
ゲンダ「お前が手にしている勇気の剣…
実は不完全だ」
アルジ「…なんだって?」
ゲンダ「よく見てみろ」
アルジは剣を見つめる。
ゲンダ「先端をよく見ろ」
アルジ「…?」
エミカ「少し…欠けてる…?」
アルジ「あ!言われてみると…」
ゲンダ(気づいてなかったのか…)
コイナミがアルジにお守りを差し出す。
差し出された金属のかけら。
それは、欠けてしまった勇気の剣の先端。
ゲンダ「今こそお前に返すとき。そう思う」
アルジ「………」
ゲンダ「だから、受け取ってくれ」
アルジ「分かった…」
アルジは剣の先端部分を手にとった。
すると、それは強い光を放つ。
剣の方も強い光を放ち始める。
アルジ「うお…!うおおおおお…!」
エミカ「勇気の剣と…欠けた部分が…
共鳴してる…!?」
その場にいた誰もが息を飲む。
アルジは剣の欠けたところを合わせた。
次の瞬間。
まばゆい光が周囲に広がる。
アルジ「うっ…まぶしっ…!!」
エミカ「うわ…!!」
そして、勇気の剣は生まれ変わる。
完全な剣として。
アルジ「これは…!!」
アルジは剣の形を確かめる。
剣はより勇壮な形に変わっていた。
アルジ「すげえ…!これは…!!」
エミカ「欠けたところが…くっついた?
…近づけただけで…?」
ゲンダ「はははははっ!!」
ゲンダは興奮して笑う。
ゲンダ「アルジ!!その剣は覚醒した!
覚醒して完全な形になったんだ!!」
アルジ「完全な形…!」
ゲンダ「それが勇気の剣の本当の力!!
本当の姿だ!!」
アルジ「ゲンダさん…本当にありがとう」
◇ 勇気の剣は覚醒した。
◇ アルジの攻撃力が上昇した。
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 30
◇ HP 3603/3603
◇ 攻撃
47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 防御
38★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
45★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★
◇ 魔力 13★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、雅繊維戦衣
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り
◇ 魔術 雷動
◇ エミカ ◇
◇ レベル 26
◇ HP 1883/2234
◇ 攻撃 10★★★★★★★★★★
◇ 防御
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 魔力
46★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、濃色魔術衣
◇ 魔術 火球、火砲、火樹、火海、王火
氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 15