第171話 別格
ヤマタンの仮説は非常識だった。
ヤマタン「少し刺激が強かったか?」
アルジ&エミカ「………」
ヤマタン「環境変動説とは違うからな」
環境変動説。
環境変動により古代国家が滅んだという説。
火山の噴火などで環境変動があった。
その影響でほとんどの人が亡くなった。
国家は滅び、文明も言葉も失われた。
そんな環境変動に耐えて生き残った人々。
彼らが暗黒時代に国家を再構築した。
一方、異大陸は死の大陸。
そこには初めから何もない。
人も、獣も、虫も。
樹木も草の1本さえも。
異大陸は生命に適さない環境だった。
初めから。
これが環境変動説。
世間の常識。
教科書にも書いてある。
ヤマタンの仮説は非常識。
エミカ「だけど…」
ヤマタン「なんだ?」
エミカ「暗黒時代に文字の記録がないのは
なぜでしょうか?
異大陸では石碑に字を刻めたのに…」
ヤマタン「………」
アルジ「なんでだろうな」
ヤマタン「研究中だ」
アルジ&エミカ「………」
ヤマタン「オレの仮説も完全じゃない。
まだまだ補う必要がある。
オレも分かってる。
お前たちに言われるまでもなく。
暗黒時代に記録がないのはなぜか。
いい質問だ。
例えば、こう考えられる。
200年間忘れていたと」
エミカ「忘れていた…」
ヤマタン「新しい国をつくるのに忙しくて、
記録を残すことなんて忘れていたと」
アルジ&エミカ「………」
ヤマタン「あとは…魔術だ。
魔真体がそういう魔術を使ったのかもな」
エミカ「魔術…」
ヤマタン「闇の魔術に精神操作があるだろ。
それが大陸全土にかけられた。
魔真体の力によって。言葉を使うなと。
それが200年続いて解除されたと」
エミカ「そんな恐ろしいことが…」
ヤマタン「これはただのオレの推測」
エミカ「………」
ヤマタン「だが、ありえねえ話じゃねえ」
アルジ「魔真体ってそんなに危険なのか?」
ヤマタン「危険なんてもんじゃねえ。
あれが目覚めたらおしまいだ。
大陸は壊滅だ。誰にも止められねえ」
アルジ「古代獣よりやばいのか?」
ヤマタン「ハハ、比較になるか」
エミカ「なんでそこまで言えるんだ?」
ヤマタン「調べれば分かる。
どの古代遺跡にも超高熱で焼かれた跡がある」
アルジ「超高熱…」
ヤマタン「専門家によれば、
その熱は王火の1000倍」
エミカ「1000倍…!」
ヤマタン「明らかに人の仕業じゃない。
人が魔術で出せる熱じゃない。
魔真体のせいだ。魔真体が焼いた。
火山の噴火のせいだとか言うやつもいる。
だが、そんな説は間違いだ。
多くの古代遺跡は近くに火山なんてねえ」
アルジ&エミカ「………」
アルジとエミカは不安な顔。
ヤマタン「…どうした?そんな顔して」
アルジ「3つの星の秘宝が敵の手に渡ってる。
魔真体の復活に必要な星の秘宝が」
エミカ「魔真体が…
いつ目覚めてもおかしくないんです」
ヤマタン「……くく…」
アルジ&エミカ「…?」
ヤマタン「朗報がある」
アルジ「…え?」
ヤマタン「敵ってのは、大遊説の3人だろ。
北土の魔術研究所の3人。
1人は死んだらしいが。
あいつらとの戦いは、
案外早く決着するかもしれねえ」
エミカ「どういうことですか?」
ヤマタン「昨日政府は派遣した。
巨方庭という遺跡に」
アルジ「巨方庭…?」
ヤマタン「四角い形をした古代王国の遺跡だ。
魔真体の起動装置がある場所とされている。
星の秘宝だけでは魔真体は目覚めない。
秘宝を起動装置に収めることで動き出す。
その装置を破壊するため、
特別部隊が現地へ向かった。
起動装置の破壊さえ成功すれば終わりだ。
魔真体は目覚めない。
あとは大遊説の2人を倒すだけ。
特別部隊は実力者ぞろい。
きっとやってくれるだろう」
アルジ「特別部隊って、一体…」
ヤマタン「大前隊の隊員、
魔術院の魔術師、そして、考古学者。
考古学者はカタムラという。
そいつも灰の大陸を調査した。
石碑の広間で待機を命じられた3人の学者。
そのうちの1人だ」
エミカ(考古学者のカタムラ…。
ホジタが言ってた人の名前…)
アルジ「大前隊も行ってるのか」
ヤマタン「1番強いやつを行かせたようだ」
アルジ「1番強いやつ…それって…」
ヤマタン「エオクシという男だ」
アルジ「エオクシ…あいつが…」
ヤマタン「知り合いか?」
アルジ「旅の途中で1回だけ会った」
ヤマタン「そうか、強そうに見えただろ」
アルジ「ああ、あいつには勝てない。
あのとき、そう思った。だけど…今なら…」
ヤマタン「今でも無理だろう」
アルジ「………」
ヤマタン「そこそこ強いと思ってんだろ。
だが、あいつには勝てねえよ。
技のキレも隙のなさも
エオクシと比べたらかなり下だ。
だがな、お前も強い。それは認める。
さっき見せた技もなかなかのもんだ。
あれを見切れるやつはそうそういねえ。
だが、エオクシには及ばねえな」
アルジ「…クッ」
ヤマタン「そんなに悔しがることじゃねえ。
あいつが強過ぎるだけだ」
アルジ「あいつと戦ったことがあるのか?」
ヤマタン「何度か手合わせしたことはある。
斬り合いじゃねえ。木剣の殴り合いだが。
それでもよく分かった。
あいつの強さが。本物だ。
とんでもねえ男が入隊したと思った」
アルジ「そうか」
ヤマタン「さっきは何が聞きたかったんだ?」
アルジ「…?」
ヤマタン「この基地に入るとき、
オレに何か言いかけただろ」
アルジ「………」
ヤマタン「マオイが叫んで言うのやめただろ」
アルジ「ああ…」
ヤマタン「何を言おうとしてたんだ?」
アルジ「それは…あんたは…
今の一隊は軟弱だって言っただろ」
ヤマタン「おう」
アルジ「ヤマタンさんのいた時代だったら、
半分は二隊に落ちるって話も」
ヤマタン「それがどうした」
アルジ「そうだとしたら…
今の三頭はどうなのかと思った。
ほかの隊員たちのことは知らない。
でも、三頭には会ったことがある。
だから気になった」
ヤマタン「なんだ。そんなことか」
ニヤリと笑って腕を組むヤマタン。
彼の率直な印象を語る。
ヤマタン「あいつらなら残るだろう。一隊に。
オレの時代でも十分やっていける」
アルジ「そうなのか」
ヤマタン「3人ともこの目で技を見た。
さすがは当代最強の3人だ。
洗練された動きに感服した」
アルジ「強いのか。やっぱり」
ヤマタン「ああ。だがな…」
アルジ「?」
ヤマタン「オレのいた時代でも
三頭を張れるかっていうと、
それはかなり微妙だな」
アルジ「そうなのか」
ヤマタン「もっと力が必要だ。
あいつらには足りねえ。
魔力に頼らない単純な強さ。
それがオレのいた大前隊にはあった。
だから、結論としてはこうだ。
一隊にはいられるが、三頭は厳しい。
こんなところだ」
アルジ「エオクシもか?」
ヤマタン「…あいつは別格よ」
アルジ「別格…」
ヤマタン「…あいつだけは認めてやる。
いつの時代の大前隊でも
あいつを倒せるやつはいねえだろう。
大陸中を探しても
あいつを超える戦士はいねえだろう」
アルジ「………」
ヤマタン「最強だ。
あいつこそが大陸最強の戦士だ」
アルジ「大陸最強なのか…」
ヤマタン「ああ。
このオレの評価だ。間違いねえ。
だからガックリする必要はねえ。
あいつに勝てなくても」
アルジ「………」
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 30
◇ HP 3603/3603
◇ 攻撃
42★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★
◇ 防御
33★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 7★★★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、雅繊維戦衣
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り
◇ 魔術 雷動
◇ エミカ ◇
◇ レベル 26
◇ HP 1883/2234
◇ 攻撃 10★★★★★★★★★★
◇ 防御
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 魔力
46★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、濃色魔術衣
◇ 魔術 火球、火砲、火樹、火海、王火
氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 15