第170話 整合
石碑を見つけたあと何が起きたのか。
ヤマタンは話した。
ヤマタン「オレは言葉を失った。
大君に防護服を着せることも忘れた。
石碑に目を奪われていると大君はオレを見る。
叱られるかと思ったが、そうじゃなかった。
大君はオレに命令した。小さな声で」
アルジ&エミカ「………」
ヤマタン「このことは口外するなと。
それから、大君は防護服を着て、
石碑から離れ、従者に眼鏡をふいてもらい、
調査団の全員に命じた。
ここから出て行けと。外で待機していろと。
3人の学者を除いて」
エミカ「3人の学者…ですか」
ヤマタン「3人とも学術院屈指の英才。
大君は指名し、広間に残るよう命じた。
そして、それ以外の者は外へ出た。
オレも外に出た。
大君が言うんだから出るしかねえ」
アルジ&エミカ「………」
ヤマタン「オレたちは外に出る。
灰の山と青い空を眺めて、
大君のお帰りをただ待った。
そのとき、大君は何をしていたのか。
大君と3人の学者は、広間で何をしていたのか。
想像するのは簡単だ。石碑を読んでいたんだ。
何が書かれているのか。
全部の石碑を調べていたんだ。
そして、大君と学者は出てくる。
日は沈みかけていた。
大君も3人の学者もさっぱりした顔だった。
帰るぞと大君は言った。
オレたちは船に戻る。
もと来た道をたどって。
こうして異大陸の調査は終わった。
帰りの船中で大君はオレたちに命じた。
殻の件も、広間の件も、石碑の件も
決して誰にも話すなと。
そして、この大陸に戻り、
大君は旅の成果を発表された。
『やはり異大陸には何もなかった。
もう行くことはない。』
民はそれを聞いて受け入れる。
異大陸へ旅立つ者はさらに減った。
それから10年ほど。
大君はお亡くなりになった」
アルジ&エミカ「………」
ヤマタン「亡くなられてから間もなくのこと。
1冊の書物が世に出る。
題名は『異大陸と古代国家』。
書いたのは3人の学者」
アルジ「その3人って…」
ヤマタン「待機を命じられた3人の学者だ。
その書物に書いてある。星の秘宝のことが」
アルジ&エミカ「………」
ヤマタン「壮大な歴史物語…。ミオ民とノイ民。
これらの民がかつて大陸で争い合っていた。
今からもう2000年も前。古代国家の時代。
その国家を治めていたのはノイ民。
ミオ民はノイ民の古代国家に支配されていた。
だが、ミオ民は数を増やして力をつけていく。
そして、ノイ民に戦いを挑んだ。
戦いの末、勝ったのはミオ民。
彼らに勝利をもたらしたものは何か。
それは、3つの星の秘宝と魔真体だった。
結果、古代国家は滅び、暗黒時代が訪れた。
ノイ民は大陸の北東部へと追いやられた」
アルジ(この話…北土の魔術研究所でも聞いた)
エミカ(ホジタが話してたのと同じ歴史書…?)
ヤマタン「古代戦争説。昔から唱える者はいた。
古代国家が滅んだのは戦争のせいだと。
だが、根拠のない妄想とみなされてきた。
古代戦争説が主流になったことはない。
環境変動説。これが今も昔も主流の考え方。
だがな、『異大陸と古代国家』は違った。
従来の古代戦争説にない妙な説得力があった。
なぜか。その歴史書には書かれていたからだ。
灰の大陸の石碑に刻まれていた文章の内容が」
アルジ「3人の学者は漏らしたのか。秘密を」
ヤマタン「そうだ。
だが、石碑の内容は書かれていても、
異大陸で石碑を発見したことについては
触れていない。3人は守ったんだ。
大君との約束を。一応は」
エミカ「星の秘宝のことも魔真体のことも
本当に石碑に書いてあったことなんですか?」
ヤマタン「ああ。オレには分かる。
あいつらは書いた。
強力な力が込められた3つの星の秘宝。
国家崩壊、文明喪失、言語忘却、
これらをもたらした魔術兵器、魔真体。
古代国家を倒したミオ民。
これらが果たして一体なんなのか。
『異大陸と古代国家』には書かれている。
石碑に刻まれていた文章の内容に基づいて。
なぜそうだと言えるのか。
オレは覚えているからだ。
あの日、20年ほど前の調査、
地下の広間で大君と石碑を見たとき、
今でもはっきり覚えている。
あの石碑に何が書いてあったのか」
ヤマタンは声を低くして話した。
ヤマタン「今、ここで言おう。
お前たちに。特別に」
そして、ヤマタンは明かした。
彼が灰の大陸で見た石碑。
そこに何が書いてあったのかを。
ヤマタン「力を力で閉じ込めた3つの宝、
海を越え、もう1つの大陸へ運ぶ」
アルジ&エミカ「………」
ヤマタン「それでオレは大前隊をやめた。
猟師になった。いろいろ制約があるからな。
大前隊にいると。
それに比べて猟師は割と自由だ」
アルジ(3つの宝…それが星の秘宝…)
エミカ(力を力で閉じ込める…力って…?)
ヤマタン「………」
ヤマタン「まるで聞いちゃいねえな」
アルジ「はっ…」
エミカ「ごめんなさい」
ヤマタン「いいんだ。オレの身の上話なんざ」
アルジ「教えてほしい」
ヤマタン「あ?」
アルジ「どうして猟師になったんだ?
自由になりたいから大前隊をやめた…
それだけじゃないんだろ」
ヤマタン「ああ。もちろん。
大前隊をやめて自由になってオレは調べた。
異大陸で見つけた石碑はなんだったのか。
そこに立派な動機や複雑な事情はない。
ただ単に納得がいかなかった。
真相が隠されて知らないままでいることに。
旅を終えてからずっと心が晴れなかった。
心の中に引っかかっていた。
なんとかしたかった。だから、オレは決めた。
オレはオレなりに調べると。
文献を読み、現地へ行き、人々と話し、
大昔、何があったのか。オレなりに調べた」
アルジ「何があったんだろう」
ヤマタン「何があったんだろうな」
アルジ&エミカ「………」
しばらく黙ってからヤマタンは話す。
ヤマタン「オレは1つの仮説に行き着いた」
アルジ「どんな仮説なんだ?」
ヤマタン「こんな仮説だ。
かつて異大陸にも人が住んでいた。
魔術で発展した国が存在していた。
だが、戦争で滅んだ。魔術による戦争だ。
大陸に積もった灰は、その名残。
民も町も国も失われて灰になった。
だが、全滅したわけではなかった。
生き残った民が逃げてきた。この大陸に。
当時、この大陸には古代国家が栄えていた。
異大陸の民は古代国家と戦った。
この大陸を自分たちのものにするために。
戦いの結果、古代国家は滅びた。
暗黒時代が訪れた。
なぜ異大陸の民は勝てたのか。力のおかげだ。
彼らは異大陸から3つの宝を持ってきた。
それらには強い力が閉じ込められていた。
その強い力で古代国家と戦って勝ったんだ。
その力こそが魔真体。
破壊のための究極の魔生体。
3つの宝の力を解放して目覚めさせたのだ。
その後、異大陸の民は魔真体を封じた。
強い魔術とか、なんらかの方法で。
3つの宝に再び力を閉じ込めた。
そして、今の国家を建てたってわけだ」
アルジ「ってことは…」
ヤマタン「ミオ民は異大陸から来た」
エミカ「そうすると石碑の文字が読めたのも…」
ヤマタン「整合する」
アルジ&エミカ「………」
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 30
◇ HP 3603/3603
◇ 攻撃
42★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★
◇ 防御
33★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 7★★★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、雅繊維戦衣
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り
◇ 魔術 雷動
◇ エミカ ◇
◇ レベル 26
◇ HP 1883/2234
◇ 攻撃 10★★★★★★★★★★
◇ 防御
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 魔力
46★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、濃色魔術衣
◇ 魔術 火球、火砲、火樹、火海、王火
氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 15