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アルジ往戦記  作者: roak
169/300

第169話 石碑

ヤマタンは語る。


ヤマタン「破壊せよ。

 大君ははっきりそう言った。

 命令に従ってオレたちは頑張った。

 その半球の構造物を破壊するために。

 構造物のことは、『殻』と呼ぶとしよう。

 殻は堅かった。本当に堅かった。

 一体何でできているのか不思議だった。

 殴っても叩いてもほとんど傷つかない。

 だが、諦めるわけにはいかねえ。

 大君の命令だから。

 知恵を出し合い、試行錯誤を繰り返し、

 殻を壊すため力を尽くした」


ヤマタンは当時の記憶を呼び起こす。


ヤマタン「およそ1時間後。殻は破られる。

 異大陸調査には魔術師も同行していた。

 火術使いも氷術使いも魔術を撃ちまくった。

 最後にオレが剣を振り下ろす。

 すると、でかい音を立ててそいつは割れた。

 殻の向こうに現れたのは細い通路。

 1人がどうにか通れるほどの幅の通路だ。

 それを見て、大君は言った。行くぞ、と。

 何が起こるか分からない。

 当然、命の保証はない。

 だが、進む。大君とともに。

 それ以外にない。

 大君が行くと言えば行く。

 オレたちに選択権はねえ。

 どんなことがあろうと大君をお守りする。

 その覚悟でオレは剣を握りしめて歩き出す。

 通路にも薄らと灰が積もっていた。

 光術使いが前方を歩いて魔術の光で照らす。

 殻の向こう側はほとんど真っ暗な闇だった」

アルジ&エミカ「………」

ヤマタン「通路はどんどん下っていく。

 しばらく歩くと広間に出た。

 やけに大きな広間だ。天井もやけに高い。

 その天井からは光が微かに差し込んでいる。

 そこから少量の灰もサラサラと降ってくる。

 灰色の壁、灰色の床。

 そして、いくつもの石碑だ。

 でかい石碑がいくつも並んでいた。

 ほぼ等間隔に。見てくれと言わんばかりに。

 それは発見だった。

 何もないと思われていた異大陸。

 だが、あったんだ。確かにそこにあった。

 人の手によって生み出されたものが。

 その場所に。オレたちはひどく興奮した。

 驚きの声、ため息。

 そういうのがいくつも聞こえた。

 この景色は、どういうことか。

 まず考えるのは古代遺跡。

 未知の古代遺跡だ。

 古代国家、古代文明を解き明かす。

 その手がかりがここにある。

 多くの人がそう思う。

 しかも、異大陸の文明だ。

 不毛の大地と思われた場所。

 そこにかつて文明があった証拠。

 石碑にはたくさんの文字が刻まれていた。

 それを読み解けば分かるかもしれない。

 異大陸の秘密に迫れるかもしれない。

 だが、問題がある。古代文字の問題だ。

 解読できる人間がいない。

 読めなければ意味がない。

 広間で大君は皆に命令を下した。

 動くな。たった一言。

 調査団の全員がその場に立ち止まる。

 大君が歩き出す。

 ただ1人、大君だけが広間の中を歩いて進む。

 1つの石碑の前に立つ。

 そして、碑文をじっと眺めた。

 オレは剣を握りしめていた。

 大君の周囲をじっと見ていた。

 いつ、どこから敵が現れても戦えるように。

 だが、結局そんなものは現れねえ。

 余計な心配だったわけだが」


ヤマタンは少し笑う。


ヤマタン「大君は石碑の前に立ち続ける。

 首を傾げる。文字が読めなかった。

 古代文字だからじゃねえ。灰のせいだ。

 灰が石碑に付着して読めなくしていた。

 大君は石碑に顔を近づける。

 灰を丁寧に払っていく。

 自らの手で。そっと、そっと。やけに慎重に。

 文字が現れる。

 石碑に刻まれたいくつもの文字が。

 そこで問題が起きた。

 大君が灰を払ったときだ。

 灰が舞って付着した。

 大君の防護服と防護眼鏡に」

アルジ「そういうのを着ていたのか」

ヤマタン「ああ。

 灰には毒があると昔から言われていた。

 その正体が何かは分かっていないが。

 とにかく危険な物だ。

 頭から爪先まで全身をすっぽり覆う。

 頭部にはめ込まれた眼鏡越しに外を見る。

 これが灰の大陸での必須装備だ。

 大君も、オレも、ほかの者も同じ格好だ」

エミカ「大君に付着した灰は…」

ヤマタン「ああ。服についたのはともかく

 眼鏡についた灰には困った。

 手で払ってもとれない。

 厚い縁のついた眼鏡の直径は小さなもの。

 防護服の手袋は指の部分が大きく作られていた。

 払おうとしてみても、灰は落とせない。

 大君が命令すれば、誰かがふきに行った。

 だが、大君はそうしなかった。

 はやる気持ちがそうさせたのか。

 碑文を最初に読むのは自分でありたい、

 石碑には誰も近づけたくない、

 そういう強い考えがあったのか。

 大君は自分で問題を解決された」

アルジ「自分で…?」


ヤマタンは深くうなずいた。


ヤマタン「大君は防護服を脱いだ」

アルジ&エミカ「………」

ヤマタン「…なりません!!」

アルジ&エミカ「!?」

ヤマタン「と、オレは叫んだ」

アルジ&エミカ「………」

ヤマタン「護衛役として真っ先に駆け寄った。

 大君のそばへ。

 動くなと言われていても関係ない。

 命に関わることだから。

 正しい行動だと思った。

 オレは大君をお守りする。

 そのつもりでここへ来たのだから」

アルジ&エミカ「………」

ヤマタン「オレが駆け寄っても

 大君は石碑を見続けていた。

 何が書かれているのか。

 懸命に読み解こうとしている。

 そんな様子だった。

 オレは防護服を着せようとする。

 だが、手で制止される。

 そのとき、大君と目が合った。

 悲しげな目をしていた。

 大君は石碑から何を知ったのか。

 気になった。

 しかし、古代文字を読める者などいない。

 大君も例外ではない。

 だが、大君は再び目を向ける。

 石碑に刻まれた文字を目で追いかける。

 夢中だった。

 夢中でお読みになられていた。

 オレも石碑を見た。

 何がそれほどまでに大君を引きつけるのか。

 気になった。単純な興味だった。

 別に読めなくてもいい。

 石碑に一体何が刻まれているのか。

 この目でちょっと確かめてみよう。

 そんな思いだった。そしてオレは驚いた」

アルジ「何が刻まれていたんだ?」

ヤマタン「言葉だ」

エミカ「言葉…」

ヤマタン「そこに刻まれていたもの。

 古代文字じゃなかった」

アルジ「………」

ヤマタン「オレたちが今使っている言葉と同じ」

エミカ「それって…」

アルジ「?」

ヤマタン「………」

エミカ「おかしいですね」

ヤマタン「おかしな話だ」

アルジ「………」

ヤマタン「大事なことだ。よく聞いてくれ。

 異大陸の発見は今から500年ほど前のこと。

 船で遠くまでいけるようになり見つかった。

 一方、今この大陸で使われている言葉…

 これは古代王国が滅んだあとにできたもの。

 暗黒時代以後にできたもの。

 それより昔は古代言語が使われていた。

 暗黒時代は大体2000年前から1800年前。

 異大陸発見は大体500年前。

 大体1800年前から大体500年前。

 この間、異大陸に行った者はない」

アルジ「ああ」

ヤマタン「そして、今から20年ほど前だ。

 オレが大君とともに異大陸へ行ったのは。

 異大陸発見の約500年前から

 石碑発見の約20年前までの間。

 この間に誰かが灰の大陸へ行き、

 あの石碑を建てたのだろうか?」

アルジ&エミカ「………」

ヤマタン「そんな記録はない。

 言い伝えもない。

 見つけた人を驚かそうと

 誰かがこっそりやったのか。

 危険な灰にまみれて、穴を掘り、

 地下に広間を造り、

 文字が彫られた大きな石碑をいくつも置く。

 大掛かり過ぎる。

 そういう類のいたずらにしては。

 そんなことは誰もやるまい。

 オレは現地を見てきた。

 なかなか割れなかった殻も。

 いくつも並んだ石碑も。

 並の労力じゃできねえ。

 いたずらのはずがねえ。

 そうすると、どうだろうな」

エミカ「異大陸の…

 誰かが建てたってことですか」

ヤマタン「そうだ。

 だが、それは答えになっちゃいねえんだ。

 もっと具体的に考えなきゃならん。

 それでオレは考えた」

エミカ「………」


ヤマタンは話を続けた。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 30

◇ HP   3603/3603

◇ 攻撃

 42★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★

◇ 防御

 33★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  7★★★★★★★

◇ 装備  勇気の剣、雅繊維戦衣がせんいせんい

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り

◇ 魔術  雷動


◇ エミカ ◇

◇ レベル 26

◇ HP   1883/2234

◇ 攻撃  10★★★★★★★★★★

◇ 防御

  30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

  30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  46★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、濃色魔術衣

◇ 魔術  火球、火砲、火樹、火海、王火

      氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷

      雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 15

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