第167話 基地
マオイが魔力を込める。
アルジたち4人を乗せてハクトは浮上した。
大陸猟進会の基地を目指して飛んでいく。
ヤマタン「あれだ」
ナクサの町からそれほど遠くない場所。
街道沿いに建てられた大天幕。
それが彼らの基地だった。
建てたのは一昨日の夜のこと。
そこがコノマノヤタラズマ対策の拠点だった。
基地の近くに4人の猟師が立っている。
ヤマタンは声をかけ、手を振る。
空を見上げ、手を振って応える猟師たち。
彼らはゲンダたちではない。
アルジもエミカも知らない顔。
ハクトは着陸する。
◆ 大陸猟進会の基地 ◆
ハクトから降りるアルジたち4人。
4人の猟師たちが駆け寄ってくる。
猟師たち「お疲れ様でした」
ヤマタン「コノマノヤタラズマは倒した」
猟師たち「おめでとうございます」
ヤマタンの帰還と勝利を祝う猟師たち。
ヤマタン「オレじゃねえんだ」
猟師たち「………」
ヤマタン「倒したのはこの2人だ」
猟師たちはアルジとエミカを見る。
アルジ「いや、オレたちが倒したわけじゃ…」
猟師たち「お疲れ様でした」
アルジ&エミカ「………」
ヤマタンが猟師たちに伝える。
ヤマタン「ミノマノ村へ行く途中に死体がある」
猟師たち「はい!」
ヤマタン「コノマノヤタラズマだけじゃない。
カヤタマノネコもある。処理しといてくれ。
ナクサの警備隊には話を通してある。
手を借りろ」
猟師たち「了解!!」
足早にその場から立ち去る猟師たち。
ヤマタン「倒したのはお前たちだ」
アルジ&エミカ「………」
ヤマタン「さあ、行くぜ」
アルジ「ああ」
基地に向かって歩き出す。
基地は幕がかかっている。
外からは中が見えない。
基地まであと数歩というところ。
突然、ヤマタンは振り返る。
ヤマタン「………」
アルジ「どうした?」
ヤマタン「よう、アルジ」
アルジ「なんだ?」
ヤマタン「オレは確かに見ていたぜ」
アルジ「何を?」
ヤマタン「コノマノヤタラズマに放った連続攻撃。
見事だった。一体なんなんだ?あの技は」
アルジ「剛刃波状斬撃だ」
ヤマタン「ほう…。ごうじん…」
アルジ「剛刃波状斬撃だ」
ヤマタン「斬りかかるとき確かにそう叫んでたな」
アルジ(…本当に見てたんだな)
ヤマタンは剣を手にする。
その剣は、制獣剣。
強大な魔獣を倒すため開発された特別な剣。
その刃をアルジに向ける。
アルジ「なんの真似だ?」
ヤマタン「見せてくれよ」
アルジ「剛刃波状斬撃か?」
ヤマタン「違う。それはさっき見た」
アルジ「それなら…」
ヤマタン「最後に出そうとした技だ。
コノマノヤタラズマに。あれを見たい。
見せろ。お前が電撃でぶっ倒れる直前…
出そうとしてた技だ」
アルジ(朔月斬りか)
体勢を低くして構えるヤマタン。
アルジは彼の要求に応える。
アルジ「いいぜ。見せてやる」
ヤマタン「来い!」
アルジは朔月斬りを繰り出す。
ヤマタンの目の前で剣が振り抜かれる。
ヤマタン「ほう!!」
マオイ(なんて速い攻撃…!
ヤマタンがわずかにのけぞった!)
エミカ(アルジ…動きがますます洗練された)
閃光のような一撃。
アルジ「こんな感じだ」
ヤマタン「見事なもんだ。こいつは予想以上だ」
アルジ「ちゃんと見えたのか?」
ヤマタン「見えたわ!当たり前だ!
なめんじゃねえ!オレは元大前隊だ!」
アルジ「………」
ヤマタン「ただの一隊じゃねえ。
三頭を8年やった」
アルジ「三頭を8年…」
ヤマタン「一隊で最強だったときもある」
アルジ「一隊で最強…!」
ヤマタン「今のお前の実力なら…そうだな、
一隊でも十分やっていけるだろう」
アルジ「そうなのか!?」
ヤマタン「戦闘力に限った話だけどな。
このオレが言うんだから間違いねえ」
アルジ「一隊でもオレはどれくらい強い?」
ヤマタン「真ん中よりは上だと思うぜ」
アルジ「真ん中より上なのか!?」
ヤマタン「今の軟弱な一隊ならな」
アルジ「軟弱だって?」
ヤマタンは剣をしまう。
アルジもしまった。
ヤマタン「軟弱だ。一隊は昔の方が強かった」
アルジ「そうなのか」
ヤマタン「魔力に頼った軟弱戦士の集まりだ。
今の一隊は。昔はもっと強かった。
もっと力強く、勇ましく戦ったもんだ。
決して過去を美化してるわけじゃねえ」
アルジ「そうなのか」
ヤマタン「オレがいた時代だったら、
今のあいつらのうち…
そうだなぁ、半分は二隊に落ちる」
アルジ「半分は二隊に」
ヤマタン「お前も一隊に入れるかどうかだな。
オレが一隊にいた時代なら」
アルジ「待ってくれ。そうだとしたら…」
ヤマタン「なんだ?」
マオイ「おい!」
マオイが大声を上げる。
アルジ&エミカ&ヤマタン「!!?」
驚く3人。
ため息をついてマオイは言った。
マオイ「いつまで立ち話するつもりだ」
ヤマタン「ハハ…悪いな。じゃ、中、入るか」
アルジ&エミカ「………」
ヤマタンが基地に入る。
アルジたちも続く。
中にはゲンダたちがいた。
アルジ「ゲンダさん」
ゲンダ「アルジ…」
キャモ、ルノ、カナミ、ゴタンジ、コイナミ。
ほかの5人もいた。
彼らは輪になって座り、うつむいていた。
立ち上がるゲンダ。
アルジの方へ歩いてきて言う。
ゲンダ「すまなかった。
アルジ、本当にすまなかった」
アルジ「今回は相手が悪かっただけだ」
キャモも立ち上がる。
キャモ「ごめんな」
ルノもカナミもゴタンジもコイナミも立ち上がる。
口々にアルジとエミカに謝った。
アルジ「そんなしんみりしないでくれよ。
いいんだ。気にしないでくれ。本当に…」
エミカ「私たちも無理をしてしまった」
ゴタンジ「でも倒したんだろ?
コノマノヤタラズマを。
ここに来たってことはそういうことだろう?」
アルジ「ああ」
ゴタンジ「ふぅー、
まさかあれを倒しちまうとはな!」
ルノ「本物だ」
カナミ「こりゃ猟師としての自信なくしちゃうね」
ヤマタンが首を大きく横に振って大声で言う。
ヤマタン「ちょっと待ちやがれ」
ゲンダ「なんですか?」
ヤマタン「倒したのはこのオレだ」
アルジ&エミカ「…………」
ゲンダ「ヤマタンさんが?」
ヤマタン「おう、オレだ。
コノマノヤタラズマを倒したのは」
アルジ&エミカ「…………」
ヤマタン「こいつらへばってたんだ。
コノマノヤタラズマの前で。
そこをオレが助けた」
ゴタンジ「そうだったんですか?」
ヤマタン「一撃よ」
キャモ「一撃…?」
ヤマタン「一撃で仕留めてやった。このオレが」
ルノ「え…」
カナミ「すごい」
コイナミ「さすがですね」
マオイ(どう見ても一撃じゃなかったが)
アルジ&エミカ「…………」
ヤマタンはゲンダたちに言う。
ヤマタン「悪いが、少し外してもらえるか?」
ゲンダ「ああ…はい」
ヤマタン「アルジとエミカに話したいことがある。
少し込み入った話だ。
だからここに来てもらった」
ゲンダ「…分かりました」
ゲンダたちは基地から出ていった。
マオイも彼らに続いて出ていく。
基地の中はアルジとエミカとヤマタン。
3人だけになった。
ヤマタン「悪いな」
アルジ「何がだ?」
ヤマタン「あいつらを見て気の毒になった」
アルジ&エミカ「…………」
ヤマタン「だからさっきはあんなふうに言った。
コノマノヤタラズマを倒したのはお前たちだ」
アルジ「あんたが言ったことは本当のことだ」
エミカ「助けてもらってなかったら
私たちは死んでました」
ヤマタン「………」
エミカ「ヤマタンさんが倒してくれたから…」
ヤマタン「おう。一撃だ」
アルジ「どんな攻撃だったのか見たかったな」
ヤマタン「まぁ、いいだろ。今、そのことは」
アルジ&エミカ「………」
ヤマタン「とにかく…」
ヤマタンは床にどっかりと座る。
ヤマタン「お前らも座れよ」
敷かれた板の上に3人は座る。
ヤマタン「本題と行こうじゃないか」
アルジ「ああ」
エミカ「異大陸の話か」
ヤマタン「そうだ!」
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 30
◇ HP 3603/3603
◇ 攻撃
42★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★
◇ 防御
33★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 7★★★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、雅繊維戦衣
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り
◇ 魔術 雷動
◇ エミカ ◇
◇ レベル 26
◇ HP 1883/2234
◇ 攻撃 10★★★★★★★★★★
◇ 防御
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★
◇ 魔力
46★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、濃色魔術衣
◇ 魔術 火球、火砲、火樹、火海、王火
氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 15