第162話 元凶
◆ ミノマノ村 ◆
コノマノヤタラズマの勢いは収まらない。
民家をいくつもなぎ倒し、逃げ回る住人を襲う。
さらに。
ロニ「見せてみろ!
お前がどんな魔術を使うのか!」
コノマノヤタラズマ「ブシュー!!」
コノマノヤタラズマは氷術を使った。
口から強力な冷気。
近くにいた村人たちはガチガチに凍りつく。
ロニ「はっはっは!見事なものだ!!」
次に、コノマノヤタラズマは雷術を使う。
頭のツノから強力な電撃が放たれる。
逃げ惑う村人たちはもんどり打って倒れた。
ロニ「そろそろ私も本気を出すとしよう。
お前に負けない戦いをしてみせよう!!」
コノマノヤタラズマ「ファウー!!」
ロニは人体獣化術で両腕を翼に変える。
民家の屋根から飛び立った。
空中から村を見下ろす。
人だかりを見つけては、放つ。
王獣を、放つ、放つ、放つ。
何頭もの王獣が村の中を駆け回る。
あちらこちらで人々に襲いかかる。
さらには建物の中へ入っていき、暴れ回る。
難を逃れるため、じっと隠れていた人。
外の騒ぎで眠りから目覚めたばかりの人。
騒ぎのことも知らず眠っていた人。
そんな村人たちにも次々と襲いかかる。
ロニ「よし!いいぞ!行ける!これなら行ける!」
創造の杖が彼女に莫大な魔力を与える。
光を放ち、魔力を与え続ける。
獣魔術と創造の杖が共鳴する。
放たれた王獣たち。
村の門を内側から破壊した。
ロニ「入れ!!さあ、入れ!!」
彼女が獣魔術で生み出したカヤタマノネコ。
村の中へ次々と入ってくる。
その数、全部で24頭。
ロニは魔術で操り、大暴れさせる。
そこにヌキチを食べたジロスケも加わる。
ロニはさらに王獣を4頭放った。
新たに放たれた王獣たちは役場を襲う。
役場の扉は厳重に施錠されていた。
村人たちが押しかけてこないように。
しかし、王獣はその扉を簡単に壊して進む。
警備隊員たち「なんだ!!うおー!!」
駆けつけた警備隊員たち。
瞬く間にバラバラになった。
慌てふためく役人たち。
魔獣対策緊急会議はまだ終わっていない。
助役たちは今も会議室で議論していた。
役人たち「止まれい!!」
王獣たちは止まらない。
立ちはだかる役人たちをバラバラにした。
役人たち「ぐわー!!」
突然、王獣は消える。
寿命だった。
王獣は血も肉も持たない魔波の塊。
その命は短い夢のようなもの。
だが、役場への攻撃が収まることはない。
今度は14頭のカヤタマノネコが襲う。
役場内を駆け巡って、押し入った。
会議室に、村長室に、そして、真王特別室に。
爪が、牙が、襲いかかる。
役人たちに、助役に、村長に。
そして、ミノマノ真王に。
ロニ「………」
広場の上空。
ロニは翼を羽ばたかせ、舞っていた。
王獣は消え、カヤタマノネコは村を去る。
コノマノヤタラズマは伏せる。
そして、村は静かになった。
ロニは、民家の屋根に降り立つ。
ロニ「やったぁ!!!!!」
晴れやかに笑いながら両手を突き上げる。
ミノマノ村の住人5765人。
全員がロニの獣魔術により死んだ。
ロニ「私にもできるのだ!
マスタスがやったことを!
村や町の1つや2つ簡単に滅ぼせるのだ!
私にできないわけがないのだ!
私は宝子なのだ!!もっとだ!!
この調子でもっともっと破壊するぞ!!」
ロニはニヤリと笑う。
ロニ「次は…そうだな!国潰しと行くか!!
はははっ!!国潰しと行くかー!!
あっはっはっはっはぁー!!」
滅んだ村に彼女の高笑いが響く。
夜明けが近い。
◆ 猟師の基地 ◆
アルジは胸騒ぎを覚えて目を覚ます。
アルジ「…はっ!」
空は白み始めている。
上体を起こし、周りを見る。
ゲンダたちはまだ眠っていた。
エミカの姿がない。
昨夜、彼女の枕元に置いた食料。
全部なくなっていた。
アルジは立ち上がり、外へ出る。
アルジ「………」
基地のすぐ近く。
エミカが立っていた。
真剣な顔で遠くを見つめている。
アルジ「おはよう」
エミカ「おはよう」
アルジ「どうした?」
エミカ「強い…とても強い魔波を感じた」
アルジ「魔獣か?」
エミカ「分からない。かなり遠くの方だ」
アルジ「ミノマノ村…か?」
エミカ「どうかな」
エミカは昨夜のことを思い出す。
エミカ「…昨日は急に眠ったみたいだな」
アルジ「魔力を使い過ぎたんだろ。
大丈夫か?」
エミカ「もう大丈夫。あと、食料も…」
アルジ「オレが置いた。
タキマイ派が基地に置いてったものだけど」
エミカ「ありがとう」
アルジ「コノマノヤタラズマ退治、頑張ろうぜ」
エミカ「頑張ろう」
ゲンダとキャモが基地の中から現れる。
ゲンダ「よう。随分と早起きじゃねえか」
アルジ「胸騒ぎがした。
獲物がオレたちを呼んでるぜ」
キャモ「言うね」
ゲンダ「カッコつけんな」
ルノ、カナミ、コイナミもやってくる。
ルノ「いい時間だ」
カナミ「予定どおりだな」
コイナミ(…眠い)
ゲンダ「あと1人…」
ゲンダは基地へ戻り、ゴタンジを起こした。
後ろ頭をかきながら、基地から出てくる。
ゴタンジ「いやぁ、悪いな!!行こう!!」
アルジたちは歩き出す。
ミノマノ村に向かって。
歩きながらアルジはゲンダに言った。
アルジ「大陸首位猟師って本当にいたのか」
ゲンダ「どういう意味だ?」
アルジ「猟師がいた」
ゲンダ「……?」
アルジ「大陸首位猟師になりたい。
その猟師は言っていた。
オオトノラコアにやられちまったけど…」
ゲンダ「なんだ…そういうことか。
大陸首位猟師。
その称号は猟師にとって最高の栄誉だ」
アルジ「首位ってことは、1番ってことか」
ゲンダ「文句なしの1番だ」
アルジ「どうやって決まる?」
キャモ「年に1回ある。猟師たちの集会が」
カナミ「派閥を越えて猟師が一堂に会する」
コイナミ「基地に集まった数よりずっと多い。
そこで決まる。誰が1番か」
アルジ「へえ」
ルノ「その集まりの名前は、大陸猟師大集会。
会場は大体いつも『アマ円』だな」
アルジ(…アマ円。確か…
…都にあるデカイ競技場のことだよな)
アルジたちは歩き続ける。
ゴタンジ「毎年、有識者が審査する。
新人賞やら猛猟賞やらいろいろ賞はある。
大陸首位猟師の審査は段違いに厳しいぜ」
アルジ「厳しいのか」
ルノ「どんな獲物を何体狩ったのか。
詳しく調べられて審査される。
ほかにも人物的にふさわしいか。
そういうのも大事だ」
アルジ「大変そうだな」
ルノ「猟師の顔ともいえる存在だからな。
大陸首位猟師は。
ただ単に狩りができるってだけじゃダメ」
アルジ「そっか」
キャモ「前はタキマイ派からよく選ばれてた。
だけど、ここんとこはうちの大将」
アルジ「大将…」
ゲンダ「オレたち大陸猟進会の代表。
ヤマタンさんだ」
アルジ「ヤマタン」
キャモ「デカイ体したちょっとむさ苦しい男。
彼はもともと猟師じゃなかった。
大前隊にいた。しかも一隊に。
猟師を始めたのは隊をやめてから」
アルジ「元大前隊で一隊にいた…」
ゴタンジ「猟師としての腕も本物だ。
大前隊にいたときも
害獣狩りで活躍した人だからな!」
アルジ「そうなのか」
ゲンダ「大陸首位猟師の表彰式。
そこは猟師なら誰もが憧れる舞台。
賞の授与は大君が直々に行う」
アルジ「大君が直々に…」
ゲンダ「お前も新人賞でも目指してみるか?」
アルジ「いや、オレはいいな」
ゲンダ「…そうか」
ナクサの町が見えてくる。
空は明るくなってきていた。
もう間もなく日の出の時刻を迎える。
エミカの顔が曇る。
キャモがそれに気づく。
キャモ「何か感じるか?」
エミカ「嫌な魔波…。
遠くてはっきり分からないけど」
ルノ「急いだ方がいい。殻化が終わったのかも」
カナミ「村の中で暴れたら大惨事だ」
コイナミ「少し走りましょうか」
ゴタンジ「待て!走るには限界があるぜ!
まだ少し遠いだろ。それにこの剣は重い」
カナミ「気合い入れな」
ゴタンジ「あのな…!」
エミカ「魔生体がある」
エミカはラアムとナアムを出した。
地に放ち、2体を巨大化させる。
キャモ「いいね」
ルノ「速く走ってくれそうだ」
エミカ「これに乗っていこう。
魔力を使ってしまうけど、
今は急いだ方がいい気がする」
ゲンダ「立派な魔生体じゃないか…」
ゴタンジ「おいおい、オレは動かせねえぞ」
エミカ「私がやる」
コイナミ「私も操縦しよう」
キャモ「私も」
ルノ「私もやるよ!」
カナミ「戦闘用に温存させてもらうよ」
エミカ「それで大丈夫。
残りの魔力を見て
乗るのを途中でやめてもいい」
8人はラアムとナアムに乗る。
エミカ、アルジ、ゲンダ、ゴタンジがラアムに。
キャモ、ルノ、カナミ、コイナミがナアムに。
4人で乗るにはラアムもナアムも狭い。
ナクサの町を通り過ぎて街道に出る。
ミノマノ村へ向かう道はキャモたちが先を行く。
アルジ「さっき少し考えた」
エミカ「…何を?」
アルジ「昨日の話だ。
魔術のせいで魔獣が増えてるって話。
あれってロニの仕業なんじゃないかって」
エミカ「獣魔術…」
アルジ「そう、それだ」
エミカ「でも、ホジタが言ってただろ。
ロニが獣魔術に目覚めたのは5年前だって」
アルジ「言ってたな。それがどうした?」
エミカ「あの本、結構古そうだったけど」
ゲンダ「約20年前」
エミカ「20年前…」
ゲンダ「『魔波と魔獣』は新しい本ではない。
書いてあるのはひと昔前の情報。
魔獣発生事件が地域ごとにまとめられている」
エミカ「…そうか。
ロニが獣魔術を使い始めるよりずっと前だ」
アルジ「なら、違うか」
ゴタンジ「著者は旅芸人をしながら
魔術を研究していた」
アルジ「そんな人もいるのか」
ゲンダ「それも関係しているんだろう。
魔獣発生事件について、
あれだけ情報を集められたのは」
エミカ「その魔術師…」
ゲンダ「著者はドニホニ。
北土の魔術研究所の術師だ」
エミカ「その人知ってる」
ゲンダ「なんだ、そうか」
エミカ「旅芸人の魔術師。
そういう人がいるって研究所で聞いた。
私は会ったことがないし、
名前を知ってるだけだけど」
アルジ「そうなのか」
エミカ「だけど、
その人がそんな本を書いてたなんて…」
ゲンダは深いため息をついた。
ゲンダ「北土の魔術研究所。
それがすべての元凶」
ゴタンジ「ろくでもない研究所だ。
オレたち猟師にとっちゃ。
今回の古代獣発生も
あいつらが黒幕だったしな!」
アルジ&エミカ「………」
もう少しでミノマノ村。
ラアムとナアムは立ち止まる。
曲がりくねった細い街道の上。
駆けてくる2人の女の姿があった。
彼女たちは大陸猟進会本隊の猟師。
息を切らしながら言う。
猟師A「コノマノヤタラズマが来る!!」
キャモ「ほかの猟師は?」
猟師B「食われた!!
私たち以外、全員食われた!!!」
キャモ「!!?」
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 27
◇ HP 3233/3233
◇ 攻撃
39★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
29★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 素早さ
34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 6★★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、雅繊維戦衣
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り
◇ 魔術 雷動
◇ エミカ ◇
◇ レベル 22
◇ HP 1883/1883
◇ 攻撃 10★★★★★★★★★★
◇ 防御
28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 素早さ
23★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★
◇ 魔力
44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★
◇ 装備 天界石の杖、濃色魔術衣
◇ 魔術 火球、火砲、火樹、火海、王火
氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術
◇ ゲンダ ◇
◇ レベル 26
◇ HP 2147/2147
◇ 攻撃
29★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 防御
19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 8★★★★★★★★
◇ 装備 剛鉄剣、猟進弓、強化革の防護衣
◇ 技 破獣撃、魔氷矢
◇ 魔術 氷弾
◇ キャモ ◇
◇ レベル 25
◇ HP 1162/1162
◇ 攻撃
17★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 魔力
17★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 猟進弓、剛鉄戦斧、強化革の防護衣
◇ 技 魔氷矢
◇ 魔術 氷弾、氷球
光玉、光帯、治療魔術
◇ ルノ ◇
◇ レベル 24
◇ HP 966/966
◇ 攻撃 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御 16★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
29★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 魔力
17★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 猟進弓、青銀の短剣、強化革の防護衣
◇ 技 魔氷矢
◇ 魔術 火弾、火球
氷弾、氷球
◇ カナミ ◇
◇ レベル 24
◇ HP 1047/1047
◇ 攻撃
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
22★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★
◇ 魔力
19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 猟進弓、強猟槍、強化革の防護衣
◇ 技 魔雷矢
◇ 魔術 雷弾、雷砲
◇ ゴタンジ ◇
◇ レベル 26
◇ HP 2555/2555
◇ 攻撃
35★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御 12★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 11★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
◇ 装備 重練剣、強化革の防護衣
◇ 技 斬破、落陽
◇ 魔術
◇ コイナミ ◇
◇ レベル 17
◇ HP 731/731
◇ 攻撃 11★★★★★★★★★★★
◇ 防御
17★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 13★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 猟進弓、猟師の手斧、強化革の防護衣
◇ 技 魔雷矢
◇ 魔術 雷弾
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 15