第16話 非情
アルジとカクノオウの戦いが始まった。
両者間合いを保ったままにらみ合う。
アルジ(うかつに近づけば雷神剣の餌食…)
互いに1歩も退かない。
気迫と気迫がぶつかり合う。
アルジ(だが!恐れていては…勝ち目はない!)
アルジの猛攻が始まる。
地面を強く蹴って一気に間合いを詰める。
勇気の剣で攻めていく。
大きく振り下ろす1撃目。
下から振り上げる2撃目。
そして、突き出す3撃目。
アルジ(体が動く…!!速く!!強く!!
今までにないほど!だが…!!!)
カクノオウの動きはその上をいく。
アルジの攻撃はすべてかわされた。
剣を振り上げてニヤリと笑うカクノオウ。
エミカ「来る!!離れろ!!!」
アルジ「!!」
エミカの大きな声。
アルジはとっさに後ろへ跳んだ。
カクノオウ「食らえ!!!雷!神!剣!!!」
雷が落ちる。
カクノオウは長剣を振り下ろす。
だが、アルジに当たらない。
落雷も斬撃も。
十分に離れることができていた。
アルジ(助かった…!)
カクノオウ(あの女…余計なことを…)
アルジ(エミカ…ありがとう)
エミカ「………」
再び距離を置いてにらみ合う。
カクノオウ「アルジ…いい身分だな…」
アルジ「………」
カクノオウ「ワレは…忘れていない。
あの日のことを…決して忘れていない」
アルジ「あの日…?」
カクノオウ「ワレは…教え子に見捨てられた」
アルジ「見捨てられた…!?」
カクノオウ「あの日、ワレはたった1人…
ゼゼ山で…ヤマグマに立ち向かった」
アルジ「あれは…!」
カクノオウ「見捨てられたんだ。
ワレはお前らに。見捨てられたんだ!!」
アルジ「そんなつもりはない!」
カクノオウ「何を言っている?
実際に見捨てただろうが。
ワレは1人で戦った。1人で戦い、敗れた!
ワレはあのヤマグマに殺されたのだ!!」
アルジ「あんたはあのとき…!
オレたちに…先に山を下りろと…!」
カクノオウ「そういうもんだろが!
教師という立場なら当然そう言うだろうが!
生徒を守るため、言うしかないだろうが!
本当に人を思いやれる生徒なら、
あのとき、立ち去るわけねえだろうが!
自分も戦うと言って、一緒に戦うだろうが!
それが、あのときの、正しい行動だろうが!
何を考えていやがったんだ!!
あのときのあの魔獣化したヤマグマを見て、
てめえはワレが本当に勝てると思ったのか!」
アルジ「……くっ!」
カクノオウ「それでどうだ!アルジ!!
どうしたもんだ!アルジィィイ!!
お前は今!女とお出かけと来たもんだ!
しかもだ!村の宝!勇気の剣まで持って!
なんでてめえがそれを持ってるんだよ!
その剣は優れた人間が使うべき武器だろうが!
ワレの方がふさわしいだろうが!!!
…まったくいい身分よ!!おめえはよ!!
恩師を見捨てて、助かったその命!!!
さぞかし大事で捨てがたいだろうなぁ!」
アルジ「……!」
エミカ「アルジ、聞く耳を持つな!」
アルジ「………」
カクノオウ「それとなぁ…聞いたぞ。
お前が殺したんじゃないのか?」
アルジ「…殺した?」
カクノオウ「風の噂で聞いたぞ。
トアとマサが死んだってな。
お前のせいで死んだんじゃないのか?
あいつらは。お前がまた無理をして、
あいつらが余計なことに巻き込まれて…
それで死んじまったんじゃないのか?
そうだろう?そうだよなぁ?」
アルジ「…!!」
カクノオウ「それでよくも…
のうのうと生きてられるよな?」
アルジ「て…てめえ…!!」
アルジの心はこの上なく乱された。
トアとマサがヤマグマとの戦いで死んだこと。
そのことを責められること。
どんな罵倒の言葉より深く心をえぐった。
エミカ「アルジ!乱されたらだめだ!」
アルジは怒りに震えて肩で息をする。
カクノオウの弟子たちはエミカを見ている。
一様に険しい顔で。
彼らは横から口出しする彼女を憎んでいた。
そして、エミカはそのことに気づいていた。
弟子たちが武器を手に不穏な動きを見せる。
エミカ「…動くな!」
弟子たちに杖を向ける。
エミカ「余計なことをしたら…もう一度撃つ。
今度はお前たちのことを焼いてやる」
実行するための魔力はもうない。
だが、弟子たちの動きを封じるには十分。
イカリワシに放たれた火砲。
あの光景が彼らに与えた衝撃は大きかった。
弟子たち「……!」
カクノオウ(面倒な女だ…!)
カクノオウはエミカに向かって駆ける。
アルジ「!!?」
カクノオウ(先に殺しておくか…!)
アルジ「エミカ!!よけろ!!」
アルジは叫びながらカクノオウを追いかける。
しかし、速くて追いつけない。
弟子たちに注意を向けていたエミカ。
カクノオウの接近に気づくのが遅れる。
カクノオウ「食らえい!!!雷!神!!剣!!!」
カクノオウは魔力を集めて空に放つ。
雷がエミカの体を激しく撃つ。
エミカ「わぁあぁあぁあぁあ!!」
膝から崩れ落ちていく。
◇ エミカに116のダメージ。(HP127→11)
カクノオウはすぐさま剣を振り上げる。
倒れる前に彼女を斬ろうと全力で振り下ろす。
そこへどうにかアルジが追いつく。
カクノオウの右腕を斬る。
カクノオウ「ぐ…!!」
アルジの斬撃が初めてカクノオウに当たる。
カクノオウの右腕を深く斬った。
アルジはそのまま体当たりして突き飛ばす。
カクノオウの体は宙に浮き、地面の上を転がる。
◇ カクノオウに173のダメージ。
アルジ「エミカ!」
アルジはエミカに駆け寄る。
膝をつき、彼女の肩を揺すった。
アルジ「エミカ!エミカ!起きてくれ!!」
何度も呼びかけると彼女は目を覚ます。
エミカ「…アルジ」
アルジ「間に合わなかった…すまなかった…。
あとはどうにかする…。今は休んでいてくれ」
むくりと起き上がるカクノオウ。
その顔には薄ら笑い。
エミカ「アルジ、負けるな…。あいつを倒せ…」
アルジ「ああ、分かってる」
エミカ「雷神剣は…」
アルジ「…?」
エミカ「使う前…魔波が…空へ放たれる…」
アルジ「………」
エミカ「私には…それが分かる…」
アルジ「………」
エミカ「合図を送る…。避けられるように…」
アルジ「…大丈夫だ」
エミカ「…?」
アルジの肩から湧き上がる魔波。
剣が光り、魔力が高まる。
アルジ「それは…今のオレにも見える…!」
エミカ「!!」
アルジは立ち上がってカクノオウを見る。
ふらりふらりと歩いてくるカクノオウ。
アルジ「カクノオウ…!!
オレはお前を絶対に許さない!!」
カクノオウ「くくく…!」
決着をつけるためにアルジは剣を構える。
一方、利き腕に深傷を負ったカクノオウ。
彼はもうまともに剣を振れない。
カクノオウ(仕方ない…あれをやるか…!)
そして、非情な手段を選択する。
アルジを倒すために。
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 6
◇ HP 98/223
◇ 攻撃 19
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御 5★★★★★
◇ 素早さ 6★★★★★★
◇ 魔力 7★★★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、革の鎧
◇ 技 円月斬り
◇ エミカ ◇
◇ レベル 6
◇ HP 11/192
◇ 攻撃 3★★★
◇ 防御 3★★★
◇ 素早さ 7★★★★★★★
◇ 魔力 9★★★★★★★★★
◇ 装備 術師の杖、術師の服
◇ 魔術 火球、火砲
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療薬 8
◇◇ 敵ステータス ◇◇
◇ カクノオウ ◇
◇ レベル 19
◇ HP 229/402
◇ 攻撃 11★★★★★★★★★★★
◇ 防御 16★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 11★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 7★★★★★★★
◇ 装備 天竜の長剣、風魔の武闘衣
◇ 技 雷神剣
◇ 魔術 雷弾