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アルジ往戦記  作者: roak
152/300

第152話 潔白

◆ 都 シノ姫の間 ◆

2人の男が呼び出された。

その2人とはガシマとオンダク。


ガシマ「ガシマ、参上しました」

オンダク「オンダク、参上しました」

シノ姫「…入って」


シノ姫の間に入っていく2人。

彼女は1人、奥で静かに座っている。


シノ姫「あなたたちにね…

 聞きたいことがあって呼んだの」


その場に立ったままのガシマとオンダク。

いつになく重苦しい空気。

彼らが都に戻ったのは昨夜のこと。


◆◆ 2日前 ◆◆

◆ 魔学校マス ◆

マスタスとの戦闘後。

アルジとエミカが学校を去ったあと。

教室に残されたガシマとオンダク。

彼らは、現場の調査を始めた。


ガシマ「死体が3つ…か」

オンダク「さっきのあいつ…

 マスタスは死んだと言っていたが…」


彼らは死体に近づいて確かめる。


ガシマ「女が2人、男が1人。

 しかし…ひでえ焼け方だ。

 魔術か…。特にこっちの女は…」

オンダク「…これがマスタスか?」

ガシマ「おそらくな」

オンダク「運び出すか」

ガシマ「ああ。審理院で見てもらおう」

オンダク「女の方はどうする?」

ガシマ「そいつらも運び出そう。

 何か手がかりが見つかるかもしれない」

オンダク「移動手段は?」

ガシマ「魔術院に迎えを頼む」

オンダク「それがいいだろう。

 都に戻るのは…明日になるか」

ガシマ「合離蝶で手紙…

 それから、カルスの手配…

 カルスが来る…都へ移動…そうだな。

 戻るのは、早くても

 明日の夕方か夜ってところだろう」

オンダク「アヅミナたちは…

 もう都に着いてる頃か」

ガシマ「おそらくな。

 ホジタの取調べが始まっててもおかしくない」


そして、次の日の夜。

ガシマとオンダクは都に帰る。

魔術院からやって来たカルスに乗って。

マスタス、リネ、ミリの死体を運んで。

死体は到着するなり審理院に引き渡した。

ミチマサとシノ姫に経過を報告する。

ガシマは現場に着いたときの様子を説明した。

魔学校マスでマスタスはすでに死んでいたと。

3人分の死体以外そこには誰もいなかったと。

その説明でミチマサとシノ姫は了解した。

同時刻。

アルジとエミカは猟師たちの基地にいた。

壇上のタキマイの話を聞いているときだった。



◆◆ 現在 ◆◆

◆ 都 シノ姫の間 ◆

シノ姫は言う。


シノ姫「昨夜、あなたたちが帰ってきてから…

 …いろいろと調べたの」

ガシマ&オンダク「………」

シノ姫「審理院でホジタから話を聞いたり…

 あなたたちが運んできた死体を調べたり…」

ガシマ&オンダク「………」

シノ姫「ホジタによれば…アルジという男が

 取引をしたんじゃないかって話だった」

オンダク「取引…?」

シノ姫「…アルジという男は彼の村の大事な宝

 それを返してもらうため…

 別な宝をマスタスに渡した…。

 そういう取引をしたんじゃないかって…。

 それでね…審理院は判定を下した…。

 アルジという男は罪人で…死罪に値すると。

 でも…それはどうやら違ったみたい。

 …昨夜遅くにアヅミナが証言してくれた。

 たった1人で審理院に足を運んで」

ガシマ「…証言」


ガシマとオンダクに知らされていなかった。

星の秘宝のことも魔真体のことも。

彼らには待機命令が出されていた。

声がかかるまで待機所にいるようにと。

待機所の小さな部屋で2人。

出された食事をとり、仮眠をとる。

そうして静かに過ごしていた。


シノ姫「アヅミナによればその魔術師の女は、

 精神操作をかけられていたらしい…。

 闇の術師には、それが分かるらしいのね」

オンダク「魔術師の女…ですか?」

シノ姫「…ほら!あなたたち

 運んできてくれたじゃない。

 事件現場から。マスタスと、あと2人。

 女の魔術師。そのうちの1人がその魔術師。

 ホジタによれば、リネって名前らしい。

 クユの国へヤマエノモグラモン退治のため

 アヅミナがあなたたちと出かけたとき、

 リネという魔術師の顔を見ていたそうなの。

 そのとき、アヅミナは気づいた。

 彼女の姿を見て。精神操作をかけられていると。

 あなたたちが運んできた死体を見て、

 アヅミナは思い出したんでしょう…」

ガシマ「…精神操作…」

シノ姫「そう。だから…取引なんてなかった。

 そういう結論になった。つまりね…

 アルジという男が悪いわけじゃなくて、

 リネという魔術師が…

 精神操作のせいで渡してしまった…。

 大事な宝を…マスタスに…。

 そういう判定に改められた」

オンダク「アヅミナの証言で…」

ガシマ「審理院が判定を改めた」

シノ姫「決め手になったのは

 彼女の証言だけではない」

ガシマ&オンダク「………」

シノ姫「証言をするとき…

 アヅミナが言っていた。

 1つ…分からないことがあると…」

オンダク「分からないこととは…?」

シノ姫「ええ…それはね…

 術者の姿が見えなかったこと。

 精神操作は強力な魔術だから…

 術者は絶えず対象者に

 魔力を注ぐ必要がある。

 魔力を注ぐためには…

 対象者の近くにいなきゃいけないらしいの。

 だけどね…

 操られているリネをアヅミナが見たとき…

 どこにもいなかったらしいの。闇の術師が。

 アヅミナの感知力をもってすれば…

 隠れていたってすぐに見破れる。

 それなのに、いなかったって言うんだから、

 本当にいなかったんでしょうね」

ガシマ&オンダク「………」

シノ姫「それで…私は思ったの。

 離れていても作用する力…。

 これは…もしかすると…

 秘術も関係してるんじゃないかって…」

ガシマ&オンダク「………」

シノ姫「秘術が…

 精神操作に関わっているんじゃないかって」

ガシマ&オンダク「………」

シノ姫「そこで私の出番です。

 審理院へ行き、調べました。

 …リネという魔術師の頭部を。

 すると、どうでしょう。

 奥の、奥のところ。

 小さな、本当に小さな玉がありました」

ガシマ「玉…?」

シノ姫「そうです。玉です。

 秘術に使われる玉です。

 結果的に…これが動かぬ証拠となりました。

 マスタスは、その小さな玉…

 秘術道具をリネの頭に埋め込んで、

 長期間にわたり精神操作していたのです…。

 その玉には…微かに秘力が残っていました。

 魔力はすっかり消え失せていたけど。

 秘術の力と混ぜ合わせて魔術をかける。

 その魔術は…術者が遠く離れていても…

 長い時間が経ってしまっても…効き続ける。

 そういう魔術を使える者がいた。

 その事実に…その場の誰もが驚いた。

 審理院の術師も、魔術院の術師も…。

 そして…私もです。

 これがね…決定的な証拠となったの。

 あの審理院が…

 判定を改める決め手となったのです」


シノ姫はしばらく目を閉じてから開ける。


シノ姫「それでね、あなたたちにも…

 秘術について少しだけ知ってほしいんだけど…

 秘術は…術者が死ぬと弱くなっていきます」

ガシマ&オンダク「………」

シノ姫「時間が経つとともに少しずつ。

 弱くはなるけど…本当に強い秘術なら…

 何千年も力が残り続ける。そういうもの」

ガシマ&オンダク「………」

シノ姫「それで…私は少し…ほんの少し…

 詳しく調べれば、分かる。

 術者が大体いつごろ死んだのか」

ガシマ&オンダク「………」

シノ姫「術者が生きていたとき、

 秘術がどれほど強かったか。

 術者が死んで、今どれくらい弱まっているか。

 そういうのをよく調べて推定するんだけど…」

ガシマ&オンダク「………」

シノ姫「あなたたち…昨夜、私に報告したとき…

 お昼過ぎだった…と言ったでしょう」

ガシマ&オンダク「………」

シノ姫「マスタスの学校に入って、

 3人の死体を見たのは、お昼過ぎだったと。

 そう言ったでしょ?」

ガシマ「はい…」

シノ姫「………。大体それぐらいだった。

 私が割り出したマスタスの死んだ時間は。

 つまり…マスタスが死んで間もなく…

 あなたたちは学校に入ったことになる」

ガシマ&オンダク「………」

シノ姫「それで…ホジタの話に戻るんだけど…

 4人だったのね…」

ガシマ「4人…」

シノ姫「教室で死んでいた2人の女の魔術師…

 そのほかに…2人。2人いたらしい。

 マスタスの居場所を聞きに…

 4人でやって来たらしい。

 ホジタのところへ…」

ガシマ「そう…ですか」


重苦しい沈黙。


シノ姫「ところで…話は少し変わるんだけど…」

ガシマ&オンダク「………」

シノ姫「今日のお昼頃…

 オオトノラコアという魔獣が討伐された」

ガシマ&オンダク「………」

シノ姫「オオトノラコアは…

 とてもとても強い魔獣です。

 大前隊の第一隊でも…

 果たして…倒せるかどうか…。

 そんな危険な魔獣なのね…」

ガシマ&オンダク「………」

シノ姫「それを倒したのは…大前隊でも…

 タキマイ狩猟会でも…大陸猟進会でもなく…」

ガシマ&オンダク「………」

シノ姫「たった2人だったらしい…。

 剣士と魔術師…」

ガシマ&オンダク「………」

シノ姫「2人とも…クユの国の出身で…」

ガシマ&オンダク「………」

シノ姫「アルジとエミカっていうらしい」

ガシマ&オンダク「…!」

シノ姫「あなたたち知ってる?」

ガシマ「は…は…」

シノ姫「大前隊でも倒せるか分からない魔獣…

 たった2人でやっつけちゃうなんて…

 すごいじゃない!…ねえ?」

オンダク「は…!」

シノ姫「これはぜひ…戦力として欲しい!

 私は…そう思っています…」


シノ姫はほほえみ、急に無表情になる。

それは、全部の感情をなくしたような顔。


シノ姫「いたんじゃないの?」

ガシマ&オンダク「………」

シノ姫「2人が教室に。

 あなたたちが…入ったときに…」

ガシマ&オンダク「………」

シノ姫「捕まえようとした。

 けど…抵抗された…。それで…諦めた…。

 自分たちよりも…強いから…。

 だから…2人を…見逃した!!…違う?」

ガシマ「はっ…!は…!!」

シノ姫「話が少し長くなっちゃったけど…

 あなたたちから聞きたいことは…それだけ」

オンダク「ふぅ…!ふっ…!!」

シノ姫「ねぇ…あなたたち。

 正直に…話してくれる…?」

ガシマ「…か…!はぁ…!!」

シノ姫「それとも…私の秘術で…

 身の潔白を証明しますか?」


シノ姫は懐から印を取り出す。

秘術道具、幻印。

その先端に赤い光が灯る。


ガシマ&オンダク「…!!?」


不敵な笑みを浮かべ、彼女は問いかける。


シノ姫「受ける罰は軽ければ軽いほどいいと

 私は思うんだけど…

 あなたたちの考えは違うんですか?」



◇◇ ステータス ◇◇

◇ ガシマ ◇

◇ レベル  33

◇ HP   2178/2178

◇ 攻撃

 36★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

  ★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

 27★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★

◇ 素早さ

 30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

  ★★★★★★★★★★

◇ 魔力  10★★★★★★★★★★

◇ 装備  練磨の大斧、金剛武道着

◇ 技   激旋回斬、大火炎車

◇ 魔術  火弾、火砲


◇ オンダク ◇

◇ レベル 35

◇ HP   2841/2841

◇ 攻撃

  28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★

◇ 防御

  39★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

  19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  9★★★★★★★★★

◇ 装備  竜牙の長槍、超重装甲

◇ 技   竜牙貫通撃、岩撃槍

◇ 魔術  岩弾、岩壁


◇◇ 敵ステータス ◇◇

◇ シノミワ(シノ姫) ◇

◇ レベル 41

◇ HP   822/822

◇ 攻撃  4★★★★

◇ 防御

 18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 秘力

40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

  ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備

 秘術道具(幻印、例札、思針、心糸)、高護貴帯

◇ 魔術  火弾、火砲、火刃

◇ 秘術  赤画、赤封、赤除、赤洪、赤滅

      青画、青封、青跡、青結、青葬

      白紋、白掃、白限、白威、白廃

      黒紋、黒弦、黒貫、黒壊、黒破


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