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アルジ往戦記  作者: roak
151/300

第151話 役割

◆ 巨方庭 管理者の館 ◆

エオクシたちは話を聞く。


ソネヤ「最後、彼女は食べることをやめました」

エオクシ&アヅミナ&カタムラ「………」

ソネヤ「突然のことでした。

 ある日を境に果実の一切れも

 口にすることをやめてしまったのです」

マユノ&カエノ&サヤノ「………」

ソネヤ「布団で目を見開いたまま横になり、

 最後は眠るように目を閉じました。

 ハイラと私は遺体を焼き場へ運びました。

 ハイラが彼女の衣服を脱がせたときです。

 なあ、ハイラ…」

ハイラ「体に不思議なアザがいくつもあった」

ソネヤ「私もその1つを直接見ました」

マユノ「どのようなアザですか?」

ハイラ「光を放っていたんだ。

 青白く、ぼんやりとね」

マユノ「光る…アザですか」

ハイラ「とにかく気味が悪かった」

ソネヤ「魔術に起因するものでない。

 そのことは私たちも容易に分かりました」

ハイラ「私たち一応魔術を使えるからね」

ソネヤ「あなた方と比べれば

 非常に貧弱なものですが…」

マユノ「そんなことありません。

 素敵な魔力を感じます。ね」

カエノ&サヤノ「うん」


カタムラはあごに手を当てて考え込む。


カタムラ(光るアザ…。秘術か?

 秘術を使う者が巨方庭の中に…?)


エオクシは卓上の物を指差す。


エオクシ「あれはなんなんだ?牙と毛と…」

ソネヤ「彼女が持っていたものです。

 彼女をこの館で保護したとき、

 背負っていた小さな荷物入れ。

 その中に入っていたのです。

 巨方庭で採取したのだと思います。

 牙と毛と葉と木の実…。

 一体これらはなんなのか。

 彼女の死後、鑑定を依頼しました。

 個人的な伝手があったもので。

 依頼したのは学術院の元研究員。

 現役を退いて故郷で暮らしていました。

 ですが、彼の知識や手腕は本物です。

 鑑定してもらったところ、

 驚くべきことが分かったのです」

アヅミナ「どんな結果だったの?」

ソネヤ「牙と毛…これらは、

 古代獣コダイオオカミのものでした。

 大昔に絶滅したとされています。

 過去に得られた標本と比較したところ、

 間違いないとのことでした。

 鑑定してくれた方からは、

 譲ってくれと頼み込まれました。

 どこで手に入れたのかも聞かれました。

 ですが、それだけは答えられません。

 牙と毛をいくらか分けて譲る。

 だから、それで勘弁してくれ。

 と言って私はその場を去りました」

カタムラ「葉と木の実はフルモクジュですね?」

ソネヤ「ご名答。

 遥か太古の時代に生えていた木。

 これもまた絶滅種とされています」

カタムラ「絶滅したはずの獣と樹木。

 なぜか巨方庭では今も生きている。

 そういうことでしょうか」

ソネヤ「はい。そのようです。

 彼女はそれらと巨方庭で出会った。

 そして、標本として採取した。

 フルモクジュはともかく、

 危険なのはコダイオオカミです。

 激しい攻撃性を持ち、

 群れで行動すると聞きます。

 魔獣化している可能性もあります。

 なぜならば、魔力の残滓が、

 今もこの牙と毛に…。

 荒々しい魔術を使うことでしょう。

 ですが、あなた方ならば…」


そこで話をやめるソネヤ。


マユノ「…大丈夫だから」


マユノはサヤノの手を握っていた。

サヤノの目からポロポロと涙が落ちる。


サヤノ「怖い…」


小さな声が彼女の口からこぼれる。


アヅミナ(温室育ち…。

 持ってる魔力は立派だけど…

 実戦経験はほとんどないみたい)


応接間は不安な空気に包まれる。

声を上げたのはエオクシ。


エオクシ「勝手に怖がってろよ」

マユノ「…!?」

エオクシ「おびえたいやつはおびえてろ。

 任務を放り出して逃げてえなら逃げろ。

 オレは無理に引きとめたりはしねえ。

 だが、これだけははっきり言っとくぜ!

 オレは誰も死なせねえ。傷つけさせねえ。

 何が出てこようが、ぶっ倒してやる!

 この壮刃剣でな!!」


壮刃剣を高く掲げる。


マユノ「エオクシ様…」

ソネヤ(頼もしい人だ)

ハイラ(言ってくれるじゃないか。

 大前隊にこんな活きのいい男がいるんだね)


そして、エオクシはサヤノに笑いかける。


エオクシ「だからもうおびえんな。な!」

サヤノ「はい…ありがとうございます」


応接間から出ていくエオクシ。


アヅミナ「どこ行くの?」

エオクシ「剣を振ってくる!」

アヅミナ「外はもう真っ暗だよ」


エオクシに駆け寄るマユノ。


マユノ「お供します」

エオクシ「暗くてもオレは怖くねえよ。

 ここにいな」

マユノ「いいえ、お供させてください」

エオクシ「仕方ねえな。行くぜ!」


出ていくエオクシとマユノ。

去り際にマユノはカエノに言う。


マユノ「サヤノのことお願い」

カエノ「うん」

サヤノ「心配ないよ」


エオクシとマユノは外に出た。

空にはいくつもの星。

マユノは光玉を作り出す。

エオクシの頭上に飛ばした。


エオクシ「助かる」

マユノ「どうぞ、お使いください」


エオクシは剣を構える。

1回、2回と振っていく。

マユノはその姿をじっと見つめる。

100回振り終えたとき。

マユノはエオクシに話しかける。


マユノ「エオクシ様」


マユノを見てエオクシは返事をする。


エオクシ「なんだ?」

マユノ「お体に不具合はございませんか?」


1回、大きく縦に剣を振る。


エオクシ「ああ、大丈夫だ」

マユノ「それはよかった。

 すっかりお元気になられて、

 とても安心しております。

 お体に何かあれば、

 いつでもお申しつけください」

エオクシ「大丈夫だって!」


地面を蹴って、剣を下から振り上げる。

天裂剣を空に放った。

着地してすぐにマユノに笑いかけて言う。


エオクシ「ほらな!」

マユノ「素晴らしい…!素晴らしい技です!」


エオクシはマユノの方へ歩いていく。


エオクシ「そんなかしこまんなくていいぜ。

 普通に話せよ。様もいらねえ。

 普通に呼べ。なんかムズムズするからよ」

マユノ「…エオクシ」

エオクシ「おう。明日は頼むぜ。マユノ」

マユノ「うん…。エオクシ。よろしく」

エオクシ「よろしくな」


それから、再びエオクシは剣を振る。

そばで見守るマユノ。

彼女の光玉は非常に安定していた。

一定の光の強さを保ち、静止し続ける。

しばらくしてエオクシは足音を聞きとる。

ほぼ同時にマユノは近づいてくる魔波を感じる。


エオクシ「…アヅミナ」

アヅミナ「邪魔してごめんね」

マユノ「いいえ、いいんです。

 私はこれで失礼しますね」


マユノは足早に館に戻っていく。

光玉はゆっくりとその輝きを失っていく。

彼女が館の扉を閉めたとき。

その光は完全に消えた。

辺りは一気に暗くなる。


アヅミナ(完璧な魔力の制御…)

エオクシ「どうした?」


アヅミナは指先に炎を出す。

ぼんやりと2人の姿を照らす。


アヅミナ「食事の用意ができたって。

 あと、お風呂も」

エオクシ「旅館みてえだな」

アヅミナ「あの子となんの話を?」

エオクシ「ん?ああ、別に。大したことねえよ」

アヅミナ「………」

エオクシ「…オレの体を心配してたな。

 また無茶して死んだら、

 あいつらが大変な目に遭うからな。

 オレも気をつけねえとな」

アヅミナ「それがいいと思う。

 蘇生魔術は命を削る…特別な魔術だから」

エオクシ「…ああ。

 あの3人、どうも他人と思えねえんだよな。

 生き返らせてもらったからなのか…」

アヅミナ「そうだよ。そういう魔術だから」

エオクシ「今度はオレが守ってやらねえとな」

アヅミナ「勘違いしないで」

エオクシ「…なんだ?」

アヅミナ「3人はあなたを支えるため来てる。

 あなたが3人を守るのは、役割が逆」

エオクシ「ならオレは…」

アヅミナ「カタムラを守って」

エオクシ「光術三姉妹は?」

アヅミナ「あたしが援護する」

エオクシ「大丈夫かよ」

アヅミナ「大丈夫」

エオクシ「無理するんじゃねえぞ」

アヅミナ「分かってる。無理はできない。

 状況によっては助けられないかもしれない。

 それでも、あなたの仕事はカタムラの護衛。

 このことは忘れないで」

エオクシ「…ああ」

アヅミナ「この任務…

 カタムラの死は即失敗を意味する」

エオクシ「あいつの秘術だろ?」

アヅミナ「ええ。

 起動装置の停止には彼の秘術が必要。

 だけど、死んだら、もうできない。

 起動装置を完全に破壊することは…」

エオクシ「…分かった。

 なんとしてもあいつは守る!助ける!

 どうだ、これでいいだろ?」

アヅミナ「うん。いいよ。

 あの3人もかなりの使い手だから大丈夫。

 魔獣の数匹は難なく倒してくれるでしょ。

 それでも…もしものときは、

 私があの子たちを助ける」

エオクシ「うまくやってけるか?」

アヅミナ「…頑張る」

エオクシ「そっか」


エオクシはふと巨方庭に目を向ける。

真っ暗でほとんど何も見えない。

星の光だけがはっきりと見えた。

アヅミナの方を向いて言う。


エオクシ「戻るか。館に」

アヅミナ「うん」


並んで歩くエオクシとアヅミナ。

アヅミナがボソリと言う。


アヅミナ「この任務に失敗したら殺されるのかな」

エオクシ「…は?」

アヅミナ「あたしたち、シノ姫に」

エオクシ「おい、

 縁起でもねえこと言うんじゃねえよ!」

アヅミナ「…ごめん」


エオクシはため息をついて言う。


エオクシ「…殺されるかどうかは知らねえが、

 さすがに今度は済まねえだろうなぁ…。

 『好きなとき、好きなようにこき使う』

 程度の話じゃ…」

アヅミナ「そうだね」



◇◇ ステータス ◇◇

◇ エオクシ ◇

◇ レベル 37

◇ HP   3487/3692

◇ 攻撃

 49★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★

◇ 防御

 44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★

◇ 素早さ

  46★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★

◇ 魔力

◇ 装備  壮刃剣、戦究防護衣

◇ 技   天裂剣、地破剣


◇ アヅミナ ◇

◇ レベル 35

◇ HP   404/404

◇ 攻撃   1★

◇ 防御   2★★

◇ 素早さ

 40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★

◇ 装備  大法力の魔杖、漆黒の術衣

◇ 魔術

  火弾、火矢、火球、火砲、火羅、火嵐、王火

  氷弾、氷矢、氷球、氷刃、氷柱、氷舞、王氷

  暗球、精神操作、五感鈍化、魔病感染、

  酷死魔術


◇ マユノ ◇

◇ レベル 35

◇ HP   1176/1176

◇ 攻撃   4★★★★

◇ 防御

18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  蒼天想の魔杖、来陽の魔道衣

◇ 魔術  氷弾、氷柱、氷裂、氷波、王氷

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ カエノ ◇

◇ レベル 34

◇ HP   1084/1084

◇ 攻撃   3★★★

◇ 防御

20★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★

◇ 魔力

 42★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★

◇ 装備  超放気の魔杖、連星の魔道衣

◇ 魔術  雷弾、雷砲、雷破、雷花、王雷

      氷弾、氷矢

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ サヤノ ◇

◇ レベル 34

◇ HP   953/953

◇ 攻撃   1★

◇ 防御  11★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 37★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  清化印の魔杖、光心の魔道衣

◇ 魔術  岩弾、岩砲

      雷弾、雷槍

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ カタムラ ◇

◇ レベル 16

◇ HP   766/766

◇ 攻撃   7★★★★★★★

◇ 防御   9★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 17★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  14★★★★★★★★★★★★★★

◇ 秘力   3★★★

◇ 装備  魔鉱石の短剣、秘術道具(空球)、

     探検用強化研究衣

◇ 魔術  光玉、治療魔術

◇ 秘術  青珠


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療薬 100、魔力回復薬 100

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