第151話 役割
◆ 巨方庭 管理者の館 ◆
エオクシたちは話を聞く。
ソネヤ「最後、彼女は食べることをやめました」
エオクシ&アヅミナ&カタムラ「………」
ソネヤ「突然のことでした。
ある日を境に果実の一切れも
口にすることをやめてしまったのです」
マユノ&カエノ&サヤノ「………」
ソネヤ「布団で目を見開いたまま横になり、
最後は眠るように目を閉じました。
ハイラと私は遺体を焼き場へ運びました。
ハイラが彼女の衣服を脱がせたときです。
なあ、ハイラ…」
ハイラ「体に不思議なアザがいくつもあった」
ソネヤ「私もその1つを直接見ました」
マユノ「どのようなアザですか?」
ハイラ「光を放っていたんだ。
青白く、ぼんやりとね」
マユノ「光る…アザですか」
ハイラ「とにかく気味が悪かった」
ソネヤ「魔術に起因するものでない。
そのことは私たちも容易に分かりました」
ハイラ「私たち一応魔術を使えるからね」
ソネヤ「あなた方と比べれば
非常に貧弱なものですが…」
マユノ「そんなことありません。
素敵な魔力を感じます。ね」
カエノ&サヤノ「うん」
カタムラはあごに手を当てて考え込む。
カタムラ(光るアザ…。秘術か?
秘術を使う者が巨方庭の中に…?)
エオクシは卓上の物を指差す。
エオクシ「あれはなんなんだ?牙と毛と…」
ソネヤ「彼女が持っていたものです。
彼女をこの館で保護したとき、
背負っていた小さな荷物入れ。
その中に入っていたのです。
巨方庭で採取したのだと思います。
牙と毛と葉と木の実…。
一体これらはなんなのか。
彼女の死後、鑑定を依頼しました。
個人的な伝手があったもので。
依頼したのは学術院の元研究員。
現役を退いて故郷で暮らしていました。
ですが、彼の知識や手腕は本物です。
鑑定してもらったところ、
驚くべきことが分かったのです」
アヅミナ「どんな結果だったの?」
ソネヤ「牙と毛…これらは、
古代獣コダイオオカミのものでした。
大昔に絶滅したとされています。
過去に得られた標本と比較したところ、
間違いないとのことでした。
鑑定してくれた方からは、
譲ってくれと頼み込まれました。
どこで手に入れたのかも聞かれました。
ですが、それだけは答えられません。
牙と毛をいくらか分けて譲る。
だから、それで勘弁してくれ。
と言って私はその場を去りました」
カタムラ「葉と木の実はフルモクジュですね?」
ソネヤ「ご名答。
遥か太古の時代に生えていた木。
これもまた絶滅種とされています」
カタムラ「絶滅したはずの獣と樹木。
なぜか巨方庭では今も生きている。
そういうことでしょうか」
ソネヤ「はい。そのようです。
彼女はそれらと巨方庭で出会った。
そして、標本として採取した。
フルモクジュはともかく、
危険なのはコダイオオカミです。
激しい攻撃性を持ち、
群れで行動すると聞きます。
魔獣化している可能性もあります。
なぜならば、魔力の残滓が、
今もこの牙と毛に…。
荒々しい魔術を使うことでしょう。
ですが、あなた方ならば…」
そこで話をやめるソネヤ。
マユノ「…大丈夫だから」
マユノはサヤノの手を握っていた。
サヤノの目からポロポロと涙が落ちる。
サヤノ「怖い…」
小さな声が彼女の口からこぼれる。
アヅミナ(温室育ち…。
持ってる魔力は立派だけど…
実戦経験はほとんどないみたい)
応接間は不安な空気に包まれる。
声を上げたのはエオクシ。
エオクシ「勝手に怖がってろよ」
マユノ「…!?」
エオクシ「おびえたいやつはおびえてろ。
任務を放り出して逃げてえなら逃げろ。
オレは無理に引きとめたりはしねえ。
だが、これだけははっきり言っとくぜ!
オレは誰も死なせねえ。傷つけさせねえ。
何が出てこようが、ぶっ倒してやる!
この壮刃剣でな!!」
壮刃剣を高く掲げる。
マユノ「エオクシ様…」
ソネヤ(頼もしい人だ)
ハイラ(言ってくれるじゃないか。
大前隊にこんな活きのいい男がいるんだね)
そして、エオクシはサヤノに笑いかける。
エオクシ「だからもうおびえんな。な!」
サヤノ「はい…ありがとうございます」
応接間から出ていくエオクシ。
アヅミナ「どこ行くの?」
エオクシ「剣を振ってくる!」
アヅミナ「外はもう真っ暗だよ」
エオクシに駆け寄るマユノ。
マユノ「お供します」
エオクシ「暗くてもオレは怖くねえよ。
ここにいな」
マユノ「いいえ、お供させてください」
エオクシ「仕方ねえな。行くぜ!」
出ていくエオクシとマユノ。
去り際にマユノはカエノに言う。
マユノ「サヤノのことお願い」
カエノ「うん」
サヤノ「心配ないよ」
エオクシとマユノは外に出た。
空にはいくつもの星。
マユノは光玉を作り出す。
エオクシの頭上に飛ばした。
エオクシ「助かる」
マユノ「どうぞ、お使いください」
エオクシは剣を構える。
1回、2回と振っていく。
マユノはその姿をじっと見つめる。
100回振り終えたとき。
マユノはエオクシに話しかける。
マユノ「エオクシ様」
マユノを見てエオクシは返事をする。
エオクシ「なんだ?」
マユノ「お体に不具合はございませんか?」
1回、大きく縦に剣を振る。
エオクシ「ああ、大丈夫だ」
マユノ「それはよかった。
すっかりお元気になられて、
とても安心しております。
お体に何かあれば、
いつでもお申しつけください」
エオクシ「大丈夫だって!」
地面を蹴って、剣を下から振り上げる。
天裂剣を空に放った。
着地してすぐにマユノに笑いかけて言う。
エオクシ「ほらな!」
マユノ「素晴らしい…!素晴らしい技です!」
エオクシはマユノの方へ歩いていく。
エオクシ「そんなかしこまんなくていいぜ。
普通に話せよ。様もいらねえ。
普通に呼べ。なんかムズムズするからよ」
マユノ「…エオクシ」
エオクシ「おう。明日は頼むぜ。マユノ」
マユノ「うん…。エオクシ。よろしく」
エオクシ「よろしくな」
それから、再びエオクシは剣を振る。
そばで見守るマユノ。
彼女の光玉は非常に安定していた。
一定の光の強さを保ち、静止し続ける。
しばらくしてエオクシは足音を聞きとる。
ほぼ同時にマユノは近づいてくる魔波を感じる。
エオクシ「…アヅミナ」
アヅミナ「邪魔してごめんね」
マユノ「いいえ、いいんです。
私はこれで失礼しますね」
マユノは足早に館に戻っていく。
光玉はゆっくりとその輝きを失っていく。
彼女が館の扉を閉めたとき。
その光は完全に消えた。
辺りは一気に暗くなる。
アヅミナ(完璧な魔力の制御…)
エオクシ「どうした?」
アヅミナは指先に炎を出す。
ぼんやりと2人の姿を照らす。
アヅミナ「食事の用意ができたって。
あと、お風呂も」
エオクシ「旅館みてえだな」
アヅミナ「あの子となんの話を?」
エオクシ「ん?ああ、別に。大したことねえよ」
アヅミナ「………」
エオクシ「…オレの体を心配してたな。
また無茶して死んだら、
あいつらが大変な目に遭うからな。
オレも気をつけねえとな」
アヅミナ「それがいいと思う。
蘇生魔術は命を削る…特別な魔術だから」
エオクシ「…ああ。
あの3人、どうも他人と思えねえんだよな。
生き返らせてもらったからなのか…」
アヅミナ「そうだよ。そういう魔術だから」
エオクシ「今度はオレが守ってやらねえとな」
アヅミナ「勘違いしないで」
エオクシ「…なんだ?」
アヅミナ「3人はあなたを支えるため来てる。
あなたが3人を守るのは、役割が逆」
エオクシ「ならオレは…」
アヅミナ「カタムラを守って」
エオクシ「光術三姉妹は?」
アヅミナ「あたしが援護する」
エオクシ「大丈夫かよ」
アヅミナ「大丈夫」
エオクシ「無理するんじゃねえぞ」
アヅミナ「分かってる。無理はできない。
状況によっては助けられないかもしれない。
それでも、あなたの仕事はカタムラの護衛。
このことは忘れないで」
エオクシ「…ああ」
アヅミナ「この任務…
カタムラの死は即失敗を意味する」
エオクシ「あいつの秘術だろ?」
アヅミナ「ええ。
起動装置の停止には彼の秘術が必要。
だけど、死んだら、もうできない。
起動装置を完全に破壊することは…」
エオクシ「…分かった。
なんとしてもあいつは守る!助ける!
どうだ、これでいいだろ?」
アヅミナ「うん。いいよ。
あの3人もかなりの使い手だから大丈夫。
魔獣の数匹は難なく倒してくれるでしょ。
それでも…もしものときは、
私があの子たちを助ける」
エオクシ「うまくやってけるか?」
アヅミナ「…頑張る」
エオクシ「そっか」
エオクシはふと巨方庭に目を向ける。
真っ暗でほとんど何も見えない。
星の光だけがはっきりと見えた。
アヅミナの方を向いて言う。
エオクシ「戻るか。館に」
アヅミナ「うん」
並んで歩くエオクシとアヅミナ。
アヅミナがボソリと言う。
アヅミナ「この任務に失敗したら殺されるのかな」
エオクシ「…は?」
アヅミナ「あたしたち、シノ姫に」
エオクシ「おい、
縁起でもねえこと言うんじゃねえよ!」
アヅミナ「…ごめん」
エオクシはため息をついて言う。
エオクシ「…殺されるかどうかは知らねえが、
さすがに今度は済まねえだろうなぁ…。
『好きなとき、好きなようにこき使う』
程度の話じゃ…」
アヅミナ「そうだね」
◇◇ ステータス ◇◇
◇ エオクシ ◇
◇ レベル 37
◇ HP 3487/3692
◇ 攻撃
49★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 防御
44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★
◇ 素早さ
46★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★
◇ 魔力
◇ 装備 壮刃剣、戦究防護衣
◇ 技 天裂剣、地破剣
◇ アヅミナ ◇
◇ レベル 35
◇ HP 404/404
◇ 攻撃 1★
◇ 防御 2★★
◇ 素早さ
40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 装備 大法力の魔杖、漆黒の術衣
◇ 魔術
火弾、火矢、火球、火砲、火羅、火嵐、王火
氷弾、氷矢、氷球、氷刃、氷柱、氷舞、王氷
暗球、精神操作、五感鈍化、魔病感染、
酷死魔術
◇ マユノ ◇
◇ レベル 35
◇ HP 1176/1176
◇ 攻撃 4★★★★
◇ 防御
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 蒼天想の魔杖、来陽の魔道衣
◇ 魔術 氷弾、氷柱、氷裂、氷波、王氷
光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術
◇ カエノ ◇
◇ レベル 34
◇ HP 1084/1084
◇ 攻撃 3★★★
◇ 防御
20★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 魔力
42★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★
◇ 装備 超放気の魔杖、連星の魔道衣
◇ 魔術 雷弾、雷砲、雷破、雷花、王雷
氷弾、氷矢
光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術
◇ サヤノ ◇
◇ レベル 34
◇ HP 953/953
◇ 攻撃 1★
◇ 防御 11★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
37★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 清化印の魔杖、光心の魔道衣
◇ 魔術 岩弾、岩砲
雷弾、雷槍
光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術
◇ カタムラ ◇
◇ レベル 16
◇ HP 766/766
◇ 攻撃 7★★★★★★★
◇ 防御 9★★★★★★★★★
◇ 素早さ
17★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 秘力 3★★★
◇ 装備 魔鉱石の短剣、秘術道具(空球)、
探検用強化研究衣
◇ 魔術 光玉、治療魔術
◇ 秘術 青珠
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療薬 100、魔力回復薬 100