第146話 立派
◆ 猟師の基地 ◆
ゲンダは話した。
問題の著書「魔波と魔獣」について。
ゲンダ「魔波のせいで魔獣が増えている。
この本に書いてあるのはそういう話だ」
アルジ&エミカ「………」
ゲンダは本を持ち上げる。
表紙をアルジとエミカに見せる。
上部には小さな字で表題。
下部にはさらに小さな字で筆者の名前。
真ん中には奇怪な模様。
ゲンダ「タキマイ派が台頭してから
魔術を使う猟師が急激に増えた。
狩場には多くの魔波が飛び交うようになった。
その魔波を浴びて獣が魔獣に化けている。
この本の筆者はそう主張している」
ゲンダは爪でコツコツ表紙を叩く。
ゲンダ「この本にはいくつも書いてある。
過去に大陸各地で起きた魔獣発生のことが。
件数だけじゃない。
どこにどんな魔獣が現れたのか。
それらはどうやって倒されたのか。
倒されるとき魔術は使われたのか。
その後、近くで新たに魔獣は現れたのか。
そういったことが詳しく書かれている」
キャモ「本当よく集めたよね。
それだけの情報を」
ゲンダは本を開いて見せる。
小さな文字で文章がびっしり。
アルジ(げ…!あんなの読みたくないぜ)
ゲンダ「もちろん昔もあった」
パタンと本を閉じる。
ゲンダ「魔獣の発生事件は昔からあった。
昔の魔獣の方が強かったとも言われる。
今回現れた古代獣も遥か昔に実在した。
そして、そのどれもが並外れた強さだ。
だが、個々の魔獣の強さはともかく
発生件数に限って目を向ければ、
このところ明らかに増えてきた。
猟師の間で魔術が広まるに連れて。
狩りをするとき魔術を使えば使うほど
魔獣は増えていくんじゃないか。
この本はそんな問いを投げかけている」
アルジ&エミカ「………」
エミカの光玉は基地内を照らし続ける。
外はすっかり暗い。
ゴタンジが力強く声を上げる。
ゴタンジ「それでもやるしかない」
ゲンダ&キャモ&ルノ&カナミ&コイナミ
「………」
ゴタンジ「オレたちは、オレたちのやり方で。
そうだろ?」
ゲンダ「そうだな」
アルジ&エミカ「………」
ゲンダは本を荷物入れにしまった。
ゲンダ「…やるしかない。確かにそうだ。
魔雷矢と魔氷矢で動きを封じ込める。
重練剣で一気に決める。
この完成された作戦。
もう変えることなんてできない。
そうだ。これは完璧な作戦だ。
どんな魔獣だって倒せる。
絶対に負けない。剛獣級だろうと!
覇獣級だろうと!!オレたちこそが!
大陸猟進会こそが!狩猟界の覇者だ!!」
キャモ「はいはい」
ルノ「カッコイイよ。ゲンダ」
カナミ「いつになくね」
ゲンダ「ほめたって何も出てこねえぞ」
アルジ&エミカ「………」
ゲンダ「だが、
あの本を信じるやつらの気持ちも分かる」
ゴタンジ「まあな。実際よくできた本だ」
エミカ「書かれていることは本当なんですか?」
キャモ「それは調べた」
エミカ「どうやって…?」
ルノ「政府の役人が手分けして調べた」
キャモ「あれで結構騒いだみたいね。
審理院とか学術院とか」
カナミ「表沙汰にはなってないけど」
アルジ「わざわざ政府が確かめたのか」
ゲンダ「それだけ危機感があった。
世間の反響はあまりに大きかった。
大陸猟進会も魔術を使う。
大前隊も魔術を使う。
魔獣を倒す者たちが実は魔獣を生んでいた。
そう思われたくない。
熱心な活動家も現れた。
魔術の使用を嫌う者たちだ。
今でこそ彼らの活動は落ち着いている。
だが、過去には魔獣駆除の妨害も起きた。
ある猟師が魔術で獣を仕留めたところ、
活動家たちに襲われて命を奪われた。
そういうこともあって政府は人を集め、
文献を漁り、懸命に調べた。
本は正しいのか、誤っているのか。
誤りだと分かったら、正式に発表したい。
世間に向けて、大々的に。
そして、民を安心させたい。
魔術は安全だと。
大前隊は間違っていないと。
大陸猟進会も間違っていないと。
そんな狙いがあった」
カナミ「かなり大変だったみたいだけど」
キャモ「大陸中の書物やら言い伝えを集めて
本の記述と照らし合わせたらしいから」
エミカ「結果はどうだったんですか?」
ルノ「間違いは見つからなかった」
エミカ「本は正しいってこと…?」
ゲンダ「…いや」
エミカ「違うのか?」
ゴタンジ「ああ」
エミカ「それならどういう…」
ゲンダ「魔術の普及と魔獣の発生…
因果関係は認められない。
それが公式見解」
アルジ「間違ってなかったんじゃないのか。
本の中身を調べた結果は」
ゲンダ「ああ。魔獣発生事件は増えている。
このことは間違いない。政府も認めている。
では、なぜ増えているのか。
公式見解の理由は2つ。
1つは、魔獣が見つかりやすくなったから。
もう1つは、魔獣が活発になる時代だから」
カナミはアルジとエミカに言う。
カナミ「…本当?って思ったでしょ」
アルジ&エミカ「………」
コイナミ「実験結果もあります」
ゲンダ「実験って…あれのことか」
アルジ「…あれのこと?どんな実験なんだ?」
コイナミ「学術院と魔術院が行った実験。
たくさんの獣を集めて魔波を浴びせた。
その結果、強い魔波を長時間浴びせても、
魔獣化した獣はいなかった。1頭も。
だから、魔術で魔獣退治をしても問題ない。
実験で証明されている」
アルジ「なんだ。なら大丈夫じゃないか」
ゲンダは笑う。
ゲンダ「たくさんの獣…
強い魔波…長時間浴びせる…」
アルジ「…?」
ゲンダ「加減しようと思えばいくらでもできる」
キャモ「1頭も魔獣化しないように…もね」
コイナミ「それを言われたらそうですけど」
アルジ「………」
ゲンダ「あの実験も…
まるっきりでたらめってわけじゃない。
実際の魔獣討伐時の状況を再現するため
それなりに計算はしたみたいだ」
エミカ「私は…実験結果を信じたい」
キャモ「魔術は悪くない」
エミカ「………」
キャモ「そう思いたい」
エミカ「………」
キャモ「そうだろ」
エミカ「うん」
キャモ「立派な魔術師だ」
エミカ「………」
アルジ「たまたま魔獣が増えてる
…ってだけの話じゃないのか」
ルノ「たまたま…」
アルジ「………」
ツノ「どこまでそんな話が通じるか」
カナミ「1回全部読んでみな。あの本を」
アルジ「………」
ゴタンジ「…結局よく分からんのさ。
本当は何が正しいのかなんてことは。
大事なのは今何が起きているかだろ?」
ゲンダ「そうだ。強い古代獣が現れた。
オレたちはそいつらを倒す。今はそれだけ」
キャモ「まぁね」
エミカが外に目をやる。
アルジ「どうした?」
エミカ「…来る。お客さんのようだ」
アルジとエミカは立ち上がる。
猟師たちも。
ルノ「…魔獣か」
カナミ(確かに来てる。
言われてみると分かる。
でも、私は自分で気づけたわけじゃない。
あの子に言われたから。しかも、あの子は…
あの光玉を出しながらそれをやった。
とんでもない戦力が加わったみたいだな…)
外からうなり声が聞こえてくる。
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 26
◇ HP 2277/3005
◇ 攻撃
38★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 素早さ
32★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 6★★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、雅繊維戦衣
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り
◇ 魔術 雷動
◇ エミカ ◇
◇ レベル 21
◇ HP 1452/1783
◇ 攻撃 10★★★★★★★★★★
◇ 防御
27★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 素早さ
22★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★
◇ 魔力
43★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★
◇ 装備 天界石の杖、濃色魔術衣
◇ 魔術 火球、火砲、火樹、火海、王火
氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術
◇ ゲンダ ◇
◇ レベル 26
◇ HP 2147/2147
◇ 攻撃
29★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 防御
19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 8★★★★★★★★
◇ 装備 剛鉄剣、猟進弓、強化革の防護衣
◇ 技 破獣撃、魔氷矢
◇ 魔術 氷弾
◇ キャモ ◇
◇ レベル 25
◇ HP 1162/1162
◇ 攻撃
17★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 魔力
17★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 猟進弓、剛鉄戦斧、強化革の防護衣
◇ 技 魔氷矢
◇ 魔術 氷弾、氷球
光玉、光帯、治療魔術
◇ ルノ ◇
◇ レベル 24
◇ HP 966/966
◇ 攻撃 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御 16★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
29★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 魔力
17★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 猟進弓、青銀の短剣、強化革の防護衣
◇ 技 魔氷矢
◇ 魔術 火弾、火球
氷弾、氷球
◇ カナミ ◇
◇ レベル 24
◇ HP 1047/1047
◇ 攻撃
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
22★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★
◇ 魔力
19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 猟進弓、強猟槍、強化革の防護衣
◇ 技 魔雷矢
◇ 魔術 雷弾、雷砲
◇ ゴタンジ ◇
◇ レベル 26
◇ HP 2555/2555
◇ 攻撃
35★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御 12★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 11★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
◇ 装備 重練剣、強化革の防護衣
◇ 技 斬破、落陽
◇ 魔術
◇ コイナミ ◇
◇ レベル 17
◇ HP 731/731
◇ 攻撃 11★★★★★★★★★★★
◇ 防御
17★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 13★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 猟進弓、猟師の手斧、強化革の防護衣
◇ 技 魔雷矢
◇ 魔術 雷弾
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 15