第145話 管理
◆ 巨方庭 管理者の館 ◆
カルスは驚異的な速さで飛んだ。
予定よりも早く目的地に到着する。
地面に降り立つ6人。
サヤノがカルスをしまう。
サヤノ「案外早く着いたね」
カエノ「思ったより近かったね」
マユノ「2人ともお疲れ様。
ここからも気を抜かずにいきましょう」
カエノ&サヤノ「はーい」
少し離れたところから彼女たちを見るアヅミナ。
アヅミナ(すごい速さだった。
あたしが魔力を使うこともなかった。
さすがは未来の院長候補たち…か)
歩き出す6人。
向かう先には大きな館。
館の向こうには高い木々が並んでいる。
それはまるで巨大な壁のように見える。
巨方庭はさらにその向こう側にある。
エオクシ「すっかり暗くなっちまったな」
光玉がエオクシの頭上に放たれる。
エオクシ「おっ」
マユノ「足元、お気をつけください」
エオクシ「ありがとな」
マユノ「いいえ、いいんです。エオクシ様」
まずは現地の管理者に会うこと。
それが、出発前シノ姫が出した指示。
そのとおりに彼らは動く。
カタムラが館の扉を叩く。
男の管理者「はい」
扉の向こうから力のない返事。
重い扉がゆっくりと開かれる。
青白い顔をした細身の男が現れた。
男の管理者「ああ、あんたらが…」
カタムラ「どうも。カタムラと申します。
考古学者をやっております」
男の管理者「聞いてるよ。あんたたちのことは。
なんたって都から手紙が届いたからね…」
奥の方から女の声。
女の管理者「合離蝶の便りなんて6年ぶり。
どんな大変なことがあったのかって思ったよ」
現れたのは恰幅のいい女。
玄関前で2人は自己紹介した。
男の管理者「巨方庭の管理者ソネヤと申します」
女の管理者「同じく管理者のハイラと申します」
2人は館で暮らしながら仕事に当たっていた。
ソネヤ「さあ、どうぞ。上がってください」
6人が通されたのは広い客間。
真ん中には大きな卓。
その周りには簡素な作りの小さな椅子。
6人分用意され、整然と並んでいる。
ハイラ「さあ、どうぞ座ってください」
6人は腰掛ける。
管理者との対話はささやかな話題で始まる。
ソネヤ「うちの庭のサジカナの花が咲きました。
明日、よかったらご覧になってください」
マユノ「はい、見せていただきます」
サヤノ「素敵なお花ですよね」
ソネヤ「ええ。見ていて飽きません」
カエノ「育てるのが難しいんですよね」
笑顔で話す三姉妹。
ソネヤ「ええ。繊細な花ですから。
土ごしらえ、植えつけ、肥料、虫の駆除。
どれも細かい気配りが必要です。
美しく咲いたときは喜びもひとしおです」
マユノ「見るのが楽しみです」
カタムラがぴくりと眉を上げる。
カタムラ「庭というのは…」
ソネヤ「ええ」
カタムラ「1つ確認を…」
ソネヤ「はい」
カタムラ「あなたはさっき言いました。
庭の花が咲いたと」
ソネヤ「ええ」
カタムラ「その庭というのは…?」
ソネヤ「はい」
カタムラ「あなた方が管理を任されている庭…
ということでよろしいですか?」
ソネヤ「趣味でやってる小さな庭です。
館のすぐ近くに…」
カタムラ「そうですか。
巨方庭のことかと思ったものですから」
ソネヤ「まさか」
ハイラが口を開く。
ハイラ「立ち入ってはいけないことになってる」
カタムラ「…そうですよね」
ソネヤ「私たちは管理者という役職ですが、
巨方庭に入ったことは1度もありません」
ハイラ「ここへ来てから長いこと経つけど、
管理と呼べることはほとんど何もしてないね」
ソネヤ「そうだな」
カタムラ「管理者だが、管理をしていない。
これは少し…いや、かなりおかしなお話だ」
カタムラは低い声で言う。
ソネヤ「怠けているわけではないんですよ。
定められた務めはきちんと果たしています。
ただ、その内容が胸を張って管理と呼べるのか
自分でも自信がないということです」
ハイラ「私たちは規則を守っているだけ。
巨方庭には決して入らないこと。
就業規則にしっかりそう書かれています。
政府が作った規則ですよ。
それを守っているだけです」
カタムラ「そうですか。
では…一体何をしているのですか?
あなた方は。管理者として。
どんな仕事をしているのですか?」
ソネヤ「主に観察と忠告です」
カタムラ「観察と忠告。
観察と忠告とはなんでしょう。
意味はそれとなく分かる。
けど、具体的になんなのか。
こういう言葉には私、用心しているんです。
見逃しませんよ。
なんとなくで、ああそうですか、
なんてことにはなりません。
さあ、教えてください。
具体的に話していただきましょう。
何をしているのか。
えっと、まず、観察から行きましょう。
観察とはなんですか?
一体何をするんですか?」
ソネヤ「朝と夕方、見て回ります」
カタムラ「見て回る?どうやって?
巨方庭を見るんですよね?」
ソネヤ「ええ」
カタムラ「もちろん中へ入らずに、ですよね?」
ソネヤ「はい」
カタムラ「どうやって?」
ソネヤ「近くを歩いて観察します。
すぐ近くに整備された歩道がありますから。
そこを歩いて、巨方庭の様子を見るのです」
カタムラ「見えるんですか?巨方庭の中が。
そんなやり方で様子が分かるんですか?」
ソネヤ「もちろん全部は見えません。
ですが、外側の様子は分かります。
ぐるっと…」
カタムラ「ぐるっと?
ぐるっとって、なんですか?
具体的にお願いします」
ソネヤ「ええと…」
カタムラ「さあ、説明を!」
ソネヤ「はい…」
せきたてるカタムラ。
ソネヤはまごつく。
不安そうな光術三姉妹。
エオクシとアヅミナは静かに見ている。
ソネヤ「ぐるっと、というのは…」
カタムラ「はい。どういうことですか?」
ハイラ「ちょっとあんた」
ハイラはカタムラをにらんでいる。
カタムラ「………」
ハイラ「なんなんだい?
あんた。さっきから。ずけずけと。
失礼じゃないか?
あんたは礼儀ってもんを知らないのか?
偉い学者さんなのか、なんなのか
知らないけどさ!」
カタムラ「………」
ソネヤは腕を伸ばす。
ハイラの肩にそっと触れる。
ソネヤ「いいんだ」
ハイラ「あんた」
ソネヤの顔はとても穏やか。
ソネヤ「好奇心ゆえ…なんだろう」
ハイラ「………」
ソネヤ「政府の関係者でも
こうして話すことはまずない。
巨方庭管理は秘密任務ということで、
面会などはお断りしているからね。
今日は、彼にしてみれば特別な機会。
ここはどうだ。大目に見ようじゃないか」
ハイラ「あんた…」
ソネヤはおもむろに立ち上がる。
ゆったりとした足取りで客間から出ていく。
カタムラは小声で詫びる。
カタムラ「…失礼しました」
ハイラ「外側全部を見て回るんだ」
カタムラ「外側全部…」
ハイラ「ぐるっとっていうのはね、
巨方庭の周り、その全部を見て回るってこと」
カタムラ「そうですか」
ハイラ「朝の散歩で半周して引き返す。
夕方の散歩でまた半周して引き返す。
朝は館を出発して、時計回りに。
夕方は館を出発して、反時計回りに。
巨方庭の外側を歩く。ソネヤと2人でね。
それで、1日で外側全部を見て回る。
ぐるっとというのは、そういうことさ」
カタムラ「よく分かりました」
ハイラ「………」
それから、しばらく誰も話さない。
客間は静まり返る。
ソネヤは出ていったきり戻ってこない。
次に質問したのはマユノ。
マユノ「忠告というのは、
どのようなお仕事なのでしょうか?」
ハイラ「ああ、それはね…」
そのとき、ソネヤが戻ってきた。
小さな木箱を1つ脇に抱えていた。
大きな卓の上にそっと置く。
ソネヤ「侵入者に忠告する仕事です」
マユノ「侵入者…」
椅子に座るソネヤ。
卓上の木箱を見つめるアヅミナ。
アヅミナ(あの箱…微かにだけど、
魔力を感じる。あの中に一体何が…?)
◇◇ ステータス ◇◇
◇ エオクシ ◇
◇ レベル 37
◇ HP 3487/3692
◇ 攻撃
49★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 防御
44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★
◇ 素早さ
46★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★
◇ 魔力
◇ 装備 壮刃剣、戦究防護衣
◇ 技 天裂剣、地破剣
◇ アヅミナ ◇
◇ レベル 35
◇ HP 404/404
◇ 攻撃 1★
◇ 防御 2★★
◇ 素早さ
40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 装備 大法力の魔杖、漆黒の術衣
◇ 魔術
火弾、火矢、火球、火砲、火羅、火嵐、王火
氷弾、氷矢、氷球、氷刃、氷柱、氷舞、王氷
暗球、精神操作、五感鈍化、魔病感染、
酷死魔術
◇ マユノ ◇
◇ レベル 35
◇ HP 1176/1176
◇ 攻撃 4★★★★
◇ 防御
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 蒼天想の魔杖、来陽の魔道衣
◇ 魔術 氷弾、氷柱、氷裂、氷波、王氷
光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術
◇ カエノ ◇
◇ レベル 34
◇ HP 1084/1084
◇ 攻撃 3★★★
◇ 防御
20★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 魔力
42★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★
◇ 装備 超放気の魔杖、連星の魔道衣
◇ 魔術 雷弾、雷砲、雷破、雷花、王雷
氷弾、氷矢
光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術
◇ サヤノ ◇
◇ レベル 34
◇ HP 953/953
◇ 攻撃 1★
◇ 防御 11★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
37★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 清化印の魔杖、光心の魔道衣
◇ 魔術 岩弾、岩砲
雷弾、雷槍
光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術
◇ カタムラ ◇
◇ レベル 16
◇ HP 766/766
◇ 攻撃 7★★★★★★★
◇ 防御 9★★★★★★★★★
◇ 素早さ
17★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 秘力 3★★★
◇ 装備 魔鉱石の短剣、秘術道具(空球)、
探検用強化研究衣
◇ 魔術 光玉、治療魔術
◇ 秘術 青珠
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療薬 100、魔力回復薬 100