第142話 正解
カタムラは語る。
カタムラ「巨方庭…。
かつてそこには古代王国の大都市があった
…と言われています。
そして、記録で確認できる限りでは…
最後に人がそこに立ち入ったのは、
6年前のことです」
目を閉じ、過去に思いを巡らせるカタムラ。
しばらくして、ゆっくりと目を開ける。
彼の意識が現代に舞い戻る。
カタムラ「ええ、そうです。6年前。
それ以来、誰も足を踏み入れていないのです。
その地に。巨方庭に。
一応、言っておきますと…
候補として考えてはいました。巨方庭を。
ここに起動装置があるかもしれないと。
星の秘宝を捧げる祭壇はここにあるかもと。
ええ、頭の片隅にはあったのです。
候補として。確かに。
しかし、虚構街へ行った。虚構街を選んだ。
それは誤りだった。
その結果、無駄に労力を費やした。
深く、深く、お詫びします。
エオクシさん、アヅミナさん」
エオクシ「んなこたもういい」
マユノ&カエノ&サヤノ「………」
カタムラ「…そうですか。はい、そうですか。
さて…話を戻しましょう。巨方庭について。
候補として考えていたのに、
なぜそこにしなかったのか。
私が選ばなかったのは、なぜでしょう?」
彼は、光術三姉妹に問いかける。
彼女たちは顔を見合わせ、考える。
マユノ「なぜですか?」
カエノ「なぜでしょう…?」
サヤノ「古代王国の遺跡はほかにもあるから…
でしょうか?」
カタムラ「そうです。それもあります。
ある意味それは正解です。おめでとう」
サヤノ「ありがとうございます」
カエノ「よかったね」
サヤノ「うん」
光術三姉妹の顔に和やかな表情が戻る。
カタムラはニコリと笑い、語り出す。
現在、確認されている大規模古代遺跡について。
カタムラ「西雲郷、理城跡、縁環島、楽大園…。
古代王国の遺跡はいくつもあります。
雲の上に伸びる橋を架けたされる西雲郷。
現代建築を凌駕する精緻な造りの理城跡。
過激な軍事実験が何度も行われた縁環島。
娯楽施設が並ぶ享楽の町があった楽大園。
どこに古王の祭壇、起動装置があるのか。
その候補を絞るのは困難なことなのです。
しかし、しかしです。
なんと言っても…最大の理由…。
巨方庭を選ばなかった最大の理由。
それは、なんだと思いますか?」
その問いかけに光術三姉妹は考えて答える。
サヤノ「ほかの遺跡より小さかったから?」
カタムラ「いいえ、違います。
広さで言えば、
巨方庭は古代遺跡で最も大きな部類です」
マユノ「巨方庭はほかの遺跡よりも
調査が進んでいたからでは?」
カタムラ「いえ、それも違います。
現在最も未知の古代遺跡が巨方庭なのです」
カエノ「行くのに手間がかかるからですか?」
カタムラ「違います。
先ほど挙げた遺跡の中では、
西雲郷がここから最も遠い場所にある。
標高も高く、最も行くのが大変でしょう。
巨方庭は虚構街に次いで都の近くにあります。
遠いことには違いありませんが…・
巨方庭を選ばなかった最大の理由ではない」
カエノ「そうですか」
エオクシ&アヅミナ「………」
カタムラは沈黙する。
正解は誰からも出てこない。
カタムラ「答えを言います。単純です。
お恥ずかしい話ですが、はっきり言います」
マユノ「…なんですか?」
カタムラ「怖かったからです」
マユノ&カエノ&サヤノ「………」
カタムラ「巨方庭は怖くて仕方ないのです。
そこへ行くことは。心の底から嫌だったのです。
とてもとても恐ろしい場所ですから…」
カタムラの声は震えながら小さくなる。
そして、ついに黙り込む。
マユノ「何がそんなに怖いのですか?」
カタムラ「ええ、具体的なお話をしましょう。
まず1つ目のお話です。
かつてその地で戦争があった。
今から520年ほど前。
東西大陸大戦争という戦争です」
カエノ「それは知ってます」
マユノ「有名な合戦ですね」
サヤノ「学校でも習いますね」
カタムラ「常識…でしたかな?
当時、大陸を二分していた2大国。
その両国が激しく争い合った」
カエノ「大変な戦争…でしたよね?
直接見てはいませんが」
カタムラ「ははは…それは私も同じこと。
ですが、そうです、大変です。
それは、それは。激しい戦いになりました。
両軍一歩も退きません。
しかし、ある日のことです。
それは、突然のことでした。
戦場で何かが起きた。
魔獣の出現か。災害の発生か。
分かりません。分かっていません。
そのせいで、兵士はみんな死にました」
マユノ&カエノ&サヤノ「………」
カタムラ「ごく一部を除いて。
しかし、生き残った彼らは…」
エオクシ&アヅミナ「………」
カタムラ「混乱し、憔悴していた。
心が非常に不安定で…話すことも支離滅裂。
ある文献にはほぼ廃人だったとあります。
何が彼らをそうさせたのか。
それは今も分かっていません」
サヤノ「それは初めて知りました」
カエノ「そんな話…全然知らなかったね」
サヤノ「うん」
カタムラ「はい。それもそのはずです。
広く世に出回っている多くの歴史書。
それらにはたった1行。
『合戦では大多数の兵が死に、
悲惨な結果に終わった。』
これだけですから。
基本的にこれしか書いてありませんから。
初耳だとしても、恥でもなんでもありません」
サヤノ「よかった」
マユノ「よかったね」
カタムラ「ですが、結局のところ…
真相は謎のまま。分かっていないのです。
本当に何が起きたのか。巨方庭の中で。
ですが、おそらく…考えられるのは…
そうですね…ええ…ええ…そうですね…」
ミナヨニ「もう時間です」
ミナヨニが冷たく言い放つ。
ミナヨニ「次のお客が来てしまいます」
シノ姫「ごめんなさいね」
ミナヨニ「別にいいのです。
巨方庭は危険な場所。
なんとなくですが、伝わりました。
ね?あなたたち」
マユノ&カエノ&サヤノ「はい」
カタムラ「………」
ミナヨニ「マユノ、カエノ、サヤノ。
カルスの準備を」
マユノ&カエノ&サヤノ「はい」
足早に部屋を出ていく3人。
ミナヨニは得意顔で言う。
ミナヨニ「どう?
あの子たち…いい子でしょ…」
シノ姫「ええ…。実に素晴らしい魔力…。
これなら…旅も安心です…」
ミナヨニ「あの子たちこそが…
魔術院の…いいえ、魔術界の希望の光。
彼女たちが導いていくのです。
魔術の力で…この大陸を…
希望に満ちた未来へ…。
彼女たちが魔術院の将来を担っていくのです」
シノ姫「あなたがそう言うのなら、
そうなんでしょうね」
シノ姫はぞんざいな口調で答える。
ミナヨニの魔力が急激に高まる。
ミナヨニ「シノミワ。よく聞いて」
シノ姫「…何?」
冷たい目つきでシノ姫の顔を見る。
ミナヨニ「あの子たちに…
傷でもつけてご覧なさい…」
シノ姫「………」
ミナヨニ「そのときは…」
シノ姫「…そのときは?」
ミナヨニ「あなたを岩の棺に閉じ込めて…
死ぬまで表に出さない…」
シノ姫「あら…!怖い…」
エオクシ&アヅミナ&カタムラ「………」
やがてカルスの準備ができる。
エオクシ、アヅミナ、カタムラは魔術院を出た。
カルスは勢いよく浮上し、飛んでいく。
巨方庭に向かって。
エオクシたち6人を乗せて。
カエノ「カタムラさん」
カタムラ「…なんですか?」
カエノ「聞かせてください。
もっと巨方庭のお話を」
カタムラ「ええ…ええ…いいでしょう。
それでは…
6年前の探検隊についてお話しましょう」
カエノ「お願いします」
カタムラ「少し…長くなりますが」
カエノ「結構です。ありがとうございます。
魔真体のことは院長から聞いてました。
星の秘宝が奪われて、
大変なことになってることも…。ですが、
これから私たちがどんな場所へ行くのか、
これについては、私たち、ほとんど何も
聞かされていないものですから…」
カタムラ「うむ…そうですか」
エオクシ(…オレもだ)
アヅミナ(あたしも…)
遠く向こうの空には、夕日が輝いていた。
◇◇ ステータス ◇◇
◇ エオクシ ◇
◇ レベル 37
◇ HP 3487/3692
◇ 攻撃
49★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 防御
44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★
◇ 素早さ
46★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★
◇ 魔力
◇ 装備 壮刃剣、戦究防護衣
◇ 技 天裂剣、地破剣
◇ アヅミナ ◇
◇ レベル 35
◇ HP 404/404
◇ 攻撃 1★
◇ 防御 2★★
◇ 素早さ
40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 装備 大法力の魔杖、漆黒の術衣
◇ 魔術
火弾、火矢、火球、火砲、火羅、火嵐、王火
氷弾、氷矢、氷球、氷刃、氷柱、氷舞、王氷
暗球、精神操作、五感鈍化、魔病感染、
酷死魔術
◇ マユノ ◇
◇ レベル 35
◇ HP 1176/1176
◇ 攻撃 4★★★★
◇ 防御
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 蒼天想の魔杖、来陽の魔道衣
◇ 魔術 氷弾、氷柱、氷裂、氷波、王氷
光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術
◇ カエノ ◇
◇ レベル 34
◇ HP 1084/1084
◇ 攻撃 3★★★
◇ 防御
20★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 魔力
42★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★
◇ 装備 超放気の魔杖、連星の魔道衣
◇ 魔術 雷弾、雷砲、雷破、雷花、王雷
氷弾、氷矢
光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術
◇ サヤノ ◇
◇ レベル 34
◇ HP 953/953
◇ 攻撃 1★
◇ 防御 11★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
37★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 清化印の魔杖、光心の魔道衣
◇ 魔術 岩弾、岩砲
雷弾、雷槍
光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術
◇ カタムラ ◇
◇ レベル 16
◇ HP 766/766
◇ 攻撃 7★★★★★★★
◇ 防御 9★★★★★★★★★
◇ 素早さ
17★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 秘力 3★★★
◇ 装備 魔鉱石の短剣、秘術道具(空球)、
探検用強化研究衣
◇ 魔術 光玉、治療魔術
◇ 秘術 青珠