表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルジ往戦記  作者: roak
142/300

第142話 正解

カタムラは語る。


カタムラ「巨方庭…。

 かつてそこには古代王国の大都市があった

 …と言われています。

 そして、記録で確認できる限りでは…

 最後に人がそこに立ち入ったのは、

 6年前のことです」


目を閉じ、過去に思いを巡らせるカタムラ。

しばらくして、ゆっくりと目を開ける。

彼の意識が現代に舞い戻る。


カタムラ「ええ、そうです。6年前。

 それ以来、誰も足を踏み入れていないのです。

 その地に。巨方庭に。

 一応、言っておきますと…

 候補として考えてはいました。巨方庭を。

 ここに起動装置があるかもしれないと。

 星の秘宝を捧げる祭壇はここにあるかもと。

 ええ、頭の片隅にはあったのです。

 候補として。確かに。

 しかし、虚構街へ行った。虚構街を選んだ。

 それは誤りだった。

 その結果、無駄に労力を費やした。

 深く、深く、お詫びします。

 エオクシさん、アヅミナさん」

エオクシ「んなこたもういい」

マユノ&カエノ&サヤノ「………」

カタムラ「…そうですか。はい、そうですか。

 さて…話を戻しましょう。巨方庭について。

 候補として考えていたのに、

 なぜそこにしなかったのか。

 私が選ばなかったのは、なぜでしょう?」


彼は、光術三姉妹に問いかける。

彼女たちは顔を見合わせ、考える。


マユノ「なぜですか?」

カエノ「なぜでしょう…?」

サヤノ「古代王国の遺跡はほかにもあるから…

 でしょうか?」

カタムラ「そうです。それもあります。

 ある意味それは正解です。おめでとう」

サヤノ「ありがとうございます」

カエノ「よかったね」

サヤノ「うん」


光術三姉妹の顔に和やかな表情が戻る。

カタムラはニコリと笑い、語り出す。

現在、確認されている大規模古代遺跡について。


カタムラ「西雲郷さいうんきょう理城跡りじょうせき縁環島えんかんとう楽大園らくたいえん…。

 古代王国の遺跡はいくつもあります。

 雲の上に伸びる橋を架けたされる西雲郷。

 現代建築を凌駕する精緻な造りの理城跡。

 過激な軍事実験が何度も行われた縁環島。

 娯楽施設が並ぶ享楽の町があった楽大園。

 どこに古王の祭壇、起動装置があるのか。

 その候補を絞るのは困難なことなのです。

 しかし、しかしです。

 なんと言っても…最大の理由…。

 巨方庭を選ばなかった最大の理由。

 それは、なんだと思いますか?」


その問いかけに光術三姉妹は考えて答える。


サヤノ「ほかの遺跡より小さかったから?」

カタムラ「いいえ、違います。

 広さで言えば、

 巨方庭は古代遺跡で最も大きな部類です」

マユノ「巨方庭はほかの遺跡よりも

 調査が進んでいたからでは?」

カタムラ「いえ、それも違います。

 現在最も未知の古代遺跡が巨方庭なのです」

カエノ「行くのに手間がかかるからですか?」

カタムラ「違います。

 先ほど挙げた遺跡の中では、

 西雲郷がここから最も遠い場所にある。

 標高も高く、最も行くのが大変でしょう。

 巨方庭は虚構街に次いで都の近くにあります。

 遠いことには違いありませんが…・

 巨方庭を選ばなかった最大の理由ではない」

カエノ「そうですか」

エオクシ&アヅミナ「………」


カタムラは沈黙する。

正解は誰からも出てこない。


カタムラ「答えを言います。単純です。

 お恥ずかしい話ですが、はっきり言います」

マユノ「…なんですか?」

カタムラ「怖かったからです」

マユノ&カエノ&サヤノ「………」

カタムラ「巨方庭は怖くて仕方ないのです。

 そこへ行くことは。心の底から嫌だったのです。

 とてもとても恐ろしい場所ですから…」


カタムラの声は震えながら小さくなる。

そして、ついに黙り込む。


マユノ「何がそんなに怖いのですか?」

カタムラ「ええ、具体的なお話をしましょう。

 まず1つ目のお話です。

 かつてその地で戦争があった。

 今から520年ほど前。

 東西大陸大戦争という戦争です」

カエノ「それは知ってます」

マユノ「有名な合戦ですね」

サヤノ「学校でも習いますね」

カタムラ「常識…でしたかな?

 当時、大陸を二分していた2大国。

 その両国が激しく争い合った」

カエノ「大変な戦争…でしたよね?

 直接見てはいませんが」

カタムラ「ははは…それは私も同じこと。

 ですが、そうです、大変です。

 それは、それは。激しい戦いになりました。

 両軍一歩も退きません。

 しかし、ある日のことです。

 それは、突然のことでした。

 戦場で何かが起きた。

 魔獣の出現か。災害の発生か。

 分かりません。分かっていません。

 そのせいで、兵士はみんな死にました」

マユノ&カエノ&サヤノ「………」

カタムラ「ごく一部を除いて。

 しかし、生き残った彼らは…」

エオクシ&アヅミナ「………」

カタムラ「混乱し、憔悴していた。

 心が非常に不安定で…話すことも支離滅裂。

 ある文献にはほぼ廃人だったとあります。

 何が彼らをそうさせたのか。

 それは今も分かっていません」

サヤノ「それは初めて知りました」

カエノ「そんな話…全然知らなかったね」

サヤノ「うん」

カタムラ「はい。それもそのはずです。

 広く世に出回っている多くの歴史書。

 それらにはたった1行。

 『合戦では大多数の兵が死に、

 悲惨な結果に終わった。』

 これだけですから。

 基本的にこれしか書いてありませんから。

 初耳だとしても、恥でもなんでもありません」

サヤノ「よかった」

マユノ「よかったね」

カタムラ「ですが、結局のところ…

 真相は謎のまま。分かっていないのです。

 本当に何が起きたのか。巨方庭の中で。

 ですが、おそらく…考えられるのは…

 そうですね…ええ…ええ…そうですね…」

ミナヨニ「もう時間です」


ミナヨニが冷たく言い放つ。


ミナヨニ「次のお客が来てしまいます」

シノ姫「ごめんなさいね」

ミナヨニ「別にいいのです。

 巨方庭は危険な場所。

 なんとなくですが、伝わりました。

 ね?あなたたち」

マユノ&カエノ&サヤノ「はい」

カタムラ「………」

ミナヨニ「マユノ、カエノ、サヤノ。

 カルスの準備を」

マユノ&カエノ&サヤノ「はい」


足早に部屋を出ていく3人。

ミナヨニは得意顔で言う。


ミナヨニ「どう?

 あの子たち…いい子でしょ…」

シノ姫「ええ…。実に素晴らしい魔力…。

 これなら…旅も安心です…」

ミナヨニ「あの子たちこそが…

 魔術院の…いいえ、魔術界の希望の光。

 彼女たちが導いていくのです。

 魔術の力で…この大陸を…

 希望に満ちた未来へ…。

 彼女たちが魔術院の将来を担っていくのです」

シノ姫「あなたがそう言うのなら、

 そうなんでしょうね」


シノ姫はぞんざいな口調で答える。

ミナヨニの魔力が急激に高まる。


ミナヨニ「シノミワ。よく聞いて」

シノ姫「…何?」


冷たい目つきでシノ姫の顔を見る。


ミナヨニ「あの子たちに…

 傷でもつけてご覧なさい…」

シノ姫「………」

ミナヨニ「そのときは…」

シノ姫「…そのときは?」

ミナヨニ「あなたを岩の棺に閉じ込めて…

 死ぬまで表に出さない…」

シノ姫「あら…!怖い…」

エオクシ&アヅミナ&カタムラ「………」


やがてカルスの準備ができる。

エオクシ、アヅミナ、カタムラは魔術院を出た。

カルスは勢いよく浮上し、飛んでいく。

巨方庭に向かって。

エオクシたち6人を乗せて。


カエノ「カタムラさん」

カタムラ「…なんですか?」

カエノ「聞かせてください。

 もっと巨方庭のお話を」

カタムラ「ええ…ええ…いいでしょう。

 それでは…

 6年前の探検隊についてお話しましょう」

カエノ「お願いします」

カタムラ「少し…長くなりますが」

カエノ「結構です。ありがとうございます。

 魔真体のことは院長から聞いてました。

 星の秘宝が奪われて、

 大変なことになってることも…。ですが、

 これから私たちがどんな場所へ行くのか、

 これについては、私たち、ほとんど何も

 聞かされていないものですから…」

カタムラ「うむ…そうですか」

エオクシ(…オレもだ)

アヅミナ(あたしも…)


遠く向こうの空には、夕日が輝いていた。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ エオクシ ◇

◇ レベル 37

◇ HP   3487/3692

◇ 攻撃

 49★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★

◇ 防御

 44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★

◇ 素早さ

  46★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★

◇ 魔力

◇ 装備  壮刃剣、戦究防護衣

◇ 技   天裂剣、地破剣


◇ アヅミナ ◇

◇ レベル 35

◇ HP   404/404

◇ 攻撃   1★

◇ 防御   2★★

◇ 素早さ

 40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★

◇ 装備  大法力の魔杖、漆黒の術衣

◇ 魔術

  火弾、火矢、火球、火砲、火羅、火嵐、王火

  氷弾、氷矢、氷球、氷刃、氷柱、氷舞、王氷

  暗球、精神操作、五感鈍化、魔病感染、

  酷死魔術


◇ マユノ ◇

◇ レベル 35

◇ HP   1176/1176

◇ 攻撃   4★★★★

◇ 防御

18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  蒼天想の魔杖、来陽の魔道衣

◇ 魔術  氷弾、氷柱、氷裂、氷波、王氷

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ カエノ ◇

◇ レベル 34

◇ HP   1084/1084

◇ 攻撃   3★★★

◇ 防御

20★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★

◇ 魔力

 42★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★

◇ 装備  超放気の魔杖、連星の魔道衣

◇ 魔術  雷弾、雷砲、雷破、雷花、王雷

      氷弾、氷矢

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ サヤノ ◇

◇ レベル 34

◇ HP   953/953

◇ 攻撃   1★

◇ 防御  11★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 37★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  清化印の魔杖、光心の魔道衣

◇ 魔術  岩弾、岩砲

      雷弾、雷槍

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ カタムラ ◇

◇ レベル 16

◇ HP   766/766

◇ 攻撃   7★★★★★★★

◇ 防御   9★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 17★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  14★★★★★★★★★★★★★★

◇ 秘力   3★★★

◇ 装備  魔鉱石の短剣、秘術道具(空球)、

     探検用強化研究衣

◇ 魔術  光玉、治療魔術

◇ 秘術  青珠

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ