第141話 適任
シノ姫は目を細めて話す。
シノ姫「昨晩から取り調べが続いています。
北土の魔術研究所の所長ホジタ…。
彼の取り調べです。精神操作によって
洗いざらい話してもらっています」
隊員たち「………」
シノ姫「彼の口から新たな事実が次々と
明らかになっています。
そして…これは悪い知らせなのだけれど…
大遊説の3人…彼らはおそらく…
星の秘宝をすべて手に入れた」
隊員たち「……!」
ロクヤンは首を傾げる。
ロクヤン「イゴウセ博物館にある破壊の矛は?」
シノ姫「あれは偽物です」
ロクヤン&ヒデイシャ&オノク&ミチマサ
「!!!?」
シノ姫「本物はノイ民に奪われました。
ノイ夏の乱の混乱に乗じて…
ロクヤン「そんな…」
ロクヤンは困惑してゆらゆらと体を揺らす。
それから、彼は周りの隊員を見て気づく。
ロクヤン「ユイ…!スゲチ…!
お前らは…もう知ってたのか?」
スゲチ「ああ」
ユイ「魔術院のアヅミナさんが教えてくれた」
ロクヤン「そうだったのか!」
シンモク「昨日…ホジタを逮捕したときにな」
ロクヤン「お前もか!」
ヒデイシャ(まさか…あれが偽物とは…)
オノク(一体どうやって盗んだ?)
ミチマサ(…まずいぞ…これは…)
ユイ、スゲチ、シンモクにシノ姫は言う。
シノ姫「奪われた経緯は…
あとで4人にも教えてあげて」
ユイ&スゲチ&シンモク「はい!」
シノ姫は秘力を高める。
彼女の体がぼんやりと光を発する。
隊員たちは息を飲みその様子を見る。
シノ姫「これから…
2つのことを同時に進めようと思う。
…聞いてくれる?」
隊員たち「………」
シノ姫「ねえ…隊長」
ミチマサ「は!」
シノ姫「まず…1つ目の任務です。
ラグアとロニ…この2人を捕まえて」
ミチマサ「は!!」
シノ姫「生け捕りが難しければ、
殺しても構わない」
ミチマサ「は!!」
シノ姫「そして、2つ目の任務です。
あなた方に…行ってほしい場所があります」
ミチマサ「は!!」
シノ姫「………」
黙るシノ姫。
隊員たちの顔を、目を細めて観察する。
ミチマサ「行ってほしい場所というのは…
どちらでしょうか?」
シノ姫「巨方庭…」
ミチマサ「巨方庭。巨方庭とは…
あの…合戦の舞台になった遺跡ですか…?」
シノ姫「そうです…。
昨夜、ホジタの口から明かされました。
そこに…おそらく起動装置があるだろうと…」
ミチマサ「起動装置…ですか。
魔真体の…起動装置…ですね?」
シノ姫「そうです…。
ホジタは覚えていたようです。
大遊説の3人がかなり前に話していたのを。
巨方庭。そこに起動装置があるのだと。
精神操作で引き出した答えですから、
まず間違いありません。
先回りして起動装置を探し、壊すのです。
そうすれば…
彼らも星の秘宝を捧げられなくなるでしょう。
…魔真体が復活することもない」
エオクシ(虚構街のときも…
あれもそういうことだったのか…?)
巨方庭。
都から南西に進んだところにそれはある。
正方形の広大な遺跡。
その遺跡では過去にさまざまな事件が起きた。
隊長ミチマサの顔は青ざめていく。
ミチマサ(…巨方庭だと!?
そんな場所に行くのか!!?
正気か!我々が!?
本当に行かなければならないのか!!
1度足を踏み入れたら戻れない、
いわくつきの場所…!!)
ミチマサは、額に浮かんだ汗を袖でふく。
ミチマサ(今からおよそ500年前の大戦争。
数万の軍勢同士がぶつかり合った…。
その戦の舞台となったのが…巨方庭。
両軍の力は拮抗し、戦は大いに長引いた。
だが、あるとき、その戦は突如終わる。
どちらかが勝って、どちらかが負けた。
そういうことではない。
あの戦には、勝者も敗者もない。
両軍ともに壊滅し、戦いが終わったのだ。
戦場となった巨方庭で…何かが起きた。
魔獣が現れたのか、自然災害が起きたのか。
分からない。記録がない。
ただ分かっているのは…ある日、突然、
戦場にいたほぼ全員が死んだということ。
逃げ出し、生き延びた者は10人足らず。
家族、医者、多くの者が彼らに問いかけた。
生き延びた者に。
巨方庭で一体何があったのかと。
だが、彼らの返答はいずれも意味不明。
合戦以来、すっかり正気を失っていた。
私が知る歴史書によれば、そういうことだ。
その後も巨方庭には、
多くの者が足を踏み入れたと聞く。
怪奇事件の真相を解き明かしたい調査団、
古代遺跡の財宝を奪いとりたい盗賊団、
強い野心に取り憑かれ、向かう者たち…。
その誰もが行ったきりで帰ってこない…。
そんな場所に…オレたちが行くのか!?)
エオクシが手を挙げた。
シノ姫「何…?」
エオクシ「巨方庭にはオレが行く」
シノ姫「そう…。私も…あなたが適任だと思う」
シノ姫はエオクシを見つめる。
シノ姫(エオクシ…あなたは…
遺跡探検がしたいわけじゃないんでしょ?)
エオクシ「決まりだな!隊長!!なあ!!」
ミチマサ「…む…」
シノ姫(1つ目の任務。これは…逃げ道。
エオクシ…あなたは気づいてくれた。
あなたは戦いたいのでしょう…。
心の底から…。大遊説の3人と…。
彼らは間違いなく巨方庭へ行く。
必ずその地に姿を現す。
だから…あなたは…2つ目の任務を選んだ。
そういうことでしょ…。
どんな脅威が待ち受けているかも知らずに…)
エオクシ「シノ姫様…?」
シノ姫「ふふ…」
エオクシ「………」
シノ姫(エオクシ…あなたは分かっている。
自分が大前隊の中で1番強いと。
分かっているから…そうした…。
ほかの者は、1つ目の任務を選べばいい。
無理するなと。ラグアもロニも見つからない。
探し出せなかった、そう言えばいいと。
そう言って、任務を終わりにすればいい。
危険だから。あなたは言葉に出さない。
けど…そう思っているんでしょ。
エオクシ…あなたの勇ましさと思いやりに…
私は…応えることにしましょう…」
シノ姫は1回手を叩く。
シノ姫「あとの隊員は…
1つ目の任務に当たってくれる?」
ミチマサ「!!」
ユイ「隊長…」
ミチマサ「ああ!」
ミチマサはシノ姫に提案する。
ミチマサ「シノ姫様、エオクシだけでは…」
シノ姫「もちろん1人では行かせませんよ。
巨方庭に関しては、さまざまな噂を聞きます。
恐ろしい魔獣が潜んでいるとか…。
ですので、魔術院と掛け合います。
魔力を持たないエオクシの…
目となり、耳となり、支えとなる…
そんな魔術師を集めましょう。
あと…アヅミナにも行ってもらいましょう」
エオクシ「………」
ユイ「シノ姫様!」
シノ姫「…何?」
ユイは緊張した面持ちでシノ姫に聞く。
ユイ「手がかりはないのですか?」
シノ姫「…なんの?」
ユイ「ラグアとロニの居場所です」
シノ姫「ない…」
ユイ「…そう…ですか…」
シノ姫「ホジタもね…
こればかりは分からないと言っていた。
ただ…魔術師のマスタス。
彼の居場所は知っていた。
でも、どうやら彼…死んだみたい」
エオクシ「!!」
シノ姫「昨夜…
ガシマとオンダクから連絡があってね。
合離蝶で手紙をくれたの。それによれば…
彼の遺体と思われるものを発見したらしい」
エオクシ(あいつが死んだ…?)
シノ姫「このあと魔術院に要請し、
ガシマとオンダクを迎えに行かせます。
カルスを使えば…
今夜にでもこちらに着くでしょう。
そのとき…
改めて彼らからよく話を聞いておきます」
隊員たち「………」
シノ姫「エオクシ…」
エオクシ「は!!」
シノ姫「因縁の相手…
マスタスを誰が倒したのか…
気になるようですね…」
エオクシ「誰…でしょうか?」
シノ姫「近くに2人の死体があったそうです。
ガシマたちによれば、どちらも女の魔術師。
マスタスを倒したのは彼女たちではないか…
とのことです。
ほかにも詳しく調べれば、
何か手がかりが得られるかもしれません。
死体を運んでくるよう指示しておきました」
エオクシ(女の…魔術師…)
ロクヤンが手を挙げる。
シノ姫「何…?」
ロクヤン「班分けはどうしますか?
ロニとラグアを探すの…手分けした方が…」
シノ姫「好きにして…」
ロクヤン「は!!」
ニヤリと笑ったのは格闘家オノク。
彼は右の手のひらを広げ、指を伸ばす。
装備した鋭い爪がぎらりと光る。
オノク「…あとで作戦会議するぜ。
すぐに見つけてとっちめてやらあ!」
ミチマサ「とはいえ…敵はどこにいるか」
ヒデイシャ「地方の連中にでも聞いてみるか。
ノイ府防衛隊にも便利な子分が何人かいるぜ」
シンモク「警備隊からも情報を集めよう。
有力な情報には褒美を出すといいだろう」
スゲチ「ああ、それだったら…」
シノ姫「………」
シノ姫の間で早速話し合う隊員たち。
活発に意見が交わされる。
シノ姫(誰も…逃げるつもりはないみたい…。
姿も…力も…未知の敵。なのに…恐れない。
さすがは選ばれた戦士たち…
第一隊といったところか…)
エオクシ「………」
◆◆ 現在 ◆◆
◆ 魔術院 特別来賓室 ◆
シノ姫は任務について告げる。
シノ姫「あなたたちには…
巨方庭という古代遺跡に向かってもらいます」
光術三姉妹「はい」
エオクシ&アヅミナ&カタムラ「………」
シノ姫はカタムラを見る。
シノ姫「あとはあなたが説明してあげて」
カタムラ「は!」
カタムラは話し始める。
巨方庭について。
そして、そこで起きた怪事件について。
◇◇ ステータス ◇◇
◇ シノミワ(シノ姫) ◇
◇ レベル 41
◇ HP 822/822
◇ 攻撃 4★★★★
◇ 防御
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 秘力
40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備
秘術道具(幻印、例札、思針、心糸)、高護貴帯
◇ 魔術 火弾、火砲、火刃
◇ 秘術 赤画、赤封、赤除、赤洪、赤滅
青画、青封、青跡、青結、青葬
白紋、白掃、白限、白威、白廃
黒紋、黒弦、黒貫、黒壊、黒破
◇ エオクシ ◇
◇ レベル 37
◇ HP 3487/3692
◇ 攻撃
49★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 防御
44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★
◇ 素早さ
46★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★
◇ 魔力
◇ 装備 壮刃剣、戦究防護衣
◇ 技 天裂剣、地破剣
◇ アヅミナ ◇
◇ レベル 35
◇ HP 404/404
◇ 攻撃 1★
◇ 防御 2★★
◇ 素早さ
40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 装備 大法力の魔杖、漆黒の術衣
◇ 魔術
火弾、火矢、火球、火砲、火羅、火嵐、王火
氷弾、氷矢、氷球、氷刃、氷柱、氷舞、王氷
暗球、精神操作、五感鈍化、魔病感染、
酷死魔術
◇ マユノ ◇
◇ レベル 35
◇ HP 1176/1176
◇ 攻撃 4★★★★
◇ 防御
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 蒼天想の魔杖、来陽の魔道衣
◇ 魔術 氷弾、氷柱、氷裂、氷波、王氷
光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術
◇ カエノ ◇
◇ レベル 34
◇ HP 1084/1084
◇ 攻撃 3★★★
◇ 防御
20★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 魔力
42★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★
◇ 装備 超放気の魔杖、連星の魔道衣
◇ 魔術 雷弾、雷砲、雷破、雷花、王雷
氷弾、氷矢
光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術
◇ サヤノ ◇
◇ レベル 34
◇ HP 953/953
◇ 攻撃 1★
◇ 防御 11★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
37★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 清化印の魔杖、光心の魔道衣
◇ 魔術 岩弾、岩砲
雷弾、雷槍
光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術
◇ カタムラ ◇
◇ レベル 16
◇ HP 766/766
◇ 攻撃 7★★★★★★★
◇ 防御 9★★★★★★★★★
◇ 素早さ
17★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 秘力 3★★★
◇ 装備 魔鉱石の短剣、秘術道具(空球)、
探検用強化研究衣
◇ 魔術 光玉、治療魔術
◇ 秘術 青珠
◇ ミナヨニ ◇
◇ レベル 42
◇ HP 1179/1179
◇ 攻撃 3★★★
◇ 防御
19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
20★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★
◇ 装備 九輪三節魔業杖、無二天衣
◇ 魔術
氷弾、氷息、氷甲、氷身、氷宴、氷堕、王氷
岩弾、岩砲、岩柱、岩壁、岩流、岩棺、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術