第140話 光栄
シノ姫は答える。
シノ姫「殺したなんて物騒なこと言わないで」
ミナヨニ「なら、なんだっていうの?」
シノ姫「………」
昨夜、魔術院のキト副院長が死んだ。
1人で執務室にいたとき。
突然奇声を上げて倒れた。
従者が駆けつけたが、すでに息絶えていた。
シノ姫「あの方は…
とんでもないことをしていました。
魔信報を使って
政府の秘密を外へ流していたのです。
昨日、ホジタを取り調べして分かりました。
あなたの情報もいくらか漏れてたみたい」
ミナヨニ「………」
シノ姫「私は、これはいけないって思った。
強く思った。彼を生かしてはおけないって。
強く、強く、そう思った…」
ミナヨニ「それで…?」
シノ姫「そうしたら、死んだ」
ミナヨニ「結局あなたが殺したんじゃない」
ミナヨニはため息をついた。
ミナヨニ「あとどれぐらいでしょうね。
あなたがそうしていられるのは。シノミワ」
シノ姫「その名前で呼ばれるの…久しぶり」
ミナヨニは思い出す。
シノ姫が魔術院に在籍していたときのことを。
無才シノミワ。
彼女が魔術院内でそう呼ばれていたことも。
ミナヨニ「魔術師試験の日からあなたは…」
シノ姫「覚えててくれてるの」
ミナヨニ「忘れたことはない」
魔術院正魔術師試験。
年に1度、魔術院で行われる。
受験するのは魔術院の研修生。
合格者は晴れて魔術院の正式な魔術師となる。
魔術院で働くため、避けては通れない試験。
ミナヨニもシノ姫もかつてその試験を受けた。
ミナヨニ「あのときあなたは2回目。
私は1回目だった」
シノ姫「そうね。私はあとがなかった」
試験を受けられるのは2回まで。
1回目で不合格となった者は翌年も受験できる。
不合格者の多くは再受験する。
再受験に当たって魔術院の特別な支援はない。
それぞれが不合格の原因を考えて準備する。
再受験までの1年間、魔術院から課題はない。
その分試験の準備に専念できる。
そのため、2回目の受験者が有利に思われる。
ところが、実態は異なっている。
合格者の9割近くを1回目の受験者が占める。
このことから魔術院ではよく言われる。
1度落ちれば、待ち受けるのは地獄の壁と。
ミナヨニ「あれは魔術の試験。魔力を試す場。
それなのに、あなた…」
シノ姫「…ああするしかなかったから。
あのときの私は、ああするしかなかった」
ミナヨニ「一体何が起きたのか。
その場にいた誰も何も分からなかった。
だから、皆が恐れた。あなたの力を」
シノ姫「ええ。それでも、あのお方は…」
ミナヨニ「………」
シノ姫「私は…大君にこの命を捧げる覚悟です。
この力はあのお方のためにある。だから…」
ミナヨニ「だからって、最近の力の使い方…
少し行き過ぎたところがあるんじゃないの」
シノ姫「私はそうは思わない」
ミナヨニ「いつその地位を失っても…
いいえ、いつその身が滅んでもおかしくない。
私にはそう見えます。
今のあなたはとても危うい。
とてもとても危うい」
シノ姫「…それでも」
ミナヨニ「………」
シノ姫「あなたは協力してくれる。
そうでしょう…?」
ミナヨニ「…当然でしょう」
ミナヨニはしばらく黙ってから、声を発する。
ミナヨニ「大君の命だから」
シノ姫「………」
ミナヨニ「あなたに協力するのではない。
今回の件は、大君の命令に従うのです」
シノ姫「それでもいいの」
ミナヨニ「………。そろそろ時間ね。
入ってもらいましょう」
ミナヨニは立ち上がり、声を張る。
ミナヨニ「あなたたち、お入りなさい!」
彼女の背後にある黒い扉。
その扉が、そっと開かれる。
入ってきたのは、3人の女。
いずれも魔術師。
そろそろと部屋の中を進む。
シノ姫に向かって、横に並ぶ。
シノ姫「…素晴らしい」
ミナヨニ「この子たちが…光術三姉妹です」
光術三姉妹。
光の魔術を使う3人の女。
いずれも魔術院の上級術師。
きりっとした姿勢で3人は並んで立つ。
自信に満ちた顔でシノ姫にほほえみかけている。
シノ姫は高揚した。
シノ姫「鍛えられた見事な魔力です…」
ミナヨニ「あなたにも分かるのですね」
シノ姫「分かりますとも」
ミナヨニは光術三姉妹の方を向く。
ミナヨニ「こちらがシノ姫様ですよ」
光術三姉妹「よろしくお願いします」
シノ姫「よろしく…」
シノ姫も立ち上がる。
シノ姫「…入ってもらいましょう。
私の大切な仲間たちにも」
ミナヨニ「………」
シノ姫の背後にも黒い扉。
彼女はその扉に向かって、声を張る。
シノ姫「入って」
扉が開く。
入ってきたのは3人。
エオクシ、アヅミナ、カタムラ。
前へ進んで、立ち止まり、横に並ぶ。
光術三姉妹と向き合う格好で。
シノ姫「…そろいましたね…」
ミナヨニ「………」
部屋の中は静まり返る。
異質な者同士が集い、向き合う。
部屋の中にいびつな空気のうねりが生まれる。
ミナヨニ「あなたたち自己紹介しなさい」
光術三姉妹「はい」
マユノ「マユノです。光術と氷術が得意です」
カエノ「カエノです。光術と雷術が得意です」
サヤノ「サヤノです。光術が得意です。
雷術、岩術も使えます」
3人は順番に、そして、淡々と明かした。
自らの能力について。
マユノ&カエノ&サヤノ「よろしくお願いします」
シノ姫「よろしく」
マユノ「シノ姫様」
シノ姫「あなたは治療院でもお会いしましたね。
エオクシの件はありがとう」
マユノ「いいえ、いいんです」
ミナヨニはスッと右手を上げる。
その手は、3人に向けられている。
エオクシ、アヅミナ、カタムラの3人に。
穏やかな声でミナヨニは三姉妹に告げる。
ミナヨニ「あなたたちにはこのお三方とともに
特別な任務に就いてもらいます」
マユノ&カエノ&サヤノ「はい」
シノ姫「あなた方の力が必要なの」
マユノ「はい、喜んで協力させていただきます。
シノ姫様」
シノ姫は満足げにほほえむ。
シノ姫「さ、あなたたちも自己紹介を…」
エオクシが前へ出た。
エオクシ「オレは大前隊のエオクシ。
あんたたちが…オレを生き返らせたと聞いた」
マユノ&カエノ&サヤノ「………」
エオクシ「心から感謝する。ありがとう」
マユノがほほえみかける。
マユノ「エオクシ様。
お礼を言わなければならないのはこちらです」
エオクシ「………」
カエノ「あなたは魔獣から都を守ってくださった」
サヤノ「あなたの蘇生に関わることができて、
光栄です」
マユノ&カエノ&サヤノ「ありがとうございます」
エオクシ「…そうか…」
次にアヅミナが前へ出る。
アヅミナ「魔術院のアヅミナです」
マユノ&カエノ&サヤノ「………」
アヅミナ「火術と氷術が得意です。
闇の魔術も使います。よろしく」
マユノ&カエノ&サヤノ「よろしくお願いします」
アヅミナにほほえみかける三姉妹。
しかし、その表情はどこか硬い。
それから、最後にカタムラ。
カタムラ「考古学者のカタムラです。
優れた魔術師が協力してくれる。
そう聞いていました。ですが…
まさか光術三姉妹が手を貸してくれるとは…。
ともに任務に当たることができ、光栄です。
よろしくお願いします」
マユノ&カエノ&サヤノ「よろしくお願いします」
全員の自己紹介が終わる。
シノ姫がミナヨニの顔をちらりと見る。
ミナヨニはうなずく。
シノ姫「…早速本題に入りましょう。
今回の任務について…」
◆◆ 昨朝 ◆◆
◆ 都 シノ姫の間 ◆
集められた大前隊第一隊。
ガシマとオンダクを除く隊員が集結した。
そこでシノ姫は打ち明ける。
治療院でエオクシと交わした約束のとおりに。
シノ姫「…というわけです」
シノ姫は隊員たちに説明した。
遥か昔の大戦争のことを。
魔真体と星の秘宝のことを。
そして、大遊説の3人のことを。
彼らが星の秘宝を求めていることも。
シノ姫「今までお話できませんでした。
だって、馬鹿げたお話ですから…。
こんなことを本気で信じる者が政府にいる…
民に知られたくなかったのです」
隊員たち「………」
シノ姫「…ですが、考えが変わりました。
きっかけは…昨夜の魔獣の襲来です。
エオクシ、あなたはよくやってくれました。
あなたに叱られて、私は目が覚めた。
それで…皆さんにきちんと
お伝えしなければと思ったのです」
エオクシ「別にオレは…」
エオクシは裏行隊にいたときから知っていた。
大遊説の3人のことを。
彼らが打倒政府を企んでいることも。
その一方で、彼は知らなかった。
星の秘宝の存在理由を。
魔真体のことも。
エオクシ「オレたちに話してくれて、
ありがとうございました」
シノ姫「…これですべてではありません」
エオクシ「…はい?」
◇◇ ステータス ◇◇
◇ シノミワ(シノ姫) ◇
◇ レベル 41
◇ HP 822/822
◇ 攻撃 4★★★★
◇ 防御
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 秘力
40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備
秘術道具(幻印、例札、思針、心糸)、高護貴帯
◇ 魔術 火弾、火砲、火刃
◇ 秘術 赤画、赤封、赤除、赤洪、赤滅
青画、青封、青跡、青結、青葬
白紋、白掃、白限、白威、白廃
黒紋、黒弦、黒貫、黒壊、黒破
◇ ユイ ◇
◇ レベル 33
◇ HP 1711/1711
◇ 攻撃
31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★
◇ 防御
24★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★
◇ 素早さ
29★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 魔力
19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 煌石剣、連花戦闘衣
◇ 技 千刺連撃、炎舞剣
◇ 魔術 火弾、火砲、火柱
◇ ヒデイシャ ◇
◇ レベル 31
◇ HP 2157/2157
◇ 攻撃
27★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 防御
31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
32★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 6★★★★★★
◇ 装備 長大破壊棒、堅守闘衣
◇ 技 豪快破壊撃、痛快三点打、
爽快一点打、凍結打
◇ 魔術 氷弾、氷砲
◇ オノク ◇
◇ レベル 36
◇ HP 2337/2337
◇ 攻撃
34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 素早さ
27★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★
◇ 魔力 3★★★
◇ 装備 真鋭の爪、真衛の道着
◇ 技 勇壮連打、苛烈瞬風蹴り(かれつしゅんぷうげり)、
縦横無尽破壊拳
◇ 魔術 岩弾
◇ スゲチ ◇
◇ レベル 31
◇ HP 1933/1933
◇ 攻撃
31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★
◇ 防御
33★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
25★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★
◇ 魔力
17★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 聖鋼の槍、白鋼の鎧
◇ 技 輝乱気嵐撃、嵐身乱心撃
◇ 魔術 氷弾、氷柱
雷弾、雷砲
◇ ミチマサ ◇
◇ レベル 32
◇ HP 1159/1159
◇ 攻撃
17★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御 16★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
◇ 装備 正道の剣、正道の鎧
◇ 技 正位斬撃
◇ ロクヤン ◇
◇ レベル 35
◇ HP 3002/3002
◇ 攻撃
33★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
35★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力 1★
◇ 装備 六刃大剣、完防六甲
◇ 技 華美六連撃、巨撃大送、破壊刃来迎
◇ 魔術
◇ シンモク ◇
◇ レベル 34
◇ HP 1693/1693
◇ 攻撃
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
32★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
20★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 魔波集攻剣、魔布戦闘着
◇ 技 火炎剣、雷断剣、炎雷剣
◇ 魔術 火弾、火球
雷弾、雷砲、雷刃
光球、治療魔術
◇ エオクシ ◇
◇ レベル 37
◇ HP 3487/3692
◇ 攻撃
49★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★
◇ 防御
44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★
◇ 素早さ
46★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★
◇ 魔力
◇ 装備 壮刃剣、戦究防護衣
◇ 技 天裂剣、地破剣