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アルジ往戦記  作者: roak
139/300

第139話 合流

ゼナクは伝えた。

もう1つの連絡事項を。

喉から絞り出すような声で。


ゼナク「大陸猟進会と合流せよ…!」

アルジ&エミカ「………」


ゼナクは懐から1通の手紙を取り出す。

広げて大きな声で読み上げた。


ゼナク「戦況については了解した!

 大陸猟進会の精鋭を現地へ向かわせる!

 必要な施設、物資はそちらで手配せよ!」

アルジ「精鋭を…向かわせる…?」

ゼナク「これは政府からの手紙…。

 ついさっき…合離蝶が届けてくれた。

 内容は今読み上げたとおり。

 それにオレはこう返答した。

 大陸猟進会への協力要請、感謝する!

 タキマイ狩猟会が用意した基地、食料、寝具は

 すべて自由に使ってよい!と」

アルジ&エミカ「………」


ゼナクは手紙をしまう。


ゼナク「間もなく彼らはやってくる。

 数々の魔獣を仕留めてきた一流の中の一流。

 そんな猟師たちがあの基地にやってくる。

 お前たちはそこで合流せよ。

 寝具も食料も自由に使ってよい。

 そして、大陸猟進会とともに次の古代獣、

 コノマノヤタラズマを倒せ!」

アルジ「ちょっと待ってくれ」

ゼナク「………」

アルジ「どういうことだ?

 大陸猟進会を向かわせる?なんで政府が?

 大陸猟進会って、なんなんだ?」

ゼナク「大陸猟進会は政府が育てた組織」

アルジ「政府が?」

ゼナク「政府から特別な支援を受けている」

エミカ「どうして特別な支援を?」

ゼナク「有事に動いてもらうためだ。

 大前隊がその力を十分に発揮できないとき、

 あいつらは政府から要請を受けて動く。

 そういう協定を結んでいる」

エミカ「タキマイ派が最大勢力なんだろ。

 政府はタキマイ派と手を結ばないのか?」

ゼナク「タキマイ派は最大勢力だからこそ

 手を結んでこなかったのだ」

アルジ&エミカ「……?」


ゼナクは首を小さく横に振る。


ゼナク「タキマイ狩猟会は調子に乗り過ぎた。

 そのため…政府から目をつけられていた」

アルジ&エミカ「………」

ゼナク「狩場の占拠、他派閥の排除、

 犯罪まがいの取引、激しい政府批判。

 タキマイ狩猟会は…やり過ぎたのだ。

 狩猟を魔術で発展させた功績は認めながらも、

 政府はあいつらのさらなる勢力拡大を懸念し、

 対抗しうる狩りの専門家集団を育ててきた」

アルジ「それが大陸猟進会…」

ゼナク「そうだ」


ゼナクは頭上の雲をしばらく眺めた。

ふわりふわりと流れていく小さな雲を。

それから、アルジとエミカの顔を見る。


ゼナク「オレは…やれることはやった…。

 朝も…夜も…政府に必死に働きかけた…。

 大前隊を出動させてくれと…。強く求めた。

 だが、政府は聞き入れてくれなかった…」

アルジ&エミカ「………」


ゼナクは目を閉じる。

そして、しみじみ思い返す。

当時の言葉の応酬を。

彼の目がわずかに開かれる。

一体どこを見ているのか。

アルジにもエミカにも分からない。

ゼナクはつぶやき始める。


ゼナク「オオトノラコア…恐ろしや…。

 オオトノラコア…恐ろしや…」

アルジ&エミカ「………」

ゼナク「オオトノラコア…恐ろしや…。

 大前隊の…出動を…強く求める…心から…。

 一隊来なけりゃ…おそらく負ける…」

アルジ&エミカ「………」

ゼナク「被害はあるか…死んだの誰だ…

 何人死んだ…」

アルジ&エミカ「………」

ゼナク「被害なし…誰も1人も死んでない…」

アルジ&エミカ「………」

ゼナク「それならば…大前隊は動かない…

 …大前隊の…出番はない」

アルジ&エミカ「………」

ゼナク「憎し恐ろし…オオトノラコア」

アルジ&エミカ「………」

ゼナク「…オオトノラコア…恐ろし憎し」

アルジ&エミカ「………」


ゼナクは目を開けた。

少しさっぱりした様子で。


ゼナク「タキマイの問題はタキマイが対処せよ。

 それが政府の最終的な回答だった」


森の中から1羽の大きな赤い鳥が飛び立つ。


ゼナク「サナヨには…いろいろ世話になった。

 だから、簡単には引き下がれなかった。

 だから、オレはいろいろと手を尽くした。

 だが、結果は…この有様だ…」


ゼナクはその場に崩れ落ちる。

背中を丸め、うなだれ、涙を流す。

アルジとエミカは彼を横目に歩き出す。

基地へ向かって。

荒野を歩き、斜面を上り、下った。

振り返ることはない。

黙々と基地を目指した。

辺りに転がる魔獣の死骸。

斬られ、焼かれ、倒されたヤサハカイヌ。

そのままだった。

ロニの王獣によって斬り刻まれた猟師たちも。

気がつけば、空はすっきりと晴れていた。

日は西へ傾き始めている。

基地はもうすぐそこだった。



◆ 猟師の基地 ◆

アルジたちは基地に入る。

そこには6人の猟師たち。

床の上で輪になって座り込んでいた。


男「よう」


アルジに声をかける1人の男。

ガヒノで会った猟師ゲンダだった。

ほかの5人にも会ったことがある。

キャモ、カナミ、ルノ、ゴタンジ。

この4人ともガヒノで会った。

ベキザルの森で迷子を救ったあとに。

さらに、コイナミ。

昨夜、基地でアルジと話をした猟師の女。


アルジ&エミカ「………」


ゲンダが立ち上がり、歩いてやってくる。


ゲンダ「また会ったな。覚えてるか?」

アルジ「あんたは…オレと同じナキ村出身の…」

ゲンダ「ああ、そうだ」

アルジ「………」

ゲンダ「オレの予言は当たったわけだ。

 オレたちは、またどこかで会うと」

アルジ「………」


キャモが座ったまま問いかける。


キャモ「あんたら何しに来た?

 まさか懸賞金狙い?」

アルジ「そうだ」

キャモ「やめときな!今度は本気で危ない。

 あんときのベキザルとは訳が違うんだ」

アルジ&エミカ「………」

カナミ「今回の案件は素人が首突っ込んで

 いいもんじゃないよ。死にたくないなら、

 さっさと家に帰ることだ」

アルジ&エミカ「………」

ルノ「外にバラバラの死体がある。見てきな。

 あれはただの魔獣の仕業じゃない」

キャモ「そうさ…全然違う。今までの獲物とは。

 やっぱりオオトノラコアは…」

アルジ「倒した」

キャモ「………」

アルジ「オオトノラコアは倒したんだ」

カナミ「…倒した?」

ルノ「それって、どういうことだ?」

アルジ「オレたちがオオトノラコアを倒した。

 そういうことだ」

キャモ&カナミ&ルノ「………」


勢いよく立ち上がるゴタンジ。


ゴタンジ「おい、お前…冗談はよせ。

 一体、何を言って…オレたちは実際に…

 政府の要請を受けて…ここに来た」

アルジ「さっき倒したばかりだからな」

エミカ「連絡の行き違いだと思う」

ゲンダ&キャモ&カナミ&ルノ&ゴタンジ

「………」


基地の中は静まり返る。


ゲンダ(現地に集まったタキマイ派…それと、

 懸賞金を求めて集まった他派閥の猟師たち…

 全滅したと聞いていた。おそらく間違いない…。

 なら、どういうことだ?なら一体これは…

 これは一体…どういうことなんだ?

 2人で…たった2人で…倒したっていうのか?

 覇獣級の…オオトノラコアをたった2人で?

 本当に倒しちまったってことなのか?

 だとしたら…これがもしも事実だとしたら…!)

アルジ&エミカ「………」

ゲンダ「ははははははは…!」


ゲンダは呆れた顔で笑う。


ゲンダ(…なんとしても取り込まなければ。

 新戦力として…こいつらを!大陸猟進会に!)



◆ 都 魔術院 ◆

そこは、特別来賓室。

国首など特別な地位にある者だけが通される。

向かい合うのは2人。

1人はシノ姫。

もう1人は魔術院の院長ミナヨニ。

ミナヨニはシノ姫に問いかける。


ミナヨニ「あなたでしょう?彼を殺したのは」

シノ姫「………」


シノ姫は静かに笑う。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ シノミワ(シノ姫) ◇

◇ レベル 41

◇ HP   822/822

◇ 攻撃  4★★★★

◇ 防御

 18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 秘力

40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

  ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備

 秘術道具(幻印、例札、思針、心糸)、高護貴帯

◇ 魔術  火弾、火砲、火刃

◇ 秘術  赤画、赤封、赤除、赤洪、赤滅

      青画、青封、青跡、青結、青葬

      白紋、白掃、白限、白威、白廃

      黒紋、黒弦、黒貫、黒壊、黒破


◇ ミナヨニ ◇

◇ レベル 42

◇ HP   1179/1179

◇ 攻撃  3★★★

◇ 防御

  19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

  20★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★

◇ 装備  九輪三節魔業杖、無二天衣

◇ 魔術

 氷弾、氷息、氷甲、氷身、氷宴、氷堕、王氷

  岩弾、岩砲、岩柱、岩壁、岩流、岩棺、王岩

  光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術

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