表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルジ往戦記  作者: roak
138/300

第138話 無実

王雷を浴びたオオトノラコア。

ピタリと動かなくなる。


オオトノラコア「…マ…」


土の上に倒れる。

大きな音が森に響いた。

◇ オオトノラコアを倒した。

◇ アルジたちは戦いに勝利した。

◇ アルジはレベルが上がった。(レベル25→26)

◇ エミカはレベルが上がった。(レベル21→22)

降り続いていた雨はやんでいた。

森の中に柔らかな日の光が差し込む。

激闘の勝利を祝うかのように。

アルジは痛む体を起こして立ち上がる。


アルジ「…エミカ」


エミカの姿を見る。

彼女は天界石の杖を見つめている。

不思議そうな顔で。


エミカ「………」


彼女の頬を涙が伝う。

その場にへたりこむ。

顔を両手で覆って泣いた。


エミカ「うう…」

アルジ「…どうした?」


アルジはエミカの方へ歩いていく。

負傷した腹に手を添えながら。

少しずつ進む。


アルジ「エミカ、どうした?」

エミカ「ううっ…」

アルジ「………」


アルジはただ静かに待つ。

エミカのそばで。

しばらくして彼女は話し始めた。

魔術を使ったとき、何が起きたのか。


エミカ「聞こえたんだ」

アルジ「聞こえた?」

エミカ「ミリの声が聞こえた」

アルジ「ミリの…」

エミカ「聞こえた。王氷を使ったとき。

 負けるなって、ミリの声が…聞こえた…」

アルジ「そっか」

エミカ「王雷のときはリネ先生の声が…。

 頑張れって…聞こえてきて…」

アルジ「そっか」


アルジはオオトノラコアを見る。

もう動くことはないその姿を。


アルジ「一緒に戦ってくれたってわけか。

 ミリもリネも。エミカと一緒に」

エミカ「…うう…」


エミカは泣き続ける。

アルジは腰を下ろす。


アルジ「………」


目を閉じて思う。


アルジ(ギンタロウ…オレたちが倒したぜ。

 一撃じゃ仕留められなかったけど…。

 腹も殴られたけど…。

 オオトノラコアを倒したぜ。

 みやげ話を聞かせられないのは残念だけど…

 オレたちはこれからも戦い続けるよ。

 倒さなきゃならない敵が…まだいるから…!)


エミカは袋から薬を取り出す。


エミカ(5粒。リネさんは言っていた。

 5粒で王火、王氷、再生魔術、1回分だと…)


魔力回復薬を飲み込む。

しばらく深呼吸をして静かに過ごす。

それから、アルジに杖を向ける。

まばゆい光がアルジの腹部を包んだ。


アルジ「ありがとう」

エミカ「すぐに治す」


◇ アルジはHPが全回復した。(HP107→3005)


エミカ「さっきの剛刃波状斬撃…すごかったな」

アルジ「あいつがあれに耐えたときは…

 さすがに終わったと思ったけどな」

エミカ「剣が元気をなくしてた」

アルジ「ああ…。さっきは悪いことしちまったな」


アルジは勇気の剣にそっと触れる。


エミカ「信じて戦えば、また応えてくれる」

アルジ「そうだな」

エミカ「頼りにしてる」

アルジ「…ああ。オレもだ。エミカ」


アルジは森の中を見回した。

ほかに獣はいない。

人もいない。

辺りは静か。

エミカを見つめて言った。


アルジ「王氷も王雷もよかったぜ」

エミカ「なんとか…出せた。

 でも、使うときは不安だった。

 先生やミリみたいにできるだろうかって。

 もっともっと練習するよ」

アルジ「オレもさらに技を磨く」


エミカはほほえむ。


エミカ「魔術もな」

アルジ「そうだな。魔術も頑張る。

 今回生き延びたのは雷術のおかげだ」

エミカ「練習するとき手伝うよ」

アルジ「頼むぜ」


アルジとエミカは立ち上がる。

2人でオオトノラコアを見る。


アルジ「手に入れようぜ。懸賞金」

エミカ「どうする?」

アルジ「こういうときは証拠が大事だ」

エミカ「まさか…」

アルジ「ああ、あいつの体を運ぼうぜ」

エミカ「一部じゃダメか?爪とか…」

アルジ「変な難癖つけられたら嫌だろ。

 だから、こいつを丸ごと持っていこう」

エミカ「丸ごと…!」

アルジ「ああ、やろうぜ」

エミカ「………」


アルジはオオトノラコアの腕をつかんだ。

そのまま引きずって動かそうとする。


アルジ(!!?…重い!!)

エミカ「アルジ…」

アルジ「そっち、ちょっと持ってくれないか?」


2人で引っ張って森の中を運んでいく。


エミカ「疲れた…!」

アルジ「あともう少しだ。頑張ろうぜ」

エミカ「…ああ」

アルジ「エミカって結構力があるな」

エミカ「そうか…?」

アルジ「ああ、すごいぜ」

エミカ「ありがとう…」


何度かオオトノラコアが引っかかる。

木の根や岩に。

そのたび2人は協力して乗り越える。

そして、ついに森から出た。

ゼナクが立って待っている。

気の抜けた顔で眺めている。

運び出されたオオトノラコアの死体を。


アルジ&エミカ「………」

ゼナク「…倒した…のか…」

アルジ「ああ、こいつをどうすればいい?

 懸賞金はどうやったらもらえるんだ?」


ゼナクはため息をついてから告げる。


ゼナク「オオトノラコアはオレがここで預かる。

 政府の使いが来たら引き渡そう。

 金を受け取る方法は…あとで伝える」

アルジ&エミカ「………」

ゼナク「信用ならない…か?」

アルジ「…どうやって伝える?」

ゼナク「こいつで手紙を送る」


ゼナクは懐から小さな物体を取り出す。

それは蝶のような形。

アルジに投げて渡す。

受け取ったアルジはその物体をじっと見る。


アルジ「…?」

ゼナク「そいつをなくさず持っていろ」

アルジ「…なんだ?」

ゼナク「連絡のための秘密道具。

 合離蝶ごうりちょうと呼ばれるものだ。

 その道具は2つで1つ。対になっている。

 魔術師がもう一方に魔力を込めて飛ばせば、

 お前たちの元へ手紙を運ぶことができる。

 大陸の…どこにいたとしても…。

 そいつはその片割れだ。

 あまり大きな物は運べないが…手紙なら…

 ここから都までの距離でも

 半日ほどで届く優れものだ」

アルジ「そうか」

ゼナク「………」

エミカ「…サナヨさんは?」


思い違いであればいい。

淡い期待を込めてエミカは聞いた。

だが、返ってきた答えは彼女の予想したとおり。


ゼナク「さっき…息を引き取った」

アルジ「!!」

エミカ「………」

ゼナク「傷は…思いのほか深かった」


ゼナクは涙をこらえる。


ゼナク「最期の言葉は…オレが確かに聞いた」

アルジ&エミカ「………」


アルジとエミカは歩き出す。

オオトノラコアの死体をその場に残して。

ゼナクの横を通り過ぎる。

そのとき。


ゼナク「お前たち」

アルジ&エミカ「………」


アルジとエミカはゼナクの方を向く。


ゼナク「何者だ…?」

アルジ&エミカ「………」

ゼナク「古代獣オオトノラコア…。

 オレの見立てでは…

 一隊が戦っても勝てるかどうか…

 そんな強さの敵だった…。

 それを…お前たちは倒した…。

 何者だ?…お前たちは一体…何者なんだ…?」

アルジ&エミカ「………」

ゼナク「…報告しなければならない。

 お前たちのことは…

 政府に報告しなければならないのだ。

 オオトノラコアを倒した者として…正式に!

 だから…ここで…名乗れ…!」


アルジは少し間を置いて答えた。


アルジ「ナキ村のアルジ」

ゼナク「…!?」

アルジ「オレのことだ」

ゼナク「!!」

エミカ「私はエミカ。魔術師リネの弟子」

ゼナク「…!!」

アルジ「どうする?」

ゼナク「…なんだ?」

アルジ「逮捕するのか?オレのことを。

 創造の杖を差し出した罪人として…」

ゼナク「その心配はいらない」

アルジ「…どういうことだ?」

ゼナク「状況が変わった。お前の嫌疑は晴れた」

アルジ「晴れた…?」

ゼナク「証言者が現れたのだ。

 魔術院の魔術師だ。

 そいつが審理院で証言した。

 魔術師リネは…

 闇の魔術に侵されていたのだと。

 強い精神操作にやられていたのだと。

 創造の杖を渡したのは、

 その悪しき魔術のせいだと」

エミカ(魔術院の…魔術師…)

ゼナク「そして、解剖が行われた。

 詳細な調査の結果…

 確かにその痕跡があることが…

 昨夜遅くに確認された」

アルジ(詳細な調査…痕跡…)

ゼナク「だから…お前たちは無実だ」

アルジ「…そうか」


歩き出そうとするアルジとエミカ。

再びゼナクは呼び止めた。


ゼナク「連絡事項が…もう1つある…!!」



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 26

◇ HP   2277/3005

◇ 攻撃

 38★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

  28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

    ★★★★★★★★

◇ 素早さ

 32★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  6★★★★★★

◇ 装備  勇気の剣、雅繊維戦衣がせんいせんい

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り

◇ 魔術  雷動


◇ エミカ ◇

◇ レベル 21

◇ HP   1452/1783

◇ 攻撃  10★★★★★★★★★★

◇ 防御

  27★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★

◇ 素早さ

  22★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

  ★★

◇ 魔力

  43★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★

◇ 装備  天界石の杖、濃色魔術衣

◇ 魔術  火球、火砲、火樹、火海、王火

      氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷

      雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 15


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ