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アルジ往戦記  作者: roak
137/300

第137話 好機

オオトノラコアは鳴くのをやめた。


オオトノラコア「マ…」

アルジ&エミカ「………」


直立したまま動かない。

アルジとエミカをじっと見つめる。

ピクリピクリと耳が動く。

その魔獣は、感づいていた。

現れた2人。

彼らも自分を倒しにきたのだと。

さっき攻めてきた猟師たちと同じように。

そして、もう1つ。

感づいていた。

目の前に立つ2人。

彼らの戦闘力は並々ならないものだと。

さっき倒した猟師たちとは比較にならないと。

オオトノラコアは、体勢を低くする。

4本の足をどっしりと地に着けた。

全身の毛が逆立った。

目と口を大きく開ける。

顔の表情が大きく変わる。


アルジ&エミカ「…!」


目がつり上がり、鼻孔が広がる。

現れたときとは、まるで様子が違う。

異なる種類の獣に化けたかのよう。


オオトノラコア「マァァアアアアアア!!!」


震える空気。

エミカの魔力が急激に高まる。

アルジは小声で彼女に告げた。


アルジ「オレが行く」

エミカ「…!」

アルジ「オレが先にあいつと戦う。

 だから、エミカはそこにいろ」

エミカ「なんで!私も…」

アルジ「あと2、3回ぐらいだろ」

エミカ「…!」

アルジ「強い魔術を出せるのは」

エミカ「………」

アルジ「だから…オレが先に行く」


アルジは知っていた。

エミカの残りの魔力がそんなに多くないことを。

ここに来るまで彼女が使った魔術の威力と回数。

不安定に揺らぎ始めた彼女の魔波。

それらのことを考えてアルジは察した。

彼女の今の状態を。


アルジ「次の魔術は外すわけにはいかない。

 オレがあいつを引きつけて隙を作る。

 あとは…確実に当たるように魔術を出せ!」

エミカ「アルジ…!」

アルジ「オレを信じろ…!

 そして、自分の力を信じろ!」

エミカ「…分かった!」


オオトノラコアが動き出す。

前へ。

踏み出す。

次の瞬間、アルジは斬りかかる。

大声を上げながら。


アルジ「ラァァァアアアア!!!」


叫ばずにはいられなかった。

ヤマエノモグラモン、ベキザル。

そして、スイオウジャ。

今まで戦った魔獣たち。

それらを遥かに超える存在。

覇獣級古代獣オオトノラコア。

その圧倒的な強敵への恐れと怒り。

これら感情の噴出がアルジを叫ばせた。


アルジ(こいつが…!こいつが殺した!!

 猟師たちを!! ギンタロウを!

 あいつの仲間たちも!

 許さん!!オレはお前を許さん!!)


勇気の剣を振り抜いた。

強く、速く、かつてない勢いで。

今出せる力のすべてを注ぐ。

その剣に。

そんな1撃。


アルジ「…!!」


剣が体毛に触れると思われたそのとき。

するりと斬撃はかわされる。

もう1度。

強く振り抜く。

だが、かわされる。

あっさりと軽やかに。

さらにアルジは何度も剣を振る。

しかし、オオトノラコアは攻撃をかわしていく。

するりするりと素早く体をくねらせて。

その動きは目を疑うようなもの。

巨体の割に異様に素早く柔軟。

剣は空を斬るばかり。

刃は決して届かない。

骨にも肉にも皮にも。

毛の1本さえ断ち切れない。

アルジの攻撃は完全に見切られた。

途切れることなく繰り出した連続攻撃。

すべてが空振り。


オオトノラコア「マァァ!」

アルジ「!!」


左の腕が振り回される。

長い爪が飛んでくる。

アルジの顔面めがけて。

とっさに頭を下げる。

攻撃をなんとかかわす。

そこへもう1発。

今度は右の腕が飛んでくる。


アルジ「かはっ!!」


腹を強く殴られた。

ふわりと宙に浮く体。

◇ アルジに2041のダメージ。(HP2277→236)

アルジの背中を近くの巨木に打ちつける。

そのまま体を押さえつけられる。

◇ アルジに129のダメージ。(HP236→107)


アルジ「…けほっ!!」


さらにそこへもう1発。

左の腕が飛んでくる。

アルジの頭に向かって。


エミカ「アルジ!!」


エミカは魔術を繰り出す。

火海や王火ではアルジも焼いてしまう。

なので、火砲を撃ち込んだ。

しかし、オオトノラコアにはほとんど効かない。

◇ オオトノラコアに101のダメージ。


エミカ(火術に耐性が…!!)


爪がアルジの顔面に迫る。


オオトノラコア「…!!」


振り回された手が止まる。

アルジの目の前で。

向けられた爪はブルブルと震えている。


アルジ(やっと効いてきやがったか…!

 悪あがきも…してみるもんだぜ…!)


電撃がオオトノラコアの体を包む。

ビリビリと閃光が走る。

アルジの魔術、雷動だった。


オオトノラコア「マ…マ…マ…!」


最初に腹を殴られたとき。

すでにアルジは雷動を使っていた。

そのためオオトノラコアの攻撃は弱まっていた。

雷動がなければ、体は弾け飛んでいた。

とっさに使った魔術がアルジの命を繋いでいた。

訪れた好機をエミカは逃さない。

今度は冷気が彼女を包む。

氷弾を1発撃ち込んだ。

◇ オオトノラコアに2のダメージ。

オオトノラコアの体を真っ赤な炎が包む。

その魔術は、火衣かい

炎を身にまとうことによって防御する。

体当たりで炎の攻撃もできる。

攻めと守りの双方で活用できる高度な魔術。

オオトノラコアはエミカをにらみつける。

アルジを大木に押さえつけたまま。


エミカ「!!」


アルジの魔力が切れた。

オオトノラコアは自由に動けるようになる。

地面を蹴って、跳びかかる。

その先にはエミカ。


アルジ「エミカ…!逃げろ…!」


魔力を高めるエミカ。

1歩も後ろへ下がらない。


エミカ(今の私に…できるか…!?

 いや…!やるしかない!!

 ミリ!お願い!力を貸して!)


強く、さらに強く。

魔力を高めていく。

そして、エミカは包まれた。

さっきよりも数段強い冷気に。


アルジ「!!あの魔力は…!」


炎をまとった腕が飛んでくる。

まさにそのとき。


エミカ「行けえ!!」


繰り出されたのは王氷。

強烈な冷気の塊が天界石の杖から撃ち出される。

至近距離でオオトノラコアに命中する。

オオトノラコアは大きく後ろへ吹き飛んだ。

◇ オオトノラコアに7741のダメージ。


エミカ「え…」


オオトノラコアはすぐに起き上がる。

だが、思うように動けない。

体がところどころ凍りついていた。

今度はアルジが逃さない。

エミカが作った、その好機を。

剣を握りしめ、駆けていく。

追撃。

彼の意識はその一点に向けられる。

腹の傷を忘れるほどの集中力で。


アルジ「うおおおお!!行くぜっ!!!」


剣を振り上げ、縦に下ろす。

◇ オオトノラコアに5433のダメージ。

続けて、横に大きく振る。

◇ オオトノラコアに6101のダメージ。

勇気の剣が強く光る。

アルジの攻撃は勢いを増していく。

1回1回の斬撃に重みが増していく。

そして、森の中、声を上げた。

アルジは、天を仰ぎ、叫んだ。

勇気の剣に選ばれた者だけが使える奥義。

その名前を。


アルジ「剛刃波状斬撃!!!!」


斬っていく。

さっきまでの鬱憤を晴らすかのように。

縦に振り下ろす。

◇ オオトノラコアに9542のダメージ。

横に払う。

◇ オオトノラコアに9791のダメージ。

斜めに裂く。

◇ オオトノラコアに9889のダメージ。

再び縦に。

◇ オオトノラコアに10024のダメージ。

横に。

◇ オオトノラコアに10533のダメージ。

そして、斜めに。

◇ オオトノラコアに10611のダメージ。

だが。


オオトノラコア「マァアアア…!!」


再び火衣をまとい向かってくる。

傷ついた体を震わせながら。

生への執着。

敵への怨念。

その両眼にはそれらが渦巻いていた。

その迫力にアルジは思わず身震いする。


アルジ「ばっ…!化け物か…!」


アルジは距離をとる。

力なく後退り。

アルジは心の底から恐れを抱いた。

勇気の剣は急速に光を失う。


オオトノラコア「マァァァ…!!」


オオトノラコアは声を上げる。

傷ついた体を大きく震わせながら。


アルジ「それでも…!お前は…!

 まだ…!やる気なのか…!!!」


もうこれ以上戦えない。

逃げるしかない。

離れるしかない。

そんな考えがアルジの脳裏をよぎる。


エミカ「アルジ!!!離れろ!!!!」

アルジ「…!!」


エミカは杖の両端を左右の手でそれぞれつかむ。

そして、天に向かって両腕を伸ばす。


アルジ(あの体勢は…!)

エミカ「やつから離れろ!!」


アルジは急いでその場から退避する。

腹の激痛に顔をしかめて。

最後は地面に倒れ込む。

エミカの方へ顔を向け、はっきり感知する。

オオトノラコアの頭上に巨大な魔波が集まるのを。


エミカ「これで…沈め!!」


放たれる。

最強の威力を誇る、その魔術が。

エミカの王雷がオオトノラコアの体を貫いた。

◇ オオトノラコアに14027のダメージ。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 25

◇ HP   107/2732

◇ 攻撃

 36★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

 28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★

◇ 素早さ

 30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★

◇ 魔力  5★★★★★

◇ 装備  勇気の剣、雅繊維戦衣がせんいせんい

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り

◇ 魔術  雷動


◇ エミカ ◇

◇ レベル 21

◇ HP   1452/1611

◇ 攻撃  10★★★★★★★★★★

◇ 防御

  27★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★

◇ 素早さ

  20★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  41★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★

◇ 装備  天界石の杖、濃色魔術衣

◇ 魔術  火球、火砲、火樹、火海、王火

      氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷

      雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 20


◇◇ 敵ステータス ◇◇

◇ オオトノラコア ◇

◇ レベル 43

◇ HP   82226

◇ 攻撃

 58★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

 40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

  55★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 24★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★

◇ 魔術  火弾、火衣

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