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アルジ往戦記  作者: roak
134/300

第134話 手柄

ゼナクはその場に立ち尽くす。

サナヨを背負ったまま。


ゼナク「…正気か!!」


歩き出すアルジ。

森の方へ。

エミカも続く。

ゼナクはサナヨをそっと下ろした。

平らな巨石の上に彼女を横たわらせる。

そして、大声を上げた。

アルジとエミカの背中に向かって。


ゼナク「おい!!!!!止まれっ!!!」


振り返るアルジとエミカ。

肩を震わせてゼナクは言う。


ゼナク「聞いてなかったのか!?オレの話を!

 撤退だ!!猟師は全員撤退だ!!!

 命令に従え!!!狩りは中止だ!!

 大前隊の命令だ!!!」


アルジはゼナクの方へ歩いていく。

燃え盛るアルジの闘志。

ゼナクはたじろぐ。


ゼナク「…なんだ!!」


ゼナクの目の前に立つ。

剣を振れば、刃は相手の喉に届く。

そんな距離を置いて向き合う。


ゼナク「なんだ!!!貴様!!」

アルジ「狩りを中止してどうするんだ!」

ゼナク「……!」

アルジ「誰がオオトノラコアを倒すんだ!

 町に攻めてきたら一体どうするつもりだ!

 お前は…!!町や人を守ることよりも…!

 自分の命令に従わせることの方が大事なのか!」

ゼナク「黙れ!!クソ野郎がっ!!!」

アルジ「…てめえ!!!」


つかみかかるアルジ。


ゼナク「……ろや…」

アルジ「……?」


ゼナクはしょげた顔。

半開きの口から弱々しく声が漏れる。


ゼナク「…理解しろや…」

アルジ「…何?」

ゼナク「…くくく…」

アルジ「…なんだ?」


ゼナクはアルジの顔を見る。

ひどく気の抜けた表情で。


ゼナク「無理だ…。所詮無理だったのさ…!

 あんな覇獣級の化け物オオトノラコアなんて。

 倒そうだなんて無理だったんだ。

 無理!絶対無理!ハナから無理!

 やるだけ無駄だったのだ!」

アルジ「……!!」

ゼナク「思い上がるな!強がるな!

 どうせ無理だ!戦っても負ける。

 挑んでも殺される。逃げるしかない。

 もう逃げるしかない。

 オレたちは…逃げるしかないのだ」

アルジ「…お前は…!!」


薄笑いのゼナク。


アルジ「分かっていたんだろ!!」

ゼナク「………」

アルジ「初めから…分かっていたんだろ!」

ゼナク「………」

アルジ「初めから!!今日、出発するときから!

 勝てないって!負けるって!

 思っていたんだろ!!

 無理だと思っていながら!!

 分かっていながら!!

 オオトノラコアに戦いを挑んだんだろう!」

ゼナク「………」

アルジ「それで…逃げてきた!お前たちだけ!」

ゼナク「だから…なんだ?それがどうした?

 オレたちを非難するつもりか?

 戦ってみて、到底勝てないと分かった。

 だから、オレたちは退避した。

 冷静な判断をした。 

 それで、生き延びた。ただそれだけだ。

 それが悪いか!!!」

アルジ「……!!」

ゼナク「ほかの猟師どもは…

 弱かったから負けたのだ。

 正しい判断ができなかったから死んだのだ。

 力がないから殺されたのだ。

 所詮はそれだけのこと。

 それだけのことなのだ。

 ああ、そういえば…仲間の死に怒り狂い…

 一時の感情に身を任せ…

 無謀な突撃で死んだ愚か者どももいたな…!」

アルジ「!!てめえ!!」


そのとき、寝かされていたサナヨが動く。

震えながら顔をゼナクの方へ向けた。

消え入るような声で伝える。


サナヨ「…行かせてやれよ…」

ゼナク「………」

サナヨ「死に急ぐ者を…

 必死になって止めることが…

 お前の…仕事じゃ…ない…だろう…?」

ゼナク「………」


ゼナクは黙って首を左右に振る。

アルジの手を振り払う。

そして、剣を手にした。

アルジとエミカに向かって構える。


アルジ&エミカ「………」

ゼナク「お前ら、行くんじゃない。

 森へ行くんじゃない。

 命令だ。これは大前隊の命令だ。

 どうしても行くのなら…

 大前隊の命令に背くつもりなら…

 ここで斬るまでだ」

サナヨ「………」

ゼナク「オオトノラコアのところには行かせない」

アルジ&エミカ「………」

ゼナク「さあ、おとなしく基地へ戻れよ」

アルジ「………」


アルジも剣を構えた。

剣が光り出す。


ゼナク「…!!?」

アルジ「あんたの命令に従う気はない。

 斬られるつもりもない」

ゼナク「何!!」

アルジ「どうしてもオレたちの邪魔をするなら…

 あんたを…ここで斬り伏せてでも先へ行く」

ゼナク「…なんだと!!オレは大前隊だぞ!!」

アルジ「うるせえ!!!!!!!!」

ゼナク「…!!」

アルジ「来るなら来い。

 あんたにオレは止められない」

ゼナク「…ヤロォ…!!」


剣を構え、にらみ合う両者。

ゼナクがアルジに向ける剣。

その刃先は、小刻みに震えていた。


アルジ「負けると分かっていて…それでも戦う。

 それがそんなに…立派なことなのか?」

ゼナク「貴様!…潰すっ!!!!」


サナヨはゼナクの姿をじっと見ていた。


サナヨ「…怖いのか…?」

ゼナク「……!」

サナヨ「ゼナク…あなたは…恐れているのか?

 タキマイ派でもない…奥猟会でもない…

 大前隊でもない…。

 どこの誰かよく分からない…。

 そんな者が…自分を差し置いて…

 手柄を…立ててしまう…

 …そのことが…そんなに…恐ろしいのか…?

 名折れか…?不名誉…か…?」

ゼナク「サナヨ!!バカなことを言うな!!

 オレはただ!!戦局を見極めて!!

 命令を下しているだけだ!!

 戦ってもやられるだけ!!だから!!

 撤退するんだ!!

 1人でも犠牲者をなくす!そういうことだ!

 ただ単にそういうことだ!!

 オオトノラコアは…!!

 オレでも!サナヨでも!

 どうにもならなかった化け物だ!!

 それに挑んでいこうとする!!

 そんなバカどもがいる!!

 止めるだろうが!普通は止めるだろうが!!

 阻止するだろうが!!」

サナヨ「………」


サナヨは小さく笑った。

それはゼナクを嘲り、蔑むような笑い。


ゼナク「サナヨ…?」

サナヨ「…彼らは強いよ…」

ゼナク「………」

サナヨ「私たちより…遥かに強いよ…。

 武器を手に…向き合ってみて…

 あなたも分かって…いるはずだ…。

 ここで…彼らと戦えば…

 自分が斬られて…死ぬだけだと…。

 ゼナク…これは私からの忠告だ…。

 死にたくないなら…彼らの邪魔をするな…」

ゼナク「…!!!」

サナヨ「ほら…行かせて…やれよ…。

 もしかしたら…倒して…くれるかも…。

 彼らなら…やってくれる…かも…」

ゼナク「ふう…!…ふう…!」


顔を赤らめ、息を荒げるゼナク。

サナヨは声を振り絞る。


サナヨ「ゼナク…行かせて…やれ…!

 私から…お願いする…!

 3代目…タキマイとしての…

 これが…最後の…願いだ…!」

ゼナク「…サナヨ…!」

サナヨ「ゼナク…分かって…くれ…!

 ここは…タキマイ狩猟会の…狩場だ…!

 誰が入って…いいかは…私が決める…!

 大前隊…じゃ…ない…!タキマイ狩猟会の…

 代表である…この…私が…!決めるのだ…!!

 だから…!だから…!」

ゼナク「サナヨ…!もういい…!喋るな…!」

サナヨ「…ふぅ…けほ!けほっ!!」


ゼナクは力なく剣を下ろす。

アルジも構えるのをやめる。

ゼナクは大きく首を左右に振り、天を仰ぐ。


ゼナク「…はぁ…!はぁ…!あああ…!」

アルジ「………」

ゼナク「おああああああああー!!!!!」

アルジ「………」

エミカ「行こう」

アルジ「…ああ」

ゼナク「おああああああああー!!!」


アルジとエミカは森へ向かって歩き出す。

サナヨはつぶやいた。


サナヨ「そうか…彼らのこと…だったのだな…」



◆◆ 3時間前 ◆◆

◆ タキマイ狩猟会の狩場 ◆

山を登り、谷へ下りたところ。

タキマイ率いる1班の猟師たちは休憩していた。

そこへ新たにやってくる猟師たちの一団。

ギンタロウとその仲間たちだった。

息を切らして6人がやってくる。


ゼナク「あいつらは…!」

タキマイ「…もう来たのか」

ギンタロウ「よう!追いついたぜ!

 …へ…!へへ!!!

 ゼー、ハー、ゼー、ハー…!!」


朝、基地を出発するなり6人は走った。

4班から抜け出して、2班、3班を追い越した。

そして、とうとう1班に追いついた。

息苦しさに顔をしかめるギンタロウ。

仲間たちも苦しそうな顔。

特にスギヤは地面の上に倒れ込んでいた。


ギンタロウ「さすがオレの仲間たち…!

 みんな付いてきてくれたな…!」

ムエナ「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、

 ギンタロウ!限度ってもんがあるだろう!!」

ワカオ「あんなに…!ゼエ、ゼエ、

 速く走るとは…!ゼエ、ゼエ」

イサグモ「く…!めまいがするぜ…!!」

スミレノ「はあ…苦しい…!もうダメ…」

スギヤ「………」


岩場に腰を下ろし、休憩する6人。

ギンタロウはじっと観察する。

タキマイとその周辺を。


ギンタロウ(よし…)


休憩時間はまだ終わらない。

次第に落ち着くギンタロウたちの呼吸。

ギンタロウはイサグモに目で合図を送る。

それに応じるイサグモ。


ギンタロウ「…やるぜ」

イサグモ「…おう」


イサグモが立ち上がる。

その姿を見て、スミレノも立った。

2人の魔術師は歩いていく。

タキマイたちの方へ。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ ギンタロウ(南国首位猟師) ◇

◇ レベル 26

◇ HP   1600

◇ 攻撃  

 20★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

 22★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★

◇ 素早さ 

  20★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 11★★★★★★★★★★★

◇ 装備

 草緑槍、青天弓、狩猟王の短剣、南国式手斧、

  硬毛武術衣

◇ 技

  猛襲連撃、潜行探知、竜頭槍撃、蛇尾斧撃

◇ 魔術  岩弾、岩砲


◇ ワカオ(剛腕剣士) ◇

◇ レベル 23

◇ HP   1338

◇ 攻撃

 31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★

◇ 防御  11★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 14★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  4★★★★

◇ 装備  長刃猟剣、獣甲戦闘着

◇ 技   巨獣両断撃、甲殻破壊剣、狼牙連撃剣、返身天心斬

◇ 魔術  火弾


◇ ムエナ(罠の達人) ◇

◇ レベル 25

◇ HP   625

◇ 攻撃  7★★★★★★★

◇ 防御  12★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 

 29★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★

◇ 魔力  9★★★★★★★★★

◇ 装備  精巧弓、裏装小刃、暗空猟衣

◇ 技   隠し刃のにわか雨

◇ 魔術  氷弾


◇ スミレノ(光の援護者) ◇

◇ レベル 23

◇ HP   544

◇ 攻撃  3★★★

◇ 防御  12★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 

 17★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  

 23★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★

◇ 装備  古世木の杖、心躍魔術衣

◇ 魔術  氷弾、氷刃、氷壁

      光玉、治療魔術、再生魔術


◇ イサグモ(闇の策士) ◇

◇ レベル 28

◇ HP   883

◇ 攻撃  7★★★★★★★

◇ 防御  14★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 14★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 29★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★

◇ 装備  黒水晶の杖、影想魔術衣

◇ 魔術  暗球、精神操作、五感鈍化、猛威減衰術


◇ スギヤ(歩く獣図鑑) ◇

◇ レベル 21

◇ HP   390

◇ 攻撃  8★★★★★★★★

◇ 防御  11★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 14★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  10★★★★★★★★★★

◇ 装備  怪牙の小剣、硬鱗狩猟衣

◇ 魔術  岩弾、岩砲


◇◇ 敵ステータス ◇◇

◇ サナヨ(3代目タキマイ) ◇

◇ レベル 31

◇ HP   1073

◇ 攻撃  14★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

 23★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★

◇ 素早さ

 33★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  特級獣獲槍、蒼堅猟衣

◇ 技   巨観点撃、挺身突貫、風雷回転槍術

◇ 魔術  雷弾、雷砲、雷刃、雷舞


◇ ゼナク ◇

◇ レベル 36

◇ HP   2550

◇ 攻撃

 24★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★

◇ 防御

  25★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★

◇ 素早さ

 33★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  

◇ 装備  貫鉄の槍、断岩の剣、青鋼戦衣

◇ 技   大槍撃、連進撃、瞬裂撃


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