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アルジ往戦記  作者: roak
132/300

第132話 王獣

ロニはほほえんだ。


ロニ「そう身構えるな。

 礼を言いにきたのだからな」

アルジ「礼だと?」

ロニ「くくく…」


ロニは創造の杖を懐から出す。

高く掲げてアルジとエミカに見せつける。


アルジ&エミカ「!!!」

ロニ「そして、貴様らを葬りにきた…」

エミカ(ヤシズ湖のときより…

 魔力がずっと強く…!

 さっきのヤサハカイヌも…ロニの仕業…!!

 今ここで戦うのは…危険!!)


ロニは近づいてくる。

アルジとエミカはじりじりと後退する。


ロニ「創造の杖を譲ってくれて感謝する。

 おかげで我が魔力は破格的成長を遂げた。

 本当に感謝する。ナキ村のアルジ…」

アルジ「てめえ…!」

ロニ「マスタスさんに杖を渡した

 貴様の愚かな仲間にもな」

エミカ「リネ先生を侮辱するな!」

ロニ「くくく…」


掲げた杖をそっと下ろす。


ロニ「アルジよ。

 すっかり有名人になったものだな。

 政府にも貴様の名は知られているようだ。

 重罪人として…な」

アルジ「…くっ!」


ロニは小さく杖を振る。

大きな魔波が巻き起こる。


アルジ&エミカ「!!」

ロニ「ふふふ…。うろたえるな。

 今日は1つ…魔術をお見せしよう。

 奇跡の魔術である」

アルジ「奇跡の魔術…!?」

ロニ「とくと見よ。創造の杖と獣魔術。

 力と力がかみ合ったことにより

 誕生した奇跡の魔術である。

 我が獣魔術の創造性を…

 この星の秘宝が認めて高めてくれたのだ。

 これこそが唯一無二の魔術!王獣である!!」

アルジ&エミカ「!!!」


杖から一気に放たれる膨大な魔波。

その魔波は巨大な獣の姿を形成する。


ロニ「ふふふふふ…」

アルジ「なんだ…!?この魔術は…!」

エミカ「そんな!信じられない!」


目の前に巨大な1頭の獅子が現れる。

その姿は半透明。

長い体毛は光り輝いていた。


ロニ「見ろ。もっとよく見ろ。

 どうだ、これが我が力だ。

 魔波によって生み出された

 肉を持たない獣。王獣だ。

 肉も、骨も、血も持たぬ獣。

 ゆえに誕生してから

 わずかな時間で消えてしまう…だが…!

 その破壊力たるや他の魔術を圧倒する!!

 王火も!王氷も!王岩も!王雷も!!

 この王獣には到底及ぶまいぞ!!!」


ロニは力強く杖を振った。


アルジ「来るぜ!!!どうする!!」

エミカ「私の魔術では打ち消せない!!

 王火でも!!王氷でも!!横へ跳ぼう!!」

アルジ「分かった!!!」


ロニは王獣を解き放つ。

解放感に身を震わせながら。


ロニ「フゥゥウイエエアアアアア!!!」


走り出す王獣。

魔波でできた鋭利な爪が、牙が襲いかかる。

アルジとエミカはそれぞれ跳んだ。

精一杯、力強く、横へ。

アルジは右手の林に。

エミカは左手の林に。

飛び込むようにして王獣の突進をかわす。


アルジ「うっ!!」

エミカ「…く!!」


勢い余って草むらの中で転倒する2人。


ロニ「!!まさか…!避けるとは…!!」


王獣は向こうの方へ走り去っていく。

体勢を立て直すアルジとエミカ。

輝きながら駆けていく王獣の後ろ姿。

それを見てアルジは気づく。

すぐに大声を上げる。

基地の方へ戻っていく猟師たちに向かって。


アルジ「避けろ!!!!!」

猟師たち「え…?」


遅かった。

王獣は容赦なく猟師たちを襲う。

ズタズタに切り裂いていく。

猟師たちの腕を、脚を、胴体を、首を。

切られた部分が飛んでいく。

宙を舞って、地面に落ちる。

1人、2人、3人、4人、5人。

王獣は、バラバラにしていく。

止まらないし、止められない。

走り、かみつき、引っかき回す。

猟師たちの集団を。


エミカ「ああ…ああ…!!」

アルジ「なんてことを…!

 なんてことをするんだ…!!」


遠くから見ても明らかだった。

襲われた16人の猟師たち。

全員再起不能であると。

いくつもの悲鳴が山野にむなしく響く。


9班の猟師A「っぎゃ!」

9班の猟師B「ぐあっ!」

10班の猟師A「んがう!」

10班の猟師B「ぎゃん!」

ロニ「ふふふふ…あははははははははは!!」


満足気にその様子を眺めるロニ。

◇ 9班の猟師Aに8261のダメージ。

◇ 9班の猟師Bに9012のダメージ。

◇ 9班の猟師Cに8593のダメージ。

◇ 9班の猟師Dに9292のダメージ。

◇ 9班の猟師Eに8415のダメージ。

◇ 10班の猟師Aに8877のダメージ。

◇ 10班の猟師Bに8093のダメージ。

◇ 10班の猟師Cに8652のダメージ。

◇ 10班の猟師Dに8737のダメージ。

◇ 10班の猟師Eに8449のダメージ。

◇ 10班の猟師Fに9632のダメージ。

◇ 10班の猟師Gに9001のダメージ。

◇ 10班の猟師Hに8942のダメージ。

◇ 10班の猟師Iに8874のダメージ。

◇ 10班の猟師Jに8656のダメージ。

◇ 10班の猟師Kに8224のダメージ。

◇ 9班の猟師A〜Eは死んだ。

◇ 10班の猟師A〜Kは死んだ。


ロニ「どうだ!見たか!我が王獣の力を!!

 …!!!?」


アルジは振り下ろす。

勇気の剣を。

ロニの頭部目がけて。


ロニ(こいつ…!!なんて瞬発力だ!!!)


大きく身をよじり、攻撃をかわすロニ。

反動で少しよろめいた。

その好機をエミカは逃さない。


ロニ「!!!」


炎がロニの体を包む。

エミカの王火が炸裂した。

◇ ロニに2563のダメージ。

さらにアルジは踏み込んで大きく剣を横に振る。

朔月斬りがロニの腹部をとらえた。

◇ ロニに1013のダメージ。


ロニ「ふう…!ふう…!!」


ふらつきながら離れるロニ。

素早く腕を翼に変化させる。

エミカの王火が再び襲いかかる。

ロニは高く飛び上がり、回避した。


アルジ「…飛んだ!!」


高く、高く、上がっていく。

空中からアルジとエミカを見下ろす。


ロニ(お前たちもまた…腕を上げたようだな!)


東の空へ飛び去っていく。


ロニ(…会いにいこう。

 あいつも…ようやく動き出す!

 黙科節もっかせつを終えて…!

 我々は…もう誰にも止められない!!)


そして、ロニは大声を上げた。

高ぶる感情を抑えられずに。


ロニ「ラグア!会いにいく!待っていろ!!!

 持っていく!私のこの力は、新王国のために!

 ふふふふふ…ははははは!!」


残されたアルジとエミカ。

しばらく空を見上げていた。

小さくなって、やがて見えなくなるロニの姿。

王獣の姿もすっかり消えていた。

うつむくエミカ。

両手で顔を覆う。


アルジ「エミカ…」

エミカ「悔しい…」

アルジ「………」

エミカ「リネさんが…!

 大事にしていた創造の杖を…

 あんなふうに使われるなんて…!!

 悔しい…!!猟師たちも…死んでしまった!

 許せない…!!私はあいつを…!

 許せない…!!」


アルジは震えるエミカの肩にそっと触れる。


アルジ「次会ったら…あいつを倒そうぜ…!」

エミカ「ああ…倒す…!」


アルジは猟師たちを見る。

王獣の猛攻によって変わり果てていた。


アルジ(…ごめん。本当にごめん。

 止められなかった。今のオレたちの力では…)


日が上っていく。

薄い雲は今も空一面を覆っている。

アルジとエミカは歩き出す。

険しい山道を登っていく。

黙々と。

力強く踏み込んで、急斜面を駆け上がる。

1歩、また1歩。

息が上がっても休まない。

無我夢中で歩を進める。

さっきの惨劇の記憶を紛らわすように。

怒りも悲しみも頭の片隅に押し込むように。


アルジ「ここから下っていくらしい」

エミカ「この谷か?本当にここを下るのか?」


険しい下り坂が続いている。

左右両側から張り出す切り立った岩。

その地形のおかげで、遠くまでは見えない。

アルジは地図を出して、見直す。

方向は間違っていなかった。


アルジ「ああ、間違いない。

 ここを下って、荒野を進む。

 その先に森がある。

 そこまで行けば、地図の赤い場所まですぐだ。

 休まなくていいか?」

エミカ「いい。行こう。

 もう大分遅れてると思うから」

アルジ「…そうだな。

 先頭のタキマイたちは着いてるかも。

 オオトノラコアの居場所に」


少し下った、そのときだった。


アルジ&エミカ「!!」


前方に霧が立ち込めている。

白くて異様に濃い霧だった。

アルジとエミカは思い出す。

昨日のギンタロウの言葉を。


エミカ「アルジ、どうする?」

アルジ「どうするか…」


ただの霧だったら進みたい。

その気持ちはアルジもエミカも同じ。


アルジ(進んでみるか?

 いや、ナカモク煙霧は…

 やばいと思ったときには意識を失う…)

エミカ「アルジ」

アルジ「ああ」

エミカ「晴れるのを待とう」

アルジ「………」

エミカ「毒の可能性が否定できないなら…

 ここで待つしかないと思う。

 霧は広がってるし、ほかの道も

 簡単には見つからないだろう…」

アルジ「………」

エミカ「今回の獲物はとられてしまうけど、

 倒すべき古代獣はほかにもいる。

 私たちはここで待つのがいいんじゃないか」

アルジ「そうだな…。そうしよう」


霧が晴れるまで待つことにした。

アルジとエミカは並んで岩に座り、休息する。

辺りに魔獣の姿はない。

ため息をついてアルジはつぶやく。


アルジ「ああ…

 あいつのみやげ話を聞かなきゃならないのか」

エミカ「今日は出発が後ろの方だった。

 仕方ないよ」

アルジ「だよな。

 あいつ大声で長々と話しそうだぜ」

エミカ「耳栓でも用意しておこうか」

アルジ「ははは。それはいい」

エミカ「仲のいい人たちだった」

アルジ「ああ、仲間っていいなって思った」

エミカ「私も」

アルジ「まだ信じられない」

エミカ「…?」

アルジ「ミリもリネももういないなんて。

 …まだ信じられないぜ」

エミカ「うん…」


エミカは目に涙を浮かべる。

小さな風の音が聞こえる。

霧は少しずつ晴れていく。


エミカ「まだ近くにいる気がするんだ」

アルジ「…?」

エミカ「リネさんもミリも

 近くにいてくれてる気がする」

アルジ「…その杖のおかげか?」

エミカ「そうかも。杖は私に力をくれた。

 リネさんとミリ。2人の魔力を。

 でも、それだけじゃない。そんな気がして…。

 2人が私のそばにいてくれてる気がして」

アルジ「そうか」

エミカ「うん」

アルジ「エミカがそう感じるなら、

 本当にそうなんだと思うぜ」

エミカ「だと嬉しい」


完全に霧が晴れる。


アルジ「行くか」

エミカ「行こう」


張り出した岩で相変わらず見通しは悪い。

アルジとエミカは狩場に向かって歩き出す。

険しい坂を下っていく。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 24

◇ HP   2277/2457

◇ 攻撃

 35★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

 27★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★

◇ 素早さ

  29★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★

◇ 魔力  5★★★★★

◇ 装備  勇気の剣、雅繊維戦衣がせんいせんい

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り

◇ 魔術  雷動


◇ エミカ ◇

◇ レベル 20

◇ HP   1452/1611

◇ 攻撃  10★★★★★★★★★★

◇ 防御

  26★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★

◇ 素早さ

  19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、濃色魔術衣

◇ 魔術  火球、火砲、火樹、火海、王火

      氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷

      雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 20

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